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ハイブリッド細胞が転移する際の『確かな証拠』を確定する

2016-05-24 06:06:44 | 
Scientists identify 'smoking gun' in metastasis of hybrid cells

Cancer cells coordinate to form roving clusters

May 19, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160519101031.htm


(notchシグナル伝達タンパク質であるdeltaの影響を受けた上皮細胞は、通常は間葉系細胞になる
しかしnotchシグナル伝達が癌によってハイジャックされると、jaggedの影響を受けて上皮-間葉系のハイブリッド細胞が生じることがライス大学の研究者によって明らかにされた
このハイブリッド細胞はお互いにコミュニケーションをして群れを形成clusterし、体内の別の場所へ転移する

Credit: Illustration by Marcelo Boareto)

ライス大学の研究者によると、癌細胞同士の間の双方向コミュニケーション/two-way communicationは、それらが動けるようになって集合して転移するようになるための鍵であるようだという

ライス大学の理論生物物理学センター/Center for Theoretical Biological Physics (CTBP) のメンバーは、シグナル・フィードバックループの複雑なシステムを癌細胞がどのようにしてねじ曲げてtwist自分のために利用するのかについてのモデルを開発した
これらのシグナルは癌細胞が原発腫瘍から離れて群れを形成clusterするのを助け、それがしばしば致死的となる転移へとつながる

notchシグナル伝達経路にはnotch、jagged、deltaというタンパク質が含まれる
2015年、ライス大学のチームはそれらが癌細胞によってハイジャックされる可能性を報告した

正常な場合、このメカニズムは胚の発達や傷の治癒にとって重要であり、
典型的には一方の細胞のdeltaというリガンドがもう片方の細胞のnotch受容体と相互作用する時に活性化される

研究チームは癌細胞がnotch経路をハイジャックして、特にjaggedを使うという理論を提唱したが、
今回The Royal Society journal Interface誌で発表された新たな論文ではその理論をさらに拡張した
それによると、
癌細胞はjaggedを使って 上皮-間葉系を合わせた『ハイブリッド細胞』に変化させる双方向シグナルtwo-way signalsを確立するだけでなく、jaggedによって 移動する集団mobile clusterを形成するのだという


「全体的に、我々の興味は細胞がどのようにして原発腫瘍を離れる『決断decision』をするのかということにある」
ライスの理論生物物理学者であるHerbert Levineは言う

「腫瘍の中に存在する上皮細胞は異常である
この上皮細胞は外見こそまだ正常な細胞のようだが、増殖すべきではない場所で増殖する
しかし、癌が真に致命的となるのは、元の腫瘍を離れて体内の別のどこかで増殖を始めたときである」

notchシグナル伝達は非常に一般的な機能であるため、
研究者たちはそれが悪党rogue、つまり癌細胞によって別の目的のために再利用repurposeされている可能性を疑った

「我々は過去二、三年にわたって、細胞は動けるようになって腫瘍を離れるために、その細胞運命cell-fateを積極的に決定するのだと主張argueしてきた
今回の論文はその理論をさらに進め、細胞はその決定を、お互いに相互作用することにより調整coordinateするというところまで拡大して扱うaddress the extent」

Levineを中心とする研究チームは、転移のプロセスを妨害する方法を探し求める研究者たちに考慮すべき新たな標的をもたらす

通常、一つの細胞で始まったnotchシグナル伝達は、隣の細胞の『転換transition』を引き起こす
それは例えば、幹細胞がその周囲の細胞を特定の機能のために再設定reconfigureできるようにする

「送信者sendersの細胞と、受信者receiversの細胞がある」
Onuchicは言う

「送信者から受信することにより、受信者である隣の細胞は分化する
細胞は、そのパートナーを元とは異なる状態に変えることができる」

しかし癌では、細胞は『送信者でもあり受信者でもある』
この性質の獲得は、特に細胞がnotchシグナル伝達に使うリガンドを最初のdeltaからjaggedへ変更した時に起きる

「jaggedの増加は動かぬ証拠/煙の立ち上る銃smoking gunであることが判明した」

jaggedタンパク質の数の多さは、動けるハイブリッド細胞を増やすのを助ける
それに加えて、jaggedの増加はハイブリッド細胞が情報を交換するのに役立つ
この情報交換によって、可能な細胞は全て一つのグループへとまとまるのを確実にするのだと彼は言う

「生物学者は、リガンド同士の間の違いについて常に考えているわけではない」
Boaretoは言う

「しかし、大きな違いが存在する
論文の中心的なメッセージは単純だ:
notch-deltaシグナル伝達は細胞の分離isolatedにつながり、上皮間葉転換(EMT)を経て、個々に動くようになる
notch-jaggedシグナル伝達の結果として細胞はグループ化して、EMTを経て、移動する群れmotile clusterになる」


研究者たちは、そのような移行transitionはランダムではないと考えた

「我々は今や、それらが単なる環境への反応ではないことを知っている」
Levineは言う

「それらは多くの場合often、細胞が通信communicatingして、集団的な決定をしたことが原因である」

これらの考えをテストすべく、共著者であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンター所属のSendurai Maniは癌の組織サンプルを使いjaggedや他の関連するタンパク質の存在をこれから数年かけて定量化する予定である


癌細胞がnotch経路や、そしておそらく他の経路も使っているというのは驚くべきことではないとOnuchicは言う

「癌は決して生物学的に完全に新しいメカニズムを作り出さない
癌は既存のメカニズムを使って必要を満たす
それがどのようにして起きるのかを調べることで、転移を防ぐための新たな手がかりがもたらされる可能性がある」


たとえこの発見がすぐには治療に応用されなくても、notch/jagged/deltaタンパク質の発現を定量化することは重症度の診断の助けになるかもしれない

「それは元の腫瘍がどれほど危険なのかをより正確に予測するために計測すべき何らの基準を我々にもたらす」
Levineは言う


http://dx.doi.org/10.1098/rsif.2015.1106
Notch-Jagged signalling can give rise to clusters of cells exhibiting a hybrid epithelial/mesenchymal phenotype.
Notch-Jaggedシグナル伝達は、上皮/間葉ハイブリッド表現型を示す細胞のクラスター化を生じる

Abstract
転移は、上皮間葉転換/epithelial-to-mesenchymal transition (EMT) とその逆の間葉上皮転換/mesenchymal-to-epithelial transition (MET) の繰り返されるサイクルを伴う可能性がある

また、細胞は不完全な転換transitionをしてハイブリッドな上皮/間葉系の表現型を獲得attainしうる
それにより接着したままの細胞が群れclusterを形成して、血液中を循環する腫瘍細胞/circulating tumour cell (CTC)として移動できるようになる

これらの群れは、完全なEMTを経た間葉系細胞と比較してアポトーシス抵抗性であり、転移する傾向propensityを持つ可能性がある
したがって、そのような群れの形成と維持を調節するための鍵となる要因を確定することは、転移を防ぐための戦略に役立つ可能性がある

今回我々は、Notch-Delta-Jaggedシグナル伝達を経由する細胞間コミニュケーションをEMT調節と関連付ける、メカニズムをベースとした理論モデルを考案deviseした

Notch-DeltaとNotch-Jaggedシグナル伝達の両方とも細胞集団にEMTを誘導するが、Jaggedが支配的dominatedなNotchシグナル伝達だけがハイブリッドなE/M細胞を含む群れclusterの形成につながる可能性があり、Deltaが支配的なシグナル伝達ではそれは起きないことを我々は実証する

我々の結果は、腫瘍進行におけるJaggedの役割に関する機構的な洞察の可能性をもたらし、そして転移する間の他の微小環境シグナルの影響を調査するための枠組みを与える



Figure 1.
Notchシグナル伝達経路とEMT回路との間の細胞内相互作用 (a)、ならびにNotchシグナル伝達が組織をパターン化させる結果 (b,c) についての概観

(a) Notchシグナル伝達は、隣り合う細胞の膜貫通Notch受容体と膜貫通リガンド(DeltaまたはJagged)の相互作用によって活性化される
このトランスな相互作用はNotchを切断し、その結果としてNotch細胞内ドメイン/Notch intracellular domain (NICD) が細胞質に放出される

NICDは細胞質から核に入り、そこで多くの標的遺伝子の転写を調整する
NICDはNotch・Jagged・Snailを活性化するが、Deltaは阻害する

FringeによるNotch受容体のグリコシル化/glycosylationは、
NotchのDeltaリガンドへの親和性を増大させるが、Jaggedへの親和性は低下させる

EMT調節回路/EMT regulatory circuitは2つの相互阻害フィードバック回路から構成され、
それぞれEMTを阻害するマイクロRNA(miR)とEMTを誘導する転写因子(TF)が相互に阻害している
 miR-34 / SNAIL
 miR-200 / ZEB

マイクロRNAは両方ともNotch経路のタンパク質の翻訳を阻害する
miR-34(μ34)はNotchとDeltaをどちらも阻害し、miR-200(μ200)はJaggedを阻害する

WntとTGFβのような、EMTを誘導する外側(external)からのシグナル/EMT-inducing signals (Iext) は、Snailを活性化することによりEMTを誘導することが可能である


(b) Notch-Deltaシグナル伝達は細胞間トグルスイッチ(二方向に切替え可能なスイッチ)を作り出し、隣りの細胞に互い違いalternateの運命を採用させる
つまり、Deltaリガンドが高い送信側の細胞と、Notch受容体が高い受信側の細胞である
これがチェッカーボードのようなパターンを生み出す(側方抑制/lateral inhibition)


(c) Notch-Jaggedシグナル伝達は細胞間のダブルポジティブ・フィードバックループを作り出し、隣の細胞に同じような運命を採用させる
つまり、どちらも細胞もJaggedリガンドが高く、Notch受容体も高い
それにより組織の中で広く同じ運命を普及させる(側方誘導/lateral induction)


Discussion
Notchシグナル伝達は進化的に保存されてきた細胞間のコミュニケーション経路であり、癌の特徴の多くがNotchシグナル伝達による

最近の研究では、Notchシグナル伝達を介する細胞の運命決定においてリガンドの2つのファミリー(DeltaとJagged)が異なる役割を演じ、時には正反対にもなることが注目されている [42]

知る限り、我々の研究は癌の転移の特徴である上皮の可塑性(EMT/MET)においてDeltaとJaggedの異なる役割を明らかにした初めてのものである

Notchシグナル伝達はDeltaとJaggedのどちらでもEMTを誘導するが、
Jaggedを通じてのEMTの誘導はハイブリッドE/Mの表現型において細胞クラスターの形成を特に可能にすることを我々の結果は示唆する

EMT誘導シグナルとNotchシグナル伝達経路可溶性リガンドのどちらかまたは両方によって、これらのクラスターの形成は促進され、安定性は延長される

通常、Notch-Jaggedシグナル伝達は側方誘導/lateral inductionに関与する [20,34,43,44]
言い換えると、隣の細胞に自らと同じ運命を採用させる

したがって、Jaggedが支配的なNotchシグナル伝達を伴う細胞クラスターは、互いに細胞運命を安定させる

『準安定的metastable』な不完全EMT、いわゆるハイブリッドE/M表現型における細胞間でのそのような相互安定は、循環腫瘍細胞(CTC)のクラスター形成につながる可能性があり、したがって臨床的に重要な関連がある

※metastable: 準安定的な。metastasisは転移。不完全EMTという意味での『準安定metastable』と、転移metastasisできるable『転移可能metastable』という意味を掛けているのかもしれない

ハイブリッドE/M表現型を示すCTCは、肺癌・乳癌・前立腺癌の患者の血流に見つかっている [5,45–47]
そしてそれらは集団的移動collective migrationをする能力によってCTCクラスターになる

そのようなクラスターCTCはアポトーシス抵抗性であり、比較的容易に血流から脱出し、個別に移動するCTC(間葉系表現型/Mesenchymal phenotype)よりも最大50倍も転移しやすい
したがって、患者の転移リスクは高まる [5,48,49]

EMTは『1か0か』の反応ではなく、in vivoの癌細胞は滅多に完全なEMTをしないという考え方の評価が増えている [7,50,51]
また、上で述べたような利点から、癌細胞はハイブリッドなE/M表現型を好むpreferのかもしれない

したがって、細胞をハイブリッドなE/M表現型に維持することは(別の状況otherwiseでは『準安定metastable』とも考えられる[52])、多くの重要な生存的な利点をCTCクラスターにもたらしうる
Jagged1を治療標的とすることによって、これらの利点は潜在的に減ずると我々は予測する


