Scientists identify 'smoking gun' in metastasis of hybrid cells
Cancer cells coordinate to form roving clusters
May 19, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160519101031.htm

(notchシグナル伝達タンパク質であるdeltaの影響を受けた上皮細胞は、通常は間葉系細胞になる
しかしnotchシグナル伝達が癌によってハイジャックされると、jaggedの影響を受けて上皮-間葉系のハイブリッド細胞が生じることがライス大学の研究者によって明らかにされた
このハイブリッド細胞はお互いにコミュニケーションをして群れを形成clusterし、体内の別の場所へ転移する
Credit: Illustration by Marcelo Boareto)
ライス大学の研究者によると、癌細胞同士の間の双方向コミュニケーション/two-way communicationは、それらが動けるようになって集合して転移するようになるための鍵であるようだという
ライス大学の理論生物物理学センター/Center for Theoretical Biological Physics (CTBP) のメンバーは、シグナル・フィードバックループの複雑なシステムを癌細胞がどのようにしてねじ曲げてtwist自分のために利用するのかについてのモデルを開発した
これらのシグナルは癌細胞が原発腫瘍から離れて群れを形成clusterするのを助け、それがしばしば致死的となる転移へとつながる
notchシグナル伝達経路にはnotch、jagged、deltaというタンパク質が含まれる
2015年、ライス大学のチームはそれらが癌細胞によってハイジャックされる可能性を報告した
正常な場合、このメカニズムは胚の発達や傷の治癒にとって重要であり、
典型的には一方の細胞のdeltaというリガンドがもう片方の細胞のnotch受容体と相互作用する時に活性化される
研究チームは癌細胞がnotch経路をハイジャックして、特にjaggedを使うという理論を提唱したが、
今回The Royal Society journal Interface誌で発表された新たな論文ではその理論をさらに拡張した
それによると、
癌細胞はjaggedを使って 上皮-間葉系を合わせた『ハイブリッド細胞』に変化させる双方向シグナルtwo-way signalsを確立するだけでなく、jaggedによって 移動する集団mobile clusterを形成するのだという
「全体的に、我々の興味は細胞がどのようにして原発腫瘍を離れる『決断decision』をするのかということにある」
ライスの理論生物物理学者であるHerbert Levineは言う
「腫瘍の中に存在する上皮細胞は異常である
この上皮細胞は外見こそまだ正常な細胞のようだが、増殖すべきではない場所で増殖する
しかし、癌が真に致命的となるのは、元の腫瘍を離れて体内の別のどこかで増殖を始めたときである」
notchシグナル伝達は非常に一般的な機能であるため、
研究者たちはそれが悪党rogue、つまり癌細胞によって別の目的のために再利用repurposeされている可能性を疑った
「我々は過去二、三年にわたって、細胞は動けるようになって腫瘍を離れるために、その細胞運命cell-fateを積極的に決定するのだと主張argueしてきた
今回の論文はその理論をさらに進め、細胞はその決定を、お互いに相互作用することにより調整coordinateするというところまで拡大して扱うaddress the extent」
Levineを中心とする研究チームは、転移のプロセスを妨害する方法を探し求める研究者たちに考慮すべき新たな標的をもたらす
通常、一つの細胞で始まったnotchシグナル伝達は、隣の細胞の『転換transition』を引き起こす
それは例えば、幹細胞がその周囲の細胞を特定の機能のために再設定reconfigureできるようにする
「送信者sendersの細胞と、受信者receiversの細胞がある」
Onuchicは言う
「送信者から受信することにより、受信者である隣の細胞は分化する
細胞は、そのパートナーを元とは異なる状態に変えることができる」
しかし癌では、細胞は『送信者でもあり受信者でもある』
この性質の獲得は、特に細胞がnotchシグナル伝達に使うリガンドを最初のdeltaからjaggedへ変更した時に起きる
