『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』**【さくらやまなみバス】の経営活性化と【西宮北有料道路】の有料化維持の提言**<2017.1. Vol.96>

2017年02月23日 | 藤井隆幸

【さくらやまなみバス】の経営活性化と
【西宮北有料道路】の有料化維持の提言

世話人 藤井隆幸

はじめに

 昨年12月例会は、【さくらやまなみバス】に乗ってみることと、その主たる利用地域で活動する「北部水源池問題連絡会」のメンバーと交流することでした。

 「国鉄分割民営化」(1987年)の前あたりから、赤字ローカル線の廃止が急速に進み、バスに転換されることが多くなりました。そのバスも、当然赤字で路線廃止されることも多く、地方の公共の足が奪われることになっています。この事が、過疎と車中心社会を推進し、大きな社会問題となっています。

 【さくらやまなみバス】は西宮市(人口489,139人・面積100.18㎢=2017.1.1.推計)の南部主要地区と北部の山口町(人口17,442人・面積23.79㎢=2017.1.1.推計*1951年に西宮市と合併)とを結ぶ、地域の足として2009年に設置された路線バスです。西宮市が阪急バスの子会社に委託するという形で運営されています。

 当然、運営は赤字で、西宮市と地元財産区の補助が必要となっています。地元の足を確保するために、乗車効率を上げるための努力がされていますが、決定的な赤字解消の目途はありません。この路線が無ければ、北部山口町から南部主要地区に行くには、他市を通過し、様々な乗り換えが必要になってきます。何とか存続させたいものです。

 そんな現実を視察するとともに、地元の意見を聞いたのが、12月例会でした。例年、忘年会になる所でしたので、現地のみなさんの配慮で、昼食会もかねました。

【さくらやまなみバス】の現状

 当日は、阪急西宮北口駅から乗車したのですが、阪急夙川駅まで来ると、空席が無くなって立って乗車する人が出てきました。通勤・通学時間帯でもないのに、何時もこのような状況だったらよいのですが。

 原因は、年末最後の日曜日とあって、白水峡墓苑前で殆どが下車されました。お墓掃除なんですね。有馬温泉を出ると、殆ど乗客はいなくなり、我らが目的地の北六甲台センター前では、私たちだけでした。

 すこし、現状を数字でご説明しておきます。出典は、西宮市ホームページ > さくらやまなみバス(くらしの情報) > さくらやまなみバスの概要 とすすみ、≪利用実績≫と≪さくらやまなみバス事業評価委員会 開催記録の公表≫です。

URLは http://www.nishi.or.jp/navi/ln_0010400718.html

 利用者数の年間統計が、2015年度までですが、直近の月別利用者速報を見ても、それほど伸びているとは思えません。伸び悩みと言うところでしょうか。一方、経常収支については、2011年度までしかなく、最近のものが見当たりません。情報公開をするのも面倒です。おおよそ、6000万円から7000万円の赤字と言うところでしょうか。

 2011年度の1人当たりの平均乗車運賃は263.1円/人ですから、殆どは西宮南部の間の利用者と、山口小・中学校と船坂間、山口町と甲山高校間の通学定期ということでしょう。西宮南部地域から北六甲台センター前までは、780円(大人通常運賃)という事です。何とも高い感じがします。

 この運賃を安くする方法を講じれば、通学だけではなく一般客も増えるのだと考えられます。そのことは、増便にもつながり、ますます利用者が増えて、黒字経営になることが可能になります。

【西宮北有料道路】の無料化を前に

 【さくらやまなみバス】が南部と北部を通過する際に、兵庫県道路公社の運営する【西宮北有料道路】、通称「盤滝トンネル」があります。この道路も、西宮市北部の住民が南部へ行くためには、宝塚市経由か有馬~芦屋市を結ぶ、芦有(有料)道路を使用しなければなりませんでした。

 そのため、急なヘアピンカーブのある山道ですが、県道大沢(おうぞ)西宮線が建設されました。当初、地図には記入せず、地元民だけが使用したものと聞きます。が、余りにも難走行の為に、1991年3月25日に「盤滝トンネル」が供用されました。

