『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』住民と共に歩みつづける運動を**<2006.9.&11. Vol.43>

2006年11月01日 | 神崎敏則

尼宝線(武庫工区)拡幅整艤問題の途中経過
住民と共に歩みつづける運動を

みちと環境の会 神崎敏則

 以下の文章は、尼宝線武庫工区の拡幅整備問題の途中経過を、あくまで神崎の個人的な立場からまとめたものです。読者のみなさんのご指摘をいただくことができましたら幸いです。

担当課長の本性を暴いた住民たち

 『みちと環境の会』が尼宝線拡幅整備問題に本格的にかかわり始めたのは、04年2~3月の「沿道住民へのアンケート」の実施でした。その半年後の9月から『沿道住民の集い』(以下『集い』と略)を毎月開催し続け、本年10月で26回目となりました。併せてニュースを600世帯に毎月配布して、まだ薄くはありますが住民とのかかわりをつくってきました。

 一方、拡幅整備の担当課である西宮土木事務所道路整備第2課は、昨年12月1日、2日に住民への説明会を開きました。この説明会に約100名もの住民が参加して活発に意見が出されました。3月から4月に県がおこなったアンケートが「自分には届いていなかった」と訴える参加者が相次ぎ、課長は「不充分な取組みであったjことをその場で認めました。また、大気汚染や騒音などの住環境が悪化しないように対策を求める住民に対して、

  1. 光触媒で二酸化窒素を分解する技術を取り入れる
  2. 低騒音舗装をおこなう

と課長は応えましたが、より効果釣な対策を住民が求めると、「確かに武庫工区の測定局では騒音の環境基準を超えているが、2万7千台も走る道路が基準を超えるのは当然で、国道の8割は基準を超えている」と開き直ってしまいました。この答弁は担当課長の本音だったと思います。彼は「私は特別悪いことも、変なこともしていない」と言いたかったのです。でもこの発言こそが、住民の生活や思いを無視していることを告白しているのです。住民の騒音への悩みを解決することよりも、他所と同じようにやっているのだから批判される覚えはないという理屈にこりかたまっているのです。そして課長のこの答弁を引き出したのは、まぎれもなく住民の活発な発言でした。

 この説明会の前には、正直なところこれほど多くの住民が参加するとは思っていませんでした。「参加者は多いと思う」とは自分でも口にしていましたが、本音は不安でした。仮に参加者が多くても行政側の一方的な説明に対して、「みちと環境の会」のメンバーが発言するだけで住民は黙って聴いて帰るのとちがうやろかとの不安も少しよぎりました。不安の原因は、毎月の「集い」への参加が少ないことでした。

 この説明会で活発に発言した住民のことをしっかりと振り返って考えなければならないことがあります。

住民は首をすくめて目立たないようにしているわけではない

 毎月の「集い」の前にニュースを沿道住民のお宅に配りながら、インターホンを持して話をしてきました。玄関を開けずにインターホン越しで話される方も少なくありません。それでもちょっと話しただけで、ニュースを大切な情報源として必要としていることが伝わってきました。玄関を開けて毎回必ず話をされる方も、こちらの話を真剣に聴いておられました。沿道住民の過半の人は関心を持っていることがよく分かりました。でも、「集い」にはなかなか参加していただけませんでした。もちろん「集い」に魅力が欠けているのも事実でしょう。もっと企画力があれば、乏しい参加状況は変わったかもしれません。確かにその要素もあると思います。しかし、住民の側の要素もあるのではないかと、当時漠然と思っていました。自宅前の道路が4車線に広げられて、今以上に環境が悪化することに強い不安を抱えているけど、できれば自分は何もしなくても誰かが頑張ってくれるのではないか、自分は目立たないように首をすくめていたい、との思いがあるのではないかと想像していました。そんな普通の(首をすくめた)住民と共に少しずつ成長しながら関わって行けたら良い、と勝手に空想していました。

 首をすくめてめ立たないようにしたいと思っている住民もおられるのは事実でしょうが、今からふりかえると、そうとばかりは限らないと反省させられます。

 住民への説明会が初めておこなわれる、というような具体的に物事が動き出す時には、住民はしっかりと自分の意見を言いました。住民はあきらめていない、だけでなく、首をすくめて目立たないようにしているわけでもなかったのです。

自分のできることを精一杯取り組む住民

 昨年12月説明会の2ヶ月後の「集い」で、項目を以下の3点に絞って要望書を取り組むことを決めました。

  1. 少なくとも現状より環境を悪化させないように約束すること
  2. 歩道については、段差の解消など安全を最優先して計画すること。また『武庫工区』以南の歩道は危険な状態で放置されているため、溝蓋の取付けや電線の埋設、段差の解消などの整備をおこなうこと
  3. 昨年12月と同規模の住民への説明会を改めて速やかに開催し、誠実に住民に対処すること

 わずか3週間で、122名の方が要望書の提出者となりました。その間に聞いた住民の思いは切実でした。「親戚に2階で泊まってもらったら、とてもじゃないけど寝られないと言われた」と訴えたり、道路から80m離れているお宅でも地面の揺れを不安に思われたり、排ガスがひどくて「カーテンを洗っても洗っても真っ黒」になると沿道住民でなければ経験することのないような話をされました。122名が提出者となった要望書を住民3名が兵庫県街路課と尼崎市へ提出しました。

 8月には騒音対策にもっとも効果があり、景観にも配慮した透光型遮音壁の設置を求める署名を取り組みました。商店の少ない沿道で、かつ、設置可能な空間のある箇所に限定しての取組みでしたが、まず住民の方に呼びかけ人になっていただくように、それまで反応の良かったお宅にお願いに行きました。若い主婦のNさんはその場で「私で良ければ呼びかけ人になります」と言われるので、「とりあえずご家族で相談していただいてからで良いですよ」と配慮したのですが、Nさんは「大文夫です。私は集会とかには出ていけませんけど、こういうことはできますから」と自分の名前を書きこみました。

 結果3名の住民が呼びかけ人になり、147名の方が署名捺印されました。呼びかけ人3名が住んでおられる一角は、自分たちで全て集められました。3名の方が運動の中心を担って、全体をぐいぐい引っ張っていくところまではいきませんが、自分のできる範囲は精一杯やろうとしていることがよく分かりました。

住民と共に歩みつづける

 透光型遮音壁の署名に対して担当課長は、「工事の一部のみの設置は公平性の観点から、また、騒音は現状より悪化させないとの基準から、設置は困難」と回答しています。

 直後の『集い』では、147名の署名を軽んじる姿勢に非難が集中しました。この問題も次回の住民への説明会での争点となるでしょう。説明会が年内には開催されるはずですので、今から楽しみです。

 まだまだ成果らしきものは得ることができませんが、不充分ながらも、住民と共に歩むことを追求し続けてきました。これからもこの姿勢を貫くことができれば、やがて展望は切り開かれるのではないでしょうか。

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