11月19日 は、国際男性デー(International Men's Day) でした。
( 関連ワード : 弱者男性問題,男性差別,女災,マスキュリズム,メンズリブ,男性解放,男性運動 )
国際男性デー(IMD) は、男性・男児のさらなる健康と幸福 を目的とした記念日です。
日本ではほとんど知られていませんが、多くの国で祝われています。
当ブログでは、国際男性デー(IMD) を記念して、ミニ連載をしています。
この記事は、その第2回目にあたります。
予定より大幅に遅れての公開になってしまいましたので、第1回から約1ヶ月も経っていますし、IMDからも1ヶ月近く経ってしまっていますが、ご容赦ください。
なお、第1回 では、男性と女性の平均寿命の差 を取り上げました。
要旨は以下の通りですが、ぜひ リンク から全文を読んでみていただけると嬉しいです。
仮説 : 古来より、男性の身体や生命は、女性の身体や生命に比べて乱暴・粗末に取り扱われてきた。それは現代でも変わらない。
結論 : 男性・男児の生命が(女性・女児と比べて相対的に)軽んじられることのない世界の実現を心から願う。1人でも多くの男性が、心身の健康を保ち、社会的,感情的,物理的および精神的な幸福を手に入れられることを切望する。
----------------------------------------
第1回 で提示した〈 平均寿命 〉や〈 平均余命 〉は、さまざまな要因を考慮しながら作成される〈 完全生命表 〉や〈 簡易生命表 〉などに則って、毎年、厚生労働省が発表しているものでした。
現時点での最新版は2012年(平成24年)のもので、インターネット上で閲覧することも出来ます。
( → 平成24年簡易生命表の概況 )
この〈 完全生命表 〉や〈 簡易生命表 〉からは、他にもいろいろなことを知ることが出来ます。
今回は、年齢別生存数 を取り上げようと思います。
平成24年簡易生命表の概況 に掲載されている、「参考資料1生命表諸関数の定義」を見ると、〈 生存数 〉は以下のように定義されています。
生命表上で一定の出生者数(簡易生命表では100000人)が、上記の死
亡率に従って死亡減少していくと考えた場合、x 歳に達するまで生きると
期待される者の数を x 歳における生存数といい、これをlxで表す。
なお、〈 死亡率 〉については、
ちょうどx歳に達した者がx+n歳に達しないで死亡する確率をx歳以上
x+n歳未満における死亡率といい、これをnqxで表す。特に1qxをx歳の
死亡率といい、これをqxで表す。
となっています。
難しいですね。もう少し具体的に分かりやすく説明してみます。
25歳における死亡率 は、25歳に達した者が、26歳にならずに死亡する確率です。
男性の25歳における死亡率は 0.00063 で、これは、「25歳男性の 0.063%は26歳にならずに死亡する」という意味です。
女性の25歳における死亡率は 0.00028 で、これは、「25歳女性の 0.028% は26歳にならずに死亡する」という意味です。
この死亡率は0歳から104歳まで、各年齢に対して算出されています。
生存数の計算は、この各年齢の死亡率を使って行います。
「0歳児が男児・女児それぞれ10万人生まれたとして、各年齢で何人が生存しているかという値」 が〈 生存数 〉です。
(出生当初の10万人が、死亡率にしたがって順次死亡していくと仮定した場合、各年齢で何人が生存しているかを表す値です)
第1回 で見たとおり、平均寿命は女性の方が6年以上も長いのですから、65歳ともなれば女性の方が多いという予想を立てた方が多いのではないでしょうか。
あるいは、何らかの理由で、65歳では男性の方が生存数が多いという予想を立てられた方もいらっしゃるかもしれません。
男女差についてはどうでしょう。かなりおおざっぱな選択肢にしましたが、このくらいおおざっぱな方が予想を立てやすいだろうという考えからです。
あまり細かな数字に固執しすぎるよりも、数量的なイメージを大切にしたいという思いもあります。