「jaggedの増加は動かぬ証拠/煙の立ち上る銃smoking gunであることが判明した」
jaggedタンパク質の数の多さは、動けるハイブリッド細胞を増やすのを助ける
それに加えて、jaggedの増加はハイブリッド細胞が情報を交換するのに役立つ
この情報交換によって、可能な細胞は全て一つのグループへとまとまるのを確実にするのだと彼は言う
「生物学者は、リガンド同士の間の違いについて常に考えているわけではない」
Boaretoは言う
「しかし、大きな違いが存在する
論文の中心的なメッセージは単純だ:
notch-deltaシグナル伝達は細胞の分離isolatedにつながり、上皮間葉転換(EMT)を経て、個々に動くようになる
notch-jaggedシグナル伝達の結果として細胞はグループ化して、EMTを経て、移動する群れmotile clusterになる」
研究者たちは、そのような移行transitionはランダムではないと考えた
「我々は今や、それらが単なる環境への反応ではないことを知っている」
Levineは言う
「それらは多くの場合often、細胞が通信communicatingして、集団的な決定をしたことが原因である」
これらの考えをテストすべく、共著者であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンター所属のSendurai Maniは癌の組織サンプルを使いjaggedや他の関連するタンパク質の存在をこれから数年かけて定量化する予定である
癌細胞がnotch経路や、そしておそらく他の経路も使っているというのは驚くべきことではないとOnuchicは言う
「癌は決して生物学的に完全に新しいメカニズムを作り出さない
癌は既存のメカニズムを使って必要を満たす
それがどのようにして起きるのかを調べることで、転移を防ぐための新たな手がかりがもたらされる可能性がある」
たとえこの発見がすぐには治療に応用されなくても、notch/jagged/deltaタンパク質の発現を定量化することは重症度の診断の助けになるかもしれない
「それは元の腫瘍がどれほど危険なのかをより正確に予測するために計測すべき何らの基準を我々にもたらす」
Levineは言う
http://dx.doi.org/10.1098/rsif.2015.1106
Notch-Jagged signalling can give rise to clusters of cells exhibiting a hybrid epithelial/mesenchymal phenotype.
Notch-Jaggedシグナル伝達は、上皮/間葉ハイブリッド表現型を示す細胞のクラスター化を生じる
Abstract
転移は、上皮間葉転換/epithelial-to-mesenchymal transition (EMT) とその逆の間葉上皮転換/mesenchymal-to-epithelial transition (MET) の繰り返されるサイクルを伴う可能性がある
また、細胞は不完全な転換transitionをしてハイブリッドな上皮/間葉系の表現型を獲得attainしうる
それにより接着したままの細胞が群れclusterを形成して、血液中を循環する腫瘍細胞/circulating tumour cell (CTC)として移動できるようになる
これらの群れは、完全なEMTを経た間葉系細胞と比較してアポトーシス抵抗性であり、転移する傾向propensityを持つ可能性がある
したがって、そのような群れの形成と維持を調節するための鍵となる要因を確定することは、転移を防ぐための戦略に役立つ可能性がある
今回我々は、Notch-Delta-Jaggedシグナル伝達を経由する細胞間コミニュケーションをEMT調節と関連付ける、メカニズムをベースとした理論モデルを考案deviseした
Notch-DeltaとNotch-Jaggedシグナル伝達の両方とも細胞集団にEMTを誘導するが、Jaggedが支配的dominatedなNotchシグナル伝達だけがハイブリッドなE/M細胞を含む群れclusterの形成につながる可能性があり、Deltaが支配的なシグナル伝達ではそれは起きないことを我々は実証する
我々の結果は、腫瘍進行におけるJaggedの役割に関する機構的な洞察の可能性をもたらし、そして転移する間の他の微小環境シグナルの影響を調査するための枠組みを与える

Figure 1.