Jagged1を治療標的とすることはこれらのクラスターを『壊しbreak』て、単一で移動するCTC(間葉系表現型)にする可能性があるだけでなく、腫瘍を開始する潜在性tumour-initiating potentialも鎮圧subdueすると予測される

最近の研究では、ハイブリッドE/M表現型の細胞(CD24+/CD44+)は、純粋に間葉系の表現型(CD24-/CD44+)よりも多くの腫瘍を形成できることが示されている
それは特にハイブリッドE/M表現型が安定している時である(例えばOVOL [33, 37–40] のような『表現型安定因子phenotypic stability factor』によって[36])

OVOL1, OVOL2, OVOL3

>UniProtKB/Swiss-Prot for OVOL2 Gene
>Zinc-finger transcription repressor factor. Plays a critical role to maintain the identity of epithelial lineages by suppressing epithelial-to mesenchymal transition mainly through the up-regulation of ZEB1 expression. Positively regulates neuronal differentiation (By similarity). Suppresses cell cycling and terminal differentiation of keratinocytes by directly repressing MYC and NOTCH1.
(ジンクフィンガーというDNA結合モチーフを持つ転写因子である
主にZEB1発現の上方調節を通じてのEMTを抑制することにより上皮系統のアイデンティティを維持するために重要な役割を演じる
ニューロン分化を正に調節する(同様の経路による)
MYCとNOTCH1を直接抑制することにより角化細胞の細胞周期と最終分化を抑制する)

我々の実験データはMDA-MB-231で薬剤耐性tolerantの集団がCD24+/CD44+であり、Jagged1とNotchのレベルが上昇していることを示すが、
これはハイブリッドE/M表現型にとってNotch-Jaggedシグナル伝達が『細胞間の表現型安定因子』としても働くことを示唆する

我々のデータは、癌幹細胞(CSC)が『EMT軸/EMT axis』の中途mid-wayに存在するという最近現れつつある概念 [7,37,53–55]とも共鳴するものであり、
そしてNotch-Jaggedシグナル伝達はCSC集団の維持と化学療法抵抗性にしばしば関与するという概念とも一致する [15,35]

さらに、Jagged1を標的とすることは、腫瘍を促進する多くの炎症性サイトカインによる影響を軽減するmollify
なぜなら、そのような炎症性サイトカインは、Jagged活性化とDelta阻害のどちらかまたは両方によってNotch-Jaggedシグナル伝達を増大させるからである [42,56,57]

したがって、Jagged1は悪性腫瘍進行を止めるための重要な治療標的となりうる [58]
そして、Jagged1を標的とすることは特に、最近試みられているように [59]、NICDを阻害してNotch経路全体を標的とすることによる副作用を緩和する可能性がある [60]

しかしながら、Notch-Jagged (N-J) シグナル伝達は、癌の転移のような病理学的な状況だけに特異的なものではない
例えば、N-Jシグナル伝達は、内耳[34]、膵臓[61]、上皮幹細胞クラスター[62]の発達中の空間的パターン化において重要でありうる
したがって、今回提出した結果は上皮組織化や複数の生物学的状況における恒常性でのJaggedの役割を明らかにするために応用可能かもしれない



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MusashiによってJagged1が抑制されると、細胞は上皮細胞の状態に固定され、動きにくくなる
Musashiは正常な乳腺の発達時にもJagged1を抑制する



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24844362
Jagged-1はAML患者の好ましい予後と関連する新たな有望なファクターである



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マイクロRNAに不活性化という概念はなかったが、miR-34は不活化することがある



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6389
Notchのリガンドに対する選択性は、EGFリピート8番目の保存されたバリン残基が重要な役割を果たす
 

IGF2BP3はどのようにして転移を促進するのか

2016-05-22 06:06:40 | 
Malignancy-associated gene network regulated by RNA binding protein

Study of protein-RNA interactions in pancreatic cancer cells reveals an extensive regulatory network associated with tumor metastasis

May 19, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160519130121.htm

カリフォルニア大学サンタクルーズ校のJeremy Sanfordたちは、IGF2BP3というタンパク質が癌細胞の増殖と転移の促進において重要な役割を演じるようだということを明らかにした

※IGF2BP3: insulin-like growth factor 2 mRNA binding protein 3

通常のIGF2BP3は胎児の組織で活性化するが、成人になると検出できなくなる
しかしこのタンパク質は悪性の癌の多くで再び作られるようになり、充実性腫瘍solid tumorと白血病の両方で予後の悪さと関連する

サンタクルーズ校で分子・細胞・発達生物学の助教授であるSanfordと彼のラボは、5月19日にCell Reports誌で発表される今回の研究でIGF2BP3が転移を促進する可能性のあるメカニズムを指摘する

Sanfordたちは悪性腫瘍と関連する広範囲な遺伝子発現回路を明らかにした
これは膵臓癌細胞ではIGF2BP3によって調節される

「この相互作用の詳細を我々は突き止めてnail downいないが、
しかしそのような広範囲の相互作用は『IGF2BP3が癌生物学に関与する遺伝子発現に影響することで どのようにして転移を促進するのか?』に関するメカニズムであることを示唆している」
Sanfordは言う


遺伝子の発現には複数の段階があり、そのプロセスの中の様々な段階で調節が起きる
タンパク質をコードする遺伝子のスイッチが入ると、そのDNA配列はメッセンジャーRNA(mRNA)という分子へとコピーされ、特定の機能を実行するタンパク質へと翻訳される
そして、どの遺伝子がいつmRNAに転写されるのかは多くの調節因子によって制御されている
IGF2BP3のようなRNA結合タンパク質はmRNAと相互作用して転写後に遺伝子発現を調節するが、そこで具体的に何が起きているのかはよくわかっていなかった


Sanfordのチームは今回の研究で 膵癌細胞でIGF2BP3によって調節される164個の標的mRNAを確定し、
その標的となるRNAのほとんどが癌生物学cancer biologyの中で何らかの役割を持つタンパク質をコードすることを明らかにした
役割とは例えば癌細胞の移動や増殖、そして接着である

IGF2BP3は様々な標的に異なる影響があり、いくらかのタンパク質の発現は上昇させ、他のタンパク質の発現は減少させる(移動↑、増殖↑、接着↓)
そのような二重性は、IGF2BP3がどのようにしてマイクロRNAという重要な遺伝子サイレンシング経路と相互作用するかに依存する
マイクロRNAはRISCという複合体の一部としてmRNAに結合することによって遺伝子発現のサイレンシング(翻訳阻害)を促進する

※RISC(リスク): RNA-induced silencing complex

「それは基本的にはマイクロRNAからなる誘導システムを持つ小さな分子機械であり、mRNAの翻訳を阻害することによって遺伝子をサイレンシングする」
Sanfordは言う

「IGF2BP3が相互作用する箇所を位置づけたところ、それらの多くがRISCの結合箇所と重複することに我々は気付いた」

いくつかのケースでIGF2BP3はmRNAとの結合箇所をマイクロRNAと競合し、それによってサイレンシング複合体に干渉するが、別のケースではIGF2BP3はRISC複合体の機能を促進するように見えたという

「我々はまだIGF2BP3がどのようにしてRISC複合体と相互作用するのかという正確なメカニズムについて理解していないが、それはこの興味深い相互作用のネットワークに関して調査すべき多くを我々にもたらす」
Sanfordは言う

「それはまた、IGF2BP3とその標的との間の相互作用に干渉する治療アプローチが特定の腫瘍の悪性度を低下させるために有効かもしれないことを示唆している」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.083
http://www.cell.com/cell-reports/abstract/S2211-1247(16)30528-9
IGF2BP3 Modulates the Interaction of Invasion-Associated Transcripts with RISC.
IGF2BP3は浸潤と関連する転写の相互作用をRISCと共に調整する



Highlights
・IGF2BP3は膵管腺癌細胞 (PDAC) における浸潤表現型を促進する
・IGF2BP3は、PDAC細胞の悪性度と関連する遺伝子発現プログラムを調節する
・PDAC細胞系統におけるIGF2BP3の結合箇所は、マイクロRNAの標的箇所の近くに豊富である
・IGF2BP3は、アルゴノート(Ago2)と関連するmRNA標的を調整する

Summary
インスリン成長因子2mRNA結合タンパク質3/Insulin-like growth factor 2 mRNA binding protein 3 (IGF2BP3) の発現は悪性度と関連するが、病理発生におけるその役割は謎のままである

我々はPDAC細胞におけるIGF2BP3とRNAの相互作用ネットワークを詳しく調査interrogateした
ゲノムワイドなアプローチを組み合わせることにより我々はIGF2BP3の直接の標的となる164のmRNAを確定した
これらの転写物は、細胞の移動・増殖・接着のような機能に関するタンパク質をコードするものが多い

IGF2BP3の喪失はPDAC細胞の浸潤性を低下させ、接着点の結合focal adhesion junctionを再構築させた

individual nucleotide resolution crosslinking immunoprecipitation (iCLIP) という手法により、
IGF2BP3とマイクロRNA (miRNA) の結合箇所に有意な重複が存在することが明らかになった

IGF2BP3は、RNA-induced silencing complex (RISC) と特定の転写物との結合を促進する

我々の結果は、IGF2BP3がmiRNAとmRNAの相互作用を調節することにより、悪性度と関連するRNAレギュロンRegulon)に影響することを示す


関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c423f7c31a227e5ba275cd88efe791bc
PDACの患者の30%はSIRT6の低下、Lin28bの増加、let-7の低下を示し、HMGA2,IGF2BP1,IGF2BP3が上昇する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141023131707.htm
エクソソームには、DNA、マイクロRNA、RNA-induced silencing complex (RISC) が含まれ、さらに乳癌のエクソソームにはダイサー(Dicer)、アルゴノート(AGO2)、TRBPが含まれていて、腫瘍の成長を刺激する
 

PDACの30%で見られる分子シグネチャーが悪性度と関連する

2016-05-19 06:06:27 | 
Study identifies potential treatment target for pancreatic cancer

Molecular signature found in 30 percent of PDAC tumors associated with more aggressive cancer

May 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160512124911.htm

マサチューセッツ総合病院 (MGH) の研究者たちは、最も一般的な膵臓癌に対する潜在的な分子治療の標的を初めて明らかにした
膵管腺癌/pancreatic ductal adenocarcinoma (PDAC) という膵癌では患者の90パーセント以上が死亡する

PDACでは症例の約30パーセントでSIRT6という腫瘍抑制タンパク質が不活化していることに加え、SIRT6がPDACの発症を抑制するための正確な経路を研究チームは同定した
それはSIRT6が結腸直腸癌を抑制するのとは異なるメカニズムだったという
この論文はCell誌の6月2日で発表される予定であり、オンラインでは既に先行発表されている


「癌では遺伝子の変化だけでなく、エピジェネティックな要素における変化が見られる
エピジェネティックな変化は遺伝子がいつ発現するか、そして遺伝子が発現するかどうかそのものを制御するが、
それらは癌における最も頻繁に見られる変化のいくつかを代表することが 癌ゲノミクスの進歩と共に明らかになってきた」
今回の報告の首席著者でありMGHがんセンターの一員であるRaul Mostoslavsky, MD, PhDは言う

「しかし、それらエピジェネティックな要素の多くはまだ説明されておらず、明らかになっているものでも特定の下流の標的に関連付けられてはいない
我々が明らかにした分子シグネチャーは 今回分析されたPDAC患者の3分の1以上で見られただけでなく、そのような患者の予後は非常に悪いことが判明した」


SIRT6は様々な機能を持つが、その中でも特に 細胞がグルコースをどのように処理するのかを制御することが知られている
2012年の研究でMostoslavskyのチームは、SIRT6が結腸直腸癌を抑制する能力には解糖系の制御が含まれることを明らかにした

しかし、その研究ではPDAC腫瘍の細胞でもSIRT6の発現の低下が観察された
そして今回の調査でSIRT6の欠乏がPDACを促進するのは異なるメカニズムを通じてであることが示された

細胞系統と動物モデルの実験により、PDACにおけるSIRT6レベルの低下はLin28bの発現の上昇と相関することが明らかにされた
Lin28bは通常は胎児の発達時に発現する『発癌タンパク質oncoprotein』である

Lin28bの発現はSIRT6欠損PDAC細胞の増殖と生存に必須であり、その作用はlet-7という『腫瘍抑制mRNA』を阻害することによる
let-7は、膵癌の悪性度と転移の増大と関連付けられている3つの遺伝子の発現を抑制する

 SIRT6↓─┤Lin28b↑─┤let-7↓─┤HMGA2,IGF2BP1,IGF2BP3↑→転移↑

より早く死亡した患者から得られた腫瘍サンプルでは、これらの特徴の全て、つまりSIRT6が低下し、Lin28bは増加して、そしてlet-7は低下していることが発見された


「これらの研究からの一般的なメッセージは、
癌細胞はSIRT6のようなエピジェネティックなファクターを調整することで利益を得るということである
それにより細胞の正常な増殖制御パターンを無効にするoverride能力を獲得する」
Mostoslavskyは言う
彼はハーバードメディカルスクールの内科学準教授associate professor of Medicineで、ブロード研究所では准会員associate memberである

「それぞれの腫瘍のタイプは、増殖と生存のアドバンテージをもたらす腫瘍特異的で独特な能力を獲得する可能性がある
それはそれぞれの癌ごとに決定する必要があるかもしれない
PDACに関する我々の発見について言えば、我々はLin28bによって制御される下流の経路とそれらがどのようにして悪性度と転移を増すのかについて興味がある
我々が望むのは、将来Lin28bの阻害剤が開発されることにより このPDAC患者のサブセットに利益がもたらされることだ
彼らには現在、治療オプションがほとんどまったく存在しない」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.04.033
SIRT6 Suppresses Pancreatic Cancer through Control of Lin28b.


