中間玲子のブログ

仕事のこととか日々のこととか…更新怠りがちですがボチボチと。

私なりの「教師論」

2013-02-11 20:57:27 | 授業日記
先週金曜日、2月8日は、「教師論」というタイトルの科目で
1日、講義をしていました。

卒業を間近に控えた4回生4名が受講していまして、
果たしてどんな授業をすればよいのか…と
担当が決まったときからぼんやりと悩み続け
間近になってからはさらに悩み続け
いくつかネタを絞り出そうにも絞り出せず…

心理学の知識をどう生かすか
「教師論」というタイトルをどう解釈するか

ということに延々悩み続け。

前日までちらかった講義案の候補とにらめっこをして
それらから作った原稿を片手にしながら
でも、そのレジュメをメインでやる決心もつかないので
使おうか迷っているVTRを早送りで何本も見て、
同時に、それをどう使おうかを考え、
深夜に何をやるかの決心をして早朝に最後のチェックをして

とスリリングな時間を過ごしたわけですが、
私なりに責任を果たそうとがんばってみました。

「教師論」というタイトルですが、
「教師論」なんて語れるわけもなく
心理学の知識でお茶をにごすにしてもよい方略がうかばず

悩む間に、私も学生にとっては教師なんだ、ということに
今更ながら気づきました。
私なりの「教師論」を私なりにどう実践するか、自体が
メタ的な意味では「教師論」のコンテンツになっているということです。

私自身、「教師論」なんてことを考えたことはなく
あまり「教師」である自覚はないままにいたのですが
(「心理学者」という自覚はありましたので、それに恥じないようにとは思ってきました)
「教師論」というタイトルで学生にどう向き合おうか、
しかも、卒業を間近に控えた、これから教師になる学生に
この講義の中でどう向き合うのか、
そして、どのような講義を組み立て、そこにどのようなねらいを置くのか。

そこを考えねばならないと。

「教師論」という内容面でも伝えるべき内容を用意しなければならないのですが、
その講義を構成する私の講義にも「教師論」は反映されるわけで…

*この時点で、概念としての「教師論」は放棄しました。
 「理想の教師論」になっちゃったかもしれません。

入れ子的な発想ですよね。
内容として「教師論」に関する材料を用意し、
それに取り組む過程ではそれぞれの材料に向き合うことが目的となるんだけど、
その内容を、講義において実践しようと。

なんかここに至るとおもしろくなってきました。

しかし、そうなると、私自身、何を伝えるのか、
真剣に考えねばなりません。

私は、どのような教師になってほしいと望んでいるのか。
何を伝えたいのか。

考えたあげく、最初に出た答えは「正解を求めない」ということでした。

しかし、「~~しない」ということを目的にするのは弱いので
そこから肯定文を考えました。

いろいろ出たのですが、
最終的に「関わる勇気をもつ」ということを選びました。
関わるというのは、ダイレクトな関わりとは限りません。
「待つ」という関わりもあります。
また、ダイレクトに関わっていないつもりでも、
人というのは存在するだけで相手に影響を与えるものです。
そのことを心に留める勇気(と体力?)

そこに存在すること自体の責任を引き受け、
そしてその自分として生き、人と関わる勇気をもちつづけること。
なぜ「勇気」かというと、
関わるということは、敗者になる確率も上がるからです。
何もしなければ、間違いを起こすことも、悔しい思いをすることも
悲しんだり傷ついたりすることも、少なくてすむでしょう。
でも、時には勇気を出してでも、人と関わる人でありたいと。
しかも、そこの主体たる私は、無難な人間ではなく
魂の入った私たる人間でありたいと。

それが響くか、伝わるか、わからないし、
おかしいと言われるかもしれないけど、
今の私はその私でしかないので、その姿で勇気をもって向き合う。
そのような教師であることを、まずはこの授業で実践してみようと。
(あ、結局「勇気」がテーマなのでしょうか…)

そして、そのような私が準備した内容を通して、
自覚的に自分では当たり前と思って実践している
自分なりの「教師論」を自覚してもらおうと思いました。
もしも、ないのであれば、卒業を控え、一番理想を抱きやすいこの時期に、
仮の「教師論」を作っておくことは意味があるだろうとも思いました。
まだはっきりとした理想や論や観がないとしても、
その材料はおそらく自分の経験の中に散らばっているでしょうから。
そして、卒業を控えたこの時期に、教師論を考えるという営みは、
今、この時期にしかできませんから。

と、ここまで至っても、まだ、コンテンツには悩んで、
それで、冒頭のような綱渡りの時間を過ごしていたわけですが。

結局は、数年前にあったNHKドラマ「フルスイング」から第1話と第2話を材料に、
議論できるポイントを細かくとりあげながら、その都度、皆に話し合ってもらう、
という形式をとりました。
その中で、概念、理論と関連づけられるところは知識として提供し、
学生の意見を概念として整理したりということは心がけましたが、
さすがに4回生だけあって、色々な経験や思いや考えをたくさん話してくれました。
とても楽しく、皆の話を聞きました。

そして、レポート課題としては、
この授業に臨んだ際に私が悩んだようなことを
皆に悩んでもらおうということをねらってテーマ設定をしました。

この手の授業展開を計画すると、受講生によって当たり外れが大きく
もしこの手の試みを実践する機会が訪れたとしても、
うまくいくとは限らないと思います。
でも、それでも、自分なりの論や観といったものを見つめ、
それを実践していくという観点でとらえると、
どんな結果になっても勉強になるなあと思ったのでした。

めずらしく、「教師」について語ってみました。

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