 この道路、計画交通量が7000台/日のところ、かなり上回る利用があり、兵庫県道路公社にとってはドル箱と言う現実があります。ただほど安いものはないと、政治的な単純な思惑から今年度末に、一般県道に移管し、無料化に踏み切るとのことです。

 この道路の概要について、少しふれておきたいと思います。

 出典は<兵庫県道路公社HP>より http://www.h-dorokosya.or.jp/

西宮北有料道路(盤滝線)の平成2015年度予算

■維持修繕計画(単位;千円)

トンネル覆工・舗装板補修工事、法面等修繕工事、舗装修繕、橋梁修繕工事、トンネル防災・換気・照明等設備更新、路面清掃、除草、設備保守点検、雪氷対策、道路附属物等点検等

729,300

■業務委託計画(単位;千円)

料金収受業務、交通管理業務、料金収受機器等保守点検業務等

121,248

 【西宮北有料道路】の通行料金を徴収するのは、1954年に成立した有料道路制度に基づくものです。借金で道路を造っておいて、通行料金を徴収し、元金・金利を返済するというものです。当初、ペイすれば無料化を言っていたのですが、現在は「プール制」に変更され、ペイしても他の道路の資金に回すこととなっています。

 ところで、道路である限り維持修繕費は発生します。2015年度では7.3億円の予算であった訳です。無料化にすると、業務委託費の1.2億円は不要になります。この7.3億円の支出は、今まで通行料金で賄われていました。が、無料化後は、県の一般財政(税金)から支出されることになります。大部分がトンネル(1.7㎞)構造ですので、大規模修繕が長期間となるでしょうが、必ず発生します。これは相当の負担となるでしょうね。

 また、この道路は通過道路として利用されるのが多く、今でも通勤時間帯や行楽時には、大渋滞が日常化しています。盤滝トンネルを下って、南部市街地に行く県道大沢・西宮線は高低差が大きく、道路構造令に適合するためには、広い場所を確保して巨大ループを設置するか、登坂車線を新たに新設しなければなりません。何でもやって不可能ではありませんが、市街化の進んだ土地利用から、膨大な予算が必要になります。費用対効果からは、考えることが無駄な事業と言えるでしょう。

 無料化になると、当然交通量はかなり増えます。これまでの渋滞に、増えた交通量はそのまま渋滞の車列になります。地元利用者にとって、大変迷惑な話です。このシュミレーションは、別の資料が必要になりますので、本稿では割愛させて頂きます。しかしながら、ドライバーと同乗者の時間給を800円にしたところで、渋滞追加損失よりも通行料金の方が半額以下となるのは確実です。

【さくらやまなみバス】と【西宮北有料道路】の維持で

 ここで提言です。最近の資料が無いのですが、【さくらやまなみバス】の年間赤字は、6~7000万円でしかありません。一方で、【西宮北有料道路】の利益は、確実に2億円あります。

 有料を維持したうえで、この2億円のうち、1億円をバスの維持費に回すことを提案します。西宮市と地元財産区の赤字補てんが無くなるだけではなく、210円より高い運賃を半額にすることが可能です。

 ここまで書けば、もう何も説明することもありませんね。【さくらやまなみバス】の活性化は間違いありません。また、【西宮有料道路】も快適で、時間ロスが増えることはありません。

 ただ、問題は有料道路制度の例外措置を実施しなければなりません。欧米先進国では、簡単にやってのけることが、日本の利権機構では難しいのです。国土交通省の道路局の抵抗を排して行うのは、かなりの政治力です。革新だの保守だのと言う枠組みは通用しません。ここが悩ましいのです。

 無理やり進め続けたモータリゼーションの混迷を、如何に解きほぐすか? JR北海道が独自では16路線の赤字ローカル線を廃止するとのこと。鉄道部門だけで考えても、解決策はないでしょう。垣根を越えた政策提言で、簡単に解決することなのですが。

 自動車交通には、莫大な投資が行われています。一方で、明治以来、戦前まで続けられた鉄道中心路線は、予算が消えて無くなりそうになっています。なに? リニアとな! バカ言ってんじゃないよ!!

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