SIRT6↓─(脱アセチル化↓)─┤c-MycによるLin28bの発現↑─┤Let-7↓


Highlights
・SIRT6の喪失は発癌性Kras(KrasG12D)と協力して膵癌を駆り立てるdrive
・SIRT6はプロモーターヒストン脱アセチル化を通じて腫瘍胎児性タンパク質oncofetal proteinのLin28bを調節する
・Lin28bはSIRT6を欠く膵癌の増殖と生存を駆り立てるdrive
・SIRT6とLin28bの発現は、特定の膵癌サブセットにおける予後を規定するdefine

Summary
ヒトの癌ではクロマチン再編成タンパク質chromatin remodeling proteinsがしばしば調節を失うが、それらがどのようにして腫瘍発生tumorigenesisを制御するのかについてはほとんど知られていない

今回我々はNAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素サーチュイン6(SIRT6)によって仲介されるエピジェネティックなプログラムが膵管腺癌(PDAC)の抑制に決定的に重要criticalであることを明らかにする

SIRT6の不活化はLin28bの上方調節を介してPDACの進行と転移を加速する
Lin28bはlet-7というマイクロRNAを負に調節する

SIRT6の喪失の結果としてLin28bプロモーターの位置でヒストンの過剰なアセチル化が生じ、MycがリクルートされてLin28bが顕著に誘導され、let-7の下流の標的遺伝子であるHMGA2、IGF2BP1、IGF2BP3が発現する

このエピジェネティックなプログラムは予後の悪いサブセットを明確に規定し、それはヒトのPDACの30%から40%を占める
その特徴はSIRT6の発現低下と、そして腫瘍増殖のためにLin28bへ非常に強くexquisite依存するということである

したがって我々はSIRT6をPDACの重要な腫瘍抑制因子として同定し、分子的に定義されたPDACサブセットの一つとしてLin28b経路が潜在的な治療標的であることを明らかにする



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a0dcc719c04982622d72f174d27ae8fd
LIN28Bによるlet-7の抑制はHmga2を介して結腸癌につながる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160217113640.htm
TSC2を介する腫瘍形成はmTORではなくHMGA2が原因
TSC2のハプロ不全によって促進される間葉系の腫瘍発生はHMGA2を必要とするが、mTOR経路の活性化には依存しない



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150204074854.htm
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癌細胞の移動にはオートファジーが必要

2016-05-15 06:06:20 | 
Stopping cancer in its tracks

Disrupting autophagy, a cellular housekeeping process, limits cancer spread

May 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160512124918.htm

シカゴ大学の研究者は、オートファジーの阻害が効果的に腫瘍細胞の移動と乳癌の転移を阻止することを示した
5月12日にCell Reports誌で発表された研究で彼らはこのプロセスが腫瘍の転移に必須であることを実証し、オートファジーを細胞移動につなげるメカニズムを説明する


「我々は遺伝学的・化学的な手段を使うことで、オートファジーが高度に転移性の腫瘍細胞の移動と浸潤に必須であることを示した」
チームリーダーのKay MacLeod, PhDは言う
彼はシカゴ大学Ben May Department for Cancer Researchでは準教授associate professorである

「我々の研究は臨床的状況clinical settingにおけるオートファジーの阻害が転移による癌の広がりを阻止するための効果的なアプローチであることを示唆する」

転移は癌による死因の90パーセントを占めている
急速に増殖する腫瘍細胞は密接に詰め込まれ、利用可能な酸素と栄養を急速に使い果たす
そのような腫瘍から逃れることで移動する癌細胞は飢えを回避し、密集していない環境で栄養を獲得することになる

「転移する癌細胞のオートファジーを止めると何が起きるのだろうと問うことから我々は始めた」
Macleodは言う

MacLeodのラボで研究していた二人のMD/PhD studentであるMarina SharifiとErin Mowersが転移性の癌細胞を培養皿の上に置いてtime-lapse microscopyで観察すると、それらは活発に動き回り続けた
しかし、彼ら研究チームがオートファジーに関する遺伝子のAtg5とAtg7をノックダウンしたところ、「それはまったく動かなかった
まるで止まってしまったかのようだった」という

その遺伝子を変化させた癌細胞をメスのマウスの乳腺脂肪パッドmammary fat padに注入すると、 癌細胞は増殖して巨大な原発乳癌腫瘍を形成した
しかし通常なら肺や肝臓、骨などの遠い箇所に転移するはずの癌細胞は、転移することができなかった

詳しく観察したところ、それらの細胞は形態的にmorphologically非常に異なることが示された
細胞の移動に重要な構造である『接着点focal adhesion』の数がおびただしく多くnumerous、そして異常に大きったのである

※focal adhesion: 接着点。インテグリンを介して細胞外マトリックスと細胞骨格が結合する場所。インテグリンの細胞内ドメインは、α-アクチニン、テーリン、パキシリン、ビンクリンなどの作用を受ける

※パキシリンpaxillin: 接着点focal adhesionでフォーカル・アドヒージョン・キナーゼ/focal adhesion kinase(FAK)と結合するタンパク質で、FAKとの結合箇所が2つある。パキシリンが足場となって、インテグリン・FAK・SRCキナーゼが会合する


「接着点はタンクトラック/tank trackのように機能する」
MacLeodは言う

これらの大きなタンパク質複合体は細胞の前面に組み立てられ、細胞の外面peripheryから伸びて細胞外マトリックスに接続する
細胞はそれを使ってマトリックスに対して細胞自身を押したり引いたりする

細胞が前へ移動する時、接着点は細胞の前面で形作られて、細胞外マトリックスへの動的な接続を確立する
細胞がそれを通ぎていくにつれて、引きずるように動く細胞の端を 接着点はだんだん後ろの方へずれていくdrift
そこでオートファジーが介入し、接着点をばらばらにしてdisassemble中身を分解し、細胞の後ろの端を細胞外マトリックスから離れられるようにする
そうして細胞は前方の端からの牽引力tractionによって引っ張られるのである


もしオートファジーが阻害されると、転移する腫瘍細胞は動くことができなくなることをMacleodたちは示した

入れ替わるturn overことがない接着点はだんだん大きくなり、細胞をその場に固定するanchor

「それらの細胞は文字通り『刺し留められてstuck』、動かなくなる
顕微鏡では細胞が動こうとして震えているwobbleのが見えるだろう
細胞は新たな突起protrusionを作って移動しようとするが、それは不可能だ
なぜなら細胞は刺し留められstuck、細胞の後ろ側の接着を分解するdissolveことができないからだ
基本的に、オートファジーに欠陥がある癌細胞は移動できず、結果として別の場所に行くことは不可能になる
こういう理由でオートファジーの阻害が腫瘍の転移を防ぐと我々は考えている」


このプロセスを詳しく分析することにより、オートファジーと接着点との間の生化学的なつながりが明らかになった
接着点に存在するパキシリンpaxillinというタンパク質は、突起の細胞内側の構成物を細胞移動へとつなげるために使われる
細胞が接着点を分解する必要が生じると、オートファジーのプロセスではLC3というタンパク質が使われる
LC3はパキシリンを飲み込みengulf、リソソームへと運んで分解させる

「LC3とパキシリンとの相互作用は、SRCによって調節される」

SRCは細胞の移動と転移を促進するキナーゼであり、初めて癌遺伝子として定義されたタンパク質でもある
研究の共著者co-authorであるErin Mowersは、SRCが転移を促進する能力がオートファジーに依存することを示した

「オートファジーを阻害すると、
もはやSRCは転移する腫瘍細胞を駆り立てることはできない」
MacLeodは言う

「これは非常に大きな発見である」

オートファジーを阻害する薬が既に承認されており、現在いくつかが臨床試験で評価中である
その内の一つ、ヒドロキシクロロキンはマラリアの予防と治療用としてFDAが承認し、今は腫瘍の成長を遅らせる手段として試験中である

「しかし、オートファジー阻害剤は転移を防ぐ方法として特に評価されてはいない」ということにMacLeodは言及する

「我々はヒドロキシクロロキンや他の関連する薬剤の効能を、転移の抑制という点で評価するようにデザインされた試験を調べたいと考えている
このオートファジーを阻害するアプローチはそのような場でこそ抗癌の手段として最も役立つだろうと我々は考えている」


著者は次のように結論する
「腫瘍の移動、浸潤、転移にオートファジーを関連付ける研究が増えつつある
我々の研究はそれに加わるものだ」

「我々の研究はパキシリンの分解を通じて接着点を分解する際にオートファジーが果たす重要な役割、そして原発腫瘍から逃れるためのオートファジーの必要性を明らかにしたが、
それに加えて腫瘍の転移を阻害するためにオートファジーを阻害することの潜在的な有用性を強調する」


Cell Reports誌で発表された実験のほとんどは乳癌の細胞をマウスに移植することで実施されたものだが、研究者たちは転移性のメラノーマ細胞でも同じ現象を観察したという

「そのため、オートファジーに依存する転移は一種類の腫瘍だけに特別なことではないように思われる」
MacLeodは言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.065
Autophagy Promotes Focal Adhesion Disassembly and Cell Motility of Metastatic Tumor Cells through the Direct Interaction of Paxillin with LC3.
オートファジーはパキシリンとLC3との直接の相互作用を通じて転移性腫瘍細胞の接着点分解ならびに細胞移動を促進する


Highlights
・転移性の腫瘍細胞が移動して浸潤するためにはオートファジーが必要である
・オートファジーはパキシリンpaxillinの分解を促進し、接着点focal adhesionの代謝回転turnoverを促進する
・パキシリンは保存されたLIRモチーフを通じてLC3Bと相互作用し、それはSrcによって調節される
・オートファジーはSrcによって調節される細胞移動にとって必要である

Summary
オートファジーは種を通じて保存conservedされた異化catabolicのプロセスであり、凝集したタンパク質や細胞器官organelleの除去に関してハウスキーピング的な役割を演じる
また、オートファジーは栄養が欠乏した状態で活性化されて代謝産物とエネルギーを作り出す

オートファジーは腫瘍発生/発癌tumorigenesisにおいて重大significantな役割を演じるが、
癌におけるオートファジーの機能は状況依存的context-dependent functionsであり、時に正反対opposingでもあるため、
治療目的でオートファジーを標的にする研究者の努力は非常に複雑なものとなっていた
Autophagy plays a significant role in tumorigenesis, although opposing context-dependent functions of autophagy in cancer have complicated efforts to target autophagy for therapeutic purposes.

