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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

「刑訴法改正、捜査当局に新たな武器 冤罪防止へ一歩前進 」(日経)←実は司法取引はえん罪の温床!

2015年08月05日 | 刑事司法のありかた

 

 取り調べの録音や録画など「可視化」を義務付ける、通信傍受=盗聴を拡大する、司法取引を導入するなどの刑事訴訟法「改正」案を巡り、与党と民主党、維新の党は、政府案を一部修正することで合意しました。

 本日、2015年8月5日の衆議院の委員会で可決される見通しです。

 与野党の修正合意では、メールや電話などの傍受=盗聴で、政府案で不要としていた通信事業者など第三者の立ち会いについて、事件と関係しない警察官を立ち会わせることにしました。

 もともと、盗聴の拡大に反対していたのに、「事件に関係ない」警察官が立ち会ったら違法捜査の歯止めになるだなんて、どんだけお気楽と言うか、なれ合いの「修正」でしょうか。

これまでのように通信業者の立ち会いもなく、しかも一般刑法犯のほとんどを占める窃盗や詐欺、傷害まで盗聴できるなら、どんな捜査でも盗聴できてしまう。



 また、他人の犯罪を証言すれば見返りを得られる司法取引については、無関係の人に罪をなすりつけることを防ぐため、虚偽の供述や偽造証拠の提出に対し、5年以下の懲役の罰則も盛り込むというのは当然ですが、検察官と容疑者などの協議に例外なく弁護人が関与することで「透明性を図る」だなんてナンセンスでしょう!

 いや、あのね、司法取引の問題は、Aという被疑者の共犯者のBが自分の罪を免れるために、Aを陥れるのが問題なんでしょうが。

 Bの弁護人が取引に立ち会うのは当たり前だし、それでもってAに対する冤罪を防ぐことになんてなりませんよ!

司法取引には2種類あることがわかる。これがおとり捜査と結びつくと、あとで無罪放免になる「共犯者」がそそのかして、犯罪をする気がなかった人に「やる気」を起こさせ捕まえることさえ可能になる。

 

 

 そして、取り調べの「可視化」については、録音録画の対象の事件拡大は見送られました。

 そもそも、警察の盗聴に警察が立ち会うのがナンセンスなように、警察の取り調べを警察が録音・録画してもなんら「可視化」=取り調べを目に見えるようにして監視する、ことになりません。

刑事司法「改革」1 毒まんじゅうを丸呑みした日本弁護士連合会は、あの上西小百合議員より劣っている。

 しかも、

「可視化義務付けの対象は、裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件で逮捕・勾留された事件だけということで、重大事件や特捜部が捜査する事件は含まれるものの、その対象事件の件数は年間10万〜11万件程度ある逮捕・勾留事件の3〜4%でしかないというんです。

 そうすると、残りのほとんどの97%の事件、その中には冤罪が多いとされる痴漢事件や、鹿児島県議選を巡る買収があったとして13人が起訴され、亡くなった方お一人を除いて12人全員が無罪となって確定した「志布志事件」のような、警察が手がけた公職選挙法違反事件は可視化の対象にならないことになります。
 
 こうなると、もうこれは警察庁、法務省に軒を貸して母屋をとられたと言うべきで、この刑事司法「改革」関連法案を成立させる意味は全くないと言えるでしょう。」

刑事司法関連法案の通信傍受法=盗聴法拡大、司法取引はもちろん、中途半端な取調べ可視化にも反対する。


 

 これだけ、酷い刑事訴訟法「改正」案が今日、衆議院の法務委員会で「修正」されて可決され、今の国会で成立する可能性が高いのです。

 法案を出した法務省や与党、「修正」に応じた共産党以外の野党4党もひどいものですが、これを手放しで称賛する日本経済新聞には呆れます。

 たとえば、司法取引については

「導入される司法取引は、逮捕・起訴された容疑者や被告が他人の犯罪を明かした際に、起訴の見送りや求刑の軽減などの見返りを受けられる仕組み。汚職や詐欺、横領などの経済事犯や暴力団などの組織犯罪が対象になる。共犯者からの情報を得て、主犯格の検挙につなげる狙いだ。」

