『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

1999年9月創刊。≪阪神道路問題ネット≫交流誌のブログ版。『目次』のカテゴリーからの検索が便利。お知らせなども掲載。

『みちしるべ』東京より(1)**東京38年ぶり**<2012.3. Vol.72>

2012年03月02日 | パリ&東京&沖縄より

東京より①東京38年ぶり

三橋雅子

 折角東京に出てきているのだもの、と2.19原発反対デモに参加する。デモといえば波打つはずの労組と大学の旗は見えない。めいめい手作りのタスキがけなどで「ハイロ」とか「原発いらない」のアピールをしている。会場の人並を押し分けて歩き廻ると、チンドン屋まがいの鳴り物やカラオケ隊のけたたましさ、子供たちに配る風船で体が浮きそうなお姉ちゃん……とまことに賑やかなお祭り気分。しかし風船を手に走り回る子供達の側で「バアチャンこわいよー!ゲンパツやだ!」なんてタドタドしい字のゼッケンを胸にポツネンと佇む老女、こっちの方が迫力あるなぁ。どっち道60年安保とは、到底程遠く、様変わりなんてものじゃない、と感激しきり。

 同行の仲間はかつて同じ職場で「臨時職員組合」を作った同志だ。今でいう「非正規雇用組合」か。本当かどうかは不明だが、「日本初の臨職組合」と言われた。少なくとも、政府の将来はない、と必死だったのに、結果通してしまったのは我々世代の重大な責任なのだ。当時大学院生だった私は聴き逃したくない講義と「今日こそ関ヶ原、国会突入か?」と言われるデモとの間を引き裂かれる思いで毎日右往左往していた。やがてキャンパスは人気がなくなり、教室もモヌケの殻、現れた教授も「国会に行きますか」と苦笑する始末。身を翻して国会周辺に駆けつけ、旗々々を縫って探し当てれば、「保守反動」のレッテル付教授たちも炎天下に黙して坐り込んでおられた。

 さて、52年後のデモ会場は、どこが中央でどこで何をやっているのか、さっぱり分からない。誰かがしゃべっているらしいが、とりわけ高いところもなし、顔も見えない。ただ、しきりに「今日は、かの大物右翼鈴木邦男氏も見えてます」「鈴木さんですらだまってられない……」と右翼もち上げっ放しに苦笑。そもそもこの会場は、ネットで見る限り、主体は、若者の反逆原動力『貧乏人の逆襲』その他の著者松本哉(ハジメ)氏率いる会らしいが、この日の為の度重なる準備会は、主催者そっちのけで、飛入りの新顔達が司会をのっとり、議員の発言を遮り、見た事もない輩達で牛耳られてゆく……。遂に「誰でも来い、ウゾウムゾウの会」と自称するようになったというから、この無組織の混沌こそこの集りの特徴なのかも。でもしゃべる人の踏台位用意すればいいのにねェ……などと年寄りはつい。

 やがて出発するらしく、しきりに「キッズとお年寄りは先頭に、後にキックなります……」と言われては、若者たちの、たとえ駈足でもスネイクデモでも充分付いて行ける、と自信はあるものの、おとなしく従うか、と先頭集団の一員に。いきなり物々しい警察の群に一瞬ギョッと。思わず恐怖が甦る。かつて、あの猛々しい盾をビッシリ並べ、その陰に武器を持った警官・自衛隊の群れは、いつこちらを襲ってくるか……ホントに怖かった。ひとたびデモの隊列が乱れたり、スネイクデモの動きが激しくなると、たちまち盾も乱れ武装した輩が無防備の隊列に突入、乱闘になる。血がほとばしる。怖かった。

 今、極めておとなしく、たまさかのシュピレヒコールだけで黙々と歩く紳士淑女・老人・子供の群れに、警官達も又極めて紳士的に、ひたすら交通整理に励んでいる。複雑な気持ち。「所詮君達は権力の番犬じゃないか。一旦、兆候あれば、こっちに歯向かってくるくせに。(現に反原発デモで何人か掴まってるじゃん!)」と本性を暴きたい衝動に駆られる。原発ハンターイ!原発ハイロー!だけでいいんかい?

 仲間のマイク氏にも、「東電潰せ!東電の責任者出てこーい!」はないの?と言ってしまった。否、東電だけじゃない、原発で行こう!という日本の進路を進めて来た政・財・官の徹底的に責任を問おうじゃないか。「過去を水に流す」のは歴史に学ばない事、日本人の犠牲者を冒涜する罪悪だ。ドイツの現在はナチ批判とその断罪の上にある、とつくづく思う。

 デモ隊は青梅街道を進み、交差点では長蛇の車を止めてもブーイングのブーブーも鳴らず鈴生りの歩道橋からは声援と拍手と……。商店からは飴の差入れ、「トイレをどうぞ」のサービスも、と随所で応援を受けながら、幼い子供達も風船は離してしまっても、ぐずらず2時間のコースを完歩。

 阿佐谷駅に着いた。しかし……「お疲れさまー」の和気アイアイなんかであってたまるか。この瞬間にも原発推進派の巧妙な動きは着々。それにまるめ込まれるマスコミは、原発の危険性、無謀を説く学者達の口を封じてきた、懺悔に至る、これまでの贖罪をテンとして恥じていない。これでは安保を通した愚の二の舞もやりかねないのだ。唯一の救いは、アンポは難しかったが原発はその恐ろしさが分り易い。眼には見えないけど、余りにもむごい証明を見せつけられている。

 途中、福島人がむしろデモ隊に向かって叫ぶ懇願とも聞える悲痛な訴え、東電の、国の責任をきっちり追及してくれ、という涙ながらの現地報告に、こんなことやってていいの?と、その非力さに自責の涙が止まらなかった。

原発デモ 廃炉を託す 春風船

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