『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』**国土交通省への要請書**<2012.5.&7. Vol.73>

2012年07月02日 | 道路全国連

2012年6月5日

国土交通大臣 殿

道路住民運動全国連絡会(道路全国連)
事務局長 橋本良仁

要 請 書

 今年度の道路予算はこれまでと変わらず大型道路優先で、昨年度と同規模の予算が組まれています。国土交通省は、今後50年間で必要な維持・管理・更新費用を190兆円としています。また、東日本大震災と福島原発事故の復旧・復興に多額の費用が必要とされており、道路全国連は、不要・不急の大型道路建設を大幅に削減すべきと再三にわたり要請してきました。

 以下の要請事項に対し、書面でお答え下さい。また、昨年時の要請時に要望しましたが、責任ある役職位の方の対応を強く要請します。

 なお、昨年6月1日の要請時に回答されなかった項目については、その後、回答要請をしましたが、何ら回答はありませんでした。未回答項目について回答願います。

1. 昨年度の政策仕分けで以下の論点を無視することは許されません。どのようにお考えなのかご説明ください。

  • 論点①② 公共事業について、現状では持続可能性がありません。新規投資は厳しく抑制し、選択と集中の考え方をより厳格に進めるべきである。また、民間資金の一層の活用を図るべきである。この前提として、公共投資の全体像について一層の説明責任を果たすべきである。
  • 論点③  既存ストックの維持管理・更新については、民間資金の一層の活用を図るとともに、重点化や長寿命化を図りつつ、見通しを立てた計画的な更新を行うべき。

2. 新規事業は上記提言に鑑み、震災復興を第一として抑制することが明らかなところ、どのように配慮されたか公表願いたい。先の国交大臣は災害時に有効な道路は高速ではなく地方幹線道路であると公表しています。

3. 首都直下型地震の備えに対して、傷んでいる既存施設の維持管理・更新が最優先とすることは言うまでもありません。どのように取り組んでいるか示してください。

4. 有識者を集めて結論ありきの政策を提言させて追認し、世論を形成する方法は時代遅れである。審議会も同様で、新しい時代に沿った一般市民を参加させる方式に改めるべきです。

5. 事業評価監視委員会で評価をチェックして事業の方向性を決定する方式は形骸化している。
 結論ありきの儀式であることは以下のデータから明らかである。法体制を含めて市民参加、公開性を含めて抜本的に見直すべきです。
  平成10年から23年までの道路事業の審議数300 内 中止0 継続274 事後評価 26

6. 環境影響評価方法の見直しが必要である。
 行政における大気の拡散モデルの採用方式について国土交通省のみが旧態依然のプルーム・パフモデルに固執している。なぜ他省庁と合せないのか。その根拠を示してください。

7. 限られた予算としながら直轄道路予算は23年度1.45兆円→24年度1.47兆円と東日本大震災復興を全く考慮していない。産業構造の転換に合せて見直すべき圏央道に992億円を振り向けている姿勢は問題である。財政悪化で今後もっと厳しくなる予算を見越して「今のうちに」の姿勢が丸見えである。総理の言う「復興第一」と整合性があるのか示してください。

8. 横環南はその大部分が軟弱地盤を縦断する土被りの薄いトンネル構造であり、三浦半島活断層に近く非常に危険である。改めてどのように安全であるか、具体的に説明してください。

9. 今後の生産人口減少、産業構造の変化を考慮して横環南のB/Cの根拠とする50年に亘る交通需要予測を根拠資料で説明してください。

10. 昨年12月、国は東京外環道路(練馬~世田谷間16km)は、2020年東京オリンピック招致のために必要な道路ということで、8年間での完成を発表した。しかし、五輪招致が失敗した場合、外環道建設をどうするつもりか。五輪招致が失敗した場合には、工事の大義名分がなくなる。外環道建設を中止し、東日本震災の被害復旧に向けるべきと考えるがどうか。

11. 平成20年に開催された関係7区市の地域PIで、各地域個別の課題が摘出されたが、平成21年1月、国交省と東京都は住民からの意見や要望への対応方針の素案を公表しただけで、この課題に対する回答は今日まで3年以上も何ら示していない。地域PIで出された課題に対する回答を速やかに行うよう求める。

