『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』元気のない住民運動と元気な住民**<2008.5. Vol.52>

2008年05月01日 | 神崎敏則

尼宝線拡幅整備問題
元気のない住民運動と元気な住民

みちと環境の会 神崎敏則

説明会に多くの住民が参加

 昨年11月に説明会の開催を求めて署名を取り組み、417名の署名簿を12月18日に2名の住民と一緒に3名で西宮土木事務所に行き、提出しました。

 担当課長は417名の署名の重みを受け止め、やっと3月30日に説明会がおこなわれました。当日は、あいにくの雨天にもかかわらず、多くの住民のみなさんが参加されました(県が作成した議事録によれば「47名」の出席となっていますが、それより多いからた印象があります)。

 まず、拡幅整備事業を主管する西宮土木事務所。道路整備第2課から説明があり、その後に住民からの意見、質問、それに対する県の回答がありました。10名の方が次々に発言され、住民のみなさんの注目の大きさがうかがえました。

住民の要求が一部実現ヘ

 今回の説明会の特徴は、これまで住民が要求してきたことの一部を県が受け入れると表明したことです。評価できる点は以下の5点です。

事故防止効果があるといわれる街灯を、交差点部には(照明灯を)設置すること
武庫工区以南の歩道は危険箇所が放置されているので、段差解消や溝ふたの取り付けをおこなう歩道リニューアルエ事を実施すること
武庫総合高校西横の歩道幅が現状より狭まらないよう、高校と用地交渉を進めていること
信号(白色押しボタン箱を含む)の設置の要望があることを警察に伝えていること
より騒音低減効果の大きい「2層式排水性舗装」の採用を検討していること

 これらの前進した回答を得ることができた一方で、不十分な点も残されています。

歩行者の横断防止のための柵は設置するが、自動車事故から歩行者や沿道の住民を守るためのガードレールは設置されないこと
最も効果の大きい騒音対策である遮音壁が設置されないこと
健康被害をもたらす排ガスヘの対策が皆無に等しいこと

 評価できる点、不十分な点についてここでは、それぞれ項目を挙げるにとどめました。詳しくは、『みちと環境の会』のニュース『青空だより改-56号』をご参照いただければ幸いです。今回の拡幅整備工事の担当課の姿勢が重要なテーマであることは言うまでもありませんが、この文章は、住民運動と私たちとの関係に絞り込んで、個人的な考えをまとめたものです。

住民は疲れているのか

 それまでの説明会は05年12月と06年12月の2回おこなわれ、どちらもウィークデイの夜間二日連続というパターンでした。「お年寄りや女性が参加しやすいように、時間設定に配慮してほしい。日曜日の昼間と平日の夜間の2回にしてほしい」とあらかじめ当局に申し入れていました。結局は日曜日の昼間1回しか設定されませんでしたので、「県は、そんなにまで住民の意見を聴きたくないのか」と勘ぐりました。

 今回の説明会の前段では、これまで一緒にかかわってきた住民のみなさんに当日に発言しようと、毎月おこなっている「沿道住民の集い」の中で話し合ったり、個別に相談してきました。

 西宮土木事務所まで一緒に申し入れに行ったことのある4名、「集い」に何度も参加した方5名、参加はしていないが署名などで呼びかけ人として自分の名前を連ねることを快諾した3人、ニュースを配る時に尼宝線の問題点をよく話し合った5名など計21名を対象者に選びました。

 ぜひ発言してほしいと期待を寄せていた方のうち、自営業の3名の方は、案の定というか、非常に残念なことに参加できませんでした。それでも自営業者の1名の方は参加され、会場ではMさんの横に座りました。

 期待していた1名の方はお彼岸の墓参りで参加できないと聞かされました。1名の方は3回訪ねても会えずに、結局は同居の母親に伝言したのみとなりました。1名の方は「当日は市外に出ているので参加できないけど、育友会でも市民プール
閉鎖反対の署名や対市交渉をして結局はダメだったけど、こういう問題は大事なことですよネ」とこちらが励まされるような感じになりました。2名の方は「(予定が)あいていたら参加します」との返事でした。3名の方には会えずじまいでした。もっとも期待を寄せていたOさんには、2度目の携帯でやっとつながりましたが、参加は難しそうでした。

 Oさんは、06年12月の説明会で「納得のいく回答が全然されていませんよ。説明会を改めて開いてください」と執拗に迫って、渋る県から説明会の再開の約束を引き出した中心メンバーでした。

 その後、開催の動きが見られないので、07年10月5日に西宮土木事務所にOさんと2人で出向いて住民への説明会の開催を求めました。1時間以上話し合いましたが、課長は「説明会を今の段階で開いても進展すると思えないので、開かない」とかたくなでした。「住民にとっては騒音や排ガスや歩道の安全の問題は、日々の生活の問題なので、これであきらめるわけにはいかない。住民のみなさんに県の対応がこんなにひどかったことをお知らせして、みんなで議論して今後対応する」と言い放って、署名活動に推移したのです。

