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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

日米 「たかって」いるのは富裕層か貧困層か ロムニー米大統領候補の低所得層をたかり屋と呼んだ発言発覚す

2012年09月24日 | 所得の再分配と格差社会の是正

 

 共和党の大統領候補ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が、2012年5月にフロリダ州で開かれた資金集めのイ ベント(非公開)で、「米国民の47%が連邦所得税を払っておらず、政府に依存するのが当然だと思っている層だ」と語っていたことが、9月になって判明し、 国民の半数を見下した発言だとして、あらたな舌禍事件となっています。

 低所得者層は社会福祉に相応する納税をしていないという都市伝説は、アメリカや日本の新自由主義者・小さな政府論者がよく使う言い回しです。

 アメリカでは、確かに連邦所得税に限って言えば47%という数字は間違いではないそうですが、そこでは源泉徴収された給与税、消費税や物品税など、さまざまな形で税を納めている人たちが計算に入れられていないのだそうです。

 米税務政策センターと課税・経済政策研究所のデータによると、国民の28.3%は給与税という形で税金を払っており、その税収は社会保障やメディケア(高齢者医療保険制度)に回されています。ちなみに現役世代なのに所得税を払っていない人々は6.9%しかいませんし、高齢になり仕事を引退したため連邦所得税を払っていないのは10.3%ですが、この人たちも日本の消費税のような間接税は支払っています。

 日本でも生活保護受給者は当然消費税・酒税・たばこ税などの間接税を支払っているし、貯蓄が許されないため所得の全額を消費しており、彼らへの保護費支給がそのまま景気対策にもなっていることが語られていません。

 アメリカも日本も、ロムニー氏や新自由主義者が考えているような「たかり屋の国」ではないのです。

 ちなみにロムニー氏が9月21日に公表した2011年の納税申告によると、ロムニー夫妻の2011年の所得は約1369万ドル(約10億7000万円) で、連邦税の実効税率はたった14.1%だということです。これは、累進課税率の低いアメリカでも、ロムニー氏ら上位1%の高所得者に適用される所得税率をはるかに下回る数字です。

 これは、証券取引による所得税が15%と優遇されていることに加えて、モルモン教に多額の寄付をして寄付控除を受けているからだそうです。

日本からケイマン諸島に個人投資家が15兆円の証券投資 消費税増税より富裕層に富裕税をかけよう

(富裕層の圧力で日米英すべて所得税の累進課税率は下がる一方で、貧富の差が拡大した)

 

 

 ちなみに、日本の証券取引であげた利益にかかる税金は何パーセントだと思いますか?なんとmアメリカ以下の10%に過ぎません。これは、証券取引についての課税を20%とする証券取引への優遇制度があり、しかも、今は株式取引を活性化させるという名目でさらに10%に引き下げられているからです。

 しかも、この証券取引に対する課税は総合課税ではなく、分離課税となっています。

 分離課税を少し説明しますと、今の所得税の最高課税率は40%とされていますが、たとえば、あるお金持ちが実業では6億儲かり、証券取引では4億儲かったという場合、合計10億円の所得に対して40%の税金がかかって4億円税金を払うのではないということです。

 普通の所得6億円に対して40%の税金で2億4000万円。証券取引所得4億円に対して10%で4000万円と分離して課税されます。その結果、あわせて2億8000万円しか税金を払わなくていいのです。

 合計10億円の所得に対して計2億8000万円の税金ですから、所得税率は28%にしかなりません。現に、財務省の調べでは、実際には年間1~2億円の高額所得者は、下のグラフのように所得税を26・5%しか支払っていないのです。

 そして、なんと、この証券取引所得税の優遇策と分離課税を駆使することで、いま、所得100億円以上の人は最後のグラフのように税金14・2%しか払っていません・・・・!冒頭のグラフの表題にあるように、所得100億円の人がその1万分の1の100万円の人と変わらない負担率なのです。

 金持ちは損をしてるなんてデマカセです。たかり屋の名にふさわしいのは、むしろ、どこの国でも富裕層なのです。この国の財政赤字の問題にまじめに取り組むなら、あるところから取る=所得税・相続税累進課税率のアップと富裕税=資産税の導入しかないのです。ほんの数パーセント、富裕層が今以上に負担をしてくれればいいのです。

 国富から最も恩恵を受けているのが富裕層です。今より幾分か負担を増すことで、死蔵化している滞留資産が流動化して内需が拡大し、景気も良くなります。結局、富めるものも貧しいものもみんな潤うのです。

 富裕層の方々、どうですか。

日本にも富裕税の導入を!年間所得100億円以上の富裕層は14%の税率でしか税金を支払っていない

税と社会保障の一体改革 富裕層の所得税・相続税を増税し、富裕税の創設を! 消費税増税は被災者直撃!!


