空色レールウェイ

空は続く、どこまでも

「潜水服は蝶の夢を見る」

2008年08月29日 | 映画
「潜水服は蝶の夢を見る」を観てきました。
以下、ネタバレが含まれています。

ジャン=ドミニク=・ボビー、42歳。
フランス版ELLE誌の編集長、また3児の父。
色鮮やかな人生の幸せを味わっている中、突然脳梗塞で倒れます。

意識を取り戻すと、身体的な自由がきくのは左目だけ・・・
聞こえたり、見えたり、感じたりは普通にできるのに、動くのは左目だけ・・・
ロックト・インシンドローム(閉じ込め症候群)でした。

アルファベットを1文字ずつ読み上げてもらい、
使いたい単語のアルファベットになった時に、左目の瞬きをする方法で、
自伝「潜水服は蝶の夢を見る」の執筆にとりかかります・・・


この映画、タイトルとあらすじを見た時点で、必ず観ようと思っていました。
あらすじだけで圧倒され、この「潜水服は蝶の夢を見る」というタイトルにジーンとしました。
本当に、観てよかったです

映画はフランス映画らしく、やわらかで淡い色使いに、ゆったりとした音楽が流れていました。
意識を取り戻す瞬間からの「見せ方」が素晴らしかったですね。
見えてはいるものの、麻痺のため瞬きができない右目を縫って閉じるシーンは、
思わず目を背けたくなるほどのリアリティーでした。
本人のぼんやりした感じ、パニックした感じ、とまどい、イライラがスクリーンから伝わりました。
麻痺した顔も最初は見せず、少しずつ鏡越しに映し出される表情に、
なんというか怖くなりました・・・

途中、潜水服が海中に沈む映像、蝶がひらひらと世界中を飛び回る映像、
氷山が崩れていく映像が差し込まれていました。
潜水服は、ただ重いだけで、息苦しく自由が利かない体。
蝶は、そんな体でも想像の中ではどこでも行けるということ。
氷山の崩れは、築き上げてきた財産や地位や名誉が崩れていく様子を表していたんでしょうね

仕事柄、寝たきりで身動きの取れない人からは、
こういう風に見え、こういう風に感じるんだな・・・というのが再確認できましたね。
入浴を介助され、「何故こいつらに体を洗われなきゃならないんだ!」と怒り、
観ていたテレビを勝手に消されイラっとしたり、女性の胸元やスカートが気になったり。
例え動くのが左目だけであっても、ユーモアがあって人間臭くて、
やはり1人の人間であるということです

左目しか動かないという状態にあって、
単語を構成する1つ1つのアルファベットで瞬きし、自伝を書く。
気の遠くなるような作業を、ただ前向きに行う。
人間の持つ強さを強烈に感じました
もちろん、その強さを持つまでには多くの絶望を感じているのですが・・・

そういった色々なことを、この映画に、ジャン=ドミニク=・ボビーに教えてもらったと思います。
ありがとうございました。

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