Nikkoh の 徒然日記

ゲイ(=男性同性愛者)の Nikkoh が、日々の雑感やまじめなこと、少し性的なことなどを、そこはかとなく書きつくります

第12回セクシュアリティ勉強会

2013-11-28 18:15:37 | セクシュアリティ勉強会(豆腐さん主催)
去年5月に知り合った、僕のゲイの友人、マイノリティのパイオニア・豆腐さん が、《 セクシュアリティ勉強会 》を隔月開催で主催されています。
(基本的には偶数月の第4土曜日午後)

また、2013年5月からは、平日夜の部の取り組みも始まっています。
こちらは定例会のテーマの再放送が基本のようですが、参加メンバーが違ったり、内容の練り直しが行われていたりで、テーマは同じでも完全な再放送にはならないようです。

僕は去年10月の第6回からだいたい毎回参加しています。今回(10月)で8回目となりました。
1年継続して参加し続けたことになりますね。
過去の開催分については、この記事の一番下にリンクをまとめて載せてあります。


※ この勉強会について、僕のブログのエントリーへのリンクです。よかったら読んでね
第9回(テーマ:友人関係) (2013年4月27日実施。2013年5月12日記事公開)
第10回(テーマ:カミングアウト) (2013年6月22日実施。2013年6月23日記事公開)
第11回(再)(テーマ:カミングアウト2)前編 (2013年9月5日実施。2013年9月6日記事公開)
第11回(再)(テーマ:カミングアウト2)後編 (2013年9月5日実施。2013年10月9日記事公開)


10月26日の勉強会の記事が、11月の末に公開という遅さに呆れますが、なかなか落ち着いて記事を書く余裕もなかったので仕方ありませんね。
諸々あって、次に僕がこの勉強会へ出席するのは年明けの1月になりそうなので、「ま、年内に書ければいいか」と気楽に考えていました。
そんなわけで、長く寝かせたわりに内容が濃いわけではないので、期待せずに読んでください。
(9月の分が前後編にわたる超力作だったのですが、それには及びもしません)

今回のテーマは、『僕たちが選んだ結婚』でした。
ともすれば、政治的な色彩が強くなるテーマですが、この勉強会ではどんな感じになるのかなあと楽しみでした。結果的に、期待を裏切らず、いつもと同様に良質な勉強会になったと感じました。

■ 中村さんの事例(要点)

実は、『僕たちの選んだ結婚』というタイトルは、昨年(2012年)の12月にNHKで放送された番組のタイトルなのです。
日本人のゲイ男性、中村さんのことを取り上げたドキュメンタリでした。
勉強会では、まずこの映像を視聴し、それをもとにしてディスカッションを行ったのでした。
僕はその放送をリアルタイムで見たので、だいたいのあらすじは覚えていました。
(そのときに書いた記事をお読みになりたい方は、こちら をお読みください)

ここでは、内容をご存じない読者のために、中村さんの事例の要点をご紹介しようと思います。
放送の内容をすべて書き起こすとたいへん長くなってしまうので、かなり端折って、簡潔にまとめています。

(1) 日本にいたころの中村さん

中村さんは思春期のころにはすでにゲイとしての自覚を持っていました。ただし、「男性を好きになる自分を人に知られてはいけない」という思いを持ち、誰にも打ち明けることなく生きていました。
もちろん、このような〈クローゼット〉な生き方を望む人もたくさんいます。でも中村さんにとっては苦しかったようです。
24歳のとき、彼が悩みを書き連ねていた日記が、母親の目に入り、結果的に母親へのカミングアウトということになりました。
幸いにして、中村さんは両親に理解・受容してもらえました。
2008年、中村さんはNHKの番組へゲイを公言した上で出演しました。当時、人口2000人あまりの島で暮らしていた彼は、番組への出演を通して周囲の人たちにカミングアウトした形になりました。
放送前は島の人たちと良好な関係を築けていましたが、放送後、多くの同僚や友人が中村さんから離れていってしまいました。そして、精神的に追い込まれた中村さんは島を出ることになったのでした。

(2) オランダへ移ってからの中村さん

日本には居場所が無いと感じ、自分らしく生きられる場所を探していた中村さんが行き着いた場所は、オランダでした。
オランダは2001年に世界で始めて同性結婚が合法化された国であり、セクシュアルマイノリティにもっとも寛容な国の1つとされています。
とはいえ、色々な人が住んでいるので、同性愛者の存在を快く思わない人ももちろん存在します。特に、イスラム圏からやってきた人たちの抵抗感は根強いようです。
インターネットでオランダ人のミヒルさんと知り合った中村さんは、次第に彼と惹かれあうようになり、ついには結婚することに決めたのでした。
2人は、2012年10月2日、結婚式を挙げました。式には、中村さんの両親も出席しました。