さて、平成24年簡易生命表の概況 に示された、65歳の男女の〈 生存数 〉を発表することにしましょう。
10万人の男の赤ん坊が65歳になったころには、約8万8千人 になっています。
(約1万2千人が65歳までに死亡します)
10万人の女の赤ん坊が65歳になったころには、約9万4千人 になっています。
(約6千人が65歳までに死亡します)
よって、生存数は女性の方が多く、その差は約6000人でした。
1つの「村」や「町」が成り立つレベルの差が生じているわけです。
男性は65歳になるまでに、女性と比べて、「村」や「町」1つ分くらいも多く死んでしまうのです。
さて、どうでしょう。
乳幼児期,児童期,青年期,壮年期,老年期と、人間の一生は変化していきます。
その全体を通じて、男性の方が生存数が少ないのでしょうか。
それとも、どこかで、女性の方が少なくなるタイミングがあるのでしょうか。
全年齢を通じて生存数のグラフを描いてみました。
これを見ると、老年期においては一目瞭然で、一貫して男性の方が生存数が少ないことがお分かり頂けると思います。
ただし、壮年期以前については、このグラフでは殆ど差が判別できなくなってしまっていて、何とも言えません。
スケールを変えるか、男女差の値をプロットするようにする等、グラフを描き直す必要がありますね。
そこで、データの範囲を50歳までに限定したグラフを描いてみました。
これを見ると、依然として、乳幼児期・児童期・青年期前期では差が判別できないのですが、青年期後期と壮年期(=成人以後)についてははっきりしました。
まず、成人以後は一貫して男性の方が生存数が少ない という点は、ご確認いただけたと思います。
(成人以前についてはもうしばらくお待ち下さい)
これは、もしかしたら、先ほどの0~50歳のグラフがヒントになったかもしれませんね。
ただ、もう少しクリアにするために、30~59歳だけを取り出して描いたグラフを用意しましたので、ご覧ください。
30歳において、男女差は約450人で、
40歳においても、約800人に過ぎません。
それが、59歳では、約3400人にまで開いています。
男女差が1000人を超えるのは、44歳です。
また、男女差が2000人を超えるのは、54歳です。
(ただし、53歳における男女差が1999人なので、ほぼ2000人)
つまり、壮年期には一貫して男女差が開いていくのですが、
特に 40歳を過ぎてからの差の広がり方が大きい ということです。
結婚して子どものいる男性であれば、40代~50代の時期は、ちょうど子どもが中学・高校生になり、中等教育や高等教育を受けさせるために一番お金がかかる時期にあたります。
家族を養うために、一生懸命、粉骨砕身で働けば、身体には大きな負荷がかかります。
少し体調が悪いと思っても、収入のために無理をしてしまえば、治療が手遅れにもなりかねません。
また、加齢による体力の低下は免れ得ませんから、若いころと同じ感覚で無理をしてしまえば、歪みが出てきます。
色々な要因が重なり合ってのことと思いますが、いずれにせよ、壮年期後期は女性と比して多くの男性が命を落としているということなのです。
男性の健康問題を、社会全体として真剣に考えていく必要があると、強く思います。
最後に、青年期以前の生存数について、男女差を見ていくことにしましょう。
[問題2]の答えについて、成人以前の乳幼児期・児童期・青年期前期については保留となっていましたが、ここで明らかになります。
まず、5歳児の〈 生存数 〉を見てみましょう。
10万人の男の赤ん坊が5歳になったころには、約9万9千685人 になっています。
(約315人が5歳までに死亡します)
10万人の女の赤ん坊が65歳になったころには、約9万9千705人 になっています。
(約295人が65歳までに死亡します)
5歳児でも男児の方が生存数が少ないのですが、差はわずか20人です。
実際、幼児期の死亡数のデータを比較すると、男女差はほとんど見られません。
0歳児に関しては、若干男児の方が死亡率が高く、5歳児における男女差も、ほぼここに起因するものといえそうです。
