外国語教育の世界標準(1)

 10月1日の日経新聞に「気がつけばEU基準」という記事がありました。食品の安全基準の分野の話です。日本の基準は大変甘いので、欧米市場では厳しいEU基準に鍛えられたアジア企業に太刀打ちできない、ということなんですね。
 産業規格の分野でも日本のJISはアジアでも通用せずEU起源のISOにかなわない、という話も最近載ってました。

 残念ながら日本の人々というのは、かなり他の国の国民と「記憶」が違うところがあって世界をリードする標準を作り普及させる、というようなことをするのは不得手かなと思います。
 一方アメリカはなんでも唯我独尊的にやってしまえて他の国はそれに合わせてくれるから、あまり意識して合理的世界標準を作るようなことに関心がないのではないでしょうか。たとえばメートル法みたいなものはアメリカ人は作らないと思います(こういうものを作ったという誇りがフランス人のナショナル・アイデンティティの構成要素になっているらしい、というのはスーぺルデュポンの活躍でもわかりますね。(^_^) )。

 ところで外国語教育の分野でも欧州の打ち出しているコンセプトが世界の他の国々も追随し、やがては世界標準になるかもしれないな、と思ってます。

 日本のフランス語教育の世界でも2001年に欧州評議会が提案した「欧州共通言語参照枠」Cadre europeen commun de reference pour les langues (CECR)をはじめとする言語教育理念の意義が理解され始め、これを考慮に入れていく状況が最近急激に進んできてます。

 じつは「大国の国民が外国語学習に熱心でない」という状況などはまさしく欧州評議会の言語教育理念が是正の目標としているものだと思います。ルクセンブルク人は放っておいても外国語をやるのでフランス人や、できたらイギリス人 (^_^;) にプレッシャーをかけよう、ってわけです。

[追記] ごめんなさい、ずいぶん不正確なことを書いてしまったようです。
m(_ _)m
あんまり詳しくない分野で人の話を受け売りするのはいけないことでした。
いろいろ調べなおさないといけないところですが、時間がぜんぜんないです。
(;_;) 困りました。 07.11.15.
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コメント
 
 
 
Unknown (icco)
2007-11-09 21:30:24
 日本の大学においては指導要領さえないという状況らしいですね。今まで何を目的として外国語教育をしてきたのでしょうね。目的のはっきりした、きちんとしたカリキュラムが必要だと思います。そして大学教育にとどまらず、個人が自分の能力を正しく判断し、生涯教育の中で自分の学ぶべきことを知るために、共通の基準の必要性は大きいと思います。
 
 
 
江戸時代の外国語教育 (オルフォー)
2007-11-10 13:57:04
外国語教育で感心するのは、
江戸時代のオランダ語熱です。
参勤交代で旅館に泊まったカピタン一行に、
各藩の代表が次々に訪れては、
楽しそうにおしゃべりして帰っていったという話。
なんのために外国語を学習するのかと、
オランダ人たちは不思議がったという記述があります。
これぞまさしく外国語教育の原点ですね。
一生に一度ヨーロッパ旅行するために、
フランス語をマスターするとか。

ふらんすに行きたしと思へども、ふらんすはあまりに遠し、
せめて新しき背広を着て、きままなる旅に出てみん。
朔太郎さんも、おしゃべりする機会のないフランス語を、
必死に勉強したのでしょう。
日本人の外国語学習には一抹のさみしさがありますね。
 
 
 
ISO (trotteur)
2007-11-13 23:53:51
ISO自体はEU起源ではないですよ。前身から考えると、あえて言うならアメリカだと思います。

ISOは分野が非常に細かく多岐に亘っているので、一概には言えませんが、一種のブランド化しているところもありますね。差別化するためにISOを採用する、という感じで。

EUの方が日本より厳しい基準にしているものは、EUにあわせて結構だと思いますが、EUの方が甘いものはそれに合わせるようなことはして欲しくないですね。例えば、ヨーロッパのシンドラーという会社の殺人エレベーターがありますが、あれなどは規制緩和をしなければ輸入されるはずがなかったそうです。もともと日本製ほどの精度はなかったので。

考えてみれば、ISOは、白い羊が黒い羊を蹴り飛ばして国外に追放する絵をポスターにした政党が第一党になった国にあるのですね。なんというか、それは世界標準にはして欲しくない・・・(^_^;
 
 
 
なるほど (raidaisuki)
2007-11-15 21:49:06
trotteurさま

コメントありがとうございます。

追記にも書きましたが、詳しくもない分野で人の受け売りなどするのは危ないという典型的な例だったかもしれません。m(_ _)m
(ISOのことはもっと勉強しておきます)

ただEUは独立国の連合体であるという強みを生かして複数の国単位で共通して採用されうる標準(制度的グローバルスタンダード)、みたいなものを多く作り出して、その影響を周囲に与えることによって、できるだけ世界に「無形の」影響力を持った世界の指導的地位を保持しようとするんだと思います。

そういうことをやるノウハウがいちばん蓄積されているのは、たぶんフランスだと思うのですけど、どうでしょう? 
つまり、これからフランス一国だけじゃどうしようもないから、EUの人口という重みのうえにフランス的ノウハウを生かそうとする方針をとろうとしているように見えます。

そのようにしておいて、中国をはじめとする太平洋岸諸国、アジア諸国の経済的台頭に対抗する、という発想がたぶんあると思うんですけど・・・


そういう状況下で、欧州人の人種差別的意識がどのように関係してくるかは、よくわかりません。

ただ、ヨーロッパの国でも、ドイツやイタリアはヨーロッパというくくり以外には作れず、入れないと思います。
フランスというのは面白い位置を占めていて、フランス語圏というくくりが厳然とあるし、サルコジのように地中海というくくりを作ってその枠内である程度お山の大将(?)的な立場がとれます。
あからさまな人種差別、というか制度、体制自体に支持される人種差別というのはこの国には定着しにくいと思います。別にフランス人が正義の味方だからというわけじゃなくて、歴史的地理的理由からそういう状況になっているということです。

すみません、酔っ払って放談的に書きました。
f(@~_~@)y
 
 
 
 (trotteur)
2007-11-15 22:19:38
先生の仰るとおり、EUは強いですよ。ひょっとしたらうまく伝わってなかったかもしれませんので一応書きますが、ISOがある「白い羊が黒い羊を蹴り飛ばして国外に追放する絵をポスターにした政党が第一党になった国」というのはスイスですよ。で、スイスはEU加盟国ではないわけでして、ヨーロッパの中でもちょっと異質ですね。(^_^;
 
 
 
Charles Le Maistre (raidaisuki)
2007-11-24 11:59:42
ISOですが、今はジュネーヴに本部があって形としてはスイス国の団体ということになってるんですね。でも起源をたどるとアメリカの標準化機構がやっぱり元になってるんですね。

その国際化の過程ではイギリス人のCharles Le Maistre という人が重要な役割を果たしたそうです。↓に写真が載ってます。

http://www.iec.ch/online_news/etech/arch_2006/etech_0306/news.htm?mlref=etech#lemaistre

しかし・・・Le Maistre なんてどうみたってフランス系の名前ですね。うーん、もうなんかひっかかりますねー。 (;_;)
 
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