12. 平成14年11月、「東京都環状道路有識者委員会」は、最終提言を発表。「移転戸数を少なくし、地元住民への影響を軽減化するため、インタ-チェンジ無し地下案を検討の基本とし、速やかに基本的方針を決定すべき」と答申した。ところが、東京都は目白通り~東八道路間(約9Km)の地上部を災害時における緊急輸送道路として幅員40mで事業着工を目論んでいる。国が有識者委の提言を受け、地下化を本線とし、インタ-チェンジを極力減らしたのとは大きな違いである。
 地方分権が謳われているが、このような東京都の理不尽な行為に対し、国が何らかの行政指導を行うことはできないものか。国はこの問題に対し、傍観者でなく当事者として、東京都と接触するよう求める。

13. 外環千葉区間の費用対便益比は1.0である。完成後50年先までの交通状況予測等不確実な要素を考えると便益が費用を上回るかどうかは「半々の確率」という程度の値である。事業費が1兆円に達するような大型事業をこの程度の便益見込みで推進することが許されるのか。

14. 事業評価監視委員会での審議では、費用便益比などの根拠データーに基づく検討が行われていない。これでは「監視委員会」の機能を果たしていないのではないか。

15. 行政と電力会社が一体となった「やらせメール」が発覚している。外環千葉区間の都市計画変更に際しても、国道事務所、企業などが一体となって「やらせ意見書」を大量に提出しているが、こうした事実をどう考えるか。

16. 外環千葉区間において首都国道事務所が暴力団関係者に数億円規模の過払い補償を行っていたことが明らかになった。現在国はこの暴力団関係者に過払い分の返還を求める訴訟を千葉地裁で行っているが、肝心の事実経過の公表を行っておらず、関係者の処分もない。これでは事業の公明性が疑われてもやむを得ないと思うがどうか。

17. 都市計画道路問題について

  1. 道路整備の必要性の評価基準における交通処理機能等の将来交通量の妥当な   基準について国交省の考え方を示されたい。
    東京都は6000台/日を評価基準としているが妥当であるかどうか。東京都の道路整備における基準交通容量は2車線、幅員15m以上は21,600台としているのに整備の指標を6000台とすることは明かに不合理です。
  2. 都市計画道路の整備方針のあり方について
    国交省は新中期計画および改定都市計画運用指針、今後の都市計画はどうあるべきか等の政策において、将来の社会経済情勢を踏まえて、将来交通需要に見合ったそして、格子状ネットワークにこだわらない都市計画道路の整備を行うことを方針として提示し、さらに地方版の経過を立案するように指示しているが、これらが十分に実行されていない。
    例えば東京都は50~60年前の都市計画決定ネットワークをそのまま全線整備する事業化を進めている。これは極めて不道理であるがこれらについて国交省として適正な計画に見直すよう措置を講じられたい。

18. 道路環境アセスメントについて

  1. 道路騒音等についての適正なアセスメントの実施及び環境保全措置について
    ① 第一種住専地域への幹線道路沿道の特例基準適用を廃止するように国交省道路アセス技術指針の評価の指標を改正すること。特例基準では住専地域の静穏な居住環境、生活と健康を守ることはできません。このことは特例基準施行後の実態から明白になっています。
     道路アセスにおける騒音・振動等の予測・評価及び環境保全措置について、大型車は別個に予測・評価し、適切な環境保全措置を講ずるように技術指針等を改めてください。大型車の定常走行時は70~80dB,交差点や坂道等での加速騒音は90dBにも達することは実態から明白です。等価騒音による平均値では60~70dBです。
  2. 複合(合成)アセスを行うよう技術指針を改正
    交差点、並行道路、幹線道路等に囲まれ、あるいは近接する住専地域について複合(合成)調査を実施するよう技術指針を改定してください。
    現行アセスでは事業本体しかアセスの対象にしていません。沿道住民は本体とともに既存の道路との複合した公害を受忍しなければなりません。複合アセスの実施は事業者の当然の責務です。
  3. 安全則に基く複数予測を技術指針に明記してください。
    環境省の基本的事項にも明記しています。「科学的知見の限界に伴う予測の不確実性・・」、これに対応する施策は複数予測です。交通量をはじめ、大気汚染、騒音・振動その他の環境要素について複数予測を行うことによって安全性を担保できます。

 以上の要請事項は各省等が独自に制定する技術指針に関する事項です。国交省として道路環境の保全のため検討し、よりよい施策とするようにしてください。

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