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近代戦術を融合した「21世紀の機械仕掛けのオレンジ」【スペイン対オランダ】

2014年06月15日 | ワールドカップ (ブラジル大会)
■ スペイン対オランダ【グループB】
   スペイン(1-5)オランダ

・前半27分 シャビ アロンソ   (スペイン)
・前半44分 ファン・ペルシ   (オランダ)
・後半 8分 アリエン・ロッベン (オランダ)
・後半20分 デ・フライ     (オランダ)
・後半27分 ファン・ペルシ   (オランダ)
・後半35分 アリエン・ロッベン (オランダ)


この試合の詳細は、ブログランキングにてサポーターの方のエントリーをご覧下さい。

■ ズダボロにされたスペイン代表

◆ まさかの結果
前回W杯の決勝戦と同じカードが、グループリーグB第1節で対戦した。
世界中が注目した一戦は、誰もが想像していなかった内容と結果だった。スペインvs.オランダ…結果は、1-5。

La Roja(ラ・ロハ。スペイン代表の愛称)は、時計仕掛けのオレンジに無様に敗れた。
唯一の救いは、まだグループリーグだったこと。そして、前回大会も第1戦で敗れながらも優勝したことだけである。

◆ コンディションの問題か、狂ったティキタカ
この試合、スペインは、得意のパスサッカーを繰り広げることが出来なかった。オランダのプレスが強烈だったということもあるが、全盛期のスペインであれば、闘牛士のように相手の猛攻(プレス)を交わしたろうティキタカがオランダのプレスにやられた。例えるなら、闘牛士が角でズダボロにされたようなものである。以下、この試合、戦術的に、非常に面白い試合だったので、オランダ寄りで進める。

■ プレス…クアトロ・ボランチ、偽ウインガーとゼロ・トップ

◆ 4人のボランチ
オランダのフォーメーションは、5バックと話を聞いていたが、この試合を観ると、かなり特殊なフォーメーションで驚きだった。フォーメーションの並びを見ると「3-4-3」。
しかし、このフォーメーションに内在する戦術から見てみると、「3-4-1-2(ゼロトップ)」だった。

3バックのDFラインは中央は固い。しかし、3バックは両サイドに「泣き所」がある。しかし、スペインは両サイドに強力なウインガータイプを有していない。それを考慮した、オランダの監督ファン・ハールは、3バックのDFラインの前に4人のボランチを配置するイメージで守備的フィルターを配置した。これで、オランダのディフェンブサードへの侵入を封じる。その、4人のフィルターは「ブリント、デ・ヨング、デ・グズマン、ヤンマート」

この4人のフィルターが、スペインのティキタカ封じに効果的だった。ゲームをコントロールするようなセンス、テクニックを持っていないが、運動量が豊富でボール狩りに長け、上下動を90分間献身に行い、奪ったボールを、前線の3人へ供給する。そんな4人が、スペインの中盤を圧倒し続けた。「プレス、プレス、プレス…」である。つまり「クアトロ・ボランチ」である。

◆ 偽ウインガーとゼロ・トップ
現在の欧州戦線で、ベスト3のFWを挙げろと言われれば、ファン・ペルシが入ることは間違いない。プレーヤーの能力として疑いの余地はない。ただ、今シーズンは怪我の影響であまりシーズン通してコンスタントなプレーが出来なくキレに不安があったが、この試合ではゴールも決め周囲の不安を払拭したとも言える。むしろ、ほどよい緊張感の中でプレーしていて、2011–12シーズンと2012-13の得点王になった時のオーラがあった。

オランダ代表の前線の3人の並びが非常に興味深かった。
本職のウインガーのロッベンは左に配置。ファン・ペルシをワントップから右ウインガー気味にずらし配置。トップ下にスナイデルを配置し自由を与えた。つまり、FWのワントップがいない。

スペインのDFラインは、ロッベンの縦を警戒する。そうすると、ファン・ペルシが中へ絞り、本職のCFとなる。そして、スペインのCBは、トップ下に位置したスナイデルに警戒しつつも、マークの受け渡しが難しくなる。つまり、スペインCBにマークすべきワントップを配置せず、オランダの前線にとって空いたスペースをロッベン、ファン・ペルシ、スナイデルに自由に使わせようという戦術である。(ちなみに、この戦術は、過去にどっかのチームか監督がやった記憶があるが思い出せず。スペレッティのゼロトップ(原点)とは違う。)

ちなみに、この配置は守備に回っても効果を発揮する。
スペインの両SBは、ロッベンと偽ウイングのファン・ペルシがプレスへ行き、スペインの中盤の底には、偽9番のスナイデルがすぐにマークへ行ける。

◆ スペインのパス・サッカーを分断
FIFAのオフィシャルのデータを確認してみた。
Match statistics(PDF)
ボールポゼッション率
スペイン57%
オランダ43%

中盤のポゼッション率

スペイン36%
オランダ20%

ファウル数
スペイン5
オランダ18

アクチュアルプレーイングタイム(実際のプレー時間)
33分
24分

過去のスペインであれば、もう少しポゼッション率は高い。この試合のスペインは、むしろ持たされているだけのポゼッション率だった。そして、オランダのファウル数を見れば、オランダがスペインの「ティキタカ」を寸断することを狙っていたことは容易に分かる。つまり、スペインのパス・サッカーを分断し、スナイデルにタクトを与える戦術をファン・ハールは考え、近代戦術の特性と持てる選手(戦力)を活かす戦術をチームに植え付けた。特に、ファン・ペルシのようなCFを偽・右ウイングに配置するのは、他の監督にはそうそう出来ない。そして、若い選手が多いオランダの中で、ベテランの域のスナイデルを自由にさせ、バランスを取らせた。