我々はオートファジーの阻害がin vitroで腫瘍細胞の移動と浸潤を低下させ、in vivoでは転移を減少させるattenuateことを実証する

オートファジーを欠く腫瘍細胞では非常に多数numerousの大きなlarge『接着点/focal adhesion (FA)』が蓄積する
これはパキシリンを標的とする分解degradationを通じて接着点を分解disassemblyする際のオートファジーの役割を反映する

我々はパキシリンがそのアミノ末端/N末端の保存されたLIRモチーフを通じて プロセスを受けたLC3/processed LC3(LC3-II)と相互作用し、その相互作用が発癌性oncogenicのSRC活性によって調節されることを実証する

合わせて考えると、これらのデータは
接着点の代謝回転・腫瘍細胞の移動・転移におけるオートファジーの機能を確定するものである



関連サイト
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/yoshimori/jp/research/030/
LC3はProLC3として翻訳された後、直ちにAtg4によってC末端22アミノ酸が除去され、LC3-Iとなります。
LC3-IはまずAtg7に、続いてAtg3に受け渡された後、オートファゴソーム膜のリン脂質分子フォスファチジルエタノールアミンにC末端で共有結合してLC3-IIとなります。
オートファゴソームの外側のLC3-IIはAtg4によってPEから切断され、再びLC3-Iに戻ることが出来ますが、オートファゴソームの内側のLC3-IIは、オートファゴソームがリソソームと融合すると分解されます。



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/dd5f0507eea0b2e78f76bbccbba164a1
腫瘍の酸性pHはクロロキンのオートファジー阻害効果を妨害する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3022779d04a58d7ce6e47c810ec5d295
オートファジーを調節するbeclin 1の発現の低さは、トリプルネガティブ乳癌に罹患していることと35倍関連する
 

肺癌は肝臓のインスリンシグナルに干渉する

2016-05-10 06:06:15 | 
Lung tumors hijack metabolic processes in the liver, study finds

Research provides first insights into how cancer rewires circadian rhythms

May 5, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160505133901.htm

我々自身の体内時計である概日リズム/circadian rhythmがどのようにして肝臓の機能をコントロールするのかを研究していたカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の科学者たちは、肺癌の腫瘍がこのプロセスをハイジャックして代謝を大きくprofoundly変化させることを発見した
体内時計は脂質代謝・インスリンへの感受性・グルコースを支配sway overしているが、彼らの研究は肺腺癌lung adenocarcinomaがこの時計に影響しうることを初めて示す
彼らの研究はCell誌のオンライン版で発表された

UCIエピジェネティクス代謝センターのPaolo Sassone-CorsiとSelma Masriたちは、肺腺癌が炎症性の応答を通じて肝臓にシグナルを送ることにより、代謝経路を管理する概日メカニズムを配線し直すことをげっ歯類の研究で明らかにした
この炎症の結果として肝臓のインスリンシグナル伝達経路は阻害され、耐糖能glucose toleranceの低下と脂質代謝の再編成につながる

「肺腫瘍は肝臓の概日的な代謝機能を支配take controlし、癌細胞の高まった代謝的な需要を潜在的にサポートさせる」
Sassone-Corsiのラボでresearch scientistを務めるMasriは言う

「この代謝組織の遠隔的な再配線rewiringは肝臓だけで起きるのではなく、全身の代謝の再編成shake-upを示唆すると我々は考えている」


ほぼ全ての生物において24時間の概日リズムは基本的fundamentalな生理学的プロセスを支配する
概日時計circadian clocksは我々の体に備わっている時間追跡システムであり、それにより人体は環境的な変動を前もって先取りanticipateして、『(時計の)時刻the time of day』に適応する

これらのリズムに対する変化はヒトの健康に深く影響しうる
ヒトの遺伝子の15パーセントまでが概日リズムの昼夜のパターンによって調節され、肝臓の代謝経路に関与する遺伝子の50パーセント近くがそのリズムによって影響を受ける


過去10年の間、概日リズムの分野で先頭foremostを走る研究者の一人であるSassone-Corsiは体内時計がどのようにして外的要因(例えば昼夜のパターンや栄養素)による影響を通じて様々な肝臓の機能をコントロールするのかを調査してきた
そこから彼らは、この洗練された『標準時計regulator』に対して癌のような疾患がどのようにして影響を与えうるのかについて研究するに至った

過去40年以上の研究で膨大で目覚ましい進歩が為されたにもかかわらず、癌はいまだに未解決の課題である
多くの癌患者にとっての実際の死因は、正常な生理的機能・生体機能の悪化である
今回発表されたCell誌の研究では腫瘍に由来する炎症は肝臓のインスリンシグナル伝達経路を阻害し、肺腫瘍のマウスで高血糖につながることが明らかになった
脂肪酸の合成も抑制されるが、しかし総コレステロールレベルは上昇する


現在Sassone-Corsiのラボは肺腫瘍によって分泌される因子factorsを分析中であり、癌による代謝的な影響の完全に正確な『地図』を描こうと努力している最中である
彼らは代謝組織における概日時計の『まとめ役organizer』として働くことが可能な肺腺癌の能力を理解しようとしている

「概日リズムのプロセスについて、そして癌のような疾患がどのようにしてそれらを改ざんalterできるのかについて、これまで以上に学び続けることが重要である」
Sassone-Corsiはそのように言う
彼はカリフォルニア大学アーバイン校で生化学のDonald Bren Professor教授職である

「得られた知識を使って、我々は介入する方法(行動論的なものと薬学的なものの両方)を開発することが可能である
それはヒトの健康を維持して回復するのを助けることができるだろう」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.04.039
Lung Adenocarcinoma Distally Rewires Hepatic Circadian Homeostasis.
肺腺癌は肝臓の概日恒常性を遠位に再配線する


Highlights
・肺腺癌は肝臓の概日的な転写ならびに代謝を再配線する
・この再配線は、STAT3-Socs3という炎症性シグナル伝達経路を伴う
・肝臓のシグナル伝達の阻害ならびに耐糖能障害glucose intoleranceは腫瘍由来である
・肺腺癌は肝臓の脂質代謝を損なう

Summary
概日時計は精密に調整された分子メカニズムを通じて代謝的・生理的なプロセスを制御する

この時計は際立って柔軟で適応性がありplastic、『ツァイトゲーバーzeitgeber』、すなわち光や栄養のような外的因子に適応する

※zeitgeber: 英語に訳すとtime giver

特定の組織における病的な状態がどのようにして他の組織における全身の概日的な恒常性に影響するのかは未だ答えが出ていない疑問であり、それに答えることは概念的にも生物医学的にも重要である

今回我々は肺腺癌が概日的な代謝を外的に操作することが可能な『まとめ直す者/reorganizer』であることを示す

ハイスループット・トランスクリプトミクス/transcriptomicsにより転写と代謝産物の循環に関する独特な徴候signatureが明らかになり、それは腫瘍を持つマウスの肝臓でのみ排他的に見られた

際立っていたのは、肺癌は(Clock、Bmal1、Period、Cryptochromeなどのような)コアクロックcore clock
https://en.wikipedia.org/wiki/Circadian_clock
には影響せず、むしろSTAT3-Socs3経路を経由する炎症促進的な応答の変化を通じて肝臓の代謝を再プログラムすることである

※Socs3: suppressor of cytokine signaling 3

これは結果としてAKT, AMPK, SREBPシグナル伝達を妨害disruptし、インスリン・グルコース・脂質代謝の変化につながる

このように、肺腺癌は内因性の概日オーガナイザー/endogenous circadian organizer(ECO)として強力に機能し、肝臓のような遠い組織の病態生理学的な次元を再配線する



<コメント>
炎症とは具体的に何を指すかについて、本文には次のように書かれている

『NSCLCのモデルとされるKras LSL-G12D p53 fl/flマウス、つまり肺腺癌マウス(TBマウス)の血清では特にIL-6が有意に上昇し、他のサイトカイン(IL-1a、TNFa、LIF、IFNg)も有意ではないが明らかな上昇が見られた
それに伴って肝臓でサイトカイン受容体(Il6ra、Il1r1、Tnfrsf1b、Il17ra)の発現が上昇し、概日的なプロファイルを示した
Stat3の遺伝子発現も概日的に上昇し、総タンパク質レベルも一致して上昇、これは報告されているIL-6依存的なSTAT3の自己調節と一致する (Narimatsu et al., 2001).
STAT3の活性化を示すとされるチロシン705リン酸化も、TBマウスの肝臓で概日的な上昇が観察された

STAT3の転写的活性化は結果として下流の標的遺伝子の発現の上昇につながり、TBマウスでは特にsuppressor of cytokine signaling 3 (Socs3) の発現が概日的な上昇を示したが、Socs1とSocs7の発現は変化がなかった

SOCS3は脂肪組織と肝臓でインスリン感受性を調整することが示されている
インスリン依存的なAKTセリン473リン酸化は劇的に阻害されたが、AKT総レベルは変化がなかった
IRS-1タンパク質の総レベルは顕著に低下し、これも概日リズムを示した
このIRS-1タンパク質レベルはSTAT3活性化のピークと同時に生じたcoincide
SOCS3はIRS-1を標的とし、IRS-1タンパク質を分解することにより肝臓のインスリンシグナル伝達を抑制することが報告されている (Rui et al., 2002)

乳酸とピルビン酸を相互変換するldhaとldhcが概日的ではないが上昇し、糖新生に転じうるピルビン酸が上昇を示した

AMP/ATP比が上昇し、AMPKの活性化を示すAMPKαスレオニン172のリン酸化が顕著に上昇し、それと一致してSREBP経路も抑制され、核内SREBP1cが概日的に低下した
SREBPの標的遺伝子であるFasn、Acaca、Elovl6の発現も低下した
それらは長鎖脂肪酸ならびにエステル化脂肪酸(myristate, linolenate, palmitoleate, eicosapentaenoate (EPA)のレベルの低下によっても立証substantiateされた
これは脂肪酸の生合成の低下ならびにβ酸化による分解の増大のどちらかを示唆するが、TBマウスの肝臓におけるSREBP1シグナル伝達の抑制ならびにPPARαとβ酸化遺伝子発現プロファイルが変化していないことを考慮するとgiven、前者である可能性が高い (Figure S6)

SREBP1経路が抑制されているのに対して、SREBP2遺伝子発現は抑制されておらず、その標的遺伝子であるlanosterol synthase (Lss)、3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoA synthase (Hmgcs1)、phosphomevalonate kinase (Pmvk) は、概日的かつ調和した上昇が有意に示された
SREBP1は主に脂肪酸合成に関与するが、SREBP2はコレステロール産生に重要である』



参考サイト
http://howto-tube.xyz/post-11-11.html
>実はコレステロール値が高いのはたいした問題ではない。という衝撃の情報
>1,値が高いだけで心筋梗塞・脳梗塞の原因にはなりえない

は?

>腫瘍に由来する炎症は肝臓のインスリンシグナル伝達経路を阻害する
>脂肪酸の合成も抑制されるが、しかし総コレステロールレベルは上昇する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6089be975c0cf32996447e33323a6ece
癌はLDLのコレステロールをエサにして増殖する



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http://ta4000.exblog.jp/18303888
重度のインスリン抵抗性で過剰に活性化したFoxOは肝臓のβ酸化を抑制し、脂質蓄積を引き起こす
 

癌細胞を飢えさせることが新たな治療の鍵

2016-05-08 06:06:59 | 
Starving cancer the key to new treatments, say scientists

May 5, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160505104738.htm


(This is Angelika Broeer.

