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松本竜也、タイガース戦登板~大事な2年目。

2013-02-24 23:59:01 | 2013年シーズン

タイガースとの練習試合で解説を努めた水野氏が、高卒投手2年目の重要性を語っていたので、
その日登板した松本竜也の投球内容と合わせて取り上げてみる。

自身も高卒投手としてジャイアンツに入団した経緯の水野氏。
2年目で飛躍した高卒投手に先ず槙原と桑田の名を上げた。
両投手とも水野氏と同世代で共にジャイアンツ支えた強力投手陣の一角だ。

槙原は2年目で新人王に輝き、桑田も2年目に15勝を上げてセリーグの最優秀防御率を獲った。
ともに2年目からの飛躍だった。
その後のふたりの活躍は言うまでもない。


例えば昨年、高卒2年目で頭角を現した宮國もそういう一人である。
昨年の実績をもとに、今キャンプではさらに成長著しい姿を見ることが出来る。
体幹が太くなって少しドッシリとした感じがする。
水野氏はその宮國を引き合いに出し、高卒入団2年目になんらかのキッカケをつかめた投手は、
その後も躍進してゆく可能性が高いと語った。

その日のタイガース戦で先発登板した松本竜也も今季2年目の高卒投手。
先日の紅白戦では2回を無失点に抑える好投で、
20日のタイガースとの練習試合で先発を勝ち取ったが、
紅白戦で見せた内容とまではいかなかった。
その際、放送席にいた水野氏が語っていたのが、
高卒投手の2年目はある種のターニングポイントであるということ。
先にあげた槙原や桑田はもとより、高卒で入団した投手で大成するピッチャーは、
2年目でなんらかの結果を出しているというのだ。
ようするに2年目、3年目あたりで1軍に上がってくる力があれば、
その後も更なる飛躍が期待できる、そういうことだろう。
裏を返せば、2年目、3年目あたりで何も結果が残せなければ、その後も難しい、ということになる。


むろん、すべての高卒投手に当てはまるとは思えないが、
過去の例を思い返してみる限り、その確立はかなり高いのではないだろうか。
どんな道筋でプロの世界に入ったとしても、毎年主軸として活躍できるような選手はほんの一握りであり、
毎年毎年、どこの球団にも新たな新戦力が補強されていく。
そう何年も2軍にいて出番を待ち続けるなどという平穏な世界ではない。
入団数年で一度も1軍のマウンドに立つことなく球界を去る選手のほうがはるかに多い。

そういう意味で、今季2年目の松本竜也が初の1軍キャンプ帯同を掴み、
紅白戦、練習試合と先発のチャンスを与えられたのは首脳陣から認められた証拠だろうし、
今後、上へ向かって伸びてゆく可能性が少なからずあるという現われではないか。

ただ、今回はやや結果が伴わなかった、という残念な内容に終わった。
もう一度チャンスがあるかどうかはわからないが、水野氏が指摘したように、
現段階では、松本竜也と1軍の投手の間には明らかに差があるというのが現実だ。
内海や杉内、沢村、山口などの先発陣、中継投手、
外国人投手らを押しのけてポジションを勝ち取るところまではいっていない。


この日、紅白戦のときのキレのあるストレートは見ることが出来なかった。
ボール先行で崩れてゆくようなタイプではないだろうが、
水野氏が指摘したように常にストライクゾーンの中で勝負していて、
追い込んでも空振りを取ることのできる球がない。
150キロくらいの直球やストライクからボールになるようなキレのある変化球があるわけでもない。
やはりそれでは1軍では通用しない。

それでも紅白戦で見せたような伸びのあるストレートと充分通用するだけの変化球がないわけでもない。
もともとスライダー、フォークなど、変化球の制球力の評価が高い投手。
上づえがあるから140キロ中盤でも威力はありそうだ。
今季、宮国がガッシリとした体系になったように、松本竜也ももう少しドッシリとしたたくましさが必要か。
身長がある分、余計に細く見える。
まだプロ野球選手の身体になっていないように映る。