としか書いていなくて、法案提出者の狙いばかりで、報道機関としてのチェック機能が全く果たせていません。

 刑事手続きは、普段でも人権侵害の危険性が大きいわけですし、有事には国民の弾圧にも使われかねないものです。

 戦争法案の陰に隠れて、こんな悪法が通ろうとしていることにも断固反対しなければ。

 

 

ミサイルは武器でないと言われちゃうし、ほんとに憂鬱。

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刑訴法改正、捜査当局に新たな武器 冤罪防止へ一歩前進 

2015/8/5 0:36
日本経済新聞 電子版

 刑事司法改革関連法案が成立すれば、強引な取り調べによる冤罪(えんざい)防止とともに、捜査当局に新たな“武器”がもたらされる。

 導入される司法取引は、逮捕・起訴された容疑者や被告が他人の犯罪を明かした際に、起訴の見送りや求刑の軽減などの見返りを受けられる仕組み。汚職や詐欺、横領などの経済事犯や暴力団などの組織犯罪が対象になる。共犯者からの情報を得て、主犯格の検挙につなげる狙いだ。

 無関係の人に罪をなすりつけることを防ぐため、虚偽の供述や偽造証拠の提出に対し、5年以下の懲役の罰則も盛り込む。

 取り調べの可視化は、殺人などの裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件を対象に、全過程の録音・録画を義務付ける。ただ可視化の対象事件は刑事裁判全体の3%ほどにとどまる見込みで、さらなる拡大を求める声も多い。

 通信傍受は従来、薬物・銃器犯罪などに限定されていたが、殺人や放火、詐欺、児童買春・ポルノ禁止法違反などに広げる。法案成立後、公布から半年以内に導入される。

 

 

司法取引・可視化成立へ 刑訴法改正、与党・民維が修正合意 

2015/8/4 23:43 日本経済新聞

 自民、公明、民主、維新各党は4日、衆院法務委員会の理事懇談会で、刑事訴訟法改正案など刑事司法改革関連法案について修正合意した。同法案は他人の罪を明かせば見返りに刑事処分が軽くなる「司法取引」の新設や、取り調べの録音・録画(可視化)の義務化、捜査機関が通信・通話の内容を調べる「通信傍受」の対象拡大などが柱。修正合意により今国会成立の見通しとなった。

 4党は司法取引の導入にあたり、捜査機関と容疑をかけられた人が協議する過程に、弁護士が常時、関与する内容を盛り込むことで合意した。協議の記録を捜査機関が作成することも確認した。

 通信傍受では、事後に不服申し立てがあれば記録を閲覧できることを通知するよう規定する。捜査に関与しない警察官が、不適正な傍受を監視する運用でも一致した。

 5日の衆院法務委員会で採決。修正合意した4党が賛成する。通信傍受の拡大などに反発する共産党は反対する見通し。

 関連法案は5月19日の衆院本会議で審議入り。法務委で70時間近く審議してきた。民主、維新両党は通信傍受の拡大限定などを盛り込んだ共同修正案を発表し、与党側と協議していた。

 

 

毎日新聞 2015年08月05日 東京朝刊

 自民、公明、民主、維新の4党は4日、衆院法務委員会で審議中の取り調べの録音録画(可視化)や日本版司法取引の導入などを柱とした刑事司法改革関連法案を修正することで合意した。司法取引の手続きを一部見直すなどの内容。修正案は5日の委員会で可決され、週内に衆院を通過する見通し。司法取引について、野党側は「うその供述で無実の第三者が冤罪(えんざい)に巻き込まれる恐れがある」と反発。修正案には▽容疑者らにとって全く無関係の事件は取引対象から除外する▽取引過程には常時弁護人が関与する−−といった内容が盛り込まれる。

 

 

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1 コメント

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個人的には…… (秘密のテロ子)
2015-08-06 01:34:12
9月あたりから始まるんではないかとおもわれますが。

10月から強制ではないはずないですし。感じ悪いことこの上なし。
対案を出せじゃなくて、泰安にしてみせろ!と言いたいです!

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