Credit: Stuart Hay, ANU)

オーストラリア国立大学/Australian National University (ANU) の研究者は、癌細胞が栄養素を得るために使う重要な経路を明らかにした
この発見は腫瘍の増殖を止める新たな治療につながる可能性がある

研究チームは癌細胞がグルタミンというアミノ酸を得るための入り口/ゲートウェイgatewayを阻害すると、細胞の増殖がほとんど完全に止まることを発見した

「これは様々な癌で作用する可能性が高い
なぜなら癌細胞で非常に一般的なメカニズムだからだ」
ANUで研究主任lead researcherのStefan Bröer教授は言う

「さらに良いことに、これは深刻な副作用のない化学療法につながると考えられる
普通の細胞はグルタミンを細胞の構築材料として使わないからだ」

「現行の治療は重要な白血球に損害を与えるが、そういうダメージや化学療法が引き起こす脱毛がなくなるだろう」

現在917種類の癌が同定されているが、多くの治療は単一の癌にしか作用しないか、癌が抵抗性を獲得するにつれて効かなくなる

しかしながら、ANU Research School of Biologyの生化学者であるBröer教授はこの新しいアプローチが抵抗性を生じにくいだろうと言う
なぜなら、グルタミンの輸送メカニズムを阻害することは癌が回避するのが難しい外部からのプロセスexternal processだからである


研究チームは初めに遺伝子操作により癌細胞の中心的なグルタミン輸送体を変化させてグルタミン輸送を阻害しようと試みた
しかしながら、これはあまり効果がなかったとBröer教授は言う

「我々が考えていたほど簡単ではなかった
癌細胞は生化学的なアラームを作動させて細胞のバックドアを開き、
必要なグルタミンを得られるようにした」

しかし研究チームがRNAサイレンシングという技術を使って生化学的なアラームのスイッチを切ることで二番目のゲートウェイを閉じると、細胞の増殖は96パーセント低下した
この研究結果はJournal of Biological Chemistry誌で発表された

グルタミン輸送体を同定して遺伝子をノックアウトする際に中心となって働いたのは筆頭著者lead authorのAngelika Bröerである

「我々は今や癌細胞のゲノムを操作する精密なツールを手にしている
それによりこれまでは解決するのが難しい問題に対処できるようになった」

グルタミン・ゲートウェイの重要性が明らかになった今、それを標的とすることにより癌を封じ込めてlock down殺すための薬剤治療をこれから探し求めることになるだろう/the hunt is on to find drug treatments

「我々はある薬剤がグルタミン輸送体を標的にするかどうかを簡単に決定できる一連のテストを開発した」
Angelika Bröerは言う

「このことは、ロボットを使って何千何万という薬剤を来年か再来年までにテストさせられるということを意味する」


http://dx.doi.org/10.1074/jbc.M115.700534
Deletion of Amino Acid Transporter ASCT2 (SLC1A5) Reveals an Essential Role for Transporters SNAT1 (SLC38A1) and SNAT2 (SLC38A2) to Sustain Glutaminolysis in Cancer Cells.
トランスポーターSNAT1 (SLC38A1) と SNAT2 (SLC38A2) が癌細胞におけるグルタミノリシスを維持するために必須の役割を果たすことをアミノ酸トランスポーターASCT2 (SLC1A5) の削除によって明らかにする

Abstract
多くの癌細胞がグルタミンに依存する
なぜなら、癌細胞はグルタミノリシスglutaminolysisという経路を使って、細胞を構築する材料building blocksならびに同化目的のためのエネルギーenergy for anabolic purposesを作り出すからである

結果として、グルタミントランスポーターは癌細胞の増殖に必須であり、癌の化学療法の潜在的な標的である
中でもASCT2 (SLC1A5) が最も集中的に調査されてきた

今回我々は、HeLa子宮頸癌上皮細胞と143B骨肉腫細胞が複数のグルタミントランスポーターのセットを発現することを示す
(SNAT1 (SLC38A1), SNAT2 (SLC38A2), SNAT4 (SLC38A4), LAT1 (SLC7A5), ASCT2 (SLC1A5))

正味netのグルタミン取り込みuptakeはASCT2には依存しなかったが、SNAT1とSNAT2の発現を必要とした

ASCT2の削除は細胞増殖を減少させなかったが、アミノ酸飢餓応答を引き起こし、
SNAT1の上方調節が起きて機能的にASCT2に取って代わった

ASCT2 (-/-) という背景backgroundにおけるGCN2 (EIF2AK4) のサイレンシングは、細胞の増殖を抑制した
これは標的化アプローチの組み合わせがグルタミンに依存する癌細胞の増殖を阻止するであろうことを示す



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?
 

血管新生を標的にしても癌は代謝を切り替える

2016-05-04 06:06:26 | 
New discovery in the fight against cancer: Tumor cells switch to a different mode

April 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160428103153.htm


(抗血管新生療法の後、腫瘍は血管(緑色)が存在せず、したがって酸素が欠乏した領域(赤色)をむしろ発達させる
腫瘍細胞は核が青色で染色されている

Credit: University of Basel, Department of Biomedicine)

バーゼル大学(フランス)とバーゼル大学病院の生物医学者たちがCell Reports誌で報告したところによると、腫瘍細胞への酸素の供給を止めるための薬剤を使っても、細胞は酸素を使わずエネルギーを作るようにスイッチを切り替えることにより、ある程度の期間medium termは代謝を適応させる
この観察は長期にわたって腫瘍の増殖を阻害しうる治療のために使われる可能性がある


3人に1人が人生のどこかで癌を発症し、その症例の半数が死に至る
したがって癌と戦うための新たなアプローチが早急に必要である

癌は一連のステージを経て進行することが一般的に知られている
そのステージの一つは血管新生angiogenesisであり、新しい血管が形成されて腫瘍が成長するための酸素と栄養を供給する

癌がどのようにして形成されるのかという基礎についての理解が進むにつれ、腫瘍と戦うために特定の目標を攻撃するための技術が徐々に開発されてきた
現在腫瘍の血管新生を調節するためのシグナル伝達経路を複数同時に阻害することが可能であり、このプロセスの分子的な基礎の理解は特殊な治療法を臨床現場で日常的に利用するための道を開いてきた
例えば、腫瘍に栄養を供給する血管形成を阻害するためにいわゆる抗血管新生療法/anti-angiogenic therapyを使うことができる
しかしこれは一時的な効果しか発揮しない
腫瘍の増殖は初めこそしばらく遅くなるか止まるものの、治療を続けるにつれて腫瘍は治療への抵抗性を獲得して再び増殖し始める


『予想もしなかった観察』
"An unexpected observation"

バーゼル大学とバーゼル大学病院で生物医学部の教授であるGerhard Christoforiを中心とする研究グループは、最新治療が血管形成の阻害には有効であるものの、新しい血管が作られなくても腫瘍は増殖し続けられることを示す報告を発表した

生物医学的かつ分子遺伝学的な観点biochemical and molecular genetic perspectiveから見た今回の発見の分析から、腫瘍細胞は異なるタイプの代謝に切り替えることが明らかにされた
腫瘍細胞は血管から送られる酸素を使ってエネルギーを作り出すことはなくなり、代わりに酸素を使わない嫌気性anaerobicのエネルギー産生である解糖系へとスイッチを切り替える
解糖系の結果として生まれる乳酸はまだ十分な酸素を受け取っている細胞へと送られ、そこで乳酸は酸素と共にエネルギーを作るために使われる


新たな治療の可能性
New therapies possible

研究グループはさらに、この特別な腫瘍細胞の代謝は嫌気性anaerobicのエネルギー産生を阻害するか乳酸の輸送を阻害することにより妨げることが可能であり、したがって腫瘍の増殖を抑制できることを示した

共著者のChristoforiは結果について次のように述べた
「我々の発見は、抗血管新生療法を最適化して長期にわたって効果的に腫瘍増殖を阻止するための新たなアプローチへの道を開く」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.028
Targeting Metabolic Symbiosis to Overcome Resistance to Anti-angiogenic Therapy.
抗血管新生療法への抵抗性に打ち勝つために代謝的な共生を標的とする



Highlights

・腫瘍はマルチキナーゼ阻害剤による抗血管新生療法を回避しうる
・マルチキナーゼ阻害剤に対する抵抗性の根底には、解糖系への移行がある
・低酸素の細胞と酸素が豊富な細胞oxygenated cellsとの間の代謝的な共生が、治療への抵抗性を喚起する
・解糖系の阻害または乳酸輸送の阻害は代謝的な共生を崩壊させる


Summary
複数の抗血管新生療法が承認されたにもかかわらず、臨床的な結果は不十分なままであり、一時的な利益があってもその後は急速に腫瘍が再発する

今回我々は乳癌マウスモデルにおいて、マルチキナーゼ阻害剤であるニンテダニブnintedanib(VEGFR、PDGFR、FGFR等を阻害)ならびにスニチニブsunitinib(VEGFR、PDGFR、Kit等を阻害)の強力な抗血管新生の効能を実証する
しかしながら、最初の退縮regressionの後、活発な腫瘍血管新生がないにもかかわらず腫瘍は増殖を再開した

腫瘍細胞の遺伝子発現プロファイリングを実施したところ、嫌気性解糖系への代謝的再プログラムが明らかになった
事実、マルチキナーゼ阻害剤を解糖系阻害剤の3POと組み合わせることで腫瘍の増殖は効果的に阻害された

※3PO: 3-(3-pyridinyl)-1-(4-pyridinyl)-2-propen-1-one。解糖系を活性化するPFKFB3(phosphofructokinase-2/fructose-2,6-bisphosphatase 3)を上皮細胞で阻害する (Schoors et al., 2014)

さらに、腫瘍は代謝的な共生metabolic symbiosisを確立し、それはモノカルボン酸トランスポーターであるMCT1とMCT4のそれぞれ異なる発現によって説明される
MCTは解糖系腫瘍からの乳酸の交換で活発に活動する

それと一致して、MCT4の発現を遺伝学的に除去すると、抗血管新生療法への適応的な抵抗に打ち勝った

したがって、代謝的な共生を標的とすることは抗血管新生療法への抵抗性の発生を回避するための魅力的なやり方である



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160407221441.htm
癌は最初は自分で血管を作らせているが、マルチキナーゼ阻害剤であるソラフェニブのような血管形成の阻害剤を投与すると、肝臓の血管を取り込んで吸収co-optionするようになる
血管形成と血管吸収を両方とも阻害するのが良いかもしれない

http://dx.doi.org/10.1093/jnci/djw030
Co-option of Liver Vessels and Not Sprouting Angiogenesis Drives Acquired Sorafenib Resistance in Hepatocellular Carcinoma.
肝細胞癌におけるソラフェニブ抵抗性の獲得を促進するのは、血管新生の発芽ではなく肝臓血管の取り込み/吸収である



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d3bf55e0185cfc1c02ad1c249e3a46bf
[神経内分泌腫瘍の血管]─(PDGF-DD)→<PDGFRβ>[わずかな癌細胞サブ集団]─(成長因子)→[腫瘍]増殖,転移↑↑



Linked Article
http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.029
Metabolic Symbiosis Enables Adaptive Resistance to Anti-angiogenic Therapy that Is Dependent on mTOR Signaling
代謝的共生は抗血管新生療法への適応的抵抗性を可能にし、それはmTORシグナル伝達に依存的である




Linked Article
http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.015
Resistance to Antiangiogenic Therapies by Metabolic Symbiosis in Renal Cell Carcinoma PDX Models and Patients
PDXモデルと患者の腎細胞癌における代謝的共生による抗血管新生療法への抵抗性







参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

はぁ?
 

腫瘍の形状は転移するかどうかに影響する

2016-04-30 06:06:13 | 
Shape of tumor may affect whether cells can metastasize

April 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160428132608.htm


(Illinois researchers found that the shape of a tumor may play a role in how cancer cells become primed to spread.

From left: materials science and engineering professor Kristopher Kilian, graduate student Junmin Lee and veterinary medicine professor Timothy Fan.

Credit: Photo by L. Brian Stauffer)

癌の腫瘍ではほんのわずかな細胞だけが離脱して体内の他の場所へ転移するが、この腫瘍の種をまくseeding細胞が活性化される際に腫瘍の端edgeの湾曲した部分curveが大きな役割を果たすかもしれないことがイリノイ大学の新たな研究によって明らかになった
様々な輪郭shapeと図形patternの組織環境を工学的に作成して研究したところ、皮膚癌細胞の培養を湾曲curvedさせるほど、幹細胞の性質を示す癌細胞がその端edgeに増加した
幹細胞的な性質は他の組織に転移するための鍵となる要素である

この研究結果は潜在的に我々の癌細胞への理解を深める可能性があり、さらには個別化されたpersonalized治療計画の開発にも役立つかもしれない
材料科学materials science工学engineeringの教授であるKristopher Kilianと獣医学の教授Timothy Fanを中心とする科学者たちによる今回の研究結果はNature Materials誌で発表された


「癌の最も危険な部分は転移である」
Kilianは言う

「癌幹細胞cancer stem cellと呼ばれる細胞は、血流を通じて他の組織へと移動して新たな腫瘍を形成することができるという致命的な性質を獲得する
そのような細胞を見つけて研究するための方法が必要だが、もっと重要なことはそれらを標的にする薬剤の開発である
なぜなら腫瘍の大部分を標的とする化学療法薬に対して癌幹細胞は抵抗するからであり、それにより再発が生じて癌は元通りになる」


Kilianのグループは組織工学が専門であり、より正確に癌のプロセスを培養皿上で研究するための腫瘍モデルを作成している
今回の研究で彼らは様々な2次元と3次元の環境で異なる輪郭と図形を持つ皮膚癌コロニーを培養し、腫瘍の形状が癌幹細胞の活性化に寄与するかどうか、そして腫瘍のどの場所に癌幹細胞が現れるかを調査した