この日のストレートは140キロ前後。
あの身体だからもう少し鍛えればまだまだ球速はあがるだろう。
変化球には定評があるからより精度を増し、あとは細かなコントロールだろうか。
そう考えるとまだまだ課題はたくさんあるのだろう。
それでも今の時点で持っているものの質の評価は高い。
もう1年、ファームで鍛え上げ、体幹とスピード、投球術を身につけ、
今季後半、あるいは3年目にその成果を見たい。
今の松本竜也にとって、2年目の今季はとても重要である。




元木大介氏、川藤幸三氏、大田ら若手に苦言。

2013-02-22 02:20:04 | 2013年シーズン

14日の紅白戦終了後、G+放送席に元木大介氏(ジャイアンツOB)と川藤幸三氏(タイガースOB)が登場。
大田や中井ら若手にゲキをとばした。

まず、元木氏が名前を挙げたのが藤村だった。
前日のバッティング練習で相手を努めた菅野にバットを折られ、
ヒット性のあたりがゼロだったことについて藤村が、
菅野相手で注目度が高く、少しリキんでしまったとコメントしたことを受けて、
そこで打ち返さなければダメだと厳しく指摘。
「何年か先にプロでやっているわけだから、やはりそこで違いを見せなければ。
ましてや自分はレギュラーがかかっている立場なのだから」と、
藤村がセカンドレギュラー争いの真っ只中にいることを挙げ、
「バットを折られただけで終わってたら、首脳陣は菅野よかったねぇ、で終わってしまう」と、
弱気な発言の藤村に奮起を促した。

藤村以上に手厳しかったのが大田だ。
元木は大田の練習に対する姿勢に注文を付けた。
「この時期はもう実戦が近づいている中でのバッティング練習であり、
バスターやエンドランなどのサインがでるような立場の選手は、
それらをしっかり視野に入れたバッティング練習が必要になってくる。
にもかかわらず、大田にしても中井にしてもバッティング練習を見ていると、
ストレートばかりを気持ち良さそうに打っている。
彼らが一軍に残れないのはまだまだ変化球がとらえられていないから。
一軍と二軍の投手の違いはコントロールと変化球のキレなんだからそこを意識した練習をしなければ」と、
課題を持って練習に取り組む必要性を説いた。

さらに紅白戦での大田の打席を例に出し、
大田の投手の配球に対する゛読みの甘さ゛について村田コーチと交わした会話を紹介。
大田がツーボール・ワンストライクの場面で簡単にスライダーを見逃したのを見て、
今のカウントは当然スライダーを待つ場面ではないかと村田コーチに尋ねると「オレも待つ」と応えたというエピソードを披露。
「公式戦に入れば打てるコースに真っ直ぐが来ることなどそうはない。
そういう配球が読み切れていないのをみるとまだ一軍レベルに来ていないように見える」と手厳しい言葉。

また、中井に対しても、対戦投手の配球を例に、
中井が内野フライに倒れるまでの相手投手の投げた球種でストレートはたった一球、
あとはすべて変化球だったと、変化球への対応力のなさを大田同様に指摘した。

同じように川藤氏も若手の元気のなさにダメ出しだ。
この日のオーダーで目玉だったのは大田や中井のはずなのに、
彼らがまったく目に入ってこないとピシャリ。
目につくのはベテランの古城、中堅の寺内らのプレーばかりと、
元木同様、若手の元気のなさに首を傾げた。
とくに大田などは開幕までに身体をつくっていけばいいというような一軍の主軸選手と同じような動きをしていて、
ポジション争いをしている緊張感がまったく感じられないとあきれた様子。

WBC組の抜けた穴を誰が埋めるかに注目が集まる今キャンプ。
若手にとってはチャンスだと若い選手自らが口にして望んだキャンプだったにも関わらず、
目立っているのは実績のあるベテランや中堅選手ばかりだと、
実戦で結果を出した由伸や古城、寺内らと比較して、
大田ら若手のアピールの仕方に必死さが足りないと切り捨てた。
「結果を出したいがあまり慎重になってボールを見過ぎていているように思う。
なんのためにここまでバットを振り込んできたのかを考えて欲しい。
実戦でバットが出ないようではここまで振り込んできた意味がない」。
結果をおそれずに前だけを向いてもっとがむしゃらにいくべきと説いた。

