蒼ざめた馬の “一人ブラブラ、儚く、はてしなく”

山とスキー、車と旅、そして一人の生活

アンビリィバボゥな暴風-自分史上最悪の白馬乗鞍

2013-03-10 16:35:35 | 山とスキーでブラブラ

引き続き6日も快晴。都会は20℃近くまで上がるらしい。

Imgp4617 白馬~小蓮華の山々がキレイに見える。

Imgp4618 9時半、林道は相変わらず大賑わい。10人位のグループ、今日はニホンジンの若者。他にハクジンのアベック。

振り向くと、Sサンと早速再会。朝、眼が覚めて、行こうと決めたら、松川からは1時間弱で着くそうだ。

おしゃべりしながら出発する。

Imgp4619 10:15成城大小屋着。遠景は唐松沢。

ペースの速いSサンに付いて行くのは大変だ。

天狗原の急登を登りきった白樺の大木に着くと、Sサンは「今日はここまで、この辺りで写真撮って帰ります、上は風も強そうだし」、との事。
確かに、稜線では頻繁に雪煙が上がっている。

Imgp4620 11:20天狗原着、地吹雪がスゴイ。

頂上へ二人、向かっている。それに続く。

先行者は、頂上台地へ登りきる手前の、左折して南進する辺りから、中々進んでいかない。何してンの(?)

近付くとワケが判った。頂上からの南風が地吹雪となり、頻繁にブォ~っとくるので進めないのだ。ズズズと滑り落ちている様に見えた事もあった。
しかし、彼らは結局見えなくなり、上手く登りきった様だ。

ワタクシもその箇所に着いた。ブォ~っと来る時は身を屈めて耐えるしかない。
シールは段々効かなくなり、クトーも斜面が柔かいので効かない。しかし、もう少し。

ブォ~っと来て身を屈めて、それが収まりそうになったので進もうとしたら、またいきなりブォ~っと来て耐えられず、飛ばされた。

横向きに倒れ、それからうつ伏せになり、頭部を下にして滑り始めた。
斜面はクラストしていないので直ぐ止まると思った。ゲレンデより少し急な斜面、いずれは止まる。激突したらヤバい岩等も下にはないハズ。
しかし止まらない。制動の為のピッケルはない。これはヤバい。

その後、脚部が下になり、また頭部が下になり、転げ落ちて行く。
ワタクシ、コケが生えてはダメ、転がる石(ローリングストーン)であり続けるべき、という考えですが、この時はもうこれ以上転がるのイヤ。

そして何かのはずみで右足の板が外れ、脚部を下にして止まった。
止まる前にストックが前歯に当たった。以前からいつ抜けてもおかしくないグラグラの前歯。立ちあがってツバを吐くと、血が混じっていた。遂に抜けたか、と思って舌で探るとまだぶら下がっていた。

右の板は5m位上に留まっていた。左の板も脱いでキックステップで右の板の所まで戻る。相変わらず頻繁にブォ~っとくる。見上げてもどこから転がったのか判らない。長く感じたが、転がっていたのは多分、数10m、10秒もないかも知れない。

さて、どうしましょ、もうヤメますか。

しかし、Sサンの様に、風が強そうだと下で判断してヤメるのは、賢明な敗退。
ワタクシの様に、軽く考えて来た挙句、地吹雪に飛ばされてヤメるのは、愚かな敗退。タダのアホ。

何とかキックステップで登れそうなので、板を両手に杖の様にして登る事にする。

ブォ~っときて身を屈めている時は休憩していると同じ、それが収まるとトトトっと駆け上がる。それの繰り返し。やがて左手に緩やかな岩稜が見えて来た。ホントにもう少しだ。

しかし地吹雪は益々強くなる。板を立てているとまともに風を受けるので、立って登れない。
結局這って登る事になった。時々氷の塊の様なモノも、バラバラっと飛んでくる。いずれにせよもう少し。

後続が一人、二人、これは林道にいたニホンジンの若者グループの一部(?)
彼らも風が避けられる岩まで這って登り切り、そこで降る準備を始めた様だ。

頂上台地に着いてまた板を履く。

頂上ケルン着13:15、フゥ~う、ヒィ~い。

とにかく風が強い。板やストックを立てて記念撮影できない。

Imgp4621 デジカメを取り出そうとして、右手の薬指に全く感覚がないことに気付いた。
エエッ、ヒョットして凍ってンのォ?擦ってみても感覚、戻りません。
オーバー手袋脱いで、毛糸の手袋のまま口に入れて息を吹きかける。やがて痛痒い感じになって、何とか感覚は戻った。ホッ。

さて、滑る準備、どこでやりましょ。
ケルンで風を避けシール外しても周りは岩だらけなので板は履けない。シール外して東側の雪のある所まで板を持って行けばいいが、風を受けるので板を持って歩けない。
100m程北側に、そこそこ大きな岩が並んでいるのが見えた。そこまで板を履いて、ハイ松の上を歩いて行くことにする。ハイ松サン、ゴメンナサイ。

風を完璧に避けられる大きな岩ではなかったが、そばにハイ松の窪みがあって、そこへ座り込んだ。座り心地は良かった。ハイ松サン、ゴメンナサイ。

風はキツイが晴れているので焦りはない。ゆっくりシールとクトーを外してザックに納め、ゼリー飲料と水を飲み、メガネの裏の固まった涙と汗を拭いて、ヘルメットにゴーグルをセットする。
風は益々きつくなっている様に感じる。長居は無用。
板と靴をWalkモードからSkiモードにしてさぁ帰りましょ。

