Luna's “ Life Is Beautiful ”

その時々を生きるのに必死だった。で、ふと気がついたら、世の中が変わっていた。何が起こっていたのか、記録しておこう。

脅威的な言語反応

2005年07月05日 | 一般
人間のコミュニケーションにおいて言葉の果たす役割はそんなに多く占めているわけではありません。おおくは声色とか、表情とかが意図を伝えるものです。それでもことばの果たす重要性は重いものです。自分には悪い意図なんてないのに、ことばの使い方のせいで信頼関係に亀裂が走ったりします。カウンセラーは話を聞く訓練を受けます。患者が自分の内面を率直に話すには信頼感と安心感がなければならないからです。
今回と次回は、カウンセラーが訓練される聞き方のテクニックを紹介します。エホバの証人時代に叩き込まれてきた、遠まわしな非難や暗黙の圧力、「お上品なことば」でありながらしっかり人格を否定する技術が染みついてしまった人に、ぜひ知ってもらいたいです。

今回参照する本は「思いやりの人間関係スキル・独りでできるトレーニング/リチャード・ネルソン・ジョーンズ・著」からです。この本と、トマス・ゴードンが著した「親業」はわたしの救世主です。この2冊でわたしは変わることができたからです。今回参照する「思いやりの…」は3500円もする高価な本ですが、それだけの価値がある本です。今回の内容から興味を持たれた方はぜひご自分でお読みになってください。ほんとうに役立つ本です。人間の性格でさえ変えることは十分可能なのです。まして話しかた、聞きかた、相手との距離の保ちかた、詰めかたを学ぶのはもっと容易なことです。

では、はじめます。

-------------------------------
カウンセラーの会話はクライエントの話を注意深く聞くことに徹したものですが、一般の社交的な会話は、「ふたりの人間がお互いのエゴを交互に鍛えあっている」と皮肉交じりに言われるような種類のものであり、両者は全く異なったものです。

カウンセラーは、クライエントが受け入れられていると感じて、安心できるような聞き方の訓練を受けています。この訓練の中には、日常会話にはごく当たり前に行われている「脅威的な言語反応」を避けることが含まれています。

友人同士、夫婦、恋人同士などの親密な関係でしばしば起こる悲劇は、当人には悪意はないのに、訊きかたのスキルが弱いがために、お互いに相手の話を十分に聞かない、という事態です。誰にも友人や恋人を助けてあげて、思いやりを示してあげたいと思うときがあります。そのようなときに、友人や恋人に、自分のことを自由に話してもいいんだ、という気持ちを持たせてあげることが、思いやりを示すということなのです。

以下にあげたのは、思いやりを示すのに失敗する「脅威的な言語」の例です。これらは人間関係の中で、必ずしも用いてはいけないというものではありません。むしろ、これらのことばを話す前に、これらのことばがもたらす否定的な効果について知っておく必要がある事項です。


1. 指図したり、先導したりする
 相手が何について話すか、その内容をコントロールすること。
「ものごとがうまくいっている話には興味があるけれど、うまくいっていないからって、愚痴っぽい話は聞きたくないな」
「わたしは、あなたとあなたのお母さんの関係についての話を聴きたいのです」
「あなたがどうやって仕事をしているかっていう話に絞りましょう」

2. 判断したり、評価したりする
 黒白、良し悪し、○×…といったような判断を下すようなことを言うこと。
 とくに、自分の立場から見て、話し手に欠点があることを示そうとすること。
「君は彼女にさよならを言うべきじゃないと思う」
「あなたは自分の人生を台なしにしてしまった」
「あなたは自分のことを表現するのが下手だね」

3. 非難する
 相手を指すようなやり方で、責任を相手のせいにすること。
「全部おまえのせいだぞ」
「そっちが言い出したことだ」
「あなたのおかげで、いま、大変な思いをしているのよ」

4. 攻撃する
 相手をけなしたり、苦痛を与えたりすることを言うこと。
「今までものごとをうまくやったことって、ないんじゃないの」
「バカだな」
「やる気がないんなら、帰れ」

5. 道徳的なことを言ったり、お説教したりする
 お高くとまって、相手が人生をどう進むべきかを言うこと。
「あなたは両親を常に尊敬すべきです」
「正直は最良の策ですよ」
「セックスが人生のすべてではありません」
 「結婚が幸福のすべてではありません(エホバの証人時代によく言われたことば)」

6. 助言したり、教示したりする
 あなたにとって何をするのが一番いいかは自分の方がよく分かっている、というやり方で反応すること。
 相手が自分を見つめ、自分で考え、自分で判断する余地を与えない。
「その仕事から彼をはずせ、というのが私の考えだ」
「なるほど、それで君は寂しいわけだ。外へ出て人と会うようにする必要があるな」
「もっと戸外で時間を過ごすようにしなさい」