(余談ですが、新生児の出生比率は男児の方が若干高いという事実が、統計学的に明らかになっています。これは、0歳児における男児の死亡率が若干高い分、自然とそのようにして均衡をとっているということなのだと思います。うまくできていますね)
では、児童期・青年期ではどうなのでしょう。
20歳以上では明らかに男性の方が〈 生存数 〉が少なくなっていたので、児童期・青年期全体を通じて、男女差が拡大する ことにはなるはずです。
ただし、差の拡大のしかたの傾向については、考えてみる余地がありそうです。
さて、どうでしょう。
この問題の答えをなるべくクリアに見ていただけるよう、7~22歳の〈 生存数 〉だけを抽出したグラフを描きました。
さっそくですが、ご覧ください。
これを見ていただけば、常に男子の方が〈 生存数 〉が少なくなっていることがまず分かるかと思います。
また、児童期にはあまり男女差が拡大せず、青年期になって男女差の拡大が始まっていることもお分かり頂けると思います。
特に、14~15歳を超えると、男子の〈 生存数 〉がグングンと低下し始めています。
つまり、これまでの話を総合すると、
だいたい中学校を卒業するまではあまり男女差は大きくないが、それ以後は一貫して男性の方が女性よりも死にやすい
ということです。
日本は徴兵制の存在しない国です。また、60年以上にわたって、一度たりとも他国と戦争状態になったことはありません。
それでも、幼児期・児童期を除いたほとんどの年齢層で男性が女性よりも死にやすい という現実があります。
こと、健康面においては、男性は女性と比べて弱者であるのだということを、このデータは如実に示していると思います。
男性の生命は、健康は、あまりに軽視されすぎていると、僕は感じます。
そして、もし、徴兵制の存在する国,戦時下にある国における、〈 生存数 〉のデータがあれば見てみたいものです。
仮説としては、日本よりもさらに、男性の〈 生存数 〉が低下すると考えます。特に、10代後半から20代における男女差の拡大が、日本よりもさらにさらに大きいのではないかと思うのです。
古来より、男性の身体や生命は、女性の身体や生命に比べて乱暴・粗末に取り扱われてきました。
このことは、現代となってもさほど変わっていないと思います。
もしそうでなければ、これほどまでに〈 生存数 〉に男女差が表れることはないのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
僕は、男性・男児の生命が(女性・女児と比べて相対的に)軽んじられることのない世界の実現を心から願います。
男性・男児に対して、一律に乱暴・粗末な扱いをすることを許容し、ときには推奨しさえする風潮が薄れていくことを心から願います。
理不尽な暴力や暴言の対象にされ、身体や精神を踏みにじられ、人間としての尊厳を傷つけられ、それでも黙って耐えるしかない男性・男児が1人でも少なくなることを祈ります。
「偶然にして男性に生まれたから」というだけで辛い思いをする人が、1人でも少なくなることを祈っています。
1人でも多くの男性が、心身の健康を保ち、社会的,感情的,物理的および精神的な幸福を手に入れられることを切望します。
今回はこれで終わりとします。
次回は、前回や今回と同じ、厚生労働省の 平成24年簡易生命表の概況 から、〈 死因別死亡確率 〉を取り上げてみようと考えています。
更新はいつになるか分かりませんが、まとまり次第、公開させていただきます。
( 関連ワード : 弱者男性問題,男性差別,女災,マスキュリズム,メンズリブ,男性解放,男性運動 )
国際男性デー(IMD) は、男性・男児のさらなる健康と幸福 を目的とした記念日です。
日本ではほとんど知られていませんが、多くの国で祝われています。
当ブログでは、国際男性デー(IMD) を記念して、ミニ連載をしています。
この記事は、その第2回目にあたります。
予定より大幅に遅れての公開になってしまいましたので、第1回から約1ヶ月も経っていますし、IMDからも1ヶ月近く経ってしまっていますが、ご容赦ください。
なお、第1回 では、男性と女性の平均寿命の差 を取り上げました。
