『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』**おすすめ『三毛猫ホームズの遠眼鏡』(斑猫独語65)**<2015.5. Vol.89>

2015年06月09日 | 斑猫独語

おすすめ『三毛猫ホームズの遠眼鏡』
(斑猫独語65)

澤山輝彦

 「原稿おねがいします」みちしるべ、を編集して下さる藤井さんの言葉は身に沁みる。何々誌や何々会報というものの発行、編集にかかわれば原稿の集まりが全てであることがよく分かる。そこですこしでもと斑猫独語なんて駄文を毎回書いているのだが、いつも締め切り間際までもたもたしてしまう。今回は嗅覚についてやや早めに書き始めたのだが、文献を引用したりしていると結構長くなり、要領よくまとまらず少々手古摺っていたのだ。

 そんな時、妻が「『三毛猫ホームズの遠眼鏡』という本知ってるか」ときた。三毛猫なになには赤川次郎の著作だ。推理物だろう。赤川次郎の推理物は書店、古書店に文庫化されたものがずらりとならんでいる。軽いものなのだ。手にとったこともない。「そんなもん知っとっても見向きもせんもんじゃ」と答えた。妻はこれはそんなもんじゃない、図書館で借りると言い、図書館へ行った。図書館には所蔵なく購入してもらうことにしてき、後日私が外出したついでにそれの貸出し手続きをし持ち帰る電車の中でぱらぱら見るだけで、この本をしらなかったことを恥じたのであった。

 『三毛猫ホームズの遠眼鏡』(岩波現代文庫/文芸257)は、2015年1月発行195p 800円の本だ。岩波書店の赤川次郎とは、考えても見なかった。裏表紙にこうある。

 自民党ポスター「日本を、取り戻す。」に誤植あり!「(誤)戻る/(正)壊」……その実、安倍政権主導ならずともいま、日本は壊れていっている。あれほどの大震災も、継続中の福島原発事故も忘れ、被災地への回帰を怠るこの状況をつくってきたのは、想像力の欠如という現代の病理である。『図書』で大好評の連載エッセイを現代文庫に一括収録!

 この本は多くの人に読まれて然るべき本である。タイトルから判断し、また戦争反対、九条は守る、維新橋下大嫌い、そんなことは分かっているから大丈夫とこの本に手をださなかったら損をする。私がこの本で赤川次郎を見直さねばならなくなったように、人(著作)を見る眼を小さな自分一人の主観だけに決め付けてきた誤りは大きい、ということを気付かせてくれただけでもこの本は大きな値打ちがある。この本の中身について、ここは良かった、その通り、とかの説明をすればそれこそこの本全てを丸写ししなければならなくなるだろう。

 『三毛猫ホームズの遠眼鏡』最近これよく売れますな、本屋さんがこう言い、書店にこの本が平積みにされている、そんな時代を作らないと本当に日本は壊れてしまう。この本を多くの人が読んで小さな突っ張り棒になれば壊れていく日本を守ることが出来るのだ。図書館へ返却すればもうこの本とはお別れではさびしい。私はこの本を買う。この本の最後の三行は、こうだ。

 深刻な問題であればあるほど、深刻に語るだけでなく、いかに面白く、笑って語ることができるか、それが私たちにとっての大きなテーマです。これからも、作家としてできるだけそういう立場に立って作品を書きつづけていきたいと考えています。

 作家でなくても私たちの日常でも深刻さに立ち向かう姿勢としてはこうありたいものだ。

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