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こういう社会派ブログを書いていると、100か0か、白か黒しかないというような思考に陥りがちなのですが、世の中、ほんとうはその間の方がずっと広かったりして、そこに落としどころを見出していくことがすごく大事だったりします。
意外かもしれませんが、裁判も最後の判決まで行くことはまれで、当事者双方が歩み寄って100%ではないけれども7割がた満足して合意する和解の方がずっと多いのです。
さて、特定の民族や人種に対して差別をあおる、いわゆる「ヘイトスピーチ」を解消するための法案が、2016年5月12日、参議院法務委員会で採決され、全会一致で可決されました。
これでヘイトスピーチ規制法案は13日に参議院本会で可決された後、衆院に回されますが、参院の委員会で全会一致だったのですから、今国会で成立する見通しです。
この法案ではヘイトスピーチについて
「生命や身体に危害を加える旨を告知し、著しく侮蔑するなど、外国出身者であることを理由に、地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動」
と定義しています。
たとえば、レイシストのデモの中に
「××人、母国に帰れ。殺すぞ」
というプラカードがあったとしても、特定人を指していないので、名誉毀損や脅迫ということにはできなかったのですが、これはまさにヘイトスピーチであるということになります。
在日の方々住んでいる街にこんなことを叫びながらデモ行進してくる集団が入ってきたら、身の危険を感じざるを得ないが、それでも民法や刑法など既成の法律では個々人の法益が危険にさらされていないと規制できない。
その上で、この法案は国や地方自治体に対してヘイトスピーチの解消に向け、相談体制の整備や人権教育の充実などを求めています。
一方で、この法案には具体的な罰則などは盛り込まれませんでした。
これは人種差別と闘ってきた方々にとっては不満が残るところかもしれませんが、民事罰、行政罰、刑事罰をかけるということになると、どうしても表現の自由に対する規制立法となり、拡大適用の問題が出てきます。
まずは、ここから出発するのがいいと思います。
法案をめぐっては自民・公明両党と民進党が5月11日、
「法律の施行後もヘイトスピーチの解消状況を見て対策を再検討する」
ことを附則に加えることなど修正協議で合意しました。
これも本当は3年後に見直すというような期限を切った条項の方が良かったのですが、見直し条項が入ったこと自体は評価すべきでしょう。
野党がまず人種差別を規制する法律を出して、自公両党がヘイトスピーチに限ったこの法案を対案で出してきて、与党案が修正のうえ成立するというのが、この間の流れでした。
なにしろ、政権与党の自民党の幹部たちが、ヘイトスピーチと人種差別の老舗である極右団体「在特会」(在日特権がどうのこうの会)との蜜月関係を指摘されるような状況ですから、曲がりなりにもヘイトスピーチを「悪しきもの」とする法律ができるだけでも本当に良かったです。
頑張ってこられた方々の努力を多とし、お疲れ様でした、もう一息ですと申し上げたいです。
【祝】稲田朋美自民党政調会長がまた敗訴。「安倍とシンパ議員が紡ぐ極右在特会との蜜月」は真実の論評。
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ヘイトスピーチ規制法案が成立予定となったのを歓迎する。ただし、「適法居住要件」は削除すべき。
在特会の徳島教組襲撃事件。高裁が支援者日本人への攻撃でも人種差別と認定、地裁の倍額の賠償命令。
安倍自民党政権がヘイトスピーチ社会を作っている。安倍・麻生・伊吹・下村・高市・新藤・稲田・萩生田。
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ヘイト・スピーチとは何か (岩波新書) |
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差別と侮辱、排除の言葉をマイノリティに向けて路上やネット上で撒き散らす―ヘイト・スピーチとは差別煽動である。差別も「表現の自由」として、当事者の 深刻な苦しみを放置するのか。民主主義社会をも破壊する「言葉の暴力」と向き合う国際社会の経験と制度を紹介し、法規制濫用の危険性も考えながら、共に生きる社会の方途を探る。
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ネットの中で醸成された右翼的言動、いわゆる「ネトウヨ」が、街頭デモにまで進出してきたのは何故なのか? その代表格とされる「在特会」とは一体、どんな組織なのか? デモに参加するのはどんな人たちなのか?
