Nikkoh の 徒然日記

ゲイ(=男性同性愛者)の Nikkoh が、日々の雑感やまじめなこと、少し性的なことなどを、そこはかとなく書きつくります

ハッシュ!

2012-08-30 08:33:08 | 勉強会・ゲイプロ以外のイベント等
7月の トーチソングトリロジー に引き続き、ダイニングバー Queer+s で映画を見てきました( Queer+s Movie Night と題された、月に1回開催されるイベント )

今回の作品は、約10年前の作品、「ハッシュ!」でした。



※ 電気・電子情報系にいる僕は、この映画のタイトルを見て、ハッシュ関数 を思い浮かべてしまうのですが、そのハッシュとは関係ないようですw

ストーリーは上のリンクをご覧いただけばいいのかなあと思います。
この映画は気に入ったので早速DVDを発注しました( Amazonで安かったですしね )。

主要登場人物としては、栗田勝裕(役・田辺誠一)と 長谷直也(役・高橋和也)のゲイカップル。そして、藤倉朝子(役・片倉礼子)という女性が登場します。

  

監督は橋口亮輔さんですが、ご自身が真性ゲイであられます。

この映画では、ゲイの視点から見た女性 というのがよく描かれているように思います。また、型に縛られない家族像 というものを描きたかったのかなあとも感じます。
同性愛カップルを取りまくいろいろな問題 も随所に散りばめられていて、このカップルの描写もリアルで、違和感がありませんでした。
監督さんご自身がゲイということもありますし、俳優さん(おそらく彼らは異性愛者でしょう、事実は分からないけれど)の力量に拍手です。
また、真面目な問題提起をたくさんしていながら、基本的に楽しく笑いながら見られるようになっていた のは実にいいと思いました。
(もちろんこの「笑い」は映画そのものが面白いから出てくるもので、同性愛に対する「嘲笑」が出てくる余地は無いですね)

あと、いくつか、感じたことを思いつくままに書いておきます。
たぶんネタバレとも言えるので、ご注意下さい。

[1] 直也と勝裕がそば屋で食事をしているシーン

 

(a) 直也は勝裕に、「なんで会社の近くの店にしないの?」というようなことを聞くのですが、勝裕は、「会社の人に見られたくない」と答えたのでした。
直也はわりとオープンに生きていて、勝裕はクローズに生きているという設定。それでこうなるわけですね。たぶん、言わなければ友人同士にしか見えないんですが、でも当人はやっぱり抵抗があるのですよね。
僕も、恋をしている人と野球観戦を1試合だけしたのですが、ドームというところは知り合いとの遭遇率がかなり高く、躊躇したという経験もありました。結局観戦は決行したのですが、「知り合いが訪ねてきたら、友人として紹介するからね」と事前に口裏合わせ(?)をしておいたんですよね。結果的に閑散としたオープン戦だったせいか、知り合いに声をかけられることはなかったんですけども。
あとは、カラオケをしようということになって、お店の案をメールしたら、「そこはモロ地元だから別のところで」と言われたりとかね。
異性愛カップルでも、まあ、そういうことはあるのかもしれませんが、同性愛カップルはそれより遙かに気を遣わないといけないのですよねえ。

(b) オープンスペースのお店でゲイに関わる話をするときって、少し周りが気になることがありますが、このシーンではそういう描写もありました。
僕は3週に1回くらいのペースで、某カフェで、豆腐さんのコーチング(カウンセリング) を受けているのですが、話に集中してしまえば気にならないものの、最初のうちはやっぱり周囲に聞かれたら嫌だなあとか結構思っていました。なるべく端っこの、人が周りに少ない席を取りたいなあと画策したり。だんだんそういう気持ちは薄れつつあるんですけども。


[2] 異性愛女性に恋をされること

   

作中には、勝裕 が同僚の女性に恋をされ、ストーカー行為にまで及ばれるという描写がありました。
ゲイが異性愛女性に恋をされ ても、まあ、基本的には応えてあげることはできないので、その恋は最初から叶うはずのない恋ということになるのですよね。
ちょうど、ゲイが異性愛男性に恋をしてしまった場合 と同じかな。これも基本的には最初から叶うはずのない恋なわけで。
ゲイとしてはその辛さがわかるから、自分に恋をしてきた女性の気持ちも痛いほど分かるんだけど、でも、だからこそ、きっぱり断ってあげないといけないんですよねえ。勝裕の優柔不断さが悲劇を生んでしまいました。
僕なんか、モテないから助かるけど、女性にモテてしまうゲイは大変でしょうね。


[3] 「子どもが欲しい」という問題

同性愛者は子どもを授かれません。同性同士ですから、自明のことです。
でも、子どもが欲しいという人もいますよね。
僕も子どもが好きで、自分の子どもの顔を拝んでみたいなあという気持ちも結構強く持っていたので、かなり葛藤を乗り越えた人間です。
作品中では、朝子が、勝裕をゲイでありかつ恋人もいるということを承知した上で、精子を提供して欲しいと願い出ています。
勝裕は戸惑いながらも、その願い出を断ることも出来ず、最終的には前向きな方向へと動いていきます。
真性ゲイの勝裕は、女性の朝子と性交することはできないでしょう。でも、今は人工授精という手段がありますからね。なんとでもしようと思えばできるんですよね。
このあたり、大きな問題提起になっているように感じました。
僕も改めていろいろなことを考えさせられました。


  