研究の結果、癌幹細胞は工学的な腫瘍環境の『端edge』に沿って最も多く現れ、特に曲がった部分の角cornerと凸状の曲線convex curveに見られた

「これには本当に驚かされた」
Kilianは言う

「通常の幹細胞は柔らかくてsoftぐにゃっとしたsquishy内部の位置を好む
それで癌についても誰もが癌幹細胞は腫瘍の中心に存在するのだと憶測してきたassume
しかし、腫瘍が柔らかい組織に接触する箇所にできるような幾何学的な制約geometric constraintsが作る境界線perimeterがこれらの癌幹細胞を活性化するように思われることを我々は発見した」


研究者たちは腫瘍が転移する能力を確認するために、工学的に作成した環境で遺伝学的分析のような試験を数多く実施した
彼らは皮膚癌だけでなくヒトの子宮頸癌、肺癌、前立腺癌などの細胞系統でも試験を行い、形作られたpatterned腫瘍環境に対してそれらが同様に反応することを発見した

次にKilianのグループは獣医学のTimothy Fanのグループとチームを組んで、生きているマウスで皮膚癌の癌幹細胞を使った試験を行い、形作られた環境から得られた癌幹細胞は古典的な平たい培養皿から得られた癌幹細胞よりもずっと腫瘍を形成しやすいことを明らかにした


Kilianは言う
「これらの幹細胞的な性質を工学的に持たせた細胞を与えられたマウスではずっと多くの腫瘍が成長することを我々は発見した
そして肺への転移の発生率も高かったのである
実際の腫瘍でも同様にこのような種類の形状が生じる領域が細胞を活性化する可能性があり、その細胞が逃げ出してさらに多くの腫瘍を形成する
これにより外科医は成長する腫瘍の境界線/外辺部perimeterに注意を向けてlook at、腫瘍のどの部分の周囲をより多く切り取る必要があり、どの部分はその必要が無いかを評価するために形状shapeを使って判断を導くことが可能になるかもしれない」


Kilianはこの工学的に形作られた組織環境が研究者たちに癌幹細胞を発見し、培養するための新しい方法をもたらすだろうと思っている
癌幹細胞はこれまでの古典的な培養では非常にとらえどころがないelusiveもので、全細胞の1パーセント未満でしかなかったという

Kilianはさらに、この工学的な腫瘍環境は癌を転移させる細胞の発見と理解についての基礎科学を越え、個別化医療personalized medicineにおける治療にも応用できると考えている

「患者の腫瘍を培養皿で工学的に操作し、薬剤を試してみるtest outための特定の腫瘍モデルを患者自身の腫瘍の細胞を使って作れるかもしれない
患者の細胞を採取して数日以内に小さな腫瘍microtumorを手に入れて、利用可能なあらゆる薬をスクリーニングできれば、腫瘍学者は腫瘍細胞に加えて見つけにくいelusive癌幹細胞を両方とも標的とするテーラーメイドな治療を処方できるようになるだろう」

"There's a lot more work to be done,
but we're very excited about how a very simple materials property of a growing tumor might be a culprit of the disease spreading.

We think it opens up a new avenue of investigation for
drug development, guiding surgery, and understanding progression and spreading of cancer,"
Kilian said.

「癌は非常に複雑であるため、その実際の状況に置くことが鍵となる
もし微小環境がそのような癌を転移させる細胞活性化の状況をもたらすのなら、それこそが理解するために重要である」


http://dx.doi.org/10.1038/nmat4610
Interfacial geometry dictates cancer cell tumorigenicity.
界面の幾何学的構造は癌細胞の造腫瘍性を決定する

腫瘍組織の不均質な構造の中には捉えどころがない幹細胞のような細胞の集団が存在し、再発と転移のどちらにも関与する (1, 2

今回我々は細胞外マトリックスを工学的に作成し、腫瘍組織の境界線perimeterの幾何学的geometricな特徴が幹細胞様の表現型を持つ細胞集団を刺激するprimeであろうことを示す

これらの細胞はin vitroで癌幹細胞の特徴を示し、加えて原発腫瘍の成長と肺への転移のネズミ科モデルにおける造腫瘍性tumorigenicityが促進されている

また、界面の幾何学的構造interfacial geometryは細胞の形状shapeを変化させmodulate、インテグリンα5β1を通じて細胞の接着を調整し、MAPKとSTAT活性、多分化能シグナル伝達の開始に影響することを我々は示す

複数のヒト癌細胞系統での我々の結果は、界面の幾何学構造が癌細胞の運命を調節する全体的generalなメカニズムの引き金を引くことを示唆する

成長する腫瘍が可溶性のシグナル伝達経路を勝手に用いるco-opt方法(3 と同様に、
我々の研究結果は癌がどのようにして幾何学構造geometryを利用exploitして腫瘍形成oncogenesisを調整するorchestrateのかを実証する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150420130555.htm
細胞外マトリックスの硬さと癌

ハイドロゲルで硬さを変化させると、硬くなるほどTWIST1はアンカーのG3BP2から離れて核へと移行した
G3BP2を欠損させると、細胞は浸潤して転移するようになった
ヒトの乳癌サンプルでは、G3BP2が少なく硬い腫瘍ほど予後が悪かった
コラーゲンのorganizationは予後を予測し、disorganized collagenであるほど予後は良い



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3a1c961faaef3b083a1550767793e75f
アルギン酸ゲルを使用したモデルがその最も柔らかい状態の時、正常で良性の乳房上皮細胞はその中で通常通りふるまった
しかしアルギン酸ゲルが硬くなると上皮細胞は癌関連の遺伝子の発現を上方調節し始め、細胞増殖と浸潤を引き起こすPI3K経路の活性が増大した



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141217131441.htm
組織の硬さと卵巣癌の悪性化

過去の研究によれば、卵巣癌はやわらかい組織上で、より悪性化する
それは例えば腸に沿って存在する脂肪組織であり、それはこの環境が持つ機械的性質による
これは「硬い組織を好む」と思われる他の悪性癌で見られる性質とは異なる

新しい研究によると、SNAILが過剰発現するとEMTにより周囲の組織の構造/力学mechanicsとは独立して行動できるようになる

[MCF-7/Luminalタイプ]
 SNAIL発現→EMT/上皮間葉転換→細胞骨格の遺伝子発現が変化してやわらかくなる→転移↑

ただし着いた先では逆にMETをする必要がある
なぜなら、二次腫瘍を形成できるほど頑丈sturdyではないからである

TGF-βを阻害された癌細胞はさらに悪性化する

2016-04-29 06:20:06 | 
Breast cancer progression: the devil is in the details

April 27, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160427103634.htm


(Detail of breast cancer cells in 3-D culture, collectively invading into the surrounding extracellular matrix.

Credit: Diana Dragoi / Helmholtz Zentrum München)

ヘルムホルツ・ミュンヘンセンター(Helmholtz Zentrum München/Helmholtz center Munich)の研究者は、浸潤性を標的とする特定の阻害剤にさらされた乳癌の細胞がどのようにして『代わりの作用機序/alternative mode-of-action』へと切り替えてさらに悪性になるのかを説明する
Oncotarget誌で発表されたこの研究結果は、TGF-β経路に対する将来の治療アプローチを損なうものになるかもしれない


乳癌が進行するにつれ、腫瘍の細胞は乳腺を形作る組織の区画compartmentを破って進み始め、周囲の組織へと活発に浸潤invadeして拡散するようになる
Christina Scheel博士を中心とする研究チームは、I型TGF-β受容体/TGF-beta Receptor Type I (TGFBR1) を標的とする小分子阻害剤を使ってこのプロセスを阻害しようと試みた
TGFBR1は乳癌細胞に浸潤する能力を与えるシグナル伝達カスケードを中継する重要なタンパク質である

事実、そうすることで幹細胞研究所/Institute of Stem Cell Research/Institut für Stammzellforschung (ISF)の科学者はこのプロセスに関与する遺伝子のマスター調節因子master regulatorが『癌細胞の浸潤する振る舞いを引き起こす細胞プログラム』を開始できないように妨げることが可能になった
このTwist1というマスター調節因子は乳癌の進行に関与することが長く知られているが、現在のところTwist1自体を治療標的とすることは容易ではないnot amenable
したがって、研究者はTwist1が浸潤性を仲介するために依存する標的化可能な他のシグナル伝達経路を阻害することを目標にした

※「TGFβRI受容体→Twist1転写因子→ZEB1転写」という経路


乳癌細胞の適応性を明らかにする驚くべき結果
Surprising results reveal the adaptiveness of breast cancer cells

「最初、in vitroの伝統的な組織培養テクニックを使った結果は成功を示すものだった
同時にTGFBR1を阻害することによりこれまでに記述されてきたTwist1活性化による影響の多くは妨害された」
論文の筆頭著者first authorであり幹細胞研究所(ISF)のDiana Dragoi, PhD studentは言う

しかしながら、乳癌細胞をより生理的な状況に近い3次元の培養環境に移し替えたところ、驚いたことにTwist1はTGFBR1シグナル伝達が阻害されているにもかかわらず乳癌細胞を浸潤性にすることが可能になった


乳癌細胞は単一の細胞ではなく『より糸strand』のように結合cohesiveすることにより、3次元環境を浸潤して転移するもう一つの状態modeへと単純に切り替わった
加えてこれらの細胞は増殖の速度が著しく高く、離れた箇所にまき散らされたdisseminating後で二つ目の腫瘍を開始することが上手くできるようになっているequippedことが示唆される

この転移というプロセスは乳癌患者の主な死因である
転移では全身に播種disseminationが生じ、脳や骨髄、肝臓などの生命に必要な臓器で乳癌細胞が増殖して、やがて臓器は破壊される

「まとめると、TGFBR1を阻害してもマスター調節因子のTwist1が乳癌細胞を悪性にする能力を単に阻止するのではなく、さらに悪性の乳癌細胞を生み出すようにTwist1の作用を向き直させるだけであることを我々の研究は示唆する」
共著者co-authorであるAnja Krattenmacherは言う

「これらのデータは、in vivoの状態にできるだけ近いapproximateことを目指して多くの様々なパラメータをテストする入念diligentな前臨床試験の重要性を強調する
これは転移のような複雑で多段階のプロセスに干渉することを目指す時に特に重要である」
Scheel博士はそのように結論づけた

乳癌進行の複雑さにおいて、『悪魔は細部に宿る』のである
In the complexity of breast cancer progression, the devil is in the detail.


http://dx.doi.org/10.18632/oncotarget.8878
Twist1 induces distinct cell states depending on TGFBR1-activation.
Twist1はTGFBR1活性化に依存して異なる細胞状態を引き起こす

Abstract
塩基性 helix-loop-helix (bHLH) 転写因子のTwist1は、上皮間葉転換/Epithelial-Mesenchymal Transition (EMT) のマスター調節因子である
EMTは様々な発達ステージや転移性の播種に関与する細胞プログラムである

今回我々はTwist1が下流のエフェクターであるZEB1のエンハンサー領域に結合するためにはTGF-beta type-I receptor (TGFBR1) の活性化が必要であることを示す
このエンハンサーへの結合はZEB1の転写を誘発してEMTを引き起こす

TGFBR1リン酸化が阻害されると、Twist1は異なる細胞状態を作り出す
その状態の特徴は、集団的浸潤collective invasion、同時増殖simultaneous proliferation、内皮マーカーの発現expression of endothelial markersである

対照的に、TGFBR1の活性化はEMTを通じてTwist1を安定した間葉系分化転換mesenchymal transdifferentiation
へと方向づけ、それにより単一細胞による浸潤性single-cell invasionは示すが増殖能を失った細胞を作り出す

結論
Twist1によって誘発されるEMTをTGFβシグナル伝達の阻害によって阻害しても、浸潤性の獲得を全体的には阻害せず、
『単一細胞で浸潤するが増殖しないsingle-cell/non-proliferative』という状態から『集団的に浸潤して(同時に)増殖もするcollective/proliferative』という状態へと切り替えさせる

まとめると、これらのデータは一時的transientなTwist1活性化はシグナル伝達の背景contextに依存して異なる細胞状態を引き起こすことを明らかにするものであり、
浸潤性を標的とするための治療戦略としてTGFβの阻害剤を使用することに対して慎重になるべきである



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2012/09/120904121436.htm
卵巣癌細胞はTGF-β2により周囲の組織を乗っ取り腫瘍増殖を促進する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a634de2c32256ddde7e64a3859950fcb
周囲のストロマ細胞のHSF1の活性化は、TGF-βとSDF1を介して悪性化を進行させる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150408160645.htm
Id4の発現は膠芽腫の患者の生存と正の相関を示し、Id4の発現はMMP2の発現とは逆相関した
Id4─┤Twist1→MMP2→膠芽腫の浸潤



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c89e847d6ea50b57bda32e5adf76a37e
http://dx.doi.org/10.1038/nature16064
Epithelial-to-mesenchymal transition is dispensable for metastasis but induces chemoresistance in pancreatic cancer.
EMTは膵臓癌の転移に必須ではないが、化学療法への抵抗性は誘導する

EMTの原因とされる2つの鍵となる転写因子TwistとSnailを欠損させたPDACマウスモデルを作成したところ、
そのようなEMTの抑制によって、PDACでの浸潤の出現、全身への転移は変化しなかった
EMTの抑制は癌細胞の増殖の増大につながり、腫瘍のヌクレオシドトランスポーターの発現が促進される
これはゲムシタビン治療への感受性の増大につながり、マウスの全生存率が上昇する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150109093559.htm
研究チームは、皮膚の腫瘍の発癌、癌幹細胞の機能、腫瘍の進行を制御するTwist1の様々な機能を調節するメカニズムを明らかにした
正常な皮膚でTwist1は発現していないが、Twist1を消去すると皮膚癌の形成は抑制される
Twist1が低いと良性腫瘍になり、逆にその発現の高さは腫瘍の進行に必要である
Twist1は腫瘍の維持と癌幹細胞の機能の調節に必須である
Twist1の機能は様々な分子メカニズムによって調節され、癌幹細胞の機能調節におけるp53から独立した役割を同定した

http://dx.doi.org/10.1016/j.stem.2014.12.002
Different Levels of Twist1 Regulate Skin Tumor Initiation, Stemness, and Progression.