■ 〈 逃げる 〉ことと〈 選択する 〉ことについて考える

(1) 中村さんの〈 失敗 〉

中村さんはNHKの番組を通して島の人たちへカミングアウトすることを〈 選択 〉しました。
その選択をするにあたっては、「きっと島の人たちは受容してくれるはずだ」という希望的観測があったことと思います。
両親に受容してもらえたのと同じように、島の人たちにも受容してもらうことができる。そうすれば、ゲイをオープンにしてのびのびと幸せに暮らしていくことができる。
そんな思いを抱いての番組出演という形を通じたカミングアウトだったと思います。

でも、結果的に中村さんの思いは打ち砕かれました。それは経緯を前節でお読みいただいたとおりです。
中村さんの選択は〈 失敗 〉だったわけですね。

第三者の立場から見ると、「考えが甘かったのでは?」と思えてしまいます。ものごとはそんなにうまくいくとは限らないのに、無謀だったのではないかと感じます。もし僕ならばきっとこの〈 選択 〉はしないでしょう。

中村さんとしては、「受け入れてほしい」という思いがあったはずで、その気持ちも分かります。
でも、それは彼の勝手な思いであって、他者はそのとおりになるとは限らないわけですね。
自分の思惑通りにならなかった場合(失敗した場合)のことをきちんと考えて、相当の〈 覚悟 〉を固めて〈 選択 〉しなくてはいけなかったと思います。
(もちろん、本当のところは分からないので、中村さんは相当の覚悟を固めて選択したのかもしれないのですが…)

いずれにせよ、中村さんの選択は失敗に終わってしまいました。
彼は、(彼自身の責任でももちろんありますが)ダメージを受けてしまったわけです。

(2) 〈 再生 〉のための〈 逃避 〉を選ぶこと

失敗してダメージを受けた中村さんは、結果的に日本に居場所を見つけることができず、オランダへ移住しました。
これは、 日本で失敗したのでオランダへ〈 逃げた 〉 ということもできそうです。
中村さんの場合はたまたま行き先がオランダという国外でしたが、たとえば、東京や大阪などの都会へ引っ越した場合でも、
同様に、 島(田舎)で失敗したので都会へ〈 逃げた 〉 といえそうです。
別の言い方をすれば、日本 or 島(田舎) でもう一度やり直すことを〈 諦めた 〉ともいえそうですね。

ところで、〈 逃げる 〉とか〈 諦める 〉といった言葉から受ける印象というのは、どちらかというと、マイナスのイメージが強いのではないでしょうか。
確かに、逃げずに諦めずに、何度でも挑戦する姿は心を打ちます。
それに対して、逃げてしまう,諦めてしまう,投げ出してしまうというと、なんとなく「もったいない」とか「卑怯だ」とかいった印象があります。

(逆上がりができないAくんとBくんがいたとします。Aくんは何度失敗しても逃げずに諦めずに練習し続けました。Bくんは「もう無理だ」と逃げてしまいました。結果的に2人ともできるようにはならなかったとしても、多くの人はAくんの姿に心打たれ、彼をほめるのではないのでしょうか。そしてまた、逆にBくんには負の印象を抱く人が多いのではないでしょうか)


もちろん、闇雲に逃げたり諦めたりばかりしているのはもったいない生き方だと思います。卑怯なのかもしれません。
ただ、〈 逃げる 〉とか〈 諦める 〉とかいったことは、必ずしも悪いばかりではないとも思います。

失敗したり挫折したりしたとき、人はダメージを受けます。そこから立ち直ること、〈 再生 〉することは、大変なことです。
そのとき、一度〈 リセット 〉することが功を奏するのかもしれません。
失敗や挫折に至った環境から離れ、リセットして、再び歩み始めるという選択は、あっていいと思うのです。
それは前の環境からの〈 逃避 〉であり、〈 諦め 〉なのですが、決してもったいなくはないですし、卑怯ではないと思います。

中村さんは、日本 or 島(田舎) から逃げました。日本 or 島(田舎)でやり直すことを諦めました。
でも、僕は彼のしたことはもったいなくないと思いますし、卑怯でもないと思います。
彼は 失敗から立ち直り、再出発を果たすために、リセットすることを〈 選んだ 〉 のだと思います。
そして、そのために自分にとって適した場所として、オランダを〈 選んだ 〉のだと思います。

(先ほどの逆上がりの喩えでいくと、もしかしたらBくんは逆上がりから逃げて、水泳を頑張っていたのかもしれません。そして、水泳大会で入賞したのかもしれません。だとすれば、彼が逆上がりから逃げたことはもったいなくも卑怯でもなかったのかもしれません。少なくとも僕はそう思います。もちろんAくんにも心打たれますが、Bくんも讃えたいですね)


〈 逃げる 〉こと、〈 諦める 〉こと、〈 投げ出す 〉ことは、悪いこととは限らない と僕は思いました。

むしろ、逃げたり諦めたり投げ出したりすることで、上手に再出発を果たし、よりよいものを手に入れることができるかもしれないということですね。
逃げることや諦めることや投げ出すことを、悪いこと(勿体無いこと,卑怯なこと)と決め付けず、どういう選択をするのが一番いいのかということをよくよく吟味した上で決断するのが大切なのだと感じました。

