『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』**水問題のシンポジウムに参加して**<2011.7. Vol.69>

2011年07月02日 | 北部水源池問題連絡会

水問題のシンポジウムに参加して

北部水源池問題連絡会

 いささか旧聞に属して恐縮ですが、昨年11月27日、関西大学で「21世紀水が危ない!?知られざる水の真実 ~その時日本は生き残れるか~」というシンポジウムが開かれました。これは、読売テレビの朝の番組「ウェークアップ! ぷらす ライブ」として開催されたものです。我々の連絡会ではこれに参加すべく委員全員を二人一組で申し込みましたが、おそらく関西大学に入学するより難しい競争率をかいくぐり、1組だけ参加することができました。

 基調講演は地盤工学の権威でもある関西大学学長の楠見晴重氏。続いて建築家の安藤忠雄氏、前横浜市長の中田宏氏が登壇。司会はこの番組のキャスターであり、ベストセラーになった「日本のおそろしい真実」などの著者でもある辛坊治郎氏。読売テレビ特別解説委員の岩田公雄氏も交え、途上国における清潔な飲料水の確保や水ビジネスの将来、暮らしと水との共生など、水資源をめぐり様々な角度からの討論が行われました。

 日本では4人家族で1日約1トンの水を消費し世界1,2を争う水消費国。「湯水のごとく」という言葉が生まれるほどこれまで上質で豊富な水にめぐまれてきました。たとえば京都は平安京以来、井戸の町といわれ、井戸の遺跡が現在でも1万基以上存在し、地下水量は琵琶湖に匹敵すると言われています。また京都だけでなく日本各地に名水といわれる水を有しています。しかし、一見豊富な水を有する日本であっても、食料の自給率はカロリーベースでわずか40%弱。そのため、農作物輸入による間接水量は1年に438.6億㎥超に及びます。一方地球上の水は97.5%が海水、淡水はわずか2.5%。そして増え続ける人口。例をとると中国の人口は世界の4分の1を占めるけれども水は世界の淡水の6%しかありません。また、世界の多くは作物に地下水を使用していますが、地下水のくみ上げすぎで地盤沈下は深刻な問題になっています。では、海水を淡水化すればということになりますが、これについて日本は非常に高い技術を持っています。しかし、淡水化には莫大なエネルギーを必要とし、したがって高コストということになります。如何にコストをさげるか、そして、この高い技術と、水を飲料としてだけではなく地域保全としての水利用のノウハウをトータルマネージングし「日本の水文化」のパッケージとして輸出するのが日本の生きる道であるということなのです。

 現在、どの自治体も水道事業について経営の積極的な工夫はなされておらず、赤字になれば料金の値上げということが繰り返され、水道料金が庶民感覚からかけはなれたものになってきています。そこを打開する一つの考え方として水道事業を「公の独占企業」とし、発展途上国にインフラ整備の一環として輸出するということがいわれています。しかし、日本はこれまでの経過から公務員が水道事業のノウハウを持っているけれども現在の法のもとでは公務員は輸出ビジネスに関わることができません。その点、ヨーロッパでは早くからそのような思考回路を持ち、アジアでも韓国では積極的なインフラの輸出に努めているということです。

 先の東日本大震災の例を待つまでもなく、私たちは水の大切さを体験しています。このシンポジウムに参加し、深刻な水不足に陥ることが予想されている現状を直視し、限られた水をどのように保全し清潔な水を多くの国で享受できるようにするか、大きな関心をもっていきたいと考えた次第です。最後に「人間にとっての水は命そのもの。単純に水に対する畏敬の念を持つべきである」という言葉は印象的でした。

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