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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

維新の会の『骨太の改革』は骨粗しょう症 最低賃金制度「改革」=廃止は日本経済の底をぶちぬく

2012年12月06日 | 橋下維新の会とハシズム

OECDのレポートを元に、世界各国の労働者の最低賃金を平均賃金との相対水準で表したもの。日本の最低賃金の相対水準は相当低 い水準に抑えられている。特にOECD先進国の中では世界最低である。

 

 

 ここ10日余り、ブログを書かなかった理由は、維新の会を筆頭に、自民党も日本未来の党も毎日毎日言うことが変わるからなんです。せっかく用意して批判しても、「間違えました。変えました!」と言われたらこっちの徒労感たるやひどいですから、しばらく様子を見ていたのですが、考えてみたら、選挙当日まではおろか、選挙後もコロコロ言うことが変わるに違いありませんから、待ってられません。

 ことに、コロコロ王子こと橋下維新の会代表代行ときたら、2012年11月29日、かつては旗手気取りだった脱原発に関して、

「工程表は官僚が作る。政治家に制度設計をつくれというのは無理だ」

「何年後に(原発)ゼロにするかは絶対に争点にならない。」

と公約さえしないし、もちろんやる気もゼロですからね。論評する気も起こりません。

 ただ、石原橋下維新の会が絶対にやる気満々なことに、最低賃金の廃止があります。

 橋下徹大阪市長は11月30日、維新の政権公約「骨太2013~2016」に盛り込んだ「最低賃金制の廃止」について、雇用の創出が狙いだと説明し、

「ハードルを課せば、最低賃金を出せない企業や、本当ならあと2、3人雇えるのに1人しか雇えないという企業もある。できるかぎり多くの雇用を生み出したい」

と市役所で報道陣に語りました。

 あのね、従業員の賃金下げた分、新たに雇用を増やすような雇い主がどこにいるんですか。賃金減らして雇用は増やさず終わりに決まっているでしょう。この人の頭はどんだけお花畑なのか。

 飴と鞭よろしく、橋下氏は一方で、収入が一定水準を下回る人については、国が最低限の収入を保障する考えを表明しましたが、肝心の最低限の収入の水準については

「専門家が意見を出して制度設計する話。今の段階で出せない」

して明示せず、かえって

「今の生活保護の支給基準は高すぎるところがある。負の所得税的な考え方では、水準は下がる」

とはっきり明言しました。つまり、底抜けに賃金減らしを進めるということです。

 そもそも、橋下氏のブレーンは、あの小泉構造改革で日本経済をどん底に叩き落とした竹中平蔵氏です。最低賃金廃止など、まさに『市場原理主義』の発想です。彼らには人件費を下げて、グローバル企業を儲けさせることしか頭にないのです。

 山河破れて大企業あり。労働者は人ではなく、単なる固定費という意識です。彼ら99%の賃金など安ければ安いほどいいと考えているのでしょう。そんなことをしたら、日本の消費力はますます下がって景気は悪くなる一方なのに、目先の利益しか見えていないのです。

野田民主党政権にさえ負けて、橋下原発推進の会だとばれた橋下維新の会は、必ず「弱い者イジメ」に走る

 

 さすがに、最低賃金廃止にについては各界から猛反論が起きました。たとえば、財界と財務省のポチ野田佳彦首相でわえ12月3日のインタビューの中で、「格差が拡大する懸念を持っている」などと批判しました。著名ブロガーでも水口弁護士氏から「最低賃金制度は賃金の下支えとして重要です。税務申告をしなければ、支給されない給付を待っていては、日々の生計は不安定ではない」と正論が出ました。

 もちろん、ネット上でも

「労働する国民を奴隷化するものだ」「望むのは財界だけだろう」「橋下を持ち上げてたやつらは反省しろよ」

と議論が沸騰しました。

 ちなみに、 労働基準法の第28条には「賃金の最低基準に関しては、最低賃金法の定めるところによる。」

とされ、それを受け最低賃金法の第1条には

「この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」

と書かれています。さらに最低賃金法の第9条3には、

「労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。」

とされています。さすがの違憲・違法をものともしない維新の会もこれはやばいと公示前にビビってしまい、浅田政調会長が公示の直前に

「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」

と表現を修正しましたが、これでは最低賃金を下げる方針は全く変わっていません。

 市場メカニズムにまかせていれば、強者の使用者側の言い分がどんどん通り、賃金がますます下がって歯止めがきかないからこそ、最低賃金制度があるのです。「市場メカニズムにまかせる」というのは数百年前のアダム・スミスの時代の話です。つまりこれは最低賃金制度の廃止と全く同じです。企業にとっては安ければ安い方がいいに決まっているのですから。