実際、2次キャンプに入ってからも風邪で発熱して何日か休んだかと思うと、
紅白戦のあと、太ももに張りを覚え別メニュー。
これには原監督も激怒して報告しにきた大田をグラウンドの中央で公開説教。
スポーツ新聞に大きく取り上げられる始末だった。

その辺の自覚の薄さが監督ら首脳陣はもとより、
キャンプを視察に来た元木や川藤氏の指摘につながるのだろう。

そんな姿勢がTV画面からも伝わってくる場面があった。
ファーストにランナーを置いてバントのサインが出たとき、
バッターボックスの中で明らかにふてくされたような表情と態度を示した大田。
その後、バントのサインは消えて、結局、ランナーは進められなかった。

その翌々日の韓国サムスンとの練習試合では、ランナー2塁でセンター前ヒットを処理する際、
ゴロの捕球と内野への返球に気のないプレイをみせ、
2塁ランナーをやすやすとホームに生還させるという凡ミスを仕出かした。
これには原監督も呆れ顔。
さらに偵察にきていた他球団のスコアラーも「ありえないプレイ」と一蹴。

それでもその翌日のタイガースとの練習試合にも、その翌日のスワローズとの練習試合にもスタメン出場する。
我慢、我慢で原監督がどうにか飛躍をと願う。
歯がゆさとイラダチを押し込め、大田が成長してくれることに大きな期待を寄せる。
それは大田が坂本のように実力でレギュラーを勝ち取ることを夢見るファンにとっても同じことだ。

サムスン戦で見せた怠惰なプレイを反省し、もう二度とないように集中してやると誓った大田。
怒られて反省し、また怒られて反省して、それでもどうにか成長してくれることを、誰よりも原監督が願っているだろう。
救いは、その後のタイガース戦で2安打と気を吐いたこと。
打席の中で落ち着いてボールを待つ姿勢、見極める姿勢が見て取れるようになった。
打撃は確実に成長している。
走塁はもとより、守備にも堅実さが見えてきた。
彼に一番大事なことは、実は野球のプレイ以上に、野球に対する”集中力”なのかもしれない。


松本竜也~大物の片鱗。

2013-02-19 02:08:31 | 2013年シーズン

14日の紅白戦に2年目の松本竜也が先発した。
松本と言えば一昨年のドラフト1位で、
193cmの長身から繰り出すキレのある直球が魅力の大型左腕である。
今回の沖縄2次キャンプの注目は、
くしくも同期入団の2年目投手4人が帯同を勝ち取り話題となっている。
そのうちのふたり、江柄子は社会人出身、一岡は専修学校出身でともに昨シーズン1軍デビューを果たした。
のこりのふたり、松本竜也と今村信貴はともに高卒の左腕。
昨シーズンは2軍で数試合投げ、1軍帯同は今回が初めてとなる。


紅白戦登板の数日前、G+のキャンプ中継の中で、
スポーツ報知の記者が注目の選手として松本竜也の名前を挙げ、
昨年から今季にかけての彼の成長やエピソードなどを紹介している。

チェンジアップの握りから中指と薬指で挟んでフォークのように投げた思いつきの球が、
劇的に変化し左打者の足元へ鋭く落ちる必殺球に変身。
シュートの曲がりでフォークのように落ちる、名づけて“ドラゴンスクリュー”。
独学でシュートを覚え、阿波野コーチを驚かせるなど、
手先の器用さは天性のものだろうと記者は分析する。