逃げずに諦めずに投げ出さずに、向き合い続けるのもあり。
そして、〈 再生 〉のための〈 逃避 〉を選ぶのもありということですね。

■ 自己と相手と、そして〈 社会 〉と

中村さんのドキュメンタリの中には、オランダ在住のイスラム圏の男性(ウォニさん)が登場します。ウォニさんは中村さんと同じオランダ語教室へ通っていて、中村さんはミヒルさんとの結婚のことをウォニさんに伝えたのでした。
当然のことなのですが、ウォニさんは否定的な反応を示しました。
イスラム教の戒律では、同性愛を厳しく禁じています。
それが「当たり前」のなかで育ったウォニさんにとって、やはり同性愛や同性結婚は受け入れがたいことでしょう。

互いに理解しあう、承認しあうといった場合、〈 自己 〉と〈 相手 〉だけを考えただけでは不十分であって、もう1つのファクターとして〈 社会 〉も考えなければならないと思います。

どんな人でも〈 社会 〉の中で生きています。そして、それぞれの社会の中にある〈 文化 〉に無意識のうちに多くの影響を受けているわけです。
(それがいいとか悪いとかではなくて、影響を受けているという事実です)

近頃、教育学の界隈ではよく〈 ヒドゥン・カリキュラム 〉という言葉が聞かれるようです。これは「意図して教えようと思っている内容でなくても、結果的に教えていたり体得させていたりするものごとがある」ので、「これからはそこにも目を向けて教育を考えていこう」という趣旨ですが、社会の中の〈 文化 〉や〈 慣習 〉というのはまさにヒドゥン・カリキュラムだと思います。

同性愛者に限らず、マイノリティの生きづらさというのは、
・ 〈 法 〉や〈 制度 〉によるもの
・ 〈 慣習 〉や〈 文化 〉によるもの

に大別されると思います。そして、おそらく、慣習や文化に起因するものの方が多いのではないかと思います。

法に従わない者は処罰され、慣習や文化に従わない者は排除されます。
制度は完璧なものを作るのは難しく、どうしても零れ落ちてしまう部分が出てしまいます(そして零れ落ちるのはたいていはマイノリティです)。

法や制度は、明示的に定めたり作ったりするものですから、手続きを経て変えていくことができます。
はっきりしている分、話はクリアではあります。
変わるとなれば、スパッと変わる性質のものです。

一方、慣習や文化というものは明示されるものではありませんし、無意識のものです。
そこに難しさがあると思います。
慣習も文化も、もちろん不変のものではないのですが、あくまでもじわじわと変わるだけです。
変えようと思って変わるという性質のものでもなさそうです。

何らかの事情で、慣習や文化に従えない( or 従いたくない )という場合、その事情を抱えたままで、排除されることの無いように生きていかなければなりません。それが「生きづらさ」なのだと思います。

仮に、法や制度を整備したとしても、慣習や文化による生きづらさは残ってしまいます。
あまり直面したくない厳しい現実ですが、しかし、マイノリティの立場にある人は(もちろんそれが〈 公認 〉でも〈 非公認 〉でも)、このことをよく見据えておく必要があると思います。
それは、自分の身を守ることに直結するはずだからです。

そして、相互理解や相互承認をすることは、この「生きづらさ」を緩和することになると思うのですが、
その際には、〈 自己 〉と〈 相手 〉だけでなく、〈 社会 〉というファクターがあるということを考慮する必要があると思います。
自分も相手も、社会の影響を受けて育ってきましたし、今も影響を受けて生きているということです。

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中村さんのオランダでの同性結婚を扱ったドキュメンタリから、主に2つのことを考えることができました。
1つは、〈 再生 〉のための〈 逃避 〉ということ。
もう1つは、自己と相手に加えて〈 社会 〉というファクタを認識するということ。(特に社会の中の〈 慣習 〉や〈 文化 〉にかかわること)
後者に関しては、依然としてもやもやしたままではありますが、これからも考えていきたいですね。

次回の勉強会は、2013年12月21日(土) の午後に開催されるようです。(僕は行けないんですけどね……)
また、それと同じ内容で、1月のどこかの平日の夜に開催されるようです。(僕はそちらへ行く予定!)

興味のある方はぜひどうぞ。告知や申し込みは、こちら からです。



※ 過去の開催分について、豆腐さんのブログのエントリーへのリンクです
第1回 2011年12月23日 記事1記事2
第2回 2012年2月26日 記事1記事2
第3回 2012年4月29日 記事1記事2
第4回 2012年6月24日 記事1, 記事2
第5回 2012年8月26日 記事1記事2
第6回 2012年10月28日 記事1記事2
第7回 2012年12月15日 記事1記事2
第8回 2013年2月23日 記事1記事2
第9回 2013年4月27日 記事1記事2
第1回夜の部 2013年5月27日 記事
第10回 2013年6月22日 記事1記事2
第2回夜の部 2013年7月22日 記事
第11回 2013年8月24日 記事
第3回夜の部 2013年9月5日 記事
第12回 2013年10月26日 記事


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