真のツッコミは、対象への「愛」と「探求心」からできている。
愛なきツッコミはツッコミにあらず。
古代ギリシアの哲学者で数学者、トコミマス(またはトゥクォミマス。B.C.433年頃~?)はこのように述べたと伝えられています。当時は「ツッコミ」などという言葉は当然ありませんから、今風に訳すとこのようになるらしいですが。彼はピタゴラスの一門であり、ツッコミに欠かせない「愛」と「探求心」の最適のバランスを発見したそうです。女流詩人サッフォーの詩の朗読に、このバランスでツッコミを入れたところ、詩よりも喝采を受けたという逸話もあるのだとか。
ご存じの方も多いと思いますが、ピタゴラス学派というのは数秘術や、幾何学の数理が見せる比率などを教義とする密教のような性格を持っていて、その教義は外部には堅く秘匿されていました。このため、彼が見いだしたツッコミのバランスも、教団の衰退とともに失われてしまいました。教団の聴講生は最大5年間、「沈黙」を守るというルールがあったことも影響しています。一説には、古代エジプトのアレキサンドリアにあった大図書館には、その研究書が収蔵されていたそうですが、B.C.47年(異説あり)の火災で焼失してしまいました。
中世に科学・哲学の分野で隆盛を遂げたのは、ヨーロッパではなくイスラム社会だったことは、西洋史を学んだ方ならご存じでしょう。医学や天文学でも名をはせたイブン・アル=ハイサムなどが有名ですが、彼と交流のあったイブン・クリボッタ(生没年不明)が、古代ギリシア以来再びツッコミにおける愛と探求心のバランスを見いだし、その比率を「5:8」と著しました。彼は古代ギリシアの成果に負うことなく、独自のアプローチで同じ回答にたどりついたようです。
しかし、当時としては進んだ数理であったものの、その比率は近似値でしかなく、このいわばツッコミの最終定理とでも言うべき、数的バランスの最適解が正確に求められるのは、20世紀も後半まで待たねばなりませんでした。
日本の在野の研究者・都込珠恵(1921~1990)は1980年代に、過去の文献などを丹念に検証し、くだんの比率を細かい数値まで求め、それをx-y軸に投影した時に線分が無限分割できることを証明しました。すなわち無理数であり、その比率は1:1.618...古代以来研究者を悩ませてきたツッコミの最適比は、いわゆる黄金比だったのでした。アンドリュー・ワイルズによる「フェルマーの最終定理」の証明よりも先の成果であり、この結果は90年代にディープ・ブルーの演算により証明されたとか。
こうした先人の積み重ねにより、現在ではツッコミ成分の「愛」の部分は「ここが最高に好き」「ここは嫌い」に、「探求心」は「もっと知りたい」「本当はこの部分はどうでもいい」にそれぞれ分割できる。さらに「ここは嫌い」は「でもやっぱりここは好き」「いやここだけは許せん」に分けられる。。。という具合に、いくらでも
近年、古代ギリシア期に別の格言があったことがわかってきました。
ツッコミは対象の世界に入るべし。その世界の理に従うべし。
理に敬意を払わぬツッコミは、ツッコミにあらず。
それはただの言いがかりである。