超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

おやすみモンスター/GOING UNDER GROUND

2012-09-27 21:39:23 | 音楽(旧譜レビュー)








いつか似てない僕らでも
同じように笑ったりしたいな (胸いっぱい)








今から5年前に出たアルバムなんですけど・・・
収録曲の「TWISTER」を聴くついでにアルバム全体も通して聴いてみたら
正直当時レビューを書かなかったのが不思議なくらい良い作品でした
まあ書かなかった理由は一応察しがつくんですけどね。

恐らく、結構ゴーイングのアルバムの中では実験作というか異色作というか
端的に書いて「らしくない」曲が多いアルバムで
それが当時の自分にとってはしっくり来なかったんだと思うけど、
今聴くと逆にその攻めてる感触、パブリックイメージに反した曲が多く入ってるのが
えらい新鮮で、でも所々に王道のナンバーも入ってるその塩梅もまた素敵で
何より一曲一曲に込められた熱量が半端ないんですよね。
多分初聴きの時は、
その熱量の高さにもお腹一杯になっちゃったんだろうけど
それも時間が経てば全然気にならなくなる、という。改めて、すっごい良いアルバムだと思います。
個人的には後半のミドルバラッドの連発が異様にグッと来てしまいました。


ゴーイングはインディー時代にNHK-FMで掛かってるのをよく聴いていて
どっちかって言えばポップス寄りのロックを鳴らすバンド、
ロックまんまってイメージはないんですが
このアルバムはのっけからアグレッシブなロックナンバーで幕を開けますからね。
当時「さかさまワールド」を聴いた時はロックまんまなのが違和感バリバリに感じてたんですが
やっぱりもう5年も経ってる訳だから、そこまで違和感もなく素直に聴けた、
上に普通に名曲じゃん、とも感じられ(笑
時間も案外必要なのかもしれない。
「TRAIN」「海にまつわるエピソード」なんかは割と王道のゴーイングなんですが
その後の「PLANET」と「暗夜行路」は明らかにはみ出してますね(笑)。
前者は詞が厳しすぎだし、
後者はもうメロディとアレンジが異様にダークで。
でも前述の通り今ならそのギャップを楽しめるようにもなってきたので
正直聴き心地は王道ナンバーのそれと全然劣っていません。
中澤ボーカルの曲もいつも以上に攻めてるし、「Title」なんかはもうゴーイングらしさがゼロで(笑
そこら辺の下北系ロックって感じの尖った曲調はポップさの欠片もないんですけど
ある意味スクラップ&ビルドの精神で作られている感覚もあって
今までのゴーイング像を壊して
とにかく新鮮な作品を作って行こう・・・と、そんな意思も垣間見れる曲調の数々
声質とハートフルって方向性によって結構縛られてた部分もあったのかも
それを思いっきり解放してるような弾けっぷりが気持ち良いです。
そういう「意図」を感じ取れるか、感じ取れないかでは作品に対する印象ってこうまで変わるのか、と。
実際、このアルバム以降ヒダカトオルと組んでまた新たな方向性を模索してますもんね。

このアルバムの肝は最後のバラッド群にあると思ってて、
自分の心に巣食う醜さと向き合う「モンスター」、
そして久しぶりに聴いたらメロディがあまりにも綺麗過ぎてビビった「愛のうた」、
その2曲で歌われたテーマを引き継いで爆発させるかのような「胸いっぱい」、
そして安らかに眠れるような心地良い「おやすみ」
この辺の流れは鉄板過ぎて
聴く度にハッとするような完成度の高さを感じるんですが、同時に一つ殻を破った感覚もあって
青春だったり、ハートフルな音像だけでなく
そういうシリアスな方向性でも作品を締めれるようになった
今聴くとその手さばきが本当に見事に感じられて・・・今更ながら当時の成長が伝わって
かつ、久々に聴いたので新譜のような感動もあったりして。凄い作品だと思います。
チャレンジングな作品ではあるんですけど、
だからといって最後は手堅くいつも通り・・・なのでなく
最後まで「らしさ」以外の部分で勝負してる、それがまた個人的にはグッと来る
聴き直してからは正直最高傑作って言ってもいいんじゃないか、ってくらいに好きなアルバムになりました。
それまでは大体「かよわきエナジー」か「h.o.p.s」ばっか取り出してたんですけどね。
あまりに良かったので、ついつい記事にしちゃったんですけど
当時レビューをやってたのにも関わらず
魅力に気付けなかった自分への戒めも兼ねて(笑)。
同様に、リアルタイムではイマイチに感じても今聴くと・・・って作品は全然あるでしょうね。
そう考えると、音楽って無限の楽しみがあるなあ。 そう気付かせてくれた最新の作品です。








NHKのラジオで松本素生が語ってたんですが、
この場合の「モンスター」は誰かに対する「消えればいいのに」だとか
そういういつの間にか心に芽生えた醜い感情を差すのだそう。
うろ覚えではありますけど、ニュアンス的にはそれで良かった(はず)。

そういう生まれた邪心や雑念を振り払いつつ
不恰好な自分を認識しつつ、
それでも「本当の自分」で居られるように、それを守れるように、必死に素直に生きていこう、と。
個人的に咀嚼して自分なりに出した今作のテーマはそういうものでした。
ここまで気合一閃!って作品はゴーイング史上珍しく
それでいて貴重だと思います。曲数が多い上に捨て曲がないので、一度魅力に気付けばいつまでも聴ける。




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