<REX 8>
澤山輝彦
オーストリアを知らない人はまあいないだろう。芸術文化の国だ。美術史、音楽史をひもとけばこの国からはキラ星がいっぱい出ているし、世界史上にも様々な足跡を残した国だ。もう一つの大国なのである。だが、この国、今回のロンドンオリンピックでメダルを取った国の中にないのだ。オーストリアがどのように今回のオリンピックと関わったかは知らないが、銅メタル一つないのである。(丁寧に見たつもりですが、もし見落としていたら、ごめんですませてくださいねオーストリアの皆さん)まあ、メダルメダルとがつがつしなかったんだろう。日本では、なでしこなでしことそれしかないのかというような絶叫ぶりと、メタルが取れて当然なのにどうした、という報道ばかりで、それに比べるとオーストリアは清々しい。このへんがちがうのだなあ。まあ、これはメダルの数ゼロから下した私の判断で、オリンピックにオーストリアがどう取り組んだかわからないから言えたものではあるが。
そんなオーストリアだが、一般観光案内などに紹介されることのない場所、また現地住民にとってもあそこは一寸という所もたくさんあるはずだ。そんな所が出でくるテレビドラマを有線テレビで見つけた。REX8という題のウイーンを舞台にした警察物推理ドラマで、コミックな面もあり、なかでも題名の元になったレックスというシェパードの警察犬が活躍するのが犬好きの私にはなによりで、愛視聴したのである。このドラマに先に書いたウイーンのあんな所、こんな所というのであろう場所が犯罪の場としてよく使われたのである。例えば鉄道の操車場が出てきた。日本ではもう遠の昔に無くなってしまったものだ。そこにこれはロシアから来た貨車だというのが出てきたりする。陸続きのヨーロッパ大陸ならではの舞台である。ウイーンといえばドナウ川だろうか。そこに海港に匹敵するクレーンやコンテナがならぶ港があったのだ。もちろん市内を走るトラムカー(路面電車※)はよくあらわれた。ドラマで垣間見ただけでの判断ではどうかとも思うが、操車場が今もあるということはヨーロッパではまだ鉄道貨物輸送が行われているのだ。市街地交通にトラムカーが堂々と走っている。これらは日本が捨てたものである。この人達は遅れているのだろうか。彼等は貧弱な文明の下で生活しているのだろうか。
警察ものだから犯罪者や被害者の家、関係する建物などが当然出てきた。ロケではなく、撮影所のセットもあったかもしれないが、人々の生活の場と見ていいだろう。そこに見たのは、壁を飾る絵画の豊富なことと、そのほとんどが抽象画であったことだ。まさに芸術の都ウイーンという言葉がぴったりであった。操車場、トラムカー、日本から見れば旧式とも思われる交通環境を見て、そんなあたりに住む人々が現代的な抽象画を日常に取り入れている、この洗練された精神はどうだ。私達が捨てたもの、それが進歩だと思ってきたことが私達に達成感を与え、華麗な精神を持たせたか。今一度考える必要があるのではないか。
REX8はREX9まで続いて終った寂しい。
※ 日本でもまだ路面電車が走っているところはあります。
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