要旨は以下の通りですが、ぜひ リンク から全文を読んでみていただけると嬉しいです。
・ 平均寿命は戦後一貫して伸び続けている(男女とも)
・ 男性の平均寿命は、女性よりもつねに短い
・ 男性の平均寿命は、女性よりもつねに短い
・ 平均寿命の男女差は、終戦直後と比べると3年くらい広がっている
・ 1950年代後半~1960年代前半の時期は差がグングン開いた
・ その後、一旦、あまり差が開かない時期があった
・ 1982年からは再びグングン上昇。1990年代は一貫して差が拡大
・ 2003年をピークに少し差が縮まって今に至る
・ 1950年代後半~1960年代前半の時期は差がグングン開いた
・ その後、一旦、あまり差が開かない時期があった
・ 1982年からは再びグングン上昇。1990年代は一貫して差が拡大
・ 2003年をピークに少し差が縮まって今に至る
仮説 : 古来より、男性の身体や生命は、女性の身体や生命に比べて乱暴・粗末に取り扱われてきた。それは現代でも変わらない。
結論 : 男性・男児の生命が(女性・女児と比べて相対的に)軽んじられることのない世界の実現を心から願う。1人でも多くの男性が、心身の健康を保ち、社会的,感情的,物理的および精神的な幸福を手に入れられることを切望する。
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第1回 で提示した〈 平均寿命 〉や〈 平均余命 〉は、さまざまな要因を考慮しながら作成される〈 完全生命表 〉や〈 簡易生命表 〉などに則って、毎年、厚生労働省が発表しているものでした。
現時点での最新版は2012年(平成24年)のもので、インターネット上で閲覧することも出来ます。
( → 平成24年簡易生命表の概況 )
この〈 完全生命表 〉や〈 簡易生命表 〉からは、他にもいろいろなことを知ることが出来ます。
今回は、年齢別生存数 を取り上げようと思います。
平成24年簡易生命表の概況 に掲載されている、「参考資料1生命表諸関数の定義」を見ると、〈 生存数 〉は以下のように定義されています。
生命表上で一定の出生者数(簡易生命表では100000人)が、上記の死
亡率に従って死亡減少していくと考えた場合、x 歳に達するまで生きると
期待される者の数を x 歳における生存数といい、これをlxで表す。
なお、〈 死亡率 〉については、
ちょうどx歳に達した者がx+n歳に達しないで死亡する確率をx歳以上
x+n歳未満における死亡率といい、これをnqxで表す。特に1qxをx歳の
死亡率といい、これをqxで表す。
となっています。
難しいですね。もう少し具体的に分かりやすく説明してみます。
25歳における死亡率 は、25歳に達した者が、26歳にならずに死亡する確率です。
男性の25歳における死亡率は 0.00063 で、これは、「25歳男性の 0.063%は26歳にならずに死亡する」という意味です。
女性の25歳における死亡率は 0.00028 で、これは、「25歳女性の 0.028% は26歳にならずに死亡する」という意味です。
この死亡率は0歳から104歳まで、各年齢に対して算出されています。
生存数の計算は、この各年齢の死亡率を使って行います。
「0歳児が男児・女児それぞれ10万人生まれたとして、各年齢で何人が生存しているかという値」 が〈 生存数 〉です。
(出生当初の10万人が、死亡率にしたがって順次死亡していくと仮定した場合、各年齢で何人が生存しているかを表す値です)
[問題1]
「平成24年簡易生命表の概況」によると、65歳の男性・女性それぞれの 〈 生存数 〉 はどちらの方が多いと思いますか。
また、どのくらいの差があると思いますか。
予想
( 男性 ・ 女性 )の方が多い。
男女差は、出生当初を男女ともに10万人(「市」の人口程度)としていることを思い出しながら予想すると、
ア. 60人くらい(学校の2クラス分くらい)
イ. 600人くらい(学校の全生徒数くらい)
ウ.6000人くらい(「村」の人口くらい)
エ.その他
どうしてそう思いましたか?