 

膵臓癌を形成する最初の段階が明らかにされる

2016-04-26 06:06:51 | 
First steps in formation of pancreatic cancer identified

November 10, 2014

https://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141110110106.htm



Shown is a region of a pancreas with preneoplastic lesions.

Red labeling indicates macrophages, green labeling indicates pancreatic acinar cells that dedifferentiate, and grey labeling indicates further progressed pancreatic lesions.

Credit: Image courtesy of Mayo Clinic)


メイヨークリニック・ジャクソンビルキャンパスの研究者によると、彼らは膵臓癌の源となる最初のステップを明らかにしたという
Cancer Discovery誌のオンライン版で彼らは、膵臓が消化酵素を分泌する『腺房細胞acinar cell』が癌の前の段階となる病巣lesionを形成するために欠くことのできないnecessary分子的なステップを記述する
それらの病巣の中から、やがて癌へと変わるものが現れる

新たな治療・予防戦略が早急にpressing必要であるとStorz博士は言う
膵臓癌はヒトでは最も悪性な癌の一つであり、癌がかなり進行するまで症状が現れない
診断から1年後に生き残るのは2割に過ぎず、アメリカでは癌での死因の4番目である

科学者たちはKrasという遺伝子が突然変異を起こした膵臓癌を研究した
Krasは細胞分裂を調節するタンパク質をコードし、多くの癌でしばしば突然変異を生じる
膵臓癌の症例の95パーセント以上がKrasに突然変異を持つ

研究者はKrasに突然変異を持つ腺房細胞acinar cellが『幹細胞的な性質を持つ管のような細胞duct-like cell』へと形質転換transformationしていくステップを詳細に説明する
幹細胞は自由自在at willに分裂することが可能で、しばしば癌に関係する

その研究によると腺房細胞のKrasタンパク質はICAM-1という分子を発現させ、マクロファージという免疫細胞を引き寄せるのだという
その炎症性のマクロファージは様々なタンパク質を分泌し、細胞の構造を崩してloosen、腺房細胞が異なるタイプの細胞へと変身させるmorph
これらのステップが癌の前段階となる膵臓の病巣をもたらす

「我々はKras突然変異と炎症性環境との間の直接の関係を示す
それが膵臓癌の開始を刺激する」
Storz博士は言う

しかし、研究室のマウスではこのプロセスを止めることができると彼は付け加える

「それは2つの方法で可能である
それはマクロファージを枯渇させるか、または形質転換した細胞に対してICAM-1を抑制するための抗体を投与することによる
そのどちらかで前癌病巣の数は減少した」

Storz博士はICAM-1を阻害する中和抗体が既に開発されていることに言及する
この抗体は脳卒中strokeや関節リウマチrheumatoid arthritisなど様々な疾患で試験される予定である

「Kras突然変異を生じた腺房細胞とそれらの細胞周囲の微小環境との間のクロストークを理解することは、膵臓癌を予防して治療する標的戦略targeted strategiesを開発するための鍵である」と博士は言う


http://dx.doi.org/10.1158/2159-8290.CD-14-0474
Mutant Kras-induced expression of ICAM-1 in pancreatic acinar cells causes attraction of macrophages to expedite the formation of precancerous lesions.

繊維形成desmoplasiaと炎症性の環境は、膵臓癌の決定的な特徴である
発癌性の形質転換をした膵臓癌がどのようにして免疫細胞とクロストークし、それが膵臓病巣の発展にどう寄与するのかはまったく不明である

今回我々は、突然変異KRASを発現する膵臓の腺房細胞が局所的な炎症を誘発することにより管状表現型duct-like phenotypeへの形質転換を早めるexpediteことを実証する

我々は特に、KRASのG12D変異は細胞間接着分子/intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1) の発現を誘導し、それがマクロファージへの化学誘引物質chemoattractantとして作用することを示す

浸潤するマクロファージは細胞外マトリックスをリモデリングしたりTNFのようなサイトカインを分泌することにより、KRASG12D変異が引き起こす異常な膵臓構造の形成を増幅する

腺房細胞に特異的なプロモーター下で発癌性Krasを発現するマウスに対して、マクロファージを枯渇させるかICAM-1中和抗体を投与すると、どちらも異常構造の形成を減少させ、『腺房細胞から管状への化生(かせい)acinar-to-ductal metaplasia』から『膵臓上皮内intraepithelial新生物病巣neoplastic lesion』への進行を抑制した



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2013/08/130805092314.htm
Origin of inflammation-driven pancreatic cancer decoded

http://dx.doi.org/10.1083/jcb.201301001
Macrophage-secreted cytokines drive pancreatic acinar-to-ductal metaplasia through NF-κB and MMPs.
マクロファージが分泌するサイトカインはNF-κBならびにMMPを通じて膵臓の腺房から管状への化生を促進する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2012/11/121129130309.htm
Study sheds light on how pancreatic cancer begins

http://dx.doi.org/10.1016/j.ccr.2012.10.025
Identification of Sox9-Dependent Acinar-to-Ductal Reprogramming as the Principal Mechanism for Initiation of Pancreatic Ductal Adenocarcinoma.
腺房から管状へのSox9依存的な再プログラムは膵管腺癌(PDAC)開始の主なメカニズムであることを明らかにする
 

悪性の膵臓癌は細胞死メカニズムで生き残る

2016-04-24 06:06:40 | 
Cell death mechanism may, paradoxically, enable aggressive pancreatic cells to live on

New findings could lead to anti-cancer drug developments that reverse immunosuppressive environments
April 22, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160422141216.htm


(共焦点顕微鏡によるヒトPDAC腫瘍の画像
PDACはCXCL1(赤色)、CK19(緑色、PDACのマーカー)を両方発現する

Credit: NYU Langone Medical Center)

膵管腺癌(PDAC)は最も悪性の膵臓癌であり、診断と治療が最も困難な悪性腫瘍の一つとしばしば言われる
Nature誌で最近発表された注目に値する研究major studyによると、この癌は腫瘍の周囲で『調整された細胞死/orchestrated cell death』という特定の種類の死に方をする細胞が存在する時に成長するという

今回の研究結果は『注意深く調整された細胞死メカニズム』に焦点を合わせる
このメカニズムは欠陥のある細胞やウイルスに感染した細胞を殺すためのものであり、しばしば重要な細胞の防御メカニズムである

ニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター/NYU Langone Medical Centerとローラ・アイザック・パールマターがんセンター/Laura and Isaac Perlmutter Cancer Centerの研究者は膵管腺癌/pancreatic ductal adenocarcinoma (PDAC) のマウスモデルを研究することにより、ネクロプトーシスnecroptosisという調整された細胞死が実際にはCXCL1という小さなタンパク質の産生を誘発し、PDACの腫瘍細胞の増殖を刺激することを明らかにした
CXCL1は骨髄由来免疫抑制細胞/myeloid-derived suppressor cell(MDSC)という特別な免疫抑制性の細胞を呼び寄せることが知られ、癌細胞を認識して破壊する免疫系の能力をMDSCは低下させる
さらに、研究者は同様の出来事がヒトのPDACでも起きているようだと言う

※プレスリリース記事ではCXCL1が呼び寄せるのはTAMと書かれているが、論文ではCXCL1が呼び寄せるのはMDSC(Reference 15)とあるので修正した


「我々の発見はネクロプトーシスを介する癌細胞の死が実際には腫瘍の増殖を促進しうることを初めて示す
このプロセスは癌に対する免疫応答を抑制して腫瘍を成長させる」
今回の研究で首席研究者senior investigatorのGeorge Miller, MDは言う
彼はパールマターがんセンターの外科・細胞生物学科の準教授associate professorであり、がん免疫プログラムでは共リーダーである

「それと等しく重要なのは、これらの発見が他のタイプの腫瘍にも関連があるかもしれないということだ」


研究チームは最初の発見に続いて、ネクロプトーシスによるCXCL1だけでは腫瘍細胞の周囲に作られる腫瘍に保護的な環境の説明として十分ではないことも明らかにした
さらなる研究の結果、死んだ腫瘍の細胞はSAP130という別のタンパク質も放出し、腫瘍の環境内に存在する炎症性の免疫細胞上でMincleという受容体に結合することが判明した
Mincleの活性化はマウスで腫瘍の形成を加速した

研究者によると、今回の研究で重要なのはネクロプトーシスとMincleシグナル伝達が新たな抗癌剤の標的となりうることだという
これらの経路を阻害することでMDSCや腫瘍関連マクロファージによって作られた免疫抑制的な環境を無効化し、他のタイプの免疫細胞である癌を殺すT細胞に力を与え、腫瘍を攻撃させられる可能性がある

「我々の研究は、癌が成長する実際の状況actual contextの中で癌を調べることの重要性を実証する」
研究の共筆頭著者であるGregor Werba, MDは言う

「我々の最初の研究では、組織培養のPDAC細胞におけるネクロプトーシスを阻害すると、その増殖能は増大した
しかしながら、同じプロセスをマウスで研究し始めると全く正反対の影響が見られたことに我々はとても驚いた
これは主に腫瘍の周囲に存在する細胞による免疫応答のためだった」


Miller博士たちのチームはこれらの手がかりを追跡調査follow up on these leadsするために医学科の助教授であるDierdre Cohen, MDらと協力して、ネクロプトーシスだけを阻害し潜在的な抗癌作用を持つ化合物を探して免疫療法との組み合わせを調査する予定である


http://dx.doi.org/10.1038/nature17403
The necrosome promotes pancreatic oncogenesis via CXCL1 and Mincle-induced immune suppression.
ネクロソームはCXCL1ならびにMincleによる免疫抑制を介して膵腫瘍形成を促進する


Abstract
新生物の膵上皮細胞はカスパーゼ8依存的なアポトーシス細胞死によって死に、化学療法は腫瘍のアポトーシスを促進すると考えられている(1
反対に、癌細胞はしばしばアポトーシスを中断させて生き残る(2, 3

別のタイプのプログラム細胞死はネクロプトーシスnecroptosis (プログラムされたネクローシス/programmed necrosis) だが、その膵管腺癌(PDAC)における役割は不明である

PDACでネクロプトーシスを誘導する物質potential inducerは多数存在し、例えばTNFR1・CD95・TRAILのような受容体への結合、TLR受容体や活性酸素種(ROS)、化学療法薬などがある(4, 5

今回我々が報告するのはネクロソームの主要な要素のRIP1RIP3(receptor-interacting protein)である
それらはPDACで強く発現し、さらに化学療法薬のゲムシタビンによって上方調節される

in vitroではネクロソームを阻害すると、癌細胞の増殖を促進し悪性の発癌性oncogenicの表現型を誘発した

それに反して、in vivoでのマウスからのRIP3の削除またはRIP1の阻害は、発癌性の進行から保護し、強い免疫原性immunogenicの骨髄細胞の発達ならびにT細胞の浸潤と関連した