7. 相手の感情を受け入れない
 相手がいま感じている感情とは別のことを感じるべきだと、相手に言うこと。
「いつまでもめそめそしていたって、物事は先へ進みませんよ」
「弱虫だけだぞ、そんなことでビクビクするのは」
「何がそんなに嬉しいのか分からないわ」

8. 不適切に自分のことを話す
 相手が自分のことを話しているのに、それを遮って、聞き手が自分のことを話すこと。
「大変だったのね。でも私の話も聞いて」
「私って聞き上手なんだわ。だってみんなが私にその話をしたがるんですもの」
「私の(あるいは誰か英雄視されている人の)体験を聞かせよう。君にも大いに参考になるだろう」

9. 尋問する
 相手が望んでいないのに、探りを入れて相手を脅すような質問をすること。
「マスターベーションしてる? 何を空想しながらしてるの?」
「この前まで誰とつきあっていたか話せよ」
「あなたの欠点は何でしょうか」

10.安易に元気づけたり、笑わせたりする
 相手のためではなく自分のために、相手の感情をいい方に変えようとすること。
 相手の真の感情を全く理解せず、理解しようともしない。相手の個性を否定している。
「誰だって、たまにはそんな風に感じるものだよ」
「あなただったら切り抜けられる。前向きになれって」
「ほら、いま、笑ったでしょう。これはそんなに悪いことじゃないはずよ」

11.レッテルを貼ったり、診断したりする
 素人なのに精神科医のように相手に病名、症状をレッテル貼りしたり、診断したりすること。
「あなたって、ヒステリー性格じゃない」
「あなたは誇大妄想の傾向があるね(組織擁護のためにエホバの証人がよく使う)」
「本当に神経質だな」

12.過剰な解釈をする
 客観的な立場から相手の行動を説明し、しかもそれは相手が自分のことについて
 思ったり感じたりすることとはほとんど一致しないこと。
「君は僕のことを恐れていて、それでもう僕とは外出したくないんだと僕は思うね」
「あなたがその仕事に就くのをためらっているのは、お父さんの考えに逆らうことになるんじゃないかと恐れているからでしょう?」
「あなたは子どもとして愛されてこなかったから、私に感情を出すのが下手なのです」

13.話を分散させたり、関係ない話をする
 話の本筋からズレたことを言って混乱させたり、煙に巻くようなことを言うこと。
「…わかったわかった、とにかく場所を変えよう」
「話は違うんだけれど…」
「このこと、そんなに考え込むほどのことかな。楽しくやろうよ」

14.注目しているふりをする
 心にもなくおおげさに、相手の話に興味や関心があるふりをすること。
「おもしろそう!」
「信じられない! すご~い!」
「うっそ~! かっわいい~!」

15.時間の圧力をかける
 聞くための物理的な時間がないことを相手に知らせること
「ちょっと、今から出かけなきゃならないの」
「短めに話してね」
「この頃とても忙しくて」
--------------------------------------------------------

いかがだったでしょうか。
話されていることは筋が通っていて、うなずけることなのに、なぜかイライラする。正しいことを話されて、理解はできたけれど屈辱感が残る。そういった経験がありませんか。

なぜでしょう?
話されたことは正しいことなのですが、思いやりがかけていたからです。共感がないからです。エホバの証人の使うことばで言えば、「裁く」からです。人間というものは感情の生きものなのです。ですから理屈では絶対に説得できないのです。感情を理解し、受け入れてあげることで信頼を勝ち得ることができるのであり、信頼の上に納得や説得が成立するのです。

元エホバの証人が集まる掲示板などでは、ときにどろっとした書き込みが表れて、それに対して説教されるようなことがあります。しかし信頼関係がないのに、前向きにとか恨み言を言うのって見苦しいなとか言っても、傷つけあうだけなのです(上記の1、6、7参照)。掲示板ならそのままそこから消えてしまえば済むことですが、現実の人間関係の中でそのように傷つけあうと、日常生活がストレスで苦しいものになります。

人間として大人になるというのは、世渡りが上手なことでもありませんし、折り目正しい行動を取れることや、道理にかなったことをいつでも冷静に話せることでもありません。それは人間に思いやりを示せるかどうかだとわたしは断言できます。道理も常識も、思いやりがあってこそ血の通ったものになるのだとわたしは思うのです。もちろん誰にでも愛を向けることは現実的ではありません。傷ついた人の重い打ち明け話を聞くのは、誰にとっても重苦しいことです。実際、カウンセラーの中には、自身が傷ついてしまったり、無力感に陥ってうつになったりする人もいるくらいです。境界性人格障害の方の場合には、その打ち明け話には、共感にも限度を設けて聞くようにしないと、周りの人も振り回されてしまうのです。