 維新の会は英語名で「王政復古の会」というのですが、名は体を表すと言いますか、感覚は封建主義時代そのものです。

橋下日本維新の会は英語表記で「復古の会」。道理で、昔の名前が出ています。

日本の非正規労働者、パートの賃金は最低レベル水準にある

世界最低のレベルなのは最低賃金だけではありません。上の図は主要なOECD参加国の、パートタイム労働者の賃金水準がフルタイム労働 者と比較して時給ベースでどのような水準にあるのかの国際比較を掲げたデータです。日本のパートの人の賃金は正社員の賃金の半分にも満たないのです。しかし他の先進国では正社員の60%以上、高い水準の北欧諸国(スウェーデン)やスイスでは90%にも到達します。

 


 日本の最低賃金は全国平均で時給749円、フルタイムで働いても年収150万円足らずで、いまでも冒頭のグラフのように、主要国の最低賃金のなかでも最も低いのです。

 維新の会には内需拡大による経済発展と言う発想は全くありません。ただただ生活保護を切り捨てるのと同じです。まったく経済音痴そのままです。

 橋下代行は

「最低賃金のルールがあると、あと2、3人雇えるのに1人しか雇えない」「他の党には示せないものだ」

と豪語しているのですが、そりゃまともな政党なら誰も示せませんよ。

 だって、いまでも生活保護レベルなのに生活保護を受けている人の捕捉率は15%程度です。生活保護以下の低賃金を強いられているワーキングプアは1000万人を超えています。それなのに「最低賃金制」というセーフティーネットを廃止したら、日本経済の底は抜けて、ダダ漏れになって破滅です。

基本的人権である生存権保障の最重要制度 生活保護基準の引き下げに反対する


 このまま日本の人件費が中国やベトナムに向けて下がれば、たしかにごく一部のグローバル企業はボロ儲けできるかもしれません。しかし、日本経済の貿易依存率は30%に過ぎません。日本にとって大事なのは内需なのです。

 もし、日本人の圧倒的多数が、消費税増税と相まって食うや食わずのワーキングプアになり、結果的に消費が落ち込み、日本は凄まじい大不況に陥ります。もちろん1%と99%の格差も広がり、社会不安は極端に増大するでしょう。

 そもそも、最低賃金制は、米、英、中、韓なども採用している労働者の最後の砦=セーフティネットです。最低賃金制度は、憲法25条の生存権(健康で最低限度の文化的生活)、憲法27条2項の(勤労条件の法定原則)によって定められている生存権の保障の現れです。最低賃金制度の廃止は、憲法違反なのです。

 また、最低賃金制度に関するILO26号条約を日本は批准していますから、廃止はILO条=国際法違反です。

 国際労働基準を見ると、日本政府が批准しているILO(国際労働機関)条約131号条約は、最低賃金の水準決定にあたって考慮すべき要素として、「労働者及びその家族の必要であって国内の賃金の一般的水準、生計費、社会保障給付及び他の社会的集団の相対的な生活水準」をあげています。

 このILO131号条約に対応するILO135号勧告は「貧困を克服すること並びにすべての労働者及びその家族の必要を満たすことを企図」し、「賃金労働者に対し、賃金の許容される最低水準に関して必要な社会的保護を与える」ことが最低賃金決定の目的であると書かれています。

 ちなみにILO条約は、加盟国が批准したときに法的な拘束力が生まれ違反は許されません。もちろん、ILO勧告は、努力目標としてILO条約よりも高い水準をめざすときなどに出されています。

 もう一度言うと、最低賃金制度を破壊したら社会不安は悲劇的に増大し、自殺者も増えるでしょう。

 たとえば、橋下・松井氏らのおひざ元大阪府の最低賃金である時給800円を廃止して3人雇うということは、1人当たりの時給は約260円になるのです。1日8時間働いても日給2080円、月給5万2000円です。これで誰が生活できるのですか。