長身のややサイドから繰り出される145、6キロのストレートは横の角度が大きいぶん幅があり、
打者から見ると体感速度は実際の球速よりも上回ってみえるはずで、低めにきまったときのキレは抜群。
変化球のコントロールも徐々に良くなっていて、とくにカーブとスライダーは1軍レベルと言う。
細かいことはあまり気にしまいタイプで、いい意味適当なところがある。
度胸がいいからプレッシャーにも強そう。
19才のわりには存在感がある、と、1年間、松本を見てきた担当記者の声である。


宮崎キャンプで1軍のシート打撃に登板し、制球のいいピッチングを見せた松本竜。
尾花2軍投手総合コーチが「あれは空振りが取れる」と絶賛した必殺球、
“ドラゴンスクリュー”をたずさえ紅白戦に先発登板。
相手の先発は1年先輩の宮国だったが、
その宮国にまったく引けを取らないピッチングで2回を無安打1四球無失点に押さえ存在感をアピールした。
2番松本、3番高橋由を連続三振に仕留め、
とくに由伸を三振に仕留めた最後の低めのストレートは球速こそ130キロ後半だったが、
評判どおりの抜群の切れ味だった。
由伸も手元で伸びると舌を巻いた。
元木大介とともに放送席に現れた川藤幸三もこのストレートを絶賛。
ストレートの質、手首の強さ、柔らかさ、投げっぷりの良さなど、将来性を高く評価した。

次の登板を勝ち取った松本竜也。
20日のタイガースとのオープン戦に先発予定だ。
「紅白戦の時よりも厳しく攻めて、しっかり抑えられたらいい」と豊富を語った。

勢いがあってとてもいい流れを感じる。
今季、このまま1軍に残れるかどうか別にして、
将来、宮国、菅野とともに、スケールの大きい3本柱に成長してくれることを心から願う。
またひとり、胸躍る存在の誕生である。



辻内崇伸~8年目からの躍進のカギは。

2013-02-10 19:59:13 | 2013年シーズン

先日、宮國椋丞投手をテーマに高卒投手の期待値について書いた。
今年で8年目を迎える辻内崇伸も、かつて甲子園を沸かせ、
鳴り物入りでジャイアンツに入団した大注目の快速球投手だった。
その後の彼のプロ野球人生は今さら説明するまでもないが、
このオフほどスポーツ記事で「辻内」の文字を目にしたことはなかったろう。

ここ数年、ラストチャンス、という言葉が辻内のスローガンのようになっていた。
投げられなくなっていた150キロ台の速球は、いっとき140キロ前半がようやっとまでに落ち、
昨年には140キロ後半が常時出せるまでになって変化球の制球力にも磨きがかかってきたようだ。
高校のころからコントロールや変化球の精度が高かったわけではない。
150キロ台の速球なら、多少、ボール気味でも高校生なら通用する。
しかし、プロではそうはいかない。
それでもあのダイナミックなフォームから繰り出される150キロ台の速球には充分に魅力があった。
だからオリックスもジャイアンツもその将来性に期待してドラフトで1位指名したのだ。
いくらドラフト1位だったとはいえ、7年間、まったく1軍で投げていない高卒ピッチャーが、
いまだにクビを切られることなくいられるのは、やはりそれだけ期待があったからだと思いたい。
そして今季の背番号が示しているように、8年目を迎えた今シーズンが、
辻内にとって文字通りラストチャンスになるであろうと、
左腕王国になりつつある現状のジャイアンツを見ればそれは明らかだろう。

このオフ、辻内は同僚の野間口の紹介で日ハムの武田勝の自主トレに弟子入りした。
武田からは、力に頼りすぎた投球を指摘されたようだ。
キャッチボールから武田を真似て、脱力フォームや変化球の投げ分けなどを教わり、
「投げる間を意識する。リリースポイントを前にする」などの助言を受けた。
「自分のペースを守る」「力に頼りすぎない投球」をテーマに掲げ、これを期に「大人の辻内」への変化を誓った。
それはこのオフ、結婚して「守るものが出来た」という生活面での変化も大きく後押してのことだろう。

