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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

放射能汚染水が減らない!福島原発事故の原子炉冷温停止・工程表ステップ2の年内前倒しは楽観できない

2011年09月20日 | 福島原発事故

 

 野田首相は、東京電力福島第1原発の原子炉の冷温停止を目指す「ステップ2」の終了時期について、「何とか年内に実現できるよう、目標前倒しに頑張っている」と述べ、来年1月の目標期限を前倒しして年内に達成することに意欲を示し、細野豪志原発担当大臣は、ウィーンで開かれているIAEA=国際原子力機関の総会で、この方針を、9月19日に公表してしまいました。



 

 末尾に添付したように、読売新聞は楽観的にこう報じています。

放射性物質の放出量も激減した。東電によると、8月上旬の原発からの放射性物質の放出量は、3月の事故直後の1000万分の1以下に減少。敷地境界の被曝推定量は年間0・4ミリ・シーベルトと、工程表の目標値を達成した。」

 けれども、実際のところは原子炉建屋からの放射性物質放出は依然続いているわけで、汚染水を減らす取り組みも思うように進んでいません。

内部被曝の恐怖33 工程表ステップ1達成は大嘘 今でも毎時10億ベクレルの放射性物質放出 


 確かに、各号機の圧力容器底部の温度は20日現在、1号機82度、2号機111度、3号機88度。1号機は7月20日以降、3号機は今月4日に初めて100度を切りました。政府は100度以下になれば、放射性物質を含む蒸気の発生を抑制できるとしています。


 しかし、冷温停止は健全な炉心(圧力容器)を100度以下に冷却するもので、メルトダウン(炉心溶融)で燃料の一部が圧力容器から格納容器に溶け落ちてしまっているのに、炉心の温度だけ下がっても危機が去ったことにはなりません。

 政府は「放射性物質の放出が管理・抑制されている」ことを、工程表のステップ2終了の条件にしていますが、1、3号機が100度以下になっても放出は続いているわけです。東電によると、第1原発からの放射性物質の放出量(9月1~15日)は毎時2億ベクレルです。

 読売新聞は、これを、3月に比べて1000万分の1だと喜んでいますが、比べている対象が水素爆発直後の福島原発なのをわすれてはなりません。

 むしろ問題は炉心の温度が下がった割りには、毎時2億ベクレルという物凄い量の放射性物質が放出され、日本列島に降り積もっていると見ることも出来るわけです。

 これでは除染しても除染しても切りがないです。

農地・土壌のセシウム汚染濃度マップ公表 チェルノブイリ移住基準超 作付け制限区域外から高濃度検出 


 現に原発敷地境界での被ばく線量は推定で年最大約0.4ミリシーベルトで、8月の前回発表時と同レベルで下がっていません。

 また、9月19日、福島第1原発2号機の取水口付近で採取した海水 から検出された放射性物質は、1リットル当たりでセシウム134が国の基準の7.3倍の440ベクレル、セシウム137が5.9倍の530ベクレルでし た。

 一方、3号機の取水口付近では、1cc 当たりでセシウム134が基準の9.8倍の590ベクレル、セシウム137が基準の7.9倍の710ベクレルと、2号機の3号機の周辺はともに大きな減少はなく、横ばいの傾向が続いています。


 さらに、ちっとも放射能汚染水が減らない!という問題があります。

 もともと1号機から3号機の原子炉を冷却させるため、一日550トン余りの水を注入していますが、こうした冷却水が高濃度の汚染水とな り、原子炉建屋やタービン建屋などにたまっているわけです。

  5月末に10万5000トンあった高濃度汚染水のうち、東電はこれまでに約9万トンの汚染水を処理しました。ところが、汚染水は9月13日現在、10万2000トン。差し引き8万7000トンが新たに加わり、3000トンしか減っていないことになります(涙)。

 これまで処理した量に比べて汚染水の減り方があまりに少ないため、東京電力が分析したところ、壁のひび割れなどから一日200トンから500トンほどの地下水が、建屋側に流れ込んでいる!ことが分かったのです。

 地下水は雨水がしみ込んだものと考えられていますが、建屋の地下に流れ込んでしまうと高濃度の汚染水と混ざり、結果的に汚染水全体の量がほとんど減らないことに なります。


 現在、放射能汚染水の浄化についてはフランス+アメリカの装置と東芝などの「サリー」の二本立てを合わせて最大1日当たり1000立方メートルの処理をしていますが、特に前者は何度も故障しては停止しており、今後も水位を下げられるか予断を許しません。

 そして根本的な問題としては、汚染水をフィルターで除去した後にたまった超高濃度放射性物質をどうするのかが決まっていないのです。


福島原発事故 東芝の放射能汚染水浄化装置 サリーちゃん頑張れ!