 これは、私たち全員の問題です。日本維新の会は、日本背信の会。絶対に国政に進出させるべきではありません。

生活保護申請者に「体売れ」 窓口で断られ凍死、餓死、自殺 不正受給は0・4% これが生活保護の実態だ



こんな政党をテレビで映すこと自体が信じられない。

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維新記者会見要旨【12衆院選】

 時事通信 2012年11月29日

 日本維新の会の石原慎太郎代表と橋下徹代表代行が29日に行った記者会見要旨は次の通り。
 石原氏 こまごました政策の話をしてもしょうがない。硬直した中央官僚の支配を壊す。
  橋下氏 (政策の)工程表は官僚が作る。政治家に制度設計をつくれというのは無理だ。分かっていない国会議員は自分たちで工程表を作ろうとするが、ほとん ど実行できない。メディアは旧太陽の党と一緒になったときに、橋下の原発政策は変わったと(指摘した)。書くだけでいいなら、なんぼでも書くが、実行する かどうかが問題だ。政治家の(示す)方向性は、原発をこのまま増やしていくか、新しいエネルギー供給体制を目指していくかだけだ。それを基に官僚に工程表 を作ってもらう。
 (工程表が)2020年代(原発)ゼロになるのか、30年代ゼロなのか、40年代ゼロなのか、50年代ゼロなのか。それがいい か悪いかを最後判断するのが政治だ。30年代ゼロを気持ちとしては捨てていないが、選択肢ができていない。だから、今回の骨太では工程表を示していない。 官僚では絶対できないセンターピンになるようなものをまとめた。「政策実例」は決まったことではない。議員がアイデアとして出したもので、まだまだ議論の 余地がある。
 -公約達成の可能性は。
 橋下氏 まずリーダーが人事権、予算権、組織編成権を握らないと組織は動かない。それを内閣に一元化するところからスタートする。霞が関は動かざるを得なくなる。
 -原発政策は争点か。
 橋下氏 具体的なプランを出せば争点化になる。しかし、誰もプランを出していない。(鳩山由紀夫元首相が前回衆院選前に約束した)米軍普天間飛行場の県外移設と同じ問題になる。何年後に(原発)ゼロにするかは絶対に争点にならない。
 -政策実例は公約ではないのか。
 橋下氏 そうだ。メディアは消費増税を一切批判をせずに『やれ』と言った。公約をどこまで重要視しなければいけないのか。何で(詳細を)詰めなければいけないのか。大号令をかけ、官僚に複数の案を作らせ、選択するのが政治の役割だ。
 -政権を取った場合、誰を首相にするのか。
 石原氏 分からない。選挙の結果で強力な二極になれば、影響力を持つ。私は高齢だから、いっぺんにそんなものになれるわけがないし、なるつもりもない。
 橋下氏 思いはあるが、言えない。
 -維新の候補者は160人程度にとどまりそうだが。
 橋下氏 みんなの党の渡辺喜美代表と(衆院選投開票日の)12月16日に向けて完全に連携していきましょうと言っている。自民党、民主党、日本未来の党、僕らで分かれつつある。みんなの党の議席も合わせて見てもらいたい。
 -議席獲得目標は。
 橋下氏 候補者全員だ。(2012/11/29-20:26)

 

 

「賃金足りない部分は公が面倒みる」橋下・維新代表代行

橋下徹日本維新の会代表代行 朝日新聞 2012年11月30日12時30分

 (政権公約『骨太2013~2016』に掲げた『最低賃金制の廃止』について)働く場を確保しようと思えば、賃金は企業ごとの経営状況に応じて賃金の水準は上下せざるをえない。たとえ最低賃金をある一定の額、少しでも賃金を払ってくれるなら、企業活動に任せて、最低の生活保障は 国がきちんと保障する。今は企業に最低賃金というハードルを課して、それを出せない企業とかは、本当ならあと2人も3人も雇えるのに1人しか雇えない、と なってしまう。企業活動の中で、出せる賃金、雇える人数をきちんと決めてもらって、できるかぎり多くの雇用を生み出してもらいたい。

 ただ、最低賃金を撤廃したからどれだけ低い賃金になってもいいのか、と言ったらそうではなくて、足りない部分は公が面倒をみていく。何も国民のみなさん に安く働けということではなくて、まず企業が出せる賃金はできる限り出して、雇用も生んでもらう。最低賃金といっても、低すぎたら労働者は来ない。

