のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

長野行その2(川本喜八郎人形美術館)

2016-09-09 | 展覧会
9/5の続きでございます。


長年の念願かなってやって来ました川本喜八郎人形美術館。入ってすぐのロビーには、名文として名高い「出師の表」を背にして、サイズの大きめな孔明人形が佇んでらっしゃいます。ワタクシとしてはどうしても、劇中で使われていた、頭部が大きめに作られた人形のイメージがあるものですから、この7頭身の孔明人形にはとりわけ感慨は抱きませんでした。そう、ワタクシはちょっとよそよそしい「この」孔明人形ではなく、水色の衣に黒い背子をはおり、いつも心持ちうつむき加減で、水が流れるようにさらさらと歩を進める「あの」孔明人形に合いに来たのですから。とはいえ衣の陰影が実に美しいので横からもパチリと。展示室内は撮影禁止ですが、ここは自由に写真を撮ることができます。


ロビーの片隅、展示室へと向かう階段のふもとに、美術館スタッフが作ったというミニチュア人形たちが並んでおりました。こちらは期間限定の企画のようです。

ウェルカム人形展とすてきな世界の人形劇ポスター展 2 | 飯田市川本喜八郎人形美術館 | お知らせ

今回の展示テーマ「後漢末〜三顧の礼」に合わせたのでしょうか、三顧の礼の一場面が再現されております。


午睡中の孔明先生、黙って目覚めを待つ劉備、怒る張飛となだめる関羽。隅っこの方についでのように超雲がいるんですが、なぜか槍先に血糊がついてるYO!


(←左)城壁の外には妖しい道士ズ。左の白い方は左慈ですが、右の方は于吉か管輅か、はたまた紫虚上人でしょうか。


ワタクシは人形劇三国志が本当に大好きです。子供の頃は毎週放送を楽しみにしておりましたし、10年ほど後に再放送されたものはことごとくビデオに録画し、好きな話は何度も繰り返し観たものです。しかし、こんなワタクシにしてもどうしても擁護できない点が3つございます。即ち、

1.左慈が出しゃばりすぎる
2.呂蒙の扱いがひどすぎる
3.龐徳の声がせんだみつお

そう、左慈がですね、やたらと出張って来るのですよ。劉備の所にまで現れて幻術で惑わそうとするわ、曹操を催眠術で操ろうとするわ、もうやりたい放題でございます。左慈は他の人形たちと違って眼球が入っておらず、代わりに妖術を使う時に眼が赤く光るなど面白い所もあったのですが、あんまりしつこく出て来て幻術の大盤振る舞いをしやがりますので、しまいには「もういいよ」という気分になってしまいました。これが『水滸伝』だったら別に構わないのですよ、ええ、杖の一振りで狂風が吹きまくろうが、派手に幻術大会やらかそうが。最終的には公孫勝先生が出て来てエイヤッとやっつけてくれますしね。でも、三国志ではちょっとねえ。

(→右)呉コーナーは「碧眼紫髭」の孫権がいるのでそれと判りますが、孫権の横の周瑜以外はちょっと誰が誰やら判りかねます。後列のもみあげ延ばしてるのは闞沢かなあ?

(←左)こちらは魏コーナー。白面に三白眼の曹操が中央におります。向かって左の眼帯姿は夏侯惇に違いありません。右のひねくれた表情をしているのは曹丕でしょうか。

(→右)曹操の後ろにいるのは曹操以上に目つきの悪い司馬懿。

(←左)一番手前には董卓・王允・貂蝉・呂布の「連環の計」カルテットが。この4体、他と比べていやに作りが丁寧な気がします。再現度も素晴らしい。王允の首の突き出しようといったら。

(→右)手前の人たちは誰だかちょっと判りませんが、奥で悲しそうに空箱を抱えているのは荀彧ですね。その横は周瑜に一杯食わされた蒋幹でしょう。顔が実物の人形にそっくりです。
荀彧は正史でも、また正史を下敷きにしたフィクションである『三国志演義』でも、若い頃から曹操に使えた重鎮でございます。しかし人形劇での荀彧は、主君である曹操から空箱を贈られるという嫌がらせを受けて憂悶のあまり自殺するというエピソードのためだけに登場する老臣であり、正直「ポッと出」感が否めません。この人形劇では悪役である曹操陣営の参謀たちはたいがい性格悪そうな顔立ちに造形されておりますので、宦官の横暴に対抗する清流派の名士であり容貌も勝れていたという、要するに気骨ある美男子イメージの漂う荀彧のようなキャラクターは出しづらかったのかもしれません。不品行であったという割には真面目そうなイケメンに造形してもらった郭嘉とも被ってしまいますしね。


長野行レポ、さくさく進めるつもりが案の定川本喜八郎美術館の所でとどこおっておりますが、途中でやめるのも何ですので次回に続きます。

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