そして迎えた春季キャンプ。
今キャンプも当初は2軍スタートが決まっていたようだが、
左肩の違和感を訴えた高木康と入れ替えで1軍スタートを手に入れた。
しかし、8年目にしてようやくスタートラインに立てたと思った矢先、
1軍首脳陣に対する積極的アピールに欠くと、阿部や原監督からキツイ指摘を受ける破目になった。
自分に課したテーマと、あらたな投球スタイルへの布石を、
その控えめな性格ゆえか、ここまでそれが裏目に出てしまっている。

キャンプ初日に苦言を呈したのは阿部だった。
ブルペンで内海、高木京らの球を受けた後、隣で投げていた辻内に対し、
「立ち投げ30球くらいで終わっちゃった子がいるのが残念だった」と指摘。
その後、強い口調で「のんびりと調整している立場ではないはず」と辻内の姿勢を叱責した。
ただ、辻内には川口投手総合コーチが「左肩の開きが早いから、直球だけでフォームを固めろ」と指示が出ていたようで、
それでも辻内は「阿部さんから『もっと思い切り、強い球を投げろ』と言われました」と反省の弁。

2日目、その翌日のスポーツ新聞の記事に「辻内、原監督から公開説教」の見出し。
それもやはり、彼の控えめな性格ゆえか、あるいは8年目にしてようやく1軍キャンプという気遣いで恐縮したからか、
いずれにしても、強い気持ちで野球に取り組む姿勢を好む原監督には余りにも彼の態度が弱弱しく映ったのだろう、
必死さを欠くその姿勢に注文をつけた。内容はこうだ。
2日目、ブルペンを去ろうとした辻内を、原監督が呼び止め約5分間、説教をした。
「私の気持ちを伝えた。もう彼は若くはない。毎日が円熟期だと思って戦わないと。
これまで培ったものもあるんだから」と、大勢の報道陣やファンが見守る中でゲキを飛ばした。

まず、辻内がブルペンに入った段階で監督はその姿勢が気に入らなかった。
辻内は杉内と同じタイミングでブルペン入り。
気を使って客席寄りの一番端に向かった。だが、指揮官には消極的な姿勢と映った。
「辻内、真ん中で投げろ」と6か所あるプレートの左から3番目を指示。
「1軍のキャンプはオフの成果を披露する場所」が原監督の考え。
「アピールする立場なら、堂々と真ん中を選べ」との監督の言葉に辻内は、
「1日1日悔いを残さないようにとお言葉をもらいました」。

川口投手総合コーチのコメント「朝、2人でミーティングしたけど、
今までと同じではダメ。『あとはもうボールに聞いてくれ!』という腕の振りで投げるだけでいい。
ラストチャンスと(本人は)言っているけどものにしないと。チャンスをあげているんだから。
監督の親心なんですよ」そして11日の紅白戦に登板させることを示唆した。

高校生のころはどちらかといえば体格のいい大型左腕というイメージだったが、
プロに入って数年後、度重なるケガから復帰して、ファームの練習でその姿を久しぶりに見た彼の印象は、
どことなく小じんまりしてしまったような、こんなに小柄だったかと思ったほど彼は小さく見えた。
なかなか思うような球が投げられないジレンマと、一向にあがってこない球速に、気持ちも萎縮していったかもしれない。
もともと気持ちを前面に出すようなタイプではないだろうし、人を掻き分けてでも前へ前へという性格でもなさそうだ。
プロのスポーツ選手としてはそれだけでハンディを背負っているようなものだが、
そんな彼の控えめな性格を表わしているエピソードがある。
ドラフト当時、辻内を1位指名したのはジャイアンツだけではなく、
オリックスも辻内を1位で指名、両球団のクジによる抽選が行われた。
クジを引いたのはジャイアンツが当時監督の堀内恒夫、オリックスがGMだったろうか中村勝氏(現タイガースGM)。
ここでちょっとした事件が起こる。クジを開いた瞬間、中村氏が封筒から出した用紙を高々と上げ、
交渉権をオリックスが得たと会場にもアナウンスが流れた。
外れた堀内氏は首をかしげながらどことなく納得のいかない表情でテーブルに引き上げる。
抽選を待ち構えていた記者会見場の辻内は無数のフラッシュの中、
「オリックスはとてもいい球団だと思う」といったニュアンスのコメントをして、緊張のためか少し表情がこわばっていた。

