大阪・橋下市長“いじめより重い”

1月8日 18時6分
大阪・橋下市長“いじめより重い”

大阪市の橋下市長は、市の教育委員との会合に出席し、市立桜宮高校の男子生徒の自殺について、「重大な要因に体罰があったと認めざるをえず、いじめによる自殺よりはるかに重い」と述べました。

会合では、初めに市教育委員会の長谷川委員長から、今回の男子生徒の自殺について経緯が報告されたあと、出席者全員で黙とうしました。
このあと、橋下市長が今回の自殺について、「重大な要因に体罰があったことは認めざるをえず、いじめの自殺よりはるかに重い、とんでもない事案だ」と述べました。
そのうえで橋下市長は、「教育委員会と共同で外部監察チームを立ち上げて、徹底的に事実解明をする」と述べ、自殺を巡る事実関係を徹底的に調査する方針を示しました。
また、橋下市長は、「子どものSOSを受け止めるチャンネルを直ちに立ち上げてほしい」と述べ、教育委員会に対し、子どもが悩みを相談できる窓口を早急に設けるよう指示しました。
一 方で、橋下市長は、「体罰を禁止するといったスローガンだけで、現場をコントロールするのは無理だ。これだけ『体罰はダメだ』と言っても出てくるのは、学 校や先生の事情もあるかもしれない。どんなときに体罰をしてしまうのか、真正面から分析をして考えていかなければいけない」とも述べました。
教育委員会では、今後市立学校の校長らを集めた緊急の会議を開き、今回の自殺の経緯を説明するとともに、部活動での体罰をなくすよう徹底することにしています。



<大阪・高2自殺> 橋下市長、直轄100人態勢で調査へ

橋下徹大阪市長=三浦博之撮影
 大阪市立桜宮高校の生徒(17)が体罰を受けた後に自殺した問題で、橋下徹市長は10日、100人態勢で市長直轄の調査チームを作る方針を表明した。学校や市教委の対応について「意識が甘すぎる」と批判。また、顧問の体罰を指摘する公益通報があったのに生かされなかったとして、公益通報制度を見直す考えも示した。

 橋下市長は体罰や謝罪を巡り、学校側と遺族の説明が食い違うことについて「遺族の求めるような対応策が取れていない」と問題視。全ての市立小、中、高校を対象とする体罰調査について「僕が陣頭指揮を執らないと駄目」と話し、100人態勢の直轄チームを作る考えを示した。

 また、11年9月に顧問の体罰を指摘する通報があったのに、調査までに1カ月かかったり、顧問から15分間しか聴取しなかった点についても「許されない」として、制度見直しを表明した。

 橋下市長は、生徒が自殺前日に顧問から30~40回顔をたたかれた、と両親が証言していることについて、「事実であれば許されない。犯罪だ」と激怒。一方で、「子どもに対して手をあげることは場合によってはあり得る。僕も体育会をやってたから分かるが、試合中にビンタすることはある」とも話している。【林由紀子】
 
 
 

橋下市長が12日にも遺族宅訪問へ「遺書も拝見したい」

2013.1.11 02:02 体罰問題
大阪市立桜宮高の自殺・体罰隠蔽をめぐり、緊急の幹部会議に臨む橋下徹市長=10日午後、大阪市役所

大阪市立桜宮高の自殺・体罰隠蔽をめぐり、緊急の幹部会議に臨む橋下徹市長=10日午後、大阪市役所

 大阪市立桜宮高校2年の男子生徒=当時(17)=が自殺した問題を受けて、橋下徹市長は12日にも大阪府内にある生徒の自宅を訪問し、謝罪する方針を固めたことが10日、学校関係者への取材で分かった。

 橋下市長は同日開かれた記者会見で「(遺族と)お会いします。ご了承を得た上で遺書も拝見させていただきたい」と述べていた。

 できるだけ早く面会したいという橋下市長の意向を踏まえ、市教委が遺族側と、今週末の12日を中心に調整しているという。

  捜査関係者によると、生徒は昨年12月22日、自宅で家族宛ての遺書をしたためた。「長い間バスケットボールをさせてくれてありがとう。迷惑をかけること は分かっていますが、死ぬことに決めました」と記載。翌日の早朝、自宅2階で制服のネクタイで首をつっているのを母親が発見した。



毎日新聞 2013年01月10日 02時30分

 大阪市立桜宮高校の2年男子生徒が自殺し、バスケットボール部顧問の男性教諭から体罰を受けていたと記した手紙を残していた。男子生徒は顔面を平手打ちされるなどの体罰を繰り返し受けていたという。スポーツ指導の名の下に行われていたとしても、暴力を伴う体罰は実質的には虐待であり、絶対に許されない。体罰の実態や自殺との関連を徹底的に調査し、再発防止策を確立しなければならない。

 男子生徒が残した遺書などには、顧問による体罰や、主将としての責任に苦しんでいたことが書かれ、体罰が自殺の引き金になった可能性が高い。

 市教委による調査では、他の部員へのアンケートで「かなりの頻度で体罰があった」との回答があり、体罰が常態化していたことが明らかになっている。自殺前日の練習試合では本人や他の部員にミスがあると、顧問が男子生徒の頬をたたいていたのを多数の部員が目撃していた。

 バスケット部での体罰の情報は11年9月に市教委に寄せられていたが学校側は「体罰はなかった」と報告していた。調査は各運動部の顧問教諭らに尋ねるにとどめ、生徒への聞き取りなどは行わなかったという。これでは実態が明らかになるはずはない。きちんと調査をしていれば自殺という最悪の事態を防ぐことはできたはずだ。学校と市教委は責任を重くかみしめなければならない。

 桜宮高は五輪メダリストやプロ野球選手も輩出してきたスポーツ強豪校だ。男子バスケットボール部も過去5年で3回インターハイに出場するなどの成績を上げている。一方で過去にも男子バレーボール部で顧問の男性教諭による体罰が発覚し、停職3カ月の処分を受けている。

 スポーツ強豪校では特に、成果を出すために体罰が広く行われ、厳しい上下関係の中で「愛のムチ」として見過ごされてきた傾向がある。しかし、こうした体質は根本的に改めなければならない。

 教育現場での体罰は学校教育法で全面禁止され、文部科学省は06年度に「いかなる場合も行ってはならない」と通知している。児童生徒の心身を傷つけたり、いじめや暴力容認の風潮を生んだりする恐れがあるなど、重大な負の影響があるためだ。

 だが、実際には体罰は減少せず、文科省の統計では90年代後半以降、体罰で処分された教職員は年間400人前後で推移している。大阪だけでなく、全国的に体罰を容認する風潮が根強く残っているのが現実だ。

 体罰を根絶するには社会全体での取り組みが必要だ。教育委員会や教師だけでなく保護者も強い意思を持って対応していかねばならない。