「平成24年簡易生命表の概況」によると、65歳の男性・女性それぞれの 〈 生存数 〉 はどちらの方が多いと思いますか。
また、どのくらいの差があると思いますか。
予想
( 男性 ・ 女性 )の方が多い。
男女差は、出生当初を男女ともに10万人(「市」の人口程度)としていることを思い出しながら予想すると、
ア. 60人くらい(学校の2クラス分くらい)
イ. 600人くらい(学校の全生徒数くらい)
ウ.6000人くらい(「村」の人口くらい)
エ.その他
どうしてそう思いましたか?
第1回 で見たとおり、平均寿命は女性の方が6年以上も長いのですから、65歳ともなれば女性の方が多いという予想を立てた方が多いのではないでしょうか。
あるいは、何らかの理由で、65歳では男性の方が生存数が多いという予想を立てられた方もいらっしゃるかもしれません。
男女差についてはどうでしょう。かなりおおざっぱな選択肢にしましたが、このくらいおおざっぱな方が予想を立てやすいだろうという考えからです。
あまり細かな数字に固執しすぎるよりも、数量的なイメージを大切にしたいという思いもあります。
さて、平成24年簡易生命表の概況 に示された、65歳の男女の〈 生存数 〉を発表することにしましょう。
10万人の男の赤ん坊が65歳になったころには、約8万8千人 になっています。
(約1万2千人が65歳までに死亡します)
10万人の女の赤ん坊が65歳になったころには、約9万4千人 になっています。
(約6千人が65歳までに死亡します)
よって、生存数は女性の方が多く、その差は約6000人でした。
1つの「村」や「町」が成り立つレベルの差が生じているわけです。
男性は65歳になるまでに、女性と比べて、「村」や「町」1つ分くらいも多く死んでしまうのです。
[問題2]
65歳では男性の生存数は女性よりも少なくなっていました。
では、他の年齢ではどうなのでしょうか。
他の年齢で、男性の生存数が女性の生存数よりも多い ところは、1カ所でもあると思いますか?
ア.ある(男性の方が生存数が多い年齢がある)
イ.ない(全ての年齢で女性の方が生存数が多い)
どうしてそう思いましたか?
65歳では男性の生存数は女性よりも少なくなっていました。
では、他の年齢ではどうなのでしょうか。
他の年齢で、男性の生存数が女性の生存数よりも多い ところは、1カ所でもあると思いますか?
ア.ある(男性の方が生存数が多い年齢がある)
イ.ない(全ての年齢で女性の方が生存数が多い)
どうしてそう思いましたか?
さて、どうでしょう。
乳幼児期,児童期,青年期,壮年期,老年期と、人間の一生は変化していきます。
その全体を通じて、男性の方が生存数が少ないのでしょうか。
それとも、どこかで、女性の方が少なくなるタイミングがあるのでしょうか。
全年齢を通じて生存数のグラフを描いてみました。
これを見ると、老年期においては一目瞭然で、一貫して男性の方が生存数が少ないことがお分かり頂けると思います。
ただし、壮年期以前については、このグラフでは殆ど差が判別できなくなってしまっていて、何とも言えません。
スケールを変えるか、男女差の値をプロットするようにする等、グラフを描き直す必要がありますね。
そこで、データの範囲を50歳までに限定したグラフを描いてみました。
これを見ると、依然として、乳幼児期・児童期・青年期前期では差が判別できないのですが、青年期後期と壮年期(=成人以後)についてははっきりしました。
まず、成人以後は一貫して男性の方が生存数が少ない という点は、ご確認いただけたと思います。
(成人以前についてはもうしばらくお待ち下さい)
[問題3]
壮年期(ここでは30~59歳を考えます)においては一貫して男性の方が生存数が少なくなっています。
では、壮年期における男女差はどのような推移をしているのでしょうか。
ア.ほぼ一定の差がある
イ.年齢が高くなるほど差が開いていく
ウ.年齢が低くなるほど差が縮まっていく
エ.その他
どうしてそう思いましたか?