Notchシグナル伝達経路とEMT回路との間の細胞内相互作用 (a)、ならびにNotchシグナル伝達が組織をパターン化させる結果 (b,c) についての概観
(a) Notchシグナル伝達は、隣り合う細胞の膜貫通Notch受容体と膜貫通リガンド(DeltaまたはJagged)の相互作用によって活性化される
このトランスな相互作用はNotchを切断し、その結果としてNotch細胞内ドメイン/Notch intracellular domain (NICD) が細胞質に放出される
NICDは細胞質から核に入り、そこで多くの標的遺伝子の転写を調整する
NICDはNotch・Jagged・Snailを活性化するが、Deltaは阻害する
FringeによるNotch受容体のグリコシル化/glycosylationは、
NotchのDeltaリガンドへの親和性を増大させるが、Jaggedへの親和性は低下させる
EMT調節回路/EMT regulatory circuitは2つの相互阻害フィードバック回路から構成され、
それぞれEMTを阻害するマイクロRNA(miR)とEMTを誘導する転写因子(TF)が相互に阻害している
miR-34 / SNAIL
miR-200 / ZEB
マイクロRNAは両方ともNotch経路のタンパク質の翻訳を阻害する
miR-34(μ34)はNotchとDeltaをどちらも阻害し、miR-200(μ200)はJaggedを阻害する
WntとTGFβのような、EMTを誘導する外側(external)からのシグナル/EMT-inducing signals (Iext) は、Snailを活性化することによりEMTを誘導することが可能である
(b) Notch-Deltaシグナル伝達は細胞間トグルスイッチ(二方向に切替え可能なスイッチ)を作り出し、隣りの細胞に互い違いalternateの運命を採用させる
つまり、Deltaリガンドが高い送信側の細胞と、Notch受容体が高い受信側の細胞である
これがチェッカーボードのようなパターンを生み出す(側方抑制/lateral inhibition)
(c) Notch-Jaggedシグナル伝達は細胞間のダブルポジティブ・フィードバックループを作り出し、隣の細胞に同じような運命を採用させる
つまり、どちらも細胞もJaggedリガンドが高く、Notch受容体も高い
それにより組織の中で広く同じ運命を普及させる(側方誘導/lateral induction)
Discussion
Notchシグナル伝達は進化的に保存されてきた細胞間のコミュニケーション経路であり、癌の特徴の多くがNotchシグナル伝達による
最近の研究では、Notchシグナル伝達を介する細胞の運命決定においてリガンドの2つのファミリー(DeltaとJagged)が異なる役割を演じ、時には正反対にもなることが注目されている [42]
知る限り、我々の研究は癌の転移の特徴である上皮の可塑性(EMT/MET)においてDeltaとJaggedの異なる役割を明らかにした初めてのものである
Notchシグナル伝達はDeltaとJaggedのどちらでもEMTを誘導するが、
Jaggedを通じてのEMTの誘導はハイブリッドE/Mの表現型において細胞クラスターの形成を特に可能にすることを我々の結果は示唆する
EMT誘導シグナルとNotchシグナル伝達経路可溶性リガンドのどちらかまたは両方によって、これらのクラスターの形成は促進され、安定性は延長される
通常、Notch-Jaggedシグナル伝達は側方誘導/lateral inductionに関与する [20,34,43,44]
言い換えると、隣の細胞に自らと同じ運命を採用させる
したがって、Jaggedが支配的なNotchシグナル伝達を伴う細胞クラスターは、互いに細胞運命を安定させる
『準安定的metastable』な不完全EMT、いわゆるハイブリッドE/M表現型における細胞間でのそのような相互安定は、循環腫瘍細胞(CTC)のクラスター形成につながる可能性があり、したがって臨床的に重要な関連がある
※metastable: 準安定的な。metastasisは転移。不完全EMTという意味での『準安定metastable』と、転移metastasisできるable『転移可能metastable』という意味を掛けているのかもしれない
ハイブリッドE/M表現型を示すCTCは、肺癌・乳癌・前立腺癌の患者の血流に見つかっている [5,45–47]
そしてそれらは集団的移動collective migrationをする能力によってCTCクラスターになる
そのようなクラスターCTCはアポトーシス抵抗性であり、比較的容易に血流から脱出し、個別に移動するCTC(間葉系表現型/Mesenchymal phenotype)よりも最大50倍も転移しやすい
したがって、患者の転移リスクは高まる [5,48,49]