[4] 無理解・誤解・偏見

直也の母親が登場するのですが、完全に、《 同性愛 》と《 性同一性障害 》の混同 をしていましたね。この混同じだいはよくありがちなもので、きちんと説明すれば理解できると思うのですが、ここで登場した母親というのは、そもそも人の話に耳を傾けるような感じではなく、そういう人にはなすすべもありませんね。いくら説明したって、ザルに水を注ぐようなものでしょう。
でもこういう人っていっぱいいますからねえ…。頭の痛い問題です。
(なお、この母親は、橋口監督ご自身の母親がモチーフのようです)


 

[5] 家族(実兄)の理解と受容

勝裕のお兄さん、カッコイイなあと思いました。勝裕のこと、分かっていたんですね。弟はゲイだっていうことをね。その上で、勝裕の生き方を受容して励ます言葉がけ をこっそりとしてくれる。あのシーンは胸が熱くなりました。大好きなシーンです。やっぱり 家族に受容されるのって格別 ですからね。1人のゲイとして、しみじみ思います。
最終的にはこのお兄さんは亡くなってしまうのですが…。


 

[6] その他

(a) 2人のベッドシーンもありました。まったく濃厚なものではなく、非性愛者の僕としてはよかったんですけど(だから同性間での性関係にちょっと抵抗感がある人も安心して見てくださいね)。

 

初夜が明けた後の何とも言えない2人の雰囲気が最高でしたね。コーヒーを淹れる直也、立ちこめる湯気、悦に入ってしまいこぼれるコーヒー…。

    

(b) 勝裕「怒ってる?」 直也「怒ってないよ」 勝裕「だって、怒ってるときいつもアイス食べるじゃん」 直也「別に」 ってくだりが、何気なく気に入りましたw
こういうの好きなんですよねえ。なんか直也が可愛くていいです。2人がラブラブなんだというのが伝わってくる描写でしたね。

     

(c) パンツは、勝裕は トランクス でしたが、直也は 白ブリーフ でした
白ブリーフ大好きなもので、ここは純粋に嬉しかったです
あの場(映画を見た後の内容についてのおしゃべり)では言わなかったけどw
実は直也の白ブリにすごく食らいついていました
この映画、2001年公開なんですよねえ。だと、もう大人の白ブリーフ派がかなり少なくなっていたころ。自然な白ブリーフ派を描いてくれたのは GJ でした


  


※ オマケ
直也役の高橋さんは、1985年にTBS系で放送されたドラマ「毎度おさわがせします」にも出演されていました。中2男子トリオの1人という結構重要な役でした。あのドラマ、このトリオがよくブリーフ姿にならされていたことでも有名だったりします。内容もきわどいものが多く、これがゴールデンタイムで放送されていたというのは驚きです(火曜の21時だったらしい)
描き方はともかくとして、ゲイも登場していました(中学2年生のゲイカップル(?)が準主役級で登場)

   


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最初らへんにも書いたとおり、この作品は、《 ゲイの視点から見た女性 》 というのも主題になっていました。
で、映画を見終わった後、そのことも質問されたんですけども。
(前回同様他の参加者の方はみんな異性愛女性ばかりで、男性は僕1人。同性愛の当事者も1人きりでした)
僕の場合、本当に1人の人間として純粋に見ている感じですね。性愛対象ではないから、女性だという理由で甘やかす ということも無いし、下心をもって接する ということもありません。異性愛男性が女性に当たり前にするような配慮もできないのかもしれません(でも1人の人間として大切にします)。
だから、ある意味ではシビアに見ているとも言えるだろうし、その人の人間性を見ているとも言えるのかなあと、質問にお答えしながら、そんなことを考えていました。
心が男性だから、“女心”ってのはわからないので、そういう点では異性愛男性と同じなんですけどね。でも、性愛が向かないというところで、かなり差異が出てくるように感じます。
僕も、たまに、「女性に対してデリカシーがない!」とかって、事情をご存じない方(とくに異性愛の男性)から説教されたりすることがありますw
異性愛男性ならば絶対しないような発言とか、普通にしちゃいますからねえ
意図せずに、思わせぶりな発言や行動しちゃってることもあるでしょうしね。

長くなってきたので、そろそろ記事を締めましょう。
一緒に観た異性愛女性は、女性の立場から見ていて、いろいろと着眼点が違うなあと思わされました。
僕はゲイの立場から見るから、上でいろいろ書いたような視点になってきます。
鑑賞後のおしゃべりの場で、いろいろとお話しできたので、参考にはしていただけたのかなあと思います(当事者が1人だけだと気負いますねw)。
僕も、女性たちの着眼点を楽しく聞かせてもらいました。
体調がイマイチだったから、少し躊躇したけれど、行って良かったです。

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2 コメント

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Unknown (はねはね)
2012-09-01 21:05:20
今晩は。
名古屋には、このような場所があるんですね。
おっしゃる非性愛は、他人の無理解など色々な問題点がありますが、真正面から向き合っていらっしゃるようで、いつも楽しみに読ませていただいております。
取り急ぎコメントを送らせていただきました。
返信する
はねはねさんへ (Nikkoh)
2012-09-02 22:47:26
はねはねさん、いつもコメントありがとうございます(^^)

東京・大阪・名古屋の三大都市は、悩める(?)ゲイが足を運べるような催しがいろいろと開催されているんですよねえ。
幸い、名古屋近郊に住んでいるもので、助かっています。

> 真正面から向き合っていらっしゃるようで、いつも楽しみに読ませていただいております

僕の性格が、生真面目すぎるもので、こういうブログ記事しか書けないというのもあるんですがw、
少しでも誰かの助けになれていたら嬉しいですし、
楽しく読んでいただけているというのは光栄です(^^)

真面目な記事と、エロ要素のある記事と、いろいろ織り交ぜて更新していきたいと思っていますので、よろしければ今後ともご愛読下さい。
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