壮年期(ここでは30~59歳を考えます)においては一貫して男性の方が生存数が少なくなっています。
では、壮年期における男女差はどのような推移をしているのでしょうか。
ア.ほぼ一定の差がある
イ.年齢が高くなるほど差が開いていく
ウ.年齢が低くなるほど差が縮まっていく
エ.その他
どうしてそう思いましたか?
これは、もしかしたら、先ほどの0~50歳のグラフがヒントになったかもしれませんね。
ただ、もう少しクリアにするために、30~59歳だけを取り出して描いたグラフを用意しましたので、ご覧ください。
30歳において、男女差は約450人で、
40歳においても、約800人に過ぎません。
それが、59歳では、約3400人にまで開いています。
男女差が1000人を超えるのは、44歳です。
また、男女差が2000人を超えるのは、54歳です。
(ただし、53歳における男女差が1999人なので、ほぼ2000人)
つまり、壮年期には一貫して男女差が開いていくのですが、
特に 40歳を過ぎてからの差の広がり方が大きい ということです。
結婚して子どものいる男性であれば、40代~50代の時期は、ちょうど子どもが中学・高校生になり、中等教育や高等教育を受けさせるために一番お金がかかる時期にあたります。
家族を養うために、一生懸命、粉骨砕身で働けば、身体には大きな負荷がかかります。
少し体調が悪いと思っても、収入のために無理をしてしまえば、治療が手遅れにもなりかねません。
また、加齢による体力の低下は免れ得ませんから、若いころと同じ感覚で無理をしてしまえば、歪みが出てきます。
色々な要因が重なり合ってのことと思いますが、いずれにせよ、壮年期後期は女性と比して多くの男性が命を落としているということなのです。
男性の健康問題を、社会全体として真剣に考えていく必要があると、強く思います。
最後に、青年期以前の生存数について、男女差を見ていくことにしましょう。
[問題2]の答えについて、成人以前の乳幼児期・児童期・青年期前期については保留となっていましたが、ここで明らかになります。
まず、5歳児の〈 生存数 〉を見てみましょう。
10万人の男の赤ん坊が5歳になったころには、約9万9千685人 になっています。
(約315人が5歳までに死亡します)
10万人の女の赤ん坊が65歳になったころには、約9万9千705人 になっています。
(約295人が65歳までに死亡します)
5歳児でも男児の方が生存数が少ないのですが、差はわずか20人です。
実際、幼児期の死亡数のデータを比較すると、男女差はほとんど見られません。
0歳児に関しては、若干男児の方が死亡率が高く、5歳児における男女差も、ほぼここに起因するものといえそうです。
(余談ですが、新生児の出生比率は男児の方が若干高いという事実が、統計学的に明らかになっています。これは、0歳児における男児の死亡率が若干高い分、自然とそのようにして均衡をとっているということなのだと思います。うまくできていますね)
では、児童期・青年期ではどうなのでしょう。
20歳以上では明らかに男性の方が〈 生存数 〉が少なくなっていたので、児童期・青年期全体を通じて、男女差が拡大する ことにはなるはずです。
ただし、差の拡大のしかたの傾向については、考えてみる余地がありそうです。
[問題4]
児童期(小学生の時期)と青年期(中学生と高校・大学生に相当する時期)に、〈 生存数 〉の男女差はどんな変化をしていると思いますか。
つねに男子の方が〈 生存数 〉が少ないのかどうかという点と、
差の拡大の仕方について、それぞれ予想してみてください。
A.常に男子の方が〈 生存数 〉が少ない
B.女子の方が〈 生存数 〉が少ない年齢もある
ア.ほぼ一定の割合で差が拡大していく
イ.児童期にはあまり差が拡大しないが、青年期になると差が拡大する
ウ.児童期に差が拡大し、青年期に入ると差はあまり広がらなくなる
エ.その他
どうしてそう思いましたか?