EMTは『1か0か』の反応ではなく、in vivoの癌細胞は滅多に完全なEMTをしないという考え方の評価が増えている [7,50,51]
また、上で述べたような利点から、癌細胞はハイブリッドなE/M表現型を好むpreferのかもしれない
したがって、細胞をハイブリッドなE/M表現型に維持することは(別の状況otherwiseでは『準安定metastable』とも考えられる[52])、多くの重要な生存的な利点をCTCクラスターにもたらしうる
Jagged1を治療標的とすることによって、これらの利点は潜在的に減ずると我々は予測する
Jagged1を治療標的とすることはこれらのクラスターを『壊しbreak』て、単一で移動するCTC(間葉系表現型)にする可能性があるだけでなく、腫瘍を開始する潜在性tumour-initiating potentialも鎮圧subdueすると予測される
最近の研究では、ハイブリッドE/M表現型の細胞(CD24+/CD44+)は、純粋に間葉系の表現型(CD24-/CD44+)よりも多くの腫瘍を形成できることが示されている
それは特にハイブリッドE/M表現型が安定している時である(例えばOVOL [33, 37–40] のような『表現型安定因子phenotypic stability factor』によって[36])
※OVOL1, OVOL2, OVOL3
>UniProtKB/Swiss-Prot for OVOL2 Gene
>Zinc-finger transcription repressor factor. Plays a critical role to maintain the identity of epithelial lineages by suppressing epithelial-to mesenchymal transition mainly through the up-regulation of ZEB1 expression. Positively regulates neuronal differentiation (By similarity). Suppresses cell cycling and terminal differentiation of keratinocytes by directly repressing MYC and NOTCH1.
(ジンクフィンガーというDNA結合モチーフを持つ転写因子である
主にZEB1発現の上方調節を通じてのEMTを抑制することにより上皮系統のアイデンティティを維持するために重要な役割を演じる
ニューロン分化を正に調節する(同様の経路による)
MYCとNOTCH1を直接抑制することにより角化細胞の細胞周期と最終分化を抑制する)
我々の実験データはMDA-MB-231で薬剤耐性tolerantの集団がCD24+/CD44+であり、Jagged1とNotchのレベルが上昇していることを示すが、
これはハイブリッドE/M表現型にとってNotch-Jaggedシグナル伝達が『細胞間の表現型安定因子』としても働くことを示唆する
我々のデータは、癌幹細胞(CSC)が『EMT軸/EMT axis』の中途mid-wayに存在するという最近現れつつある概念 [7,37,53–55]とも共鳴するものであり、
そしてNotch-Jaggedシグナル伝達はCSC集団の維持と化学療法抵抗性にしばしば関与するという概念とも一致する [15,35]
さらに、Jagged1を標的とすることは、腫瘍を促進する多くの炎症性サイトカインによる影響を軽減するmollify
なぜなら、そのような炎症性サイトカインは、Jagged活性化とDelta阻害のどちらかまたは両方によってNotch-Jaggedシグナル伝達を増大させるからである [42,56,57]
したがって、Jagged1は悪性腫瘍進行を止めるための重要な治療標的となりうる [58]
そして、Jagged1を標的とすることは特に、最近試みられているように [59]、NICDを阻害してNotch経路全体を標的とすることによる副作用を緩和する可能性がある [60]
しかしながら、Notch-Jagged (N-J) シグナル伝達は、癌の転移のような病理学的な状況だけに特異的なものではない
例えば、N-Jシグナル伝達は、内耳[34]、膵臓[61]、上皮幹細胞クラスター[62]の発達中の空間的パターン化において重要でありうる
したがって、今回提出した結果は上皮組織化や複数の生物学的状況における恒常性でのJaggedの役割を明らかにするために応用可能かもしれない
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MusashiによってJagged1が抑制されると、細胞は上皮細胞の状態に固定され、動きにくくなる
Musashiは正常な乳腺の発達時にもJagged1を抑制する
