軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

月まで軌道エレベーターを架けるには?

2015-04-15 13:56:48 | その他の雑記
 更新滞っていて申し訳ありません。今月4日に短時間の皆既月食がありましたが、東京は天気が悪くて見えませんでした。きょうはこの月に、軌道エレベーターを届かせる話を少々。
 地球と月の間に、軌道エレベーターを架けることは可能でしょうか? 月面は将来有望な資源採掘地になる可能性を秘めていますし、地球の1/6の引力からであれば脱出は容易で、月面進出が叶えば外宇宙への前線基地となるでしょう。
 地球-月系のL1に軌道エレベーターを設ける発想は昔からあります。しかしこれは、途中に近道を設けるような感じで、地球と月の間に固定した橋を架けるわけではありません。また、LiftPortが打ち出した、月面からのびる軌道エレベーターの構想はL1エレベーターを延長したものですが、これは同L1を少し越えて佇立する長さのケーブルをのばし、月面からぶら下げるという感じの代物で、やっぱり地球には届きません。
 もとより、地球の自転と月の公転の速度が違うし、軌道傾斜角、いわゆる白道も赤道とは誤差があるのですから、両者の間をつなげっぱなしにするのは、基本的には不可能なんですね。。。が、一つ方法がないわけではない。それには、

 140億年待つのだ! (`д´)/

 月が地球の角運動量を奪いながら、日々遠ざかっていることは以前にも書きました。ジャイアントインパクトによって生まれた月が、太古にはもっと地球に近かったことは天文好きの常識とも言っていいでしょう。かつては月の自転と公転の周期も一致しておらず、今では見えない月の裏側が、こちらに向くこともあったと考えられています。これは、上述の作用によるもので、また幾何学的中心が偏っているために、重い方の半球が地球に引っ張られた結果でもあります。そして同時に、地球の方も自転が少しずつ遅くなっていっています。
 で、これがどんどん進行すると、地球の自転と月の公転が一致する時が来ます。それが、およそ140億年後だそうです。そうなると、相対位置が安定するので、地球から月に軌道エレベーターを架けることが可能になるわけです。ちなみに、これがさらに進むと、今度は地球と月と太陽がほぼ一直線上にピン留めされる(同じ面を向ける月と地球の関係が、地球と太陽の関係にも及ぶということ)時代も訪れることになります。
 これを描いたSF作品もあって、ブライアン・W・オールディスの『地球の長い午後』は、地球の自転と月の公転が一致した遠い未来、地上から月まで網がかかっていて、それを昇る様子が描かれています(数値的には近年の予測とズレがあるように読み取れる)。この作品は、以前紹介した『宇宙エレベーターの本』で、初稿ではサブカル作品リストの筆頭に挙げたのですが、厳密にはエレベーターシステムではないので削除した経緯があります。しかし、この特徴ある内容はやっぱりリストに加えるべきだったと反省していて、重版がかかったら加えるつもりです。

 ともかくも、ずーっと待てば条件がそろうんですが、人類絶滅してるわな。万が一生き残っていても、とっくに地球を離れているでしょうし、その前に40~50億年後くらいには太陽が赤色巨星化して、地球が呑み込まれている可能性もあるんですよね。そんなに待ってられないですね、はい。
 そのように地球から遠ざかって行っている月ですが、現代は地上からの見かけ上の大きさが、太陽のそれとほぼ同じで、皆既日食やダイヤモンドリングが楽しめるという、奇跡的な時代でもあるのですね。宇宙の神秘を感じ取る知性や感性を得た人類が生きる時代に、このような条件が重なっているという事実を考えると、人間原理などを唱える人がいるのも、無理のないことかも知れないと思うことがあります。
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