こうした幾つもの疑問に答えるのが、本書。在特会問題を取材しつづけ、2012年には『ネットと愛国』で講談社ノンフィクション賞を受賞した実力派ジャーナリストによる、「ヘイトスピーチ」問題の決定版!
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ヘイト・スピーチの法的研究 |
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「差別的表現」と「ヘイト・スピーチ」は同列に扱ってよいのか。ジャーナリズム、社会学の知見を前提に、憲法学と刑法学の双方からその法的規制の是非を問う。有害性の内実を読み解く試み。
「めでたさも中くらいなり、おらが春」とは小林一茶の句ですが、在日の方々の喜びの声を聴くと、これはかなりめでたいのではないでしょうか。
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参院委で可決、今国会で成立へ
毎日新聞2016年5月12日 17時03分(最終更新 5月12日 17時20分)
法案は、適法に日本国内に居住する日本以外の出身者や子孫を保護対象とし、「差別意識を助長する目的で、公然と生命や身体、名誉、財産に危害を加える旨を告知する」ことや「著しく侮蔑する」ことを不当な差別的言動と定義。その上で、国や自治体には相談体制の整備や、教育、啓発活動の充実を求めている。一方で「表現の自由」との兼ね合いから、禁止規定や罰則は盛り込まなかった。【鈴木一生】
ヘイト対策法成立へ 差別的言動に「著しい侮辱」も
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与野党は十一日の参院法務委員会理事懇談会で、人種や民族への憎悪をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)への対策法案について、与党案を一部修正することで大筋合意した。十二日の同委で全会一致で可決し、十三日にも参院本会議で可決した上で衆院に送付。今国会で成立する見通し。
与党案はヘイトスピーチについて、日本以外の国・地域の出身者とその子孫に対して「地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動」と定義。こうした言動は「許されない」とし、国には解消策を進める責務、地方自治体には努力義務を課す内容。憲法が保障する表現の自由を踏まえ、罰則規定は置かない。
これに対し、別の対策法案を提出していた野党は、与党案について(1)ヘイトスピーチを明確に禁じていない(2)差別的言動の定義が限定的-などと問題視。調整が続いていた。
修正は、差別的言動の定義を広げる内容。具体的には、差別的言動を例示した部分について「公然と生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加えることを告知」する行為のほかに「著しく侮辱する」を新たに追加する。ヘイトスピーチを明確に禁じる修正は見送られた。このほか、法施行後、ヘイトスピーチの解消状況を見て対策を再検討することを付則に加える。
十二日の委員会採決では、あらゆる形態の差別を許さず、インターネット上の差別的言動の解消にも取り組むとした付帯決議も採択される。 (大杉はるか)
参院委で法案可決へ ヘイト対策動いた一筋の光だ 体験を作品化、在日の2作家「ようやく」
毎日新聞2016年5月12日 東京夕刊
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横浜市に住む韓国籍の木下繁さん(48)は昨年7月、小説「もぐらとキムチ」(幸文堂出版)を出版した。物語は、中年になった主人公の男性がヘイトスピーチデモに遭遇する場面から始まる。時代設定は昭和40年代に切り替わり、小学生の男性が転校先で「在日」であることを隠そうと四苦八苦する姿が描かれる。コメディータッチな描写で差別とは何かを考えさせるストーリーとなっている。
2013年に東京・大久保で繰り返された「在日」に対するヘイトスピーチを見たことが執筆のきっかけとなった。ヘイトスピーチや排外主義に批判的な書籍の多くは専門的だったり、悲惨な体験がつづられたりしている。木下さんは「子供でも分かるような小説」を目指したという。対策法案成立への流れができたことについて、木下さんは「ようやくという思い。成立後に社会がどのように変わるのか見守りたい」と話す。
東京都在住の在日コリアン作家の深沢潮(うしお)さん(49)は昨年11月、小説「緑と赤」(実業之日本社)を出版。高校生の時に母親が韓国籍であることを知らされた女子大学生がヘイトスピーチデモに打ちのめされる様子を描いた。
深沢さん自身、主人公と同年代の2人の子を育てる母親だ。「差別を受けるのは生身の人間。ヘイトスピーチが心身に深刻なダメージを与えることを知ってほしかった」と執筆の理由を語る。
法案の正式な名称は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」。国や自治体には不当な差別の解消に向けた施策を講ずる責務があることを明記した内容で、罰則規定などはない。深沢さんは「十分とは言い難いが、差別を許さないという認識を社会が共有できるようになる」と語る。
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でもそんなの20世紀まででしたよ。
少なくとも小泉政権以降の自民党はもはや改良主義じゃないですよね。
お!皆さんには見えませんが、なんとコメントを入力する際の数字4桁が、
1234になってる!