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http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24844362
Jagged-1はAML患者の好ましい予後と関連する新たな有望なファクターである
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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160321081631.htm
マイクロRNAに不活性化という概念はなかったが、miR-34は不活化することがある
関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6389
Notchのリガンドに対する選択性は、EGFリピート8番目の保存されたバリン残基が重要な役割を果たす
Cancer cells coordinate to form roving clusters
May 19, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160519101031.htm

(notchシグナル伝達タンパク質であるdeltaの影響を受けた上皮細胞は、通常は間葉系細胞になる
しかしnotchシグナル伝達が癌によってハイジャックされると、jaggedの影響を受けて上皮-間葉系のハイブリッド細胞が生じることがライス大学の研究者によって明らかにされた
このハイブリッド細胞はお互いにコミュニケーションをして群れを形成clusterし、体内の別の場所へ転移する
Credit: Illustration by Marcelo Boareto)
ライス大学の研究者によると、癌細胞同士の間の双方向コミュニケーション/two-way communicationは、それらが動けるようになって集合して転移するようになるための鍵であるようだという
ライス大学の理論生物物理学センター/Center for Theoretical Biological Physics (CTBP) のメンバーは、シグナル・フィードバックループの複雑なシステムを癌細胞がどのようにしてねじ曲げてtwist自分のために利用するのかについてのモデルを開発した
これらのシグナルは癌細胞が原発腫瘍から離れて群れを形成clusterするのを助け、それがしばしば致死的となる転移へとつながる
notchシグナル伝達経路にはnotch、jagged、deltaというタンパク質が含まれる
2015年、ライス大学のチームはそれらが癌細胞によってハイジャックされる可能性を報告した
正常な場合、このメカニズムは胚の発達や傷の治癒にとって重要であり、
典型的には一方の細胞のdeltaというリガンドがもう片方の細胞のnotch受容体と相互作用する時に活性化される
研究チームは癌細胞がnotch経路をハイジャックして、特にjaggedを使うという理論を提唱したが、
今回The Royal Society journal Interface誌で発表された新たな論文ではその理論をさらに拡張した
それによると、
癌細胞はjaggedを使って 上皮-間葉系を合わせた『ハイブリッド細胞』に変化させる双方向シグナルtwo-way signalsを確立するだけでなく、jaggedによって 移動する集団mobile clusterを形成するのだという
「全体的に、我々の興味は細胞がどのようにして原発腫瘍を離れる『決断decision』をするのかということにある」
ライスの理論生物物理学者であるHerbert Levineは言う
「腫瘍の中に存在する上皮細胞は異常である
この上皮細胞は外見こそまだ正常な細胞のようだが、増殖すべきではない場所で増殖する
しかし、癌が真に致命的となるのは、元の腫瘍を離れて体内の別のどこかで増殖を始めたときである」
notchシグナル伝達は非常に一般的な機能であるため、
研究者たちはそれが悪党rogue、つまり癌細胞によって別の目的のために再利用repurposeされている可能性を疑った
「我々は過去二、三年にわたって、細胞は動けるようになって腫瘍を離れるために、その細胞運命cell-fateを積極的に決定するのだと主張argueしてきた
今回の論文はその理論をさらに進め、細胞はその決定を、お互いに相互作用することにより調整coordinateするというところまで拡大して扱うaddress the extent」
Levineを中心とする研究チームは、転移のプロセスを妨害する方法を探し求める研究者たちに考慮すべき新たな標的をもたらす
通常、一つの細胞で始まったnotchシグナル伝達は、隣の細胞の『転換transition』を引き起こす
それは例えば、幹細胞がその周囲の細胞を特定の機能のために再設定reconfigureできるようにする
