日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「70年代洋楽ロードの歩き方13」~グラム・ロック3

2010-06-06 | 洋楽
さて、一般的にグラムロックと言えばTレックスとともに必ずその名が出てくるのがデビッド・ボウイです。私は彼自身は正確にはグラムとは一線を画していると思うのですが、彼の周辺からグラム臭はかなり強烈に匂っていましたし、その流れで彼とその仲間が周囲に与えたグラム的影響はかなり大きなものがあったように思います。

彼がグラムと言われ始めたのは72年のアルバム「ジギー・スターダスト」から。前作の「ハンキー・ドリー」までは、「スペース・オディティ」のヒットで語られる“一発屋”的フォーク&ロック・シンガーだったのです。なぜそんな彼がグラムと言われたか、それは音楽的に大きな転換をはかった72年のアルバム「ジギー…」のリリースとその直後に行われた彼のバックバンド、スパイダーズ・フロム・マーズとのツアーにおけるきらびやかな衣装と、センセーショナルなステージングによるところが大きかったのです。その音楽的転換こそが、グラム的エレクトリック・サウンドへの大きな移行であり、その演出を陰で支えたのは誰あろう、スパイダーズ・フロム・マーズのリーダーでギタリストのミック・ロンソンその人だったのです。(写真右、左がボウイ)

ミック・ロンソンは70年の「世界を売った男」からボウイのアルバム制作にかかわりましたが、アレンジを含めて本格的にその強烈な個性を表に出したのは「ジギー…」からであり、ボウイのグラム的大ブレイクのきっかけの半分は間違いなく彼の才能によるところであったのです。ステージでの二人のカラミは見るモノを虜にするほどの妖艶さに満ち溢れていました(この頃のボウイのイメージを映画で再現したのがグラムロック全盛期を扱ったフィクション映画「ベルベット・ゴールド・マイン」です。ボウイとロンソンのカラミをモチーフにしたシーンも出てきます。グラム・ファン必見です)。ボウイが73年にジギーの封印を宣言しロンソンと別れた後は一気にグラム色が薄れる訳で、実はマーク・ボランに対するもう一人の“グラムの雄”はボウイではなくミック・ロンソンであったと言っていいのではないかとさえ思うのです。

「ジギー…」は、5年後に滅亡の危機を迎えた地球に降り立った宇宙人であるジギー・スターダストを主人公としたいわばロック・オペラ的コンセプト・アルバムであり、どちらかと言えばキンクスやザ・フーにこそ同じ発想を見出せる、およそグラム・ロックとは異質の芸術性を感じさせるブリティッシュの香り漂う作品なのです。それほど作りこまれた作品と主演のボウイをサウンド面からグラム・ヒーローに仕立て上げた張本人がミック・ロンソンです。彼自身も、この後にかなりグラムなソロ作を制作しています。彼2枚目のソロ「プレイ・ドント・ウォーリー」がそれです。そして、ボウイとともに他のアーティストのプロデュースも手掛けており、そのギターサウンドが生んだ流れがグラム・ロックのひとつの大きな流れにもなっているのです(このあたりは次回詳しく)。その意味で、グラム・ロック形成におけるミック・ロンソンの功績の大きさは今一度見直したいことろです(残念なことに彼は肝臓癌で93年に他界しています)。

<70年代洋楽ロードの正しい歩き方~グラム・ロック3>
★デビッド・ボウイ&ミック・ロンソンのグラム・ロックを正しく聞く作品★
①「ジギー・スターダスト/デビッド・ボウイ」(Tレックスやスレイド等と比べ圧倒的に芸術性の高い名作です)
②「アラジン・セイン/デビッド・ボウイ」(①の続編的アルバム。ロンソンのアレンジが冴えるグラムの傑作)
③「ピンナップス/デビッド・ボウイ」(ボウイのグラム期最後を飾るカバー集。ロンソン・アレンジで名曲の数々を)
④「プレイ・ドント・ウォーリー/ミック・ロンソン」(ボウイの元を離れてリリースしたソロ第2作。ボウイの曲も)

<解説>
ボウイの①②は超定番です。グラムのきらびやかさは当然あるものの、グラムと呼ぶにはあまりに芸術性の高いアルバムです。③はフーやフロイド等の作品のカバー集ですが、ロンソンが入っているのでここまではグラムに分類されてよいと思います。①②の前作「ハンキー・ドリー」および次作「ダイヤモンド・ドッグス」までをグラムとする向きもあるのですが、「ハンキー…」はややフォークっぽさの漂う“グラム前夜”的印象、「ダイヤモンド…」はコンセプトこそ「ジギー…」の“二匹目のドジョウ”作品ですがやや黒っぽさが出てきていて、むしろ“黒”を求めてアメリカへわたり制作したその次の作品「ヤング・アメリカンズ」につながる部分の方が彼のキャリア上はスッキリと分類できると思います。
ロンソンは④の前に1作目のソロ作「十番街の殺人」をリリースしていますが、こちらはグラムと言うよりもギタリストおるいはアレンジャーとしてのロンソンが前面に出ている印象です。④は取り上げられる機会が少ないですが、確実にグラム・ロックの傑作アルバムに入る1枚であり、グラムファンなら絶対に落とせない作品です。
余談ですが、本文中にも登場した映画「ベルベット・ゴールド・マイン」はグラム・ロック期のボウイをモデルにした映画であり、登場人物がそれぞれ実在の誰をモチーフにしているか等を考えながら楽しめる点からも、グラムファン必見です(監督の好みでグラム・ムーブメントがややうがった捉え方になっている点は気になりますが…)。

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