しかし、愛する配偶者や恋人、大切な友人、自分を身代わりにしても守ってあげたい子どもであるなら、思いやりのスキルをフル活用して、支えてあげたいのではないでしょうか。そういうつもりなのに、スキルが弱いためにかえって溝を深めてしまった、なんてことになるのは、避けれる方法があるならぜひ避けたいでしょう?
思いやりを持つ人は幸せになれる人です。でも思いやりも表現できなければ、相手に「思いやり」として伝わらないのです。思いやりを上手に伝えるスキルを解説した本が、今日、引用した本です。わたしたちはほんとうにいい時代に生まれたと思います。心理学の進歩したおかげで、愛をはぐくむ技術を誰もが身につけれるのですから。

人間にとって、いちばんの幸福は、いい人間関係にあるものです。お金に執着する人、地位に執着する人もみんな、実は愛を求めているのです。お金や地位があれば、愛や尊敬を得られるというまちがった思い込みがあるだけなのです。愛や尊敬は、コミュニケーションの能力にかかっているのです。お金を稼ぐあまりに家族と顔をあわせる時間が持てない、有名人が名声を保つために夫婦が顔をあわせる時間が持てない、人間関係の破綻はこういうところから生じるのです。わたしは若干45歳でありながら、こんな重大な哲学的な事がらで、今、断定的な言い方をしています。真実であると確信しているからです。

技術と言ってしまえば、思いやりなんて表面的なものなのでしょうか。心には思いやりがなくても、ことばの使い方で思いやりを装うこともできるから。…思いやりは装うこともできる、たしかに事実です。結婚詐欺師や女たらしが闊歩できるのは、思いやりは装うことができるからです。エホバの証人のような宗教に絡めとられてしまう人があとを絶たないのも、思いやりは装うことができるからです。でもあなたは今、エホバの証人という宗教を全体としてどう思われますか。愛にあふれた神の霊の宿る「霊的パラダイス」だと思っていますか。エホバの証人自ら話しています、仮面は心を覆い隠せない。装うだけのものはいずれ化けの皮をはがされることになります。

思いやりは決して表面的なものではありません。思いやりがなければ愛情も、友情も、信頼もなりたたないでしょう。上記の事項と、次回紹介する「反射」という聞き方のスキルを身につければ、ただ単に「人間の歓心」を買うだけのこともできます。でもわたしとしては、自分の人生を豊かなものにするために、いい同僚、いい友人、いい恋人、いい配偶者、いい人間関係を勝ち得るためにこういう技術を身につけたいと願っているのです。
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 補足 | トップ | 息もできない… »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (あゆ)
2005-07-06 13:32:10
「思いやりの人間関係スキル・独りでできるトレーニング/リチャード・ネルソン・ジョーンズ・著」

買ってしまいましたよ~



私の回りの人に、扱いにくいと私が思う人がいます。

(まあ、みなさんそうでしょうけど・・・。)

その人は今のところ避けようがない人なので

その人との関係にとても役立つと思います。

紹介ありがとうございました
返信する
しあわせいっぱいに生きよう! (ルナ)
2005-07-06 22:28:23
あゆさん、こんばんわ。



最初の章はなんだかまどろっこしいようだけど、4章以降はすんごい役立ちますからね。



読んだすぐそばから実行していってください。とくに「感情を反射する」、「人間関係を深める」、「人間関係における主張性」のスキルは効果絶大! しごく簡単なようだけど(「主張性」はちょっと根気がいる)、ホントにすごいですから。



大枚はたいただけのことはあります。何万倍も見返りがありますよ。あゆさんがもっともっと人間関係を深めてゆけますように。しあわせだけは、いくらでも貪欲に求めましょうね。それはつまり、どんどん人に元気としあわせをふりまくということでもありますから。
返信する
こんばんは (joy)
2005-07-07 04:39:55
コメントは翌日見たらちゃんと載っていました(^ー^)

今回の記事、勉強になります。



ルナさん、どうかご自分の人生を豊かにするために、いい同僚、いい友人、いい恋人、いい配偶者、いい人間関係を勝ち得ることが出来ますように・・・私も願っていますよ。
返信する
こんにちは (ルナ)
2005-07-07 13:20:02
ありがとうございます。



まだまだ青春です!

色気ギラギラです!



がんばりますよー!



joyさんも愛するご家族と新しい人生を作って行ってくださいね!
返信する

コメントを投稿

一般」カテゴリの最新記事