「送信者sendersの細胞と、受信者receiversの細胞がある」
Onuchicは言う
「送信者から受信することにより、受信者である隣の細胞は分化する
細胞は、そのパートナーを元とは異なる状態に変えることができる」
しかし癌では、細胞は『送信者でもあり受信者でもある』
この性質の獲得は、特に細胞がnotchシグナル伝達に使うリガンドを最初のdeltaからjaggedへ変更した時に起きる
「jaggedの増加は動かぬ証拠/煙の立ち上る銃smoking gunであることが判明した」
jaggedタンパク質の数の多さは、動けるハイブリッド細胞を増やすのを助ける
それに加えて、jaggedの増加はハイブリッド細胞が情報を交換するのに役立つ
この情報交換によって、可能な細胞は全て一つのグループへとまとまるのを確実にするのだと彼は言う
「生物学者は、リガンド同士の間の違いについて常に考えているわけではない」
Boaretoは言う
「しかし、大きな違いが存在する
論文の中心的なメッセージは単純だ:
notch-deltaシグナル伝達は細胞の分離isolatedにつながり、上皮間葉転換(EMT)を経て、個々に動くようになる
notch-jaggedシグナル伝達の結果として細胞はグループ化して、EMTを経て、移動する群れmotile clusterになる」
研究者たちは、そのような移行transitionはランダムではないと考えた
「我々は今や、それらが単なる環境への反応ではないことを知っている」
Levineは言う
「それらは多くの場合often、細胞が通信communicatingして、集団的な決定をしたことが原因である」
これらの考えをテストすべく、共著者であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンター所属のSendurai Maniは癌の組織サンプルを使いjaggedや他の関連するタンパク質の存在をこれから数年かけて定量化する予定である
癌細胞がnotch経路や、そしておそらく他の経路も使っているというのは驚くべきことではないとOnuchicは言う
「癌は決して生物学的に完全に新しいメカニズムを作り出さない
癌は既存のメカニズムを使って必要を満たす
それがどのようにして起きるのかを調べることで、転移を防ぐための新たな手がかりがもたらされる可能性がある」
たとえこの発見がすぐには治療に応用されなくても、notch/jagged/deltaタンパク質の発現を定量化することは重症度の診断の助けになるかもしれない
「それは元の腫瘍がどれほど危険なのかをより正確に予測するために計測すべき何らの基準を我々にもたらす」
Levineは言う
http://dx.doi.org/10.1098/rsif.2015.1106
Notch-Jagged signalling can give rise to clusters of cells exhibiting a hybrid epithelial/mesenchymal phenotype.
Notch-Jaggedシグナル伝達は、上皮/間葉ハイブリッド表現型を示す細胞のクラスター化を生じる
Abstract
転移は、上皮間葉転換/epithelial-to-mesenchymal transition (EMT) とその逆の間葉上皮転換/mesenchymal-to-epithelial transition (MET) の繰り返されるサイクルを伴う可能性がある
また、細胞は不完全な転換transitionをしてハイブリッドな上皮/間葉系の表現型を獲得attainしうる
それにより接着したままの細胞が群れclusterを形成して、血液中を循環する腫瘍細胞/circulating tumour cell (CTC)として移動できるようになる
これらの群れは、完全なEMTを経た間葉系細胞と比較してアポトーシス抵抗性であり、転移する傾向propensityを持つ可能性がある
したがって、そのような群れの形成と維持を調節するための鍵となる要因を確定することは、転移を防ぐための戦略に役立つ可能性がある
今回我々は、Notch-Delta-Jaggedシグナル伝達を経由する細胞間コミニュケーションをEMT調節と関連付ける、メカニズムをベースとした理論モデルを考案deviseした
Notch-DeltaとNotch-Jaggedシグナル伝達の両方とも細胞集団にEMTを誘導するが、Jaggedが支配的dominatedなNotchシグナル伝達だけがハイブリッドなE/M細胞を含む群れclusterの形成につながる可能性があり、Deltaが支配的なシグナル伝達ではそれは起きないことを我々は実証する
我々の結果は、腫瘍進行におけるJaggedの役割に関する機構的な洞察の可能性をもたらし、そして転移する間の他の微小環境シグナルの影響を調査するための枠組みを与える

Figure 1.
