カンバセーションさん

(前のエントリーから続きます)

つい先日のことですが、ワールド系音楽プロモーション会社のカンバセーションさんが倒産しちゃいました。アマジーグがリーダーをやっていたバンド、グナワ=ディフュージョンを呼んでくれた会社です。

ずいぶん前から、もう一度アマジーグを日本に呼ぶ段取りを進めておられたみたいです。だから、わたしの推測ですがMarchez Noirも来日のタイミングと合わせて日本盤発売、という予定だったのでしょう。

この倒産は、たいへん残念です。ずっとワールドミュージックのために献身的に働いていた社員の方々の無念がひしひしと感じられます。

それに、日本はこれでまた文化的鎖国状態が強まるわけなのです。サラーム海上さんの言葉を借りれば:

「来年以降、ザキール・フセインも、ババズーラも、メルジャン・デデも、アマジーグ・カテブも、ベリーダンススーパースターズも、グスタボ・サンタオラージャも、エミール・クストリッツァも、スアール・アグンも、もう当分は日本で生演奏を聞くことが出来なく」

なるわけなので(もっとも、これらのアーチスト全てが本当にしばらく聞けなくなると決まったわけではないと思います。これ以上のことは今わたくしからは申し上げられませんが)。

「・・・でも、わたしはザキール・フセインとかババズーラとかメルジャン・デデとか知らないし、関係ない。カンバセーションさんとやらの倒産は可哀想だが、そういう音楽の需要がなかったんだから、しょうがないじゃないか」

ってマーケット主義的な声が聞こえそうです。やれやれ、そういう人たちはザキール・フセイン以下の音楽に適切な形で触れる機会を与えられていないからそういうことを言うんだと思うんですが、いかがでしょう? 適切な形で聞いて、その真価の味わい方を体得された方は、いかに日本の多くの人の音楽の聴き方が奇形的かも、同時に理解されると思います。

いちばん奇形的なのは、古い西洋古典音楽が世界最高峰の音楽だとアタマに刷り込まれてしまい、本人にとっては退屈で居眠りするだけの音楽でもこういうのを聞いていればバカにされないから安心できてしまう、という構図です。音楽の持っている本当の力とは、そんなもんじゃない。なのに「マーケット」はその力、人間をこの上なく幸せにしてくれるこの音楽の力を見えなくさせてしまう。

これまた「縦向き」志向の生む恐るべき弊害でしょう。

少なくともこのブログの読者諸氏には、もっと横方向に崇高な美が見つかることを知っていただければ、と思います。

(ちなみに、わたしが「自分は今これで本当に快楽を感じているか」ということに非常にこだわるのは、まさにスタンダールがこういうことに強烈にこだわるのを見て、これこそ正しい態度でみならうべきだと信じたからでもあります)

 

 

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