 

 

だめかあ!?放射能汚染水浄化わずか1時間半で停止 循環注水冷却継ぎ手から漏水!あと100個同じ継ぎ目

 

 

 炉心を突き抜けた燃料の処理、原子炉冷却、放射性物質放出防止、放射能汚染水処理、放射能汚染土壌の除染の問題、海洋汚染の問題など、福島第1原発事故処理に楽観できる要素など何一つありません。

 外国に威勢のいいことを言うのではなく、冷静に事実と向き合ってこつこつと努力する姿勢を見せて欲しいものです。

出口が見えない放射能汚染土壌の除染問題 けれども安易な「解決」より問題を真摯に考え続ける誠実さを

究極の環境破壊で世界中にヒバクシャを作る福島原発事故 そしてセシウム137は30年後に戻ってくる

 

 

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 東京電力福島第一原発1~4号機の原子炉建屋やタービン建屋地下に、一日数百トンの地下水が流入している可能性のあることが分かった。汚染水処理 の実績などから計算すると、五万トン強まで減っているはずだが、実際には八万トン強も残る。東電も地下水流入の可能性を認めており、地震で建屋地下の壁が 損傷し、流入していることが考えられる。今後の収束作業に影響が出そうだ。 

 建屋からくみ出した汚染水の移送量や原子炉への注入量など東電が公表したデータを本紙が集計したところ、約十万トンあった汚染水は、十三日時点で約五万千六百トンにまで減っているはずだった。

 しかし、実測の地下水位から東電が推計した汚染水残量の最新値は約八万千三百トン。移送量などから逆算した値とはほぼ三万トンの開きがある。

 東電はこれまで、汚染水がなかなか減らない理由を、雨水の影響と説明してきた。福島第一周辺では、七月以降の三カ月間に三回まとまった雨が降って おり、一部は屋根の損傷部などから建屋に流れ込んだとみられるが、水位の変動は小さく、三万トンの差を説明できるほどではない。

 建屋のひび割れなどから地下水が流入している可能性は、以前から指摘されていたが、あらためてその可能性が高まった。東電に本紙の計算結果を示すと、「日量百トン単位でわき出ていると思う」との回答があった。

 地下水流入が事実なら、汚染水処理はさらに膨大な量になるばかりか、原子炉への注水量を絞る必要があるなど、事故収束に向けてさまざまな影響が出ると予想される。

 

原発収束、順調さ強調…放射性物質が大幅減

 細野原発相が19日、国際原子力機関の年次総会で、東京電力福島第一原発の事故収束に向けた工程表のステップ2の達成時期を来年1月中旬から年内 に前倒しすることを明言したのは、原子炉の「冷温停止状態」に導く作業が順調に進んでいることを、国際社会にアピールする狙いがある。

 工程表のステップ2の目標は、避難した住民帰還の目安となる「原子炉を冷温停止状態に持ち込むこと」。原子炉底部の温度を100度以下にするだけでなく、放射性物質の放出量の大幅な抑制が二つの柱だ。

 東電によると、原子炉底部の温度(19日午前11時現在)が100度以下になったのは1号機と3号機。温度が高めの2号機は、今月から注水系統を、3号機同様2系統にし、原子炉への注水量も増やしている。

 その背景には、汚染水循環処理システムの稼働率向上がある。従来の米仏2社の装置に、8月中旬から東芝製の「サリー」が加わった。今月上旬、建屋地下の水位が、大雨でも海などに流出しないという目標の水位(海面から約3メートルの高さ)を下回った。

 放射性物質の放出量も激減した。東電によると、8月上旬の原発からの放射性物質の放出量は、3月の事故直後の1000万分の1以下に減少。敷地境界の被曝(ひばく)推定量は年間0・4ミリ・シーベルトと、工程表の目標値を達成した。

(2011年9月20日22時24分  読売新聞)

 


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