『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』日本高速道路保有機構の借金に税金をつぎ込むな!**<2010.7.&9. Vol.65>

2010年09月01日 | 神崎敏則

日本高速道路保有機構の借金に税金をつぎ込むな!

みちと環境の会 神崎敏則

45年かけて40兆の債務を返済する計画だった

 2005年10月に4つの道路公団は民営化され、東日本、首都、中日本、阪神、西日本、本四連絡、の高速道路株式会社に再編されました。そして、4つの道路公団が保有していた資産(高速道路そのものと総額40兆円の借金)を日本高速道路保有機構が引き継ぎ、45年かけて借金を返済することになりました。

 図①は、借金の返済方法を簡略化したものです。日本高速道路保有機構は、各高速道路をそれぞれ高速道路株式会社に貸し付け、各高速道路株式会社は通行料の一部から借用料として道路保有機構に支払い、道路保有機構はその貸付料収入により、債務を返済することになっていました。

 しかし、この返済方法は計画倒れに終わり、返済に税金が投入されてしまうのではないかと当初から危惧されていました。

道路保有機構の債務に一般会計から約2兆9千億円も注入される

 2007年に道路特定財源を見直し、「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律に改めました。この法律により、

  1. 道路整備費の財源の特例措置の適用期間をH20年度以降10ヶ年間とする
  2. 予算編成の段階で、揮発油税等の収入額が道路整備費を超える場合は、その年度は道路整備以外にも当てることができる
  3. 国は、地方公共団体に対し、道路整備事業の一部を無利子で貸し付ける
  4. 高速道路㈱が通行料金の減額などをおこない、高速道路㈱への貸付料の減額をおこなった場合には、道路保有機構のもつ債務を継承する

ことが決められました。

 さらに2008年は、税金3兆円を投入した『利便増進事業』の使途を、「休日1000円」など道路会社による料金割引と、高速道路の出入り口に簡単な料金所を設置する事業に限定していました。

 これらの法律により、H20年度には、道路保有機構の持つ負債のうち2兆8,791 億円分を国の一般会計が肩代わりする形で債務を承継してしまいました。

 H20年度の財務実績を日本道路保有機構はホームページで以下のように解説しています。

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負債の総額は、34 兆5,630 億円となりました

  • 大半は、①『機構債』(『1年以内償還予定機構債』を含む。)の21兆6,921億円と、②『長期借入金』(『1年以内返済予定長期借入金』を含む。)の9兆1,979億円の、計30兆8,900億円であります(全体の約89%)。
  • 負債の総額は、前年度末と比べて、1兆495億円減少しております。これは、①高速道路利便増進事業を行うにあたり、国の一般会計へ債務承継したことによる2兆8,791億円の減少、②機構債及び長期借入金の償還又は返済による4兆3,030億円の減少がある一方で、③高速道路利便増進事業引当金の新規計上による2兆6,211億円の増加、④機構債の新規調達による2兆9,830億円の増加、⑤高速道路会社からの債務引受による4,418億円の増加等があったことが、主な要因です。⑥純資産の総額は、7兆1,075億円となりました。
  • 純資産は、『資本金』の4兆8,552億円、『資本剰余金』の8,469億円、及び『利益剰余金』の1兆4,052億円の、計7兆1,075億円となりました。
  • 純資産の総額は、前年度末と比べて、6,957億円増加しております。
    これは、①『資本金』が、政府及び地方公共団体からの出資金受入れにより1,272億円増加し、②『利益剰余金』が、当期純利益の積み立てにより5,690億円増加したことが、主な要因です。

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 ついに一般会計から堂々と税金を投入して、日本高速道路保有機構の借金を返済することがはじまりました。その額なんと2兆8791億円です。それをなしえたのは、高速道路通行料の「休日上限1000円」や「無料化の社会実験」なのです。世間では「上限1000円」や「無料化」が歓迎されています。繰り返しますが、その裏では税金2兆9千億円もの税金が、かつての道路公団がつくった借金の穴埋めに使われているのです。

新たな高速道路の建設にも税金が注入されるのか

 いま永田町や霞が関で争点となっているのは、道路整備事業財政特別措置法を改正し、車線の増設や既存の高速道路間を連絡する高速道路の新設、改修などにも適用させることです。つまり実質的に新たな高速道路建設にも税金を投入させるというものです。

 無駄な高速道路を造るよりは、ひっ迫している社会保障を厚くすることが求められているはずです。

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