Notchシグナル伝達経路とEMT回路との間の細胞内相互作用 (a)、ならびにNotchシグナル伝達が組織をパターン化させる結果 (b,c) についての概観
(a) Notchシグナル伝達は、隣り合う細胞の膜貫通Notch受容体と膜貫通リガンド(DeltaまたはJagged)の相互作用によって活性化される
このトランスな相互作用はNotchを切断し、その結果としてNotch細胞内ドメイン/Notch intracellular domain (NICD) が細胞質に放出される
NICDは細胞質から核に入り、そこで多くの標的遺伝子の転写を調整する
NICDはNotch・Jagged・Snailを活性化するが、Deltaは阻害する
FringeによるNotch受容体のグリコシル化/glycosylationは、
NotchのDeltaリガンドへの親和性を増大させるが、Jaggedへの親和性は低下させる
EMT調節回路/EMT regulatory circuitは2つの相互阻害フィードバック回路から構成され、
それぞれEMTを阻害するマイクロRNA(miR)とEMTを誘導する転写因子(TF)が相互に阻害している
miR-34 / SNAIL
miR-200 / ZEB
マイクロRNAは両方ともNotch経路のタンパク質の翻訳を阻害する
miR-34(μ34)はNotchとDeltaをどちらも阻害し、miR-200(μ200)はJaggedを阻害する
WntとTGFβのような、EMTを誘導する外側(external)からのシグナル/EMT-inducing signals (Iext) は、Snailを活性化することによりEMTを誘導することが可能である
(b) Notch-Deltaシグナル伝達は細胞間トグルスイッチ(二方向に切替え可能なスイッチ)を作り出し、隣りの細胞に互い違いalternateの運命を採用させる
つまり、Deltaリガンドが高い送信側の細胞と、Notch受容体が高い受信側の細胞である
これがチェッカーボードのようなパターンを生み出す(側方抑制/lateral inhibition)
(c) Notch-Jaggedシグナル伝達は細胞間のダブルポジティブ・フィードバックループを作り出し、隣の細胞に同じような運命を採用させる
つまり、どちらも細胞もJaggedリガンドが高く、Notch受容体も高い
それにより組織の中で広く同じ運命を普及させる(側方誘導/lateral induction)
Discussion
Notchシグナル伝達は進化的に保存されてきた細胞間のコミュニケーション経路であり、癌の特徴の多くがNotchシグナル伝達による
最近の研究では、Notchシグナル伝達を介する細胞の運命決定においてリガンドの2つのファミリー(DeltaとJagged)が異なる役割を演じ、時には正反対にもなることが注目されている [42]
知る限り、我々の研究は癌の転移の特徴である上皮の可塑性(EMT/MET)においてDeltaとJaggedの異なる役割を明らかにした初めてのものである
Notchシグナル伝達はDeltaとJaggedのどちらでもEMTを誘導するが、
Jaggedを通じてのEMTの誘導はハイブリッドE/Mの表現型において細胞クラスターの形成を特に可能にすることを我々の結果は示唆する
EMT誘導シグナルとNotchシグナル伝達経路可溶性リガンドのどちらかまたは両方によって、これらのクラスターの形成は促進され、安定性は延長される
通常、Notch-Jaggedシグナル伝達は側方誘導/lateral inductionに関与する [20,34,43,44]
言い換えると、隣の細胞に自らと同じ運命を採用させる
したがって、Jaggedが支配的なNotchシグナル伝達を伴う細胞クラスターは、互いに細胞運命を安定させる
『準安定的metastable』な不完全EMT、いわゆるハイブリッドE/M表現型における細胞間でのそのような相互安定は、循環腫瘍細胞(CTC)のクラスター形成につながる可能性があり、したがって臨床的に重要な関連がある
※metastable: 準安定的な。metastasisは転移。不完全EMTという意味での『準安定metastable』と、転移metastasisできるable『転移可能metastable』という意味を掛けているのかもしれない
ハイブリッドE/M表現型を示すCTCは、肺癌・乳癌・前立腺癌の患者の血流に見つかっている [5,45–47]
そしてそれらは集団的移動collective migrationをする能力によってCTCクラスターになる
そのようなクラスターCTCはアポトーシス抵抗性であり、比較的容易に血流から脱出し、個別に移動するCTC(間葉系表現型/Mesenchymal phenotype)よりも最大50倍も転移しやすい