オバマ大統領もいろいろ問題がありますが、ロムニー氏が大統領になったら世も末ですな。

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 ロムニー候補の昨年の所得は約11億円―実効税率は14.1%

イメージ AP

選挙運動でラスベガスに向かうロムニー氏(21日)

 ロムニー氏は納税情報の開示で、情報公開が不十分との批判をかわしたい考えだ。

 20年間の納税記録の概要によると、ロムニー夫妻には毎年、州所得税および連邦所得税の支払い義務が生じており、年間の連邦税の実効税率は20.2%だった。この期間の夫妻の最低実効税率(連邦税)は13.66%だった。

 民主党上院院内総務のハリー・リード議員など一部の民主党議員は、ロムニー夫妻は数年間、税金を納めていなかったと主張していた。

 ロムニー氏はこれを否定していたが、過去の納税記録の公表を拒否していた。ロムニー夫妻は公開に消極的な理由について、民主党議員らに批判の材料を与えたくないと説明していた。

 21日に公表された2011年の納税申告によると、ロムニー夫妻の同年の所得は1369万6951ドル(約10億7000万ドル)で、納税額は193万5708ドル(約1億5000万円)だった。

 ロムニー陣営によると、所得のほとんどが投資収益だった。投資収益には優遇税率が適用されており、キャピタルゲイン税の上限は現在、15%に設定されて いる。そのおかげでロムニー夫妻の税率は比較的低く抑えられており、民主党議員からは現行制度の下で富裕層が相応の納税を行っていない証拠だと批判の声が 上がっている。

 ロムニー夫妻の税率が低いのは夫妻が慈善事業に多額の寄付を行っており、税控除を受けていることも影響している。夫妻による寄付は合計400万ドル超で、税控除は225万ドルだった。

 また、今回の納税記録の開示によって、ロムニー氏の2011年の所得と納税額が今年1月にロムニー陣営が公表した推計を大きく下回ったことがわかった。1月の推計では、総所得は2090万ドルで、連邦税の納税額は323万ドルに上るとされていた。

 また、会計士の書簡によると、ロムニー夫妻は20年間の平均で調整総所得の13.45%を慈善活動に寄付していたことがわかった。夫妻がこの期間に支払った連邦税、州税および慈善活動への寄付は調整総所得の38.49%を占めた。

 なぜロムニー夫妻が開示の対象を過去20年間としたのかははっきりしないが、ジョージ・W・ブッシュ政権時代の2003年にキャピタルゲイン課税の税率 が20%から15%に引き下げられたことが要因となったかもしれない。投資収益に対する税率が高かった時代の納税記録を含めれば、ロムニー夫妻の税率は高 くなり、税率が低いと批判されている 夫妻にとって有利なためだ。

米大統領選

ロムニー、国民の47%を「たかり」呼ばわり

Debunking Romney's 47 Percent

国民の半数を納税もせず政府に依存するだけの寄生虫扱いした共和党大統領候補の大失態

2012年09月19日(水)17時44分
エリオット・スピッツァー(元ニューヨーク州知事)
 

また墓穴 誰より「節税」しているのはロムニー自身 Jim Young-Reuters

 近頃のアメリカ政治に関する話題は、2つの数字を中心に回っている。

 1つは、昨年のウォール街占拠デモで有名になった「99%」。高所得や大幅な税控除を享受している超富裕層1%に対して、そうした恩恵にあずかることのできない国民の大部分を指す数字だ。

 そして今、大論争になっているのが、共和党の大統領候補ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事の口から発せられた「47%」だ。ロムニーは5 月にフロリダ州で開かれた資金集めのイベント(非公開)で、「米国民の47%が連邦所得税を払っておらず、政府に依存するのが当然だと思っている層だ」と 語っていたことが、今週になって判明。国民の半数を見下した発言だとして、物議を醸している。