ところがドラフト会場ではなにやら不穏な空気。
ジャイアンツのテーブル席で出席していた球団関係者らが大会主催者側に必死に何かを見せながらアピールしている。
次の瞬間、「交渉権は読売ジャイアンツが獲得していました」とのアナウンスが会場に流れた。会場はざわざわとどよめく。
内幕はこうだ。封筒の中には当たり外れにかかわらず用紙が入っており、
あたり券には「交渉権確定」(だったろうか)の印が、
そしてはずれ券にも「日本プロ野球機構」の印(だっただろうか)が押してある。
この「日本プロ野球機構」の印を中村氏が当たり券と勘違いし暴走してしまったという、勇み足によるハプニングだったのだ。
ことが収まり数分後、会見場で会見のやり直しが行われたのだが、
ジャイアンツに交渉権が移った事を知らされて会見に臨んだ辻内は満面の笑みでこう応えた。
「小さいころからジャイアンツファンだったのでとてもうれしいです」
これには会場の記者たちも大笑い。記者会見場は微笑ましい雰囲気に包まれた。

この出来事の後日談として、辻内が小さいころからジャイアンツファンだったということは誰一人知らなかったことで、
両親でさえも一度も聞いたことがなかったと、辻内の「ジャイアンツファン」発言に驚きを隠さなかった。
ジャイアンツファンという思いを心に秘めたまま、現実にプロの世界が近づくにつれて、
更にそれを口にすることをばかるようになっていったのか、辻内の控えめな性格をよく表わしているエピソードといえよう。


プロ野球の世界に限らず、どんなスポーツの世界のおいても、
自分をアピールすることはある意味大事なことだろうし、
それは一般の社会においても前向きな姿勢として評価の得られるところだ。
一般の社会や生活の中では、度が過ぎるとそれは反感を買うし嫌味にも見える。
慎ましやかで控えめな態度との使い分け、そのバランスこそが最も理想的な姿勢であるかもしれない。

しかし、スポーツ界においては、ましてやプロの世界においては、そんな上品なことも言ってられない。
食うか食われるか、あるいは生き残れるか消え去るかの厳しい世界である。
そんな厳しい世界の中で、ましてやそのボーダーライン擦れ擦れのところにいるならばなおのこと、
人を蹴落としてでも前へ出て存在感を示そうとする必死さが求められよう。
何がしかの欠点やハンディを持っているならなおさら、多少荒削りでも気迫と闘志で押し切る力強さが欲しい。
”闘う意志”を自ら示さなければ指揮官の目には留まらない。
他者を気を遣い自分をアピールしきれない人のよさなどプロの世界では必要ない。
団結力であったり、チームワークであったり、それは闘える立場になってからの話だ。

結婚をして守るものが出来た、というならば、今までどおり守りの姿勢では何も変わらない。
どんどん攻めていかなければ例年通りのシーズンで終わってしまうのではないか。
「まだみなさんに(気持ちが)伝わっていないと思うので、それをどう伝えたらいいのかと思う。
日々、悔いのないように練習していくしかない」と語った辻内。
背水の思いを見せるならば、それは態度で示す以外ない。攻める姿勢を出してゆくしかない。

現在、ジャイアンツの左腕の競争は、過去になかったほど激戦を呈している。
過去の怪我や、手術や、制球難など、そういったことを乗り切るために、
彼にもっとも必要なのはなりふり捨てたがむしゃらさではないだろうか。

と言っている矢先、辻内の2軍行きが決まった。
”力を抜いた投球スタイル”であっても、攻める姿勢は貫かなければいけない。

先日書いた高卒投手の有効期限を当に過ぎている辻内である。
原監督が辻内に投げかけた言葉「悔いを残さないように」。
間近で見ている”プロフェッショナルな目”がおくった先見の言葉だろうか。