軌道エレベーター派

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カナダ企業が "Space Elevator" の米国のパテントを取得

2015-08-19 01:21:14 | 気になる記事
カナダ企業が "Space Elevator" の米国のパテントを取得
カナダの宇宙関連企業 Thoth Technology Inc.,は、Space Elevator の米国での特許を認められた。(略)現在最も高い建築物の20倍以上に相当する地上20kmの高さで、風力発電や通信、観光などにも利用される。完全な再利用型の乗り物を運用することで、新たな宇宙到達の手段を得ることができ、現行のロケットよりも30%の燃料削減となる。


 考案者の Dr. Brendan Quineは「宇宙飛行士はエレベーターで高度20kmまで昇り、タワーの頂部からスペースプレインが発進して直接軌道に乗り、補給や再利用のため再びタワー頂部に帰還する」と話す。
(後略。Thoth Technology Current Releases より抜粋し拙訳)


 これ、ただの高い建物であって、軌道エレベーターでも宇宙エレベーターでもないのでは? 見出しで "Space Elevator" とうたってますが、本文中では "Space Tower" とも書いてある。PRのために少し誇張して Space Elevator という惹句を使っているのでしょう。パテントを認めた米国の役人も、よくわからないまま Space Elevatorとして認可しちゃったんじゃなかろうか? これを「宇宙エレベーター」と呼びたい人は呼べばいい。でも決して軌道エレベーターではありません。

 なぜ「軌道エレベーター」なのか? SF作家の野尻抱介先生も言われてますが、大きな理由の一つが「エレベーターシステム全体が軌道運動をしている」からです。だからこそ、やはり「軌道」の方がより適切なのです。「宇宙」の方が正しいと思ってる人はそこがわかってない。で、このタワーは地上から立てた建築物にエレベーターを備えてるのであって、既存の建物と同じ。軌道エレベーターとは呼べませんね。このほかに、The Japan Times の英文記事はクラークの著作にも触れてますが、『楽園の泉』で描かれているのはこういうものじゃない。このモデルに宇宙エレベーターを名乗られたら、「宇宙」派の人たちもコレジャナイ感というか、釈然としないんじゃないでしょうか。

 この企業の計画しているのは、ようは地上から建てた成層圏プラットフォームですね。元記事を読む限り、ようは静的に自力帰還できるロケットや、STOLのような短距離型のスペースプレインの離発着場にしようというものらしく、最近研究中のドラゴンのやつなどの運用を想定してるのではないかと思われます。

 軽量型高層タワーの構想というのは結構前からあって、2009年のルクセンブルク学会などでも発表されていて、特許関連の話も出ていました。日本の大手ゼネコンなどもバブル期に超高層建築打ち出してましたし。もちろん、エレベーターではなくタワーであっても、こうした構想がより現実的に発展して特許まで認められるようになってきたことは喜ぶべきことです。こういう技術もどんどん発展していってほしいものですが、やっぱりこれを Space Elevator というのはちょっと違うというか、引っ掛けのように感じました。
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