台地の傾斜の緩い雪面へ出る。風紋と言うか、風が掘った溝、時々深いモノがあって突っ込むとコケるが、風に押されて勝手に進んで行く。ワシゃヨットかぁッ。

地吹雪は強くなり、吹いている時の方が長い。ブォ~っとくると周りは真っ白け、暫しホワイトアウト。
しかし、こういう状態がズゥ~っと続くと、ツエルト張る事も難しく、結局は凍死することになるのかなぁ。
オフクロも死んだし、扶養義務もないし、まぁ別にもう死んでもエエんですが、ただ定宿に迷惑掛けるので、何とか生きて帰りましょ。

ホワイトアウト状態が切れた時によく周りを観察しながら、少しずつ滑ります。もしコケて動けなくなったら、ホントにオワリです。

北側の斜面に滑りこむと、後は快適だった。そこそこ締まった雪面に風で飛んできた軽い雪が乗っている感じ。
しかし、振り返ってもシュプールは見えず、直ぐに地吹雪がブォ~っときて、周りは真っ白。Imgp4624 14時、天狗原まで下ってきた。写真を撮ろうとしても片側のストックを突き立てておけない。直ぐに地吹雪がブォ~っときて飛ばされてしまう。
そして撮っても何の写真だか判らない。

Imgp4627 天狗原から更に下るともう地吹雪はなく、ゲレンデの様な穏やかな景色。しかし、残っているのはワタクシひとり。

Imgp4628 乗鞍頂上方向をズームすると、相変わらずスゴイ雪煙が上がっている。

林道へ戻って来てホッとした。これで今夜も、定宿のママさんの美味いオカズで、信州の地酒が呑める。カミサン、ホトケサン、アリガトサン、ホントにそう思った。

林道には、ロープウェイやヘリで上がって来たスキーヤーが、谷側に入り込まない様、ロープが張ってあった。春スキー、準備万端です。


今年7回目の栂池高原雪景色-奇跡の再会物語

2013-03-10 12:32:03 | 山とスキーでブラブラ

3月になり気温はグングン上がるらしい。

5日、今年7回目の信州・雪山通い、途中の道に雪は全くなく、ナント定宿の駐車場の雪も溶けていた。

Imgp4606 春のイイ天気の元、高校生はスキー講習。

Imgp4608 ハンノ木コース沿いのリフトから馬の背の尾根を見上げる。 

Imgp4609 ハンノ木コースの斜面。

Imgp4612 白樺の林を透かして小蓮華の稜線が見える。

Imgp4614 馬の背コースを下り、ゴンドラで登り返しているとケンタッキーのオジサンと遭遇。

Imgp4615 馬の背コースの入り口辺りから振り返って、白馬大雪渓をズームする。

Imgp4616 ゴンドラ中間駅のそばにはヘリポートが完成。いよいよヘリスキーが始まる。春ですなぁ。

ゴンドラ中間駅に入ろうとしたら声をかけられた。昨年、偶然お会いした、松川の写真家・Sサンだった。ワタクシを見かけて待って頂いていたそうだ。ゴンドラに乗って色々お話しした。

昨年、2週連続して自然園でSサンに遭遇した。
その翌週、天狗原への斜面手前で川崎のYサンと2年ぶりに再会した。前月転倒してアバラを骨折した、と言っていた。
そして、天狗原への斜面に取り付いている先行者を指して言った。あの人は地元の人で、しょっちゅう来ていて、今回は蓮華温泉まで行くと話していた、と。
ワタクシはその後ろ姿、ザックの色等から、その人が写真家・Sサンだと思った。
その日の天狗原は猛烈な地吹雪だった。
栂の森へ戻り、カフェテリアに入ろうとすると、Sサンも降りてこられた。地吹雪なので引き返されたと、直ぐ判った。3回目の遭遇だった。
その後カフェテリアで色々おしゃべりした。
ワタクシは、天狗原への斜面手前にいた人も、ここで偶然知り合った川崎の人で、アバラ骨折中なのにスキーをやっている、とか言う話をしたらしい。

このお二人が、ナント、先週ゴンドラで遭遇したそうだ。
そして、Yサンが川崎から来ていて、アバラを骨折してと言う話をしたので、Sサンは昨年ワタクシから聞いた事を思い出し、神戸の〇?△サンを知っているか、とワタクシの名前を言ったら、Yサンは知っている、と答えたそうだ。

まぁ何と言う偶然、奇跡の再会物語だ。全くイロケありませんけど。

Yサンは今、山の会を主宰されていて、近々10人以上を引き連れ白馬乗鞍に登られるそうだ。写真家スキーヤーと言うより山屋サンです。
山屋の世界の人名、地名が色々話しに出て来る。面白い。
そう言えば、40年程前の山屋、先輩のクライマーも皆さん、スキーが好きだった。

馬の背の尾根を一緒に滑り、ゴンドラ中間駅で別れた。「また、お会いしましょう」

この日は上から下まで5往復してオシマイ。

定宿へ戻って、宿の皆さんに、松川の写真家サンとの再会物語を話した。
松川は雪が比較的少なく、そこに家を立てる小谷村の二代目サンなども多いらしい。
空き家もあちこちにあるそうだ。信州への移住は松川がイイのかも。