 ところがそのOさんは、今年に入ると「沿道住民の集い」に参加されなくなりました。「よほど忙しくて大変なんだろう」と安易に想像していました。そのOさんが説明会に参加されないのは、僕にとっては大変ショックでした。

 そんなこんなで、こちらが意図していたこととは正反対の状況しかうかがえませんでした。……当日は県が説明することを黙って聴いている住民がほとんどで、意見もろくに出ないかもしれないなぁ~。けど、それはそれで、住民が出した一つの答えではあるし、現状を受け止め、またそこから出発するしかないなぁ~、とぼやきと前向きな気持ちが複雑に入り込んだ心境でした。

 当日は、あいにくの雨でした。風も出はじめて、ただでさえ少ないのによけいに参加者が減るだろうと、へこみました。県もある程度参加予定者を把握しているようで、3階大ホールの中に、椅子を50客程度こじんまりと並べていました。ところが開始時刻になると、参加者がトントンと増えて、担当者があわてて追加の椅子を並べ始めました。県にとっても僕にとっても意外な状況でした。

次々に発言する住民

 説明会では、まず県が1時間使って資料に基づいて説明をおこない、やっと住民の発言の場面となりました。マイクを持って発言するのは慣れていないだろうと、いつも自分が口火を切る役をすることにしていたのですが、この日は最初から3名が手を挙げていました。『みちと環境の会』のメンバーである僕とMさんの発言を除いて、住民が発言した趣旨を項目にしました。

4車線になると、今は信号がない交差点にも設置が必要だ
アスファルトのわだちがひどくて、騒音が大きい。工事まで放置しては困る
騒音対策として、信号を増やせば車の速度が遅くなるので、そうしてほしい..
2層式排水性舗装の騒音低減効果はどの程度か
武庫工区以南の歩道のリニューアルエ事の担当課を教えてほしい
拡幅後の騒音の予想値が“+2dB”とは納得がいかない
振動の予測結果が大幅に悪いが、対策はないのか..
大型車の騒音と振動がひどい。4車線化後も走行速度の制限を上げないでほしい
大型車は中央車線側を走行するような看板を設置してほしい
SPMのつづりを教えてほしい
自転車専用レーンを設置してほしい..
阪急神戸線をまたぐ高架部分は歩道の照明が暗いので設置を
横断防止柵は武庫工区以外でも設置するのか
高校生の自転車走行が危険なので、安全な道路を作ってほしい
NOx、SPM、騒音、振動については、工事完成後も計測して、住民に公開してほしい

 というもので、そのほとんどがこれまで住民と話し合ってニュースやパンフレットで訴えてきたことと重なるものでした。

 発言者のほとんどは、これまで私たちがかかわったことのない住民ばかりでした。これまで一緒にかかわってきた住民の方は、たまたまかどうかはともかく、ほとんど出席されずに、かかわりのなかった住民の方が同じようなことを一生懸命に訴えているのです。僕にとってはそれまで経験したことのない、不思議な現象でした。

一緒にかかわってきた住民の落ち込み

 これまでの運動を振り返って、Mさんは「毎月ニュースを出してせっせと配り続けたり、パンフレットを作成したり、署名をしっかり集めたりしているから、住民からみると“よほど大きなグループがやっているんだ”と思ってきっと安心している」と言います。ひょっとしたら、そんな面も無くはないかも知れません。ニュースを毎月配っていると、そのニュースが住民によく読まれていることは感じます。そして、ニュースを読むだけでつながっている人から見ると、たしかに安心はするかも知れません。でも問題は、その先にあるのだと思います。

 ニュースを読むだけの受け身の住民ではなくて、一緒にかかわった住民こそが、運動の実態とメンバーの過小さのアンバランスを一番強く感じたのではないでしょうか。

 04年2月~3月におこなったアンケートからのお付き合いのSさんのお宅を訪ねると、時々、「ほかの住民はみんなあきらめとるんや」と言われることがありました。実はSさんのご近所には、署名の呼びかけ人に名前を連ねた方が2名もおられるのですが、それぞれ事情があって「沿道住民の集い」には一度も参加されたことがないのです。「あきらめているわけではないですよ」と言いたいのですが、Sさんの気持ちも分らないでもありません。

 今年から参加されなくなったOさんも「大事な問題だから、一生懸命やらないといけないけど、やっているのはほんのわずかな住民だ」とひょっとしたら思っているのかも知れません。

 今の時点で言えることは、一緒にかかわった住民のみなさんに安心感を与えることができなかったことが一番の反省点ではないでしょうか。集会を主催するうえで、参加者をしっかり確保することにもっと強いこだわりが必要だったと思います。安易に「継続は力なり」という言葉に頼っていただけなのかも知れません。

次の山場にポイントを合わせて

 工事が始まる2011年ごろには、また大きな山場が訪れるでしょう。今後は、その時に合わせて少しずつ準備を進めていく予定です。今までと同じように毎月ニュースを出して「沿道住民の集い」を継続していくのか、それとも、間隔をあけて節目節目の取り組みに集中するのか、答えは出ていません。ぜひみなさんのご意見をお聞かせください。

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