真の住民参加をめざして
民主主義の試金石
代表世話人 砂場徹
「阪神間道路ネット」に参加する組織の大部分が、地域住民の要求の未解決のまま、すでに数年以上を経過した。その間、私達はいかなる相手であろうと、理不尽や欺瞞の押しつけに屈伏しなかった。これは私達が共有する誇りでもある。
ところが、いつの間にか私たちは、「慢性心消化不良症」とか言う「新病」をも共有してしまったようだ。原因は、民主主義の旗を投げ捨てて恬として恥じず、開発行政に邁進する行政や公団との接触で、毒にあたったのだ。下手をすれば命取りになるこの毒とは、まだまだ相当の間付き合う覚悟が必要だ。
ところで、最近の国の政治、経済、社会の激変は、万年頭を抱えている私たちに二重二重の心の負担をもたらしている。何か大切なものが崩れはじめているではないか。また、私たちの運動は、この社会の中でどのような位置を占めているのか。
いずれにせよ、私達は活動の中で培われた絆を大切にして、これまでの道を確認し補強しつつ、要求の解決のために、ひいては民主主義の実践のために今年も協働し補強しつつ、前進したいと思う。それが今日的状況に応える道に合致することを祈念する。
さて、新年にあたって、日頃「親愛なるお付き合い」を願っている、阪神間各市の首長の「仕事始め式」での言葉を新聞紙上拾ってみた。
- 〔庄司宝塚市長〕 「英知やエネルギーを求める街づくりに、市民の参画と実践は不可欠」「市民団体は街づくりのパートナーです」
- 〔宮田尼崎市長〕 「市民のみなさんに積極的に情報を提供し、十分な説明をしなければならない」
- 〔馬場西宮市長〕 「市民のみなさんに本市のおかれている状況を誠意をもって説明することが街づくりを実現させる」
- 〔北村芦屋市長〕 「激動する社会で市民のニーズを把握するためにも、市民参加システムの構築をお願いしたい」
- 〔川西柴生市長〕 「環境問題は人類の課題。ゴミ処理施設の建設は市民のみなさんと精力的に話し合いたい」
- 〔松下伊丹市長〕 「これまでの枠組みにとらわれず、市民の最大満足をめざし柔軟にとりくんでいきたい」
- 〔真田猪名川町長〕 「住民のみなさんが望む施策を展開するため、一丸となって創意工夫をしてければならない」
なんとご立派な「お言葉」であることよ。まさか相談したわけではないだろうが、この人たちは恥ずかしという感情を持ち合わせないのだろうか。各首長の話しの力点は「市民への情報提供」「市民参加」で一致している。今は、言葉だけでもこう言わねばならないという彼らなりの危機感がそう語らせたようだ。だが、私たちは知っている。身にしみて実感し、怒り、今も行政に対する不信を隠さない関係にあるのは、実にこの人たちによる「情報かくし」と「市民排除」だったのである。私たちは彼らの体質が簡単に変わるものではないと確信する。すなわち「新年の言葉」で語った首長たちの決意表明は、彼ら自身それが無責任、ウソ八百、ゴマかし、であることを承知のうえでの発言なのだ。
その実践が早くもはじまった。年明けの9日、兵庫県土本部河川開発課が『武庫川下流の治水』というA3版カラー印刷8ページ、の豪華なパンフを尼崎市の全戸に新聞折り込みをした。ちなみに配付数は38万部という。中身は、「武庫川があぶない」「阪神市街地を水害から守るためにダムをつくらねばならない」というもので、工法や構造まで説明し、最後に「武庫川ダムは今後、河川法、環境影響評価に関する条例等に基づき、地域住民の皆様方や学識経験者のご意見もお聴きしながら、手続きを進めていきますのでご理解、ご協力をよろしくお願い致します。」と述べている。すでに『武庫川ダム』計画が決まっているように受け取らせるもので、とんでもないウソである。この手法は開発側の常套手段で、住民の求める「何故必要なのか」は説明しない。つまり、「意見は聴くが建設の計画は変更しません」という説明会なのである。西宮市では自治会の役員だけが説明会に呼ばれ、住民が会場に入るのを拒否された。
おりしも、吉野川第十堰を壊して可動堰に作り替えるという建設省の計画に反対する住民投票がすすんでいる。その中で建設大臣を筆頭に開発推進派の暴言が相次いでいる。「住民投票は民主主義のはきちがえだ」「治水は高度の技術が必要で、素人が判断することではない。専門家にまかせろ」など。97年に改正された河川法では、「住民の意見を反映させるため必要な措置を講じなければならない」と明記されているのを知らないのか。これが担当大臣の認識なのだ。真に「情報公開」「住民参加」を実現するにはまだ高いハードルがある。
この号が出る頃にはこの住民投票の結果がでていると思われる。私は勝利を確信している。もし仮に投票が50%に達せず投票用紙は没になったとしても、7年間を闘いつづけ、大型公共事業の選択を住民投票にかけた意義ははかりしれず大きい。
私たちもこれらの運動とともにあって活動をつづけたいと念じる。
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