う~~~ん、偶然じゃない!
同じく、「外国人への差別はダメ!」の裏返しは、「日本人への差別は構わない!」となり、差別の【仕返し】が始まるような気もします。
まあ、罰則なしの法案を作って、その後様子を見ながら変えていくようですから、「その辺を慎重に判断して行こう」ということだと思います(思いたい)が。。。
電車の痴漢問題でもそうなんですが、痴漢する奴のせいで私たち男性全員が肩身の狭い思いをさせられるのは、非常に腹立たしいのと同様に、ヘイトスピーチ団体のせいで、私たちの言論の自由が脅かされることも、やはり腹立たしく思う。
加害者のせいで、被害者が生まれ、その被害を食い止めるために、新たに被害者が生まれるという、この無限ループとも言える構造は、何とかならないものだろうかと頭を悩ませるも、答えが出ず、非常にもどかしく、難しい問題だ。
極めて不平等かつ差別的な法案です。
『日本人は日本から出て行け』
こう外国人に言われても規制の対象にならない
法的根拠を作ったのですから。
基本的人権にも抵触する内容だと思いますが
弁護士のお立場から見て、何ら支障はないと考えますか?
ただ、ヘイトスピーチは「憎悪に基づく差別的な言動」ですよね。「特定の人種や民族への憎しみをあおるような差別的表現」なのでしょうか?
今回、対策法には日本以外のとありますから「中世ジャップランド」「倭猿」みたいなものはきっと規制の対象外ですね。残念です。
日本人に対しても外国人に対しても相手を貶める発言が規制のもと、個々人の心情のもと、いつかヘイトスピーチが無い世の中が来ることを願っています。
それは、目的として第一条に書かれたとおりです。
「(目的)
第一条 この法律は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であることに鑑み、その解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的とする。」
参議院 議案情報 議案等のファイル
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/190/meisai/m19007190006.htm
従って、基本法理念に必要な改正を加えて、今後の具体的施策を充実させるべく努めれば良い訳です。
法律の制定後には、各地方自治体に依る具体的な条例に依る規制等が如何に為されるかを注視しなければならないでしょう。
更に、行政のみに任せるのではなくて、被害者側が積極的に民事訴訟に訴えて、似非右翼に被害を償わせることが重要でしょう。
ヘイトスピーチは、高くつくことを思い知らせれば良いのです。
日本国内において、「日本人」という民族グループに対する差別なんてあり得るでしょうか?
「日本人」という言葉が「民族」を表す言葉として考えた場合、日本人は日本国内最大の多数派ですし、「日本人」という言葉が「日本国籍を有する者」を表す言葉として考えたとしても、日本国籍を有する者は有権者で選挙権があります。
そんな「日本人」を、どうやって少数派の民族や選挙権のない外国人住民が差別することができるんでしょうか?嫌うことはできますが、「嫌う」ことと「差別」は違いますよね。差別するというのは実際に不利益な扱いをすることです。
日本人の中にも女性や被差別出身者、障がい者、沖縄民族、アイヌ民族などのマイノリティがいて、それぞれに対する差別はありますが、そのことをもって「日本人(という民族グループ)への差別」とは呼ばないと思います。それらはそれぞれ「女性差別」「差別」「障がい者差別」「沖縄差別」「アイヌ差別」と呼ばれますので。
>こう外国人に言われても規制の対象にならない
実際に、「日本人は日本から出て行け」と主張している外国人団体はありますか?
日本国内で「日本人は日本から出て行け」というデモが行われた事例があれば挙げてみてください。
日本人と外国人の人口比はご存知でしょうか?
仮に、外国人から「出て行け」と言われて日本人が脅威に思うような人数がいるとは思えません。