『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』“道路通れば文化ひっこむ”**<2004.3. Vol.28>

2006年01月10日 | 澤山輝彦

“道路通れば文化ひっこむ”
――許せない道路行政の無知と横暴――

川西自然教室 澤山輝彦

 私の母は旧姓を名塩と言った。西宮市北部名塩の出だ。母の死後一度だけ名塩を訪れた。まだ福知山線は旧線を走っており宝塚からバスで行った。初夏のハイキング日和の一日で、道路に沿ったなんということのない町をぶらぶら歩いたのだった。そして、名塩は和紙の産地であり、名塩泥入り和紙は有名なものであることを知った。 北六甲台でネットワークの例会がある時、出席するには西宮名塩駅からバスに乗るのが通常とるコースで、このバスが名塩の町を通る。ここの通過に私は特別の感慨を持つのだ。

 和紙は全国あちこちで漉かれているが、それぞれ地名を付けて呼ばれることが多い。美濃紙、吉野紙など思いつく。名塩の泥入り和紙、泥入りと言ってもこの泥は汚泥ではない、粘土である。微細な粘土の粒子を紙の繊維にくつつけるというか、しみこますというのか、とにかく粘土混ざりの紙なのだ。誰がいつ始めたのかはわからないが、昔の人の知恵が生んだ技術、文化である。現在ではこの泥入りの紙を漉く人は数人だけになってしまったと昭和58年に発刊された本には書いてある。

「ピンチ人間国宝名塩雁皮紙 工房に国道建設計画 質低下の恐れ」 2004年2月14日

 毎日新聞にこんな見出しの記事が出た。

 名塩雁皮紙(先に書いた泥入りの紙)を漉くただ一人の職人として人間国宝に指定された谷野さんという方の工房の一棟を国道176号線の新ルートが横切る計画があるというのだ。和紙を天日乾燥する際にこの道路から排出される排ガスや粉塵で紙質が低下する恐れが強く、質の低下は信用を落とすと谷野さんは心配し、粉塵防止のため道路をトンネル状に覆うことを求めている。現在の土地はこれ以上の好条件の土地を見つけるのは事実上不可能という土地なのだと谷野さんはいう。阪神国道工事事務所は、国道ではそんなトンネルを設置したことはないから難しいと言う。(金仙寺湖でも作らなかったな)またまた道路新設が問題をおこしているのだ。

 和紙は優れた芸術性を持ち世界の注目を浴びている。和紙は我々が先祖から受け継いだ素晴らしい文化だ。たかが車の渋滞が生じるというだけで、文化を破壊しても平気だ、というのが今の道造り役人のやり方だ。道路は金をかければ造れるが、長い間かかって出来た知恵と技の塊である“文化”は金で作れないものがほとんどだ。“道路通れば文化ひっこむ”道路行政にかかわる人達は、同じ感性を持った日本人なのにしゃれにもならない事を平気で考えるのだからたまったものではない。工事事務所は、「希望に沿うよう、いろんな方法を考えて話し合いたい」と言っているが、注視し続ける必要がある。

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