『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』**道路公団「概算要求と決算」にみる財政破綻**<1999.11. Vol.2>

2006年01月01日 | 藤井隆幸

JH日本道路公団阪神高速道路公団
平成12年度概算要求平成10年度決算
にみる財政破綻

世話人 藤井隆幸

 『日本経済が世界の経済を混乱に陥れる最大の危険因子である。』欧米からの指摘に、橋本内閣は行財政改革を決断し、公共事業も7%削減の例外ではないと宣言した。しかし、景気の後退に財界は危機感を募らせ、小渕内閣にバトンタッチし、銀行救済・ゼネコン徳政令、公共工事の五月雨的増額。次々に打ち出す景気刺激策による、円高・株価の回復に、財界は安堵の色を見せた。だが、それはバブル経済の後退に外ならない。平成12年度末の国と地方自治体の債務は、600兆を越えることになった。日本のGDP(国内総生産)の500数十兆円を遥かに越える規模である。国の債務はこれだけでばない。

 郵貯・簡保・健保・年金で国民から徴収したお金は、一旦、政府の資金運用部(政府の銀行)に預託金として収められる。その資金を、公団・公社に有利子で貸し付ける。これが国家予算に対して、第二の予算と呼ばれる財政投融資である。財政投融資の貸し出し残高は200数十兆円に及び、その大半は返るめどがない。殆どの公団・公社は、金利だけを返すのがやっとで、元本を返すために借金をする状態である。一般企業であればとっくに倒産というところだ。かくして、日本国民の背負う債務は800兆円を越える。

 毎年8月末に、道路公団の次年度の概算要求(政府予算案を決めるもとになる)と前年度の決算が公表される。『阪神間道路問題ネットワーク』の9~10月例会で資料配布したものである。マスコミ各社は当然の事ながら、道路公団からレクチャーを受けている。しかし、記者の殆どはその重大性に気がつかない。数年で転勤する記者にとって、担当したことを深く掘り下げる余裕はない。 “50年かけて借金は返せる"と言われれば信じるしかないのである。公団担当者は使命と確信をもって嘘をつくのである。

 道路公団の造る道路はすべて有料道路制度に基づいている。その根拠は、道路整備特別措置法(S27制定。S31改定)に拠る。借金で道路をつくり、通行料金を徴収して借金を返すというものである。初めのうちは30年で返済する計画であったが、返済計画を無視してゼネコン奉仕を続けることとなって、今日に至る。その実態を、平成12年度の概算要求からみる事にする。

 わかり易くするために、仮想のブティックに例えてみよう。建設費が仕入れで、維持費が店員の給与と光熱費、料金収入が売上である。店舗入手のローンが借金返済で、足らずを銀行から借り入れているとする。JH日本道路公団は、仕入れと給与・光熱費を、売上で賄っていると言える。が、阪神高速道路公団は賄えてはいない。店舗ローンは、利益から支払わなければならないが、それほどの利益は、いずれも出ていない。どう見ても悪徳商エローンにつかまっているとしか見えない。

 JH日本道路公団に課せられた年間金利は、8000億円になると推測される。阪神高速道路公団のそれは、1500億円と推測される。決算から累積債務を見ると、次のようになる。

 見る限り、毎年、累積債務は確実に増えている。JH日本道路公団は、毎年1兆円ほど増えているし、阪神道路公団も1000億円ほど増えている。この傾向は、70年代から変わらず続いている。

 既に日本は、超過密高速道路網を達成していると言える。自治体はゴミが多くなったから焼却場を増やそうとはしない。ゴミを減らすことを考える時代なのである。7000万台の車が、自由に走り回る道路網を達成したら、人の住む面積は残っていなかったということになる。借金は払えなくなり、今立て直さなければ世界経済も破綻する。

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