 アメリカは99%が成長の恩恵から取り残された国なのか、それとも47%が税金も払わず行政サービスにただ乗りしている国なのか、どちらに共感するか有権者の反応を探れば、11月の大統領選の結果もおのずと見えてくるだろう。

 低所得者層は見返りにふさわしいだけの納税をしていないという「作り話」は、共和党が好んで使うレトリックだ。そしてその話を裏付ける数字として、彼らはよく「47%」を引き合いに出す。

 確かに連邦所得税に限って言えば47%という数字は間違いではない。しかし、そこでは源泉徴収された給与税、消費税や物品税など、さまざまな形で税を納めている人たちは排除されている。

所得と税負担はほぼ比例している

 ここでアメリカ国民がどのように納税しているかを分析するために、米税務政策センターと課税・経済政策研究所のデータを簡単に見ていこう。

 まず、国民の28.3%は給与税という形で税金を払っており、その税収は社会保障やメディケア(高齢者医療保険制度)に回されている。

 高齢になり仕事を引退したため連邦所得税を払っていないのは、10.3%。彼らが受け取っている社会保障費に税金はかからない。ロムニーは知らないのかもしれないが、共和党支持者の多い層だ。

 こうして差し引いていくと結局、現役世代なのに所得税を払っていない人々は6.9%しかいないことになる。47%とはえらい違いだ。アメリカは、ロムニーが考えているような「たかり屋の国」ではない。

 さらに重要なことがある。私たちの税負担の割合はどうなっているか。共和党が主張するように、貧しい人々は本当に応分の税負担をしていないのか。

 さまざまな要素を考慮に入れて所得別に見てみると、どの所得層でも所得と税負担額はだいたい比例している。

 国民を所得順に並べたときに中間の20%の人々が払っている税負担は、国の税収の10.3%。そしてこの層の所得額は、国民所得全体の11.4%強だ。

 下位20%の納税額は全体の2.1%だが、得ている収入も3.4%。ウォール街で悪名高い上位1%の納税額は全体の21.6%だが、その所得も全体の21%に上っている。

 この国の税制と社会保障制度は、ロムニーたちが騒ぎ立てるように狂ったシステムではない。アメリカは決して物乞いの国でもなければ詐欺師の国でもない。

 ロムニーはもう政府の社会保障制度を馬鹿にしたり、その恩恵を受けている人々を非難するのはやめるべきだ。ちなみにロムニーの所得税率は13.9%。お仲間の上位1%の高所得者に適用される所得税率をはるかに下回る数字だ。金持ちは損をしてるなんて盗人猛々しい。

© 2012, Slate


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10 コメント

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Unknown (維新志士)
2012-09-24 07:52:07
オバマ左翼が裏で扇動している「99%」は大嘘。私の従兄がアメリカで仕事をしているが、彼の家庭は夫婦で所得1200万円くらいの中間層であり、付き合いがある人々も同程度の生活レベルだ(というか同じ階層で交流が生じる)。そしてこのレベルの層が30%程度存在するから貧民が99%がウソだとわかる。

貧民はただ乗りを止めるべきだ。詐欺師とタカリ屋に寄生された国を建てなおそう。
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Unknown (K)
2012-09-24 13:20:40
応益相当分以上払っていればたかっているという表現はおかしい気がしますが、記事通りだと富裕層に甘い部分はありそうですね。
返信する
中間層労働者が最も憎んでいるのは所得税です (鴟夷子皮)
2012-09-24 14:34:23
所得税最高税率80%にしろなどというのは「極左」だけでしょう。全国紙はそんな思想は相手にしませんね

高所得者の税率ガーに加えて軍事費ガーと大企業ガーを合わせれば「共産党の不可思議な税理論」の完成。

ちなみに中間層が最も嫌う税目が「所得税」であることも覚えておくと良いでしょう。累進課税…すでに終わった過去の思想。高所得者をたたいても、貧乏人が高所得になることはない…

この弁護士先生は自営業者なので節税しまくって所得ちょろまかして所得税なんかほとんど払ってないだろうけど、われわれサラリーマンは経費も節税も家族所得分割も認められず重税でつらいんですよ。所得税累進課税=サラリーマン虐め税であるといい加減に左翼の人々も気づいて欲しいなぁ(泣)
過重労働のうえに高所得だと叩かれ自営業者のように節税脱税もできずひたすら増税されて勤務医が苦しんでるよ。こういうことも所得税増税信者にはわからんでしょう。