 たとえ1人、2人を雇うビジネスでもいいから、企業活動を国民の皆さんにやってもらう。ただ、賃金をもらって、あまりにも低すぎて生活できない部分は公が生活を保障してあげる。この二つのミックスでやらないと、社会保障なんかもたない。(大阪市役所で記者団に) 

 

 

毎日新聞 2012年12月04日 20時31分(最終更新 12月04日 20時44分)

 日本維新の会が衆院選公約の付属文書・政策実例に掲げた「最低賃金制の廃止」を、「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」に改めていたことが分かった。野田佳彦首相が「格差拡大の政策」と指摘するなど各党から批判が相次いだことから修正したという。

 維新が先月29日、公約「骨太2013−2016」とともに発表した政策実例で、最低賃金制度の廃止を 明記する一方、最低限の生活を保障するために一定の現金給付を設けることを掲げていた。浅田均政調会長(大阪府議会議長)は4日、記者団に「誤解を生まな いように文言を変えた」と説明した。【平野光芳】


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「最低賃金制の廃止」は、 (H.KAWAI)
2012-12-06 09:34:40
○4日には早々と撤回したそうですよ。「維新」の「政策」ってマトモに批判しても骨折り損のくたびれ儲けになるだけなんですよね。
○橋下の「政策」って全部が思い付きとパクリとから成っていて、思い付きは精査すれば殆どがボツになるような粗雑なものだし、パクリはとうに破綻したもの許りだし、到底マトモな批判に耐えるようなものじゃないんですよ。
○その「最低賃金制の廃止」だって、それをやったら、賃金は生活保護水準を遥かに下回るようなものになって、更なる生活保護受給者の増加を招くだけなんですよね。
○だから、慎太郎氏が先月30日の記者会見で突っ込まれて、否定的な見解を言わざるを得なくなって、竹中が書いたと責任逃れをしたんですね。
○但し、竹中本人は会社のHPで「最賃廃止を主張したことも考えたこともない。」と言っているそうなので、じゃあ誰がってなるんですが、権限も責任も分からない「維新」の事ですから、どうせうやむやになるんでしょう。
返信する
転載させていただけませんか? (堺からのアピール事務局・前田純一)
2012-12-06 09:40:12
すばらしいこの論考を弊blogに転載させていただくことをお許しいただけないでしょうか?もしご承諾いただけるようでしたら、厚かましいお願いで誠に恐縮ですが、メールにてご一報いただけると幸いです。
QYD04504@nifty.com
返信する
↑「撤回」じゃなくて (H.KAWAI)
2012-12-06 16:45:03
○本当は「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」だそうです。尤もこれは表現の違いに過ぎないので、実質的に「廃止」と考えて間違いではありませんが、念の為。
○又、この件については内田樹先生が適切なコメントをしておられる事を付け加えておきます。
返信する
Unknown (kei)
2012-12-06 19:03:47
富裕層は増えているというのに、何故金持ちからでは無く、貧乏人から奪い、更に貧乏人を増やそうとするのか。
政治とは何か、公平とは何かが、橋下氏には解っていない。
ガンジーの格言でも見直して、個人の野心や鬱憤晴らしの為に政治を利用しないで欲しい。
返信する
Unknown (Unknown)
2012-12-12 13:45:22
最低賃金廃止等の労基法改正を目論む橋下の指南役である新自由主義者の竹中平蔵は産経新聞の紙面で「国民生活を重視して子ども手当などの政策にお金を使う政党は消費税を何%まで増やす気か」と言っていたが、そもそも日本の財政赤字が爆発的に増えたのは竹中率いる小泉政権からだ。
小泉政権からあと日本の格差拡大・閉塞感が感じるようになった。その上、何で公共事業が減っているのに赤字が増えるのか疑問に思っていたが、なんとアメリカの国債を買い続けているらしい。日本の国民が莫大な借金までして、今まで公共事業で地方に回していた税金を無くし、代わりにアメリカが経済危機に陥らない様に買い支える。
閉塞感と格差拡大、財政赤字を作り上げた張本のクセになんとも卑劣な国賊だな竹中は。また、その継承者である橋下維新はTPP参加を含め訳のわからん規制緩和の改革を唱え、性懲りもなく国民を苦しめるのか。

橋下のニコニコ顔にまだ騙されて支持している人間も多いが、橋下は平気で嘘をつくし、裏切ることも平気な狡猾な奴だということがまだ判らんか。  

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