◆ 21世紀の機械仕掛けのオレンジ
ファン・ハールは、近代戦術の基本的な要素
・プレス
・ボランチ
・セロトップ
・ウイング

これらを見事に融合させ「21世紀の機械仕掛けのオレンジ」を作り上げた。個人的には、かなり衝撃を受けた。さすがに、1-3となった時点でスペインが意気消沈したとは言え、前回王者の無敵艦隊から、5得点を奪ったという事実は見過ごせない。来季マンチェスターUの監督となる、ファン・ハールは、生粋の戦術家だと感じた試合だった。(きっと香川は、前任者よりも効果的に使われることは間違いないだろう。)

そして、この試合の結果と内容で今大会の優勝候補に躍り出たと言っても過言がないと思う。今後の勝ち上がり次第では、ブラジルと対戦する可能性があるが、もしブラジルに勝利したら、一気決勝戦まで駆け上がるかもしれない。(コンディション次第だが、決勝。優勝も夢ではない)。多分、クライフ的には、好みじゃないんだろうなぁと思う。個人的には、これはオランダのサッカーじゃないと思う(笑)オランダの魅力とは「機能美を有するが、どこか脆さがある」。それが、オランダ美学ってやつなんだけどね。

最後に、スペインのデルボスケ監督が、どうやってチームが失った自信を取り戻すかに注目したい。ロンドン五輪で、日本が初戦で勝利し、その後スペインが1分2敗したという過去もある。下手したらスペインがグループリーグ敗退もおかしくない状況だと思う。今大会は、色々と波乱、衝撃の多い大会になりそうである。

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4 コメント

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the352 (cska352)
2014-06-15 12:35:48
日本残念でした。ザックの評価は変わらないです。
吹っ切れて攻めてほしいです。

ファンハール流石です。私の大好きな好きな352です。
ポゼッションもポジションチェンジもしないトータルフットボール。前線の三人はポジションチェンジしてましたけど。
デヨングがDFになったりMFになったりして、スナイデルはFWになったりDFになったりする感じ。
ポゼッションするときはデヨングが最終ラインに入って、両サイドが上がってましたよね。

ファンマルワイクの時(前大会時)は4-2-4の形でデヨング下がってSB上がり、スナイデル2トップになったり、中盤に下がったりしてましたよね。
それの3-4-3バージョンです。

パスサッカーは受け手をマークされると困るんですよね。ゾーンで守られたら、そのあいだで受ける動きがティキタカの真骨頂。マンマークで来られると一対一は強くないスペインは弱いです。

コンパクトにして高速でパスを回すスタイルを逆手に取られ、大きく振られてロングボールを高精度で入れられた戦術がはまっていました。

日本もそうでしたが初戦の緊張感と、雨で重くなったピッチ(芝も長いのかな)もあってスペインの動きも重かったです。

352のオランダは要注目です。引いた相手には攻撃的になるかもしれません。
妄想激しくてすみません (cska352)
2014-06-18 01:28:57
オランダは守るときは、SBが下がって、4番のマルティンスインディが上がり目のCBになるシステムでした。
前への推進力のある守り方が好印象でした。

個人的に、受け渡しマンマークの3-5-2と2-7-1(オシムの神風システム)が見たいという願望がありまして変なコメントを失礼しました。

小生、精神障害があります。
度々ご迷惑をおかけしております。
コメントのお返事 (コージ)
2014-06-19 00:45:12
CSKA352さん

こんばんは。
いえいえー!巷では、5-3-2みたいな言われ方していますけど、私の目には、4ボランチのゼロトップみ見えました。多分、内在するシステムは、私の見解で間違いないはずです。これから、オージー相手にオランダがどういうフットボールをするかが、注目です。
ファン・ハールは、もう一つ、違う策を持っているんじゃないかな?と。
3バック回帰 (cska352)
2014-06-28 00:25:27
チリとオランダみました。どっちも352。

オランダはカイトが左ウィング。守備的でしたが、追いかける展開になったらここを一列上げて4-2-1-3になるのかもしれないと妄想しました。
オーストラリア戦は見てません。

チリは私の好きなマンマーク型の352。ディアスが済州欄に入ってバック気味にビルドアップしてました。
後半はビエルサ仕込み3-4-3に2-5-3にしてしまったので、ミスマッチが起こり負けてしまいました。

コスタリカの5-4-1は弱者の手本ですね。身分をわきまえた小国が流行の最先端を行ってます。
ブランテッリのイタリアはユベントス風の352が一番いいですね。
5バックでゾーンのスペースを狭められ、相手のプレスを数滴優位を活かして交わすことができ、両ウィングを上げれば攻撃に厚みを出せます。

メキシコはオシムを思い出す3-5-2。
鈴木でなくマルケスがリベロ。5バックで守ってパスを繋ぎ、マルケスは中盤まで上がって2-6-2で攻撃します。素晴らしいです。
352オタクにはたまらない大会になりました。

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