左翼は昔は労働者の味方と称していたが今では賃金労働者(サラリーマン)の公然の敵になってしまいましたね。残念です。
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Unknown (TPPは正義)
2012-09-24 16:41:58
低所得者は所得税を払わない寄生虫
フリーライダーは勤労者の敵だ
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所得税の計算が大雑把すぎますよ (L)
2012-09-24 22:11:04
>普通の所得6億円に対して40%の税金で2億4000万円。
 以前もこうした計算をしていたかと思いますし、わかっていて単純化しているのだと思いますが、累進税率の計算ははもっとややこしく、実際の税率は40%よりずっと低くなるはず。
 6億のうちウン万円までは控除で0%、これを超えたウン万までが10%で、そこからウン万までが15%で。。。。。という調子で、40%がまともにかかるのは6億円の一部だけになると思います。従って、全体にかかる実際の税率は40を切るはずです。
 大した稼ぎがない給与所得者はこのへんがよくわからないので一度正確なところを解説してください。
 先生の記事はいつも素晴らしいし正しいしあえて火中の栗を拾ってくださるし尊敬してやみません。同じ時代に生まれてよかったと思っております。ですが、殺人の数を未遂の混じった警察統計から取ってくるなどごく稀に、通でないと理解できない部分を感じます。
 よろしくお願いします。
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1%や99%の定義 (L)
2012-09-24 22:53:52
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11358813797.html

 1%の富裕層の定義というのは、100万ドル以上の投資資産(現金とか株とか債権とか)を持っていることだそうだ。
 これを、松本哉式に肉感的に言えば、金持ちとは、働かなくても不労所得で死ぬまで、優雅に暮らせるやつ、ということになる。
 逆に言えば、中小企業の社長だろうが、大企業の管理職だろうが、稼ぎ続けないと首がしまってくるようなら貧乏人であり、実は99%である。
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/datsuhinkon-no-keizaigaku.html
飯田泰之の腰だめの計算によると、税負担と種々の公共サービスの「給付」の分岐点は、仮に収入を毎年使い果たすとして年収1000万くらいだそうだ。つまり1000万以上は払いの方が多い金持ちで、それ以下は、給付の方が多いということ。ものすごく大雑把に言えば、だけど。
 という訳で、共稼ぎをしても1200万は、定義上の立派な貧乏人臭い。100万ドルの投資用資産があるほどハイソなら、なんでそれっぽっちの稼ぎなんだろう?1%の金持ちなら働いたって、一人で年に何千万も稼ぎそうなものだ。このいとこ夫婦は芸術家でもやってるの?それとも、石原のように週に30分だけ働くのかな?ま、もともと「1%の定義」も知らない適当なコメだし、いとこもリアルな存在には感じられないけど。
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Unknown (維新志士)
2012-09-25 18:07:33
>L殿

中間層は『1%』よりも貧乏人が嫌いということ。あの派遣村長の湯浅氏も中間層が所得増税を批判していることから「中間層との対立回避のために累進は言わないようにしてる」と語ったくらいだ。

神野氏のレポートによると日本の中間層は税負担の重さにたいして世界トップレベルの不満を感じている。
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Unknown (労働者)
2012-09-27 20:05:59
勤労者の納税にタカるナマポ者

左翼は勤労者の敵ですね

大きな政府思想は破綻している。

ドカタにばら撒き、貧民にばら撒き、公務員にばら撒き、まだ足らないと言う。

それ以外の国民は死ねということか
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Unknown (Unknown)
2012-11-08 19:32:27
考え方が歪んでる人が多すぎて笑えるな。
日本の小金持ちなんて、貧民と一緒にアメリカ富裕層に狩られてしまう運命なのにw根っこには人種差別あるから、シンガポールとかに逃げても無駄だよ。
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Unknown (Unknown)
2012-11-08 19:51:31
庶民の所得にタカる富裕層

富裕層こそが勤労者の敵ですね。

小さな政府なんて富裕層以外みな死ねという制度なので、富裕層以外は支持できないだろ。

金の力で庶民から絞り、貧困層を作り出し、中間層を減少させてもまだ足らないという。

富裕層以外の国民は死ねということなんだろう。
今後、資源がどんどん乏しくなる地球は、持てる者だけが住めるようにすべきという規定路線で。
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