したがって、患者の転移リスクは高まる [5,48,49]
EMTは『1か0か』の反応ではなく、in vivoの癌細胞は滅多に完全なEMTをしないという考え方の評価が増えている [7,50,51]
また、上で述べたような利点から、癌細胞はハイブリッドなE/M表現型を好むpreferのかもしれない
したがって、細胞をハイブリッドなE/M表現型に維持することは(別の状況otherwiseでは『準安定metastable』とも考えられる[52])、多くの重要な生存的な利点をCTCクラスターにもたらしうる
Jagged1を治療標的とすることによって、これらの利点は潜在的に減ずると我々は予測する
Jagged1を治療標的とすることはこれらのクラスターを『壊しbreak』て、単一で移動するCTC(間葉系表現型)にする可能性があるだけでなく、腫瘍を開始する潜在性tumour-initiating potentialも鎮圧subdueすると予測される
最近の研究では、ハイブリッドE/M表現型の細胞(CD24+/CD44+)は、純粋に間葉系の表現型(CD24-/CD44+)よりも多くの腫瘍を形成できることが示されている
それは特にハイブリッドE/M表現型が安定している時である(例えばOVOL [33, 37–40] のような『表現型安定因子phenotypic stability factor』によって[36])
※OVOL1, OVOL2, OVOL3
>UniProtKB/Swiss-Prot for OVOL2 Gene
>Zinc-finger transcription repressor factor. Plays a critical role to maintain the identity of epithelial lineages by suppressing epithelial-to mesenchymal transition mainly through the up-regulation of ZEB1 expression. Positively regulates neuronal differentiation (By similarity). Suppresses cell cycling and terminal differentiation of keratinocytes by directly repressing MYC and NOTCH1.
(ジンクフィンガーというDNA結合モチーフを持つ転写因子である
主にZEB1発現の上方調節を通じてのEMTを抑制することにより上皮系統のアイデンティティを維持するために重要な役割を演じる
ニューロン分化を正に調節する(同様の経路による)
MYCとNOTCH1を直接抑制することにより角化細胞の細胞周期と最終分化を抑制する)
我々の実験データはMDA-MB-231で薬剤耐性tolerantの集団がCD24+/CD44+であり、Jagged1とNotchのレベルが上昇していることを示すが、
これはハイブリッドE/M表現型にとってNotch-Jaggedシグナル伝達が『細胞間の表現型安定因子』としても働くことを示唆する
我々のデータは、癌幹細胞(CSC)が『EMT軸/EMT axis』の中途mid-wayに存在するという最近現れつつある概念 [7,37,53–55]とも共鳴するものであり、
そしてNotch-Jaggedシグナル伝達はCSC集団の維持と化学療法抵抗性にしばしば関与するという概念とも一致する [15,35]
さらに、Jagged1を標的とすることは、腫瘍を促進する多くの炎症性サイトカインによる影響を軽減するmollify
なぜなら、そのような炎症性サイトカインは、Jagged活性化とDelta阻害のどちらかまたは両方によってNotch-Jaggedシグナル伝達を増大させるからである [42,56,57]
したがって、Jagged1は悪性腫瘍進行を止めるための重要な治療標的となりうる [58]
そして、Jagged1を標的とすることは特に、最近試みられているように [59]、NICDを阻害してNotch経路全体を標的とすることによる副作用を緩和する可能性がある [60]
しかしながら、Notch-Jagged (N-J) シグナル伝達は、癌の転移のような病理学的な状況だけに特異的なものではない
例えば、N-Jシグナル伝達は、内耳[34]、膵臓[61]、上皮幹細胞クラスター[62]の発達中の空間的パターン化において重要でありうる
したがって、今回提出した結果は上皮組織化や複数の生物学的状況における恒常性でのJaggedの役割を明らかにするために応用可能かもしれない
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