くらげのごとく…

好きなことを考えてふわふわ漂ってるような
時間が心地良かったりする。
たとえ時間の無駄遣いだったとしても…。

祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~

2013年01月27日 | 観劇



ケラさんの戯曲で、本家ケラさん演出と蜷川さん演出が年をまたいてコクーンで上演された。どちらも1回づつ観にいった。美術とキャスティングはケラさんの方が好きかなって思った。作った本人が演出だからそつがなくて当たり前、映像や音楽も現代的でスマートでおしゃれだった。蜷川さんの方はしっかり演劇になっていて、和洋折衷で敢えて一貫性がないように見えてひとひねりふたひねりしてある感じだ。自分よりもはるかに若いケラさんの挑戦をストレートで受け、多彩な変化球で返しているようだ。井上ひさしさんの時のように台詞やト書きが字幕で出る。戯曲に忠実であろうとする蜷川さんらしい。ケラさんの描こうとした世界、情景を正直に観客に届けようとしているし、なんだかわからないようなこと、たとえばパイプのような電話などをわかりやすくしていた。

4時間の大作で、途中何度か記憶がとんだ。根幹はギリシャ悲劇だが、チェーホフやらガルシアマルケスやらいろんなモチーフが見え隠れする。ケラさんはいろいろ勉強しているんだなあ。演劇界においてめきめき力を発揮しつつある。有頂天のバンドマンだったなんて遠い昔のことだね。ねるとん紅鯨団の主題歌だっけ???記憶がさだかじゃないけど単なるコミックバンドだと思っていたよ。そんなケラさんに敬意を表してか、蜷川バージョンではケラさんが歌う「心の旅」のレコードが劇中で何度か流された。和装コロスのラップも、ばっちりハマっているわけではなかったけど斬新だった。コロスメンバー、下谷万年町臭かったなあ。ケラバージョンのコロスの方が蜷川チックだったのが面白い。その他、ケラバージョンでは怪物は子どもを亡くした夫婦の前にあらわれる幻影のことかと思ったけど、蜷川バージョンでは怪物はまさに人間を呑み込み滅亡へと導く欲望だった。

以下、独断の役者比べ。失礼があったらごめんちゃい。

ドン・ガラス
生瀬勝久VS勝村政信  
ほぼ互角、双方エネルギッシュだった。70代という原作の年齢としての役作りは肉襦袢をつけて頑張っていた勝村さんの勝ちかな。ケラバージョンでは主役だったからか生瀬さんはかっこよすぎた。

トビーアス
森田剛VS小出恵介
蜷川バージョンでは主役だから森田くんの印象が強い。ケラバージョンの小出くんもぴったりだった。小出くん最近舞台づいているなあ。

長女
原田美枝子VS久世星佳
個人的に久世さんの方がひと癖あって面白かった。原田さんは映像ではいいけど舞台では線が細くてきれいすぎる。

二女
緒川たまきVS中島朋子
奥様にやらせるくらいだから重要な役。たまきさん輝いていた。朋子さんもギリシャ悲劇経験者として遜色なし。

三女
安倍なつみVS宮本裕子
なっちは舞台づいている。なかなか頑張っているよね。男性ファンがカテコでなっちコールをしていた。モー娘の力もまだまだ衰えずで恐れ入った。宮本裕子さんはあまり知らなかったけど実力派で大役を演じきっていた。

パキオテ
大倉幸二VS三宅弘城
実はこの役が一番気になっていた。子どもを亡くした夫婦に見える亡霊を呼んだのが白痴のパキオテ。大倉さん独特のボケ味があってこそのキャラだったから蜷川バージョンで誰になるのかと思ったら三宅マンだった。何気に安心。やっぱりあの味はナイロン100℃しか出せない。蜷川さん、三宅マンをよくぞ押さえたよ。道化のパキオテ、お二方ともぴったりだった。

メメさん
犬山イヌコVS伊藤蘭
私は、てっきり蘭ちゃんが長女だと思ったんだよね。そしたらメメさんだった。これは、まるっきり正反対の持ち味で全然違った。犬山さんは本家だもんね。たたみかけるような台詞まわしが上手い。蘭ちゃんは正統派として凛とした魅力が出ていた。

アリスト
マギーVS大石継太
マギーさんの方がやさぐれ感が強かったかな。大石さんは真面目さがにじみ出。蘭ちゃんとのバランスも良かった。

ジャムジャムジャーラ&ドンドンダーラ
この老婦人、魔女の宅急便に出てきた魔女みたいだ~。かたや、若者に殺されて心臓を取られ、かたや生き残って化け物になる。
三田和代VS木野花
迫力があるのは木野花さんかな。三田さんは貴婦人ジャムジャムの方がハマっていた。とても品があるのよね。雨ジュリを思い出す。DVDにもならないし、TV放映もない。雨ジュリがまた見たいよう。(注:雨ジュリとは雨の夜三十人のジュリエットが帰ってきたのこと)

同じ戯曲でもこうも違う作品になるのが演劇の醍醐味だね。この企画、なかなか楽しい。観る人によって様々な感じ方や捉え方もあるだろうしね。



こんなチラシをもらったよ。蜷川さん、また唐さんをやるんだ。唐さん、体の具合は大丈夫なのかな。盲導犬は知る人ぞ知るキムタクの初舞台作品だよね。木村君、もう何年かしたらまた舞台をやるんじゃないかなあって勝手に思っている。そして、滝の白糸ですぞ。蜷川さんが「蛇にピアス」に出演した竜也くんに「銀メガネだね」って言っていた作品だよ。くるかな~銀メガネ。寺島しのぶさんとやってほしかったけど出産だから無理かな。とにもかくもキャスト発表が楽しみ~。         


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