児童期(小学生の時期)と青年期(中学生と高校・大学生に相当する時期)に、〈 生存数 〉の男女差はどんな変化をしていると思いますか。
つねに男子の方が〈 生存数 〉が少ないのかどうかという点と、
差の拡大の仕方について、それぞれ予想してみてください。
A.常に男子の方が〈 生存数 〉が少ない
B.女子の方が〈 生存数 〉が少ない年齢もある
ア.ほぼ一定の割合で差が拡大していく
イ.児童期にはあまり差が拡大しないが、青年期になると差が拡大する
ウ.児童期に差が拡大し、青年期に入ると差はあまり広がらなくなる
エ.その他
どうしてそう思いましたか?
さて、どうでしょう。
この問題の答えをなるべくクリアに見ていただけるよう、7~22歳の〈 生存数 〉だけを抽出したグラフを描きました。
さっそくですが、ご覧ください。
これを見ていただけば、常に男子の方が〈 生存数 〉が少なくなっていることがまず分かるかと思います。
また、児童期にはあまり男女差が拡大せず、青年期になって男女差の拡大が始まっていることもお分かり頂けると思います。
特に、14~15歳を超えると、男子の〈 生存数 〉がグングンと低下し始めています。
つまり、これまでの話を総合すると、
だいたい中学校を卒業するまではあまり男女差は大きくないが、それ以後は一貫して男性の方が女性よりも死にやすい
ということです。
日本は徴兵制の存在しない国です。また、60年以上にわたって、一度たりとも他国と戦争状態になったことはありません。
それでも、幼児期・児童期を除いたほとんどの年齢層で男性が女性よりも死にやすい という現実があります。
こと、健康面においては、男性は女性と比べて弱者であるのだということを、このデータは如実に示していると思います。
男性の生命は、健康は、あまりに軽視されすぎていると、僕は感じます。
そして、もし、徴兵制の存在する国,戦時下にある国における、〈 生存数 〉のデータがあれば見てみたいものです。
仮説としては、日本よりもさらに、男性の〈 生存数 〉が低下すると考えます。特に、10代後半から20代における男女差の拡大が、日本よりもさらにさらに大きいのではないかと思うのです。
古来より、男性の身体や生命は、女性の身体や生命に比べて乱暴・粗末に取り扱われてきました。
このことは、現代となってもさほど変わっていないと思います。
もしそうでなければ、これほどまでに〈 生存数 〉に男女差が表れることはないのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
僕は、男性・男児の生命が(女性・女児と比べて相対的に)軽んじられることのない世界の実現を心から願います。
男性・男児に対して、一律に乱暴・粗末な扱いをすることを許容し、ときには推奨しさえする風潮が薄れていくことを心から願います。
理不尽な暴力や暴言の対象にされ、身体や精神を踏みにじられ、人間としての尊厳を傷つけられ、それでも黙って耐えるしかない男性・男児が1人でも少なくなることを祈ります。
「偶然にして男性に生まれたから」というだけで辛い思いをする人が、1人でも少なくなることを祈っています。
1人でも多くの男性が、心身の健康を保ち、社会的,感情的,物理的および精神的な幸福を手に入れられることを切望します。
今回はこれで終わりとします。
次回は、前回や今回と同じ、厚生労働省の 平成24年簡易生命表の概況 から、〈 死因別死亡確率 〉を取り上げてみようと考えています。
更新はいつになるか分かりませんが、まとまり次第、公開させていただきます。