
『高貞碑』は、中国北魏時代の碑だ。
書体は、初期の楷書体といわれている。
始筆は厳しく鋭く入り、
送筆はゆるぎなく、
終筆は中筆で軽く止めるように。
その形は、「造像記」の影響を受けながら、
王義之の楷書体へとつなぐ位置にある。
文字の全体は方形。骨格ががっしりしている。
だから、ごく一部の字を除き、柔らかな感じはしない。
曲線は「為」の曲がりに、突然表現されたりする。
『高貞碑』は、宮城書人会の漢字規定の部の
10月から12月の3か月間の課題だった。
自分は今それを、漢字研究部で「研究」している。
規定の時もうまく書けなかった。
特選とか準特選とかの良い評価はもらえなかった。
楷書は得意だとは思っていなかったが、
普通に書けていると思っていた。
しかし、この『碑』の楷書の用筆は、普通ではない。
ちょっと変わっている。
苦戦していた。
しかし今日、分かった。
鋭い「入筆」はできるようになった。
軽い「終筆」もどうすればいいのか分かった。
イマイチぴんと来ないのが、
きりっと清々しいほどの送筆。
すっきり迷いのないその線。
先生は指摘する。
「あなたの送筆は浮くのね。」
「浮く」?
どういうこと?
どう動いていることが「浮く」状態なの?
しかし、今日、それが分かった。
突然、天から降ってきたように閃いた。
「始筆で加えた筆圧を、そのままに送筆する。」
それが出来ていないのだ、と。
自分のこれまでのは、ふわふわ(どこかに行ってしまいそうな)寄る辺のない線だった。
分かったが、羊毛筆でそれを表現するのは簡単ではない。
「筆圧をかける」というのは、「言うは易く、行うのは難し」。
鋒先(筆の先)を「S字」にして運ぶ。これが難。
そしてゆるぎなく送筆。
練習・練習。できるまで練習あるのみなのだ。