完全なRIP1/RIP3シグナル伝達と関連する免疫抑制性の腫瘍微小環境は、部分的にはネクロプトーシスによるケモカイン誘引物質CXCL1発現に依存し、CXCL1の阻害はPDACから保護した

さらに、PDACでは細胞質のSAP130 (a subunit of the histone deacetylase complex) がRIP1/RIP3に依存的なやり方で発現し、
その同系の受容体cognate receptorであるMincleが腫瘍に浸潤する骨髄細胞で上方調節されていた

SAP130のMincleへの結合は発癌oncogenesisを促進する一方で
Mincleの削除は発癌から保護し、
RIP3削除によって誘導される『腫瘍微小環境が免疫原性へと再プログラムされる表現型』をコピーした

抑制性マクロファージはPDACにおける腫瘍形成tumorigenesisを促進するが、
それらマクロファージはRIP3またはMincleが削除されると免疫抑制的な影響を失うことが、
細胞からの(遺伝子やタンパク質の)枯渇で示唆された


それらと一貫して、
完全なRIP3またはMincleシグナル伝達が存在するマウスでのT細胞はPDAC進行に対して保護的ではないが、
RIP3またはMincleが存在しない状態では抗腫瘍免疫の必須メディエーターへと再プログラムされる

我々の研究は、マクロファージによる適応免疫の抑制を促進することによりPDAC進行を可能にする『ネクロプトーシスによるCXCL1ならびにMincleシグナル伝達』の並列ネットワークparallel networksを記述する

※CXCL1以下とMincle以下が並列する


http://www.nature.com/nature/journal/v532/n7598/fig_tab/nature17403_SF10.html
Extended Data Figure 10:
膵管腺癌(PDA)におけるRIP3ならびにMincleシグナル伝達はマクロファージによるT細胞免疫の抑制に必須である




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遺伝学的に決定される腫瘍の代謝的な好みは細胞の環境によってくつがえされうる



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癌関連線維芽細胞をアポトーシスさせると腫瘍関連マクロファージが増加して転移リスクが上昇する



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160404221001.htm
TAMの前駆細胞である単球のCCR2を阻害するPF-04136309と化学療法の組み合わせが膵臓癌に有効



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ゲムシタビンは分裂する癌細胞に作用するが、EMTを開始するなどして増殖が止まると効果がない



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/9449
RIPK3はネクローシスに非依存的にサイトカインの産生および組織の修復を促進する
 

癌細胞は健康な細胞を『ダークサイド』へと変える

2016-04-21 06:06:07 | 
Cancer cells turn healthy cells to the 'dark side'

April 14, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160414144213.htm

癌細胞は突然変異の遺伝子を使って周囲の正常な組織に無理やりcoerce癌細胞の成長と転移を手伝わせることが、Cell誌で新たに報告された
正常な細胞は説得persuadeされて独特な成長シグナルを出し、癌細胞はそれを使って増殖するが、癌細胞自体がそのシグナルを出すことはない
彼らの研究は癌細胞と正常な細胞がどのようにしてお互いにコミュニケーションするのかに光を当て、癌の治療への新しいアプローチへの道を開く


ロンドンのInstitute of Cancer Researchとマンチェスター大学のCancer Research UK Manchester Instituteの科学者たちは、突然変異を起こしたKRASの欠陥バージョンが正常な組織に対して重要な影響を与えることを明らかにした
通常のKRASが細胞に分裂するように伝えるのは時折でしかないが、突然変異のKRAS遺伝子は過剰に活性化し、癌細胞の急速で制御不能な増殖を促進する

今回の研究で、突然変異のKRASは正常な『ストロマ細胞』を癌細胞の味方allyに引きこむ際に重要な役割を演じることが明らかになった
研究では癌遺伝子が正常なストロマ細胞を通じて癌をコントロールするという『コミュニケーション・ループ』の存在が初めて示された

研究者は膵管腺癌(PDAC)というタイプの膵臓癌で細胞のコミュニケーション・ネットワークを調査した
PDACは最も致命的な癌の一つであり、イギリスでは毎年9000人がPDACで死亡する

KRASは膵臓癌の90パーセント以上で突然変異しており、全ての癌でも20パーセントが変異している

研究チームは膵管腺癌の細胞で何千という様々な成長因子やタンパク質、受容体を調べ、シグナル伝達がどのようにして伝えられるかを観察した
彼らはKRASが周囲の正常な細胞とコミュニケーションするために使う既知の経路の存在を認めたが、しかし何か異常が起きていることにも気付いた

2つの細胞のタンパク質を同時にモニターした結果、癌細胞からのコミュニケーションに対して正常な細胞が『全く新しいメッセージ』で応答することが判明した
この『メッセージ』は、KRASが癌細胞の悪性な振る舞いを加速する能力をさらに倍加するものだった

論文著者のChris Tape博士(Institute of Cancer Research, London)は次のように言う
「我々の研究が強調するのは、癌細胞の増殖と転移は腫瘍単独で促進されるわけではないということだ
癌細胞は周囲の正常な細胞を脅してbully手伝わせることができる
膵臓癌の中には腫瘍内部に癌細胞よりも多く正常なストロマ細胞を持つ場合があるため、癌細胞がどのようにして周囲の細胞を仲間に引き込むかを理解することは重要である
我々は癌細胞がどのようにしてストロマ組織を説得persuadeして成長シグナルを出させるのかを正確に明らかにした
そうすることでエキサイティングで新しい治療の可能性を開く」

以前はInstitute of Cancer Research, Londonのチームを率い、現在はCancer Research UK Manchester Instituteのjunior group leaderでもあるClaus Jorgensen博士は言う
「我々は今や腫瘍が様々な癌細胞や多くの種類の正常な細胞から成る遺伝的に複雑な混合体であることを知っており、それらは入り組んだintricate相互作用の網webで全てお互いにコミュニケーションしている
この網を解きほぐしuntangle、個々のシグナルを解読decodeすることは、数多くコミュニケーションの一体どれが腫瘍の成長と拡散を制御するために最も重要なのかを識別するために重要である
我々は癌細胞で最も広く突然変異している遺伝子が正常な細胞とコミュニケーションする際に演じる重要な役割を明らかにした
その影響を阻止することは癌の効果的な治療となりうるだろう」


OPEN
http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.03.029
Oncogenic KRAS Regulates Tumor Cell Signaling via Stromal Reciprocation.



Highlights

・KRASG12D establishes a reciprocal signaling axis via heterotypic stromal cells
・Reciprocal signaling further regulates tumor cell signaling downstream of KRASG12D
・Reciprocal signaling regulates tumor cell behavior via AXL/IGF1R-AKT
・Heterocellularity expands tumor cell signaling beyond cell-autonomous pathways


Summary

Oncogenic mutations regulate signaling within both tumor cells and adjacent stromal cells.

Here, we show that oncogenic KRAS (KRASG12D) also regulates tumor cell signaling via stromal cells.

By combining cell-specific proteome labeling with multivariate phosphoproteomics, we analyzed heterocellular KRASG12D signaling in pancreatic ductal adenocarcinoma (PDA) cells.

Tumor cell KRASG12D engages heterotypic fibroblasts, which subsequently instigate reciprocal signaling in the tumor cells.

Reciprocal signaling employs additional kinases and doubles the number of regulated signaling nodes from cell-autonomous KRASG12D.

Consequently, reciprocal KRASG12D produces a tumor cell phosphoproteome and total proteome that is distinct from cell-autonomous KRASG12D alone.

Reciprocal signaling regulates tumor cell proliferation and apoptosis and increases mitochondrial capacity via an IGF1R/AXL-AKT axis.

These results demonstrate that oncogene signaling should be viewed as a heterocellular process and that our existing cell-autonomous perspective underrepresents the extent of oncogene signaling in cancer.


精製炭水化物は前立腺癌のリスク上昇と関連

2016-04-20 06:09:33 | 
Cancer link offers another reason to avoid highly processed carbs

April 5, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160405182105.htm

精製炭水化物は前立腺癌のリスク上昇と関連がある

そうでない炭水化物(豆類、非デンプン質の野菜、果物、全粒粉)は前立腺癌リスク低下と関連

FASEB、Experimental Biology 2016での発表



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160125114243.htm
細胞外の高い酸性度は通常の細胞には有害だが、腫瘍細胞には増殖の利点となる
果物と野菜の豊富な低塩分食はアルカリ性によって腫瘍による『pHの濃度勾配の逆転』を最小限に抑え、悪性度を低下させて治療抵抗性を抑える



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f0899b6e86a9f2eba1897d5922a96e33
癌細胞は腫瘍内の酸性環境でも増殖することが可能だが、免疫細胞のような普通の細胞にとって酸性は有害
酸性の腫瘍環境を中和することにより、免疫を標的とする治療法の効能が増加する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160414114159.htm
膠芽腫にケトジェニックダイエット・改が有効
ケトン食は普通の人には難しいが、ココナッツオイル(中鎖脂肪酸)でケトンを補うようにしたところ、腫瘍の成長が抑制され、mTORが低下した
マウスモデルで有効、これから臨床試験を予定



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24728273
再発膠芽腫におけるケトジェニック食のパイロット・スタディ
20人中3人(15%)が脱落
13人中12人(92%)に尿中ケトーシス
1人が弱い応答、2人が6週後に安定
マウスでは、ケトン食は単体ではmedian survivalに効果なし
ベバシズマブと一緒に使うと効果があり、52日から58日になった
結論として、再発神経膠腫でのケトジェニック食はもっともらしくfeasible、そして安全ではあるが、それ単独での明らかな臨床的作用はまったくない



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25806103
神経膠腫をケトジェニック食で治療
カロリー制限ケトン食療法(ERKD)にもかかわらず、2人の患者で腫瘍は進行した
免疫組織化学での反応を調べたところ、腫瘍では2つの重要なミトコンドリアのケトン体分解酵素ketolytic enzymeのうち少なくとも1つが発現していた (succinyl CoA: 3-oxoacid CoA transferase、beta-3-hydroxybutyrate dehydrogenase 1)
文献で調べたところ、他の30人の患者ではいくつかのケトン食プロトコルを実施して様々な応答があった
長期の寛解は5年以上から4ヶ月までのケースが報告されているが、そのうち1つだけがケトン食を単独療法monotherapyとして用いていた
より最近の報告で最も良かった反応は、約6週間の安定だった
 

飽和脂肪酸は前立腺癌の悪性度と関連

2016-04-20 06:06:53 | 
Increased saturated fat intake linked to aggressive prostate cancer

April 19, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160419081941.htm

脂身の多い牛肉やチーズのように飽和脂肪酸の豊富な食事は前立腺癌の悪性度の高さと関連することが、ノースカロライナ大学(UNC)ラインバーガー総合がんセンターの研究によって明らかになった
この予備的な実験結果は、ニューオリンズで開かれるアメリカ癌学会(AACR)の年次総会で4月18日に発表された

「我々は食事に含まれる飽和脂肪酸の量の多さが前立腺癌の悪性度と関連することを示す」
UNC Gillings School of Global Public Healthで特任助教research assistant professorのEmma H. Allott, PhDは言う

「これは食事中の飽和脂肪酸の量を制限することが前立腺癌にも関係があることを示唆するのかもしれない
この種の制限は全体的な健康や心血管疾患の予防にとって重要であることが知られている」

この研究結果はノースカロライナ州とルイジアナ州で2004年から2009年までの間に前立腺癌と診断された1854人の調査から引き出されたものだ(前立腺癌プロジェクト/North Carolina-Louisiana Prostate Cancer Project)
この調査で男性は前立腺癌の診断時に食事や他の要因について様々な質問を受け、そこから研究者は飽和脂肪酸の摂取と診断時の腫瘍の悪性度との間の関連を分析した
飽和脂肪酸の摂取量を脂肪の総摂取量に合わせて統計モデルで調整し、さらにPSAとグリーソンスコアで悪性度を計測したところ、飽和脂肪酸の摂取量は悪性度と関連することが明らかになった

食事中の飽和脂肪酸の量の多さは血液中のコレステロールレベルの上昇の一因であり、それが関係するのかもしれないとAllottは言う
実際、コレステロールをコントロールするためにスタチンを服用していた男性では飽和脂肪酸と悪性度との関連が弱まっていた

これらの結果は、スタチンが飽和脂肪酸が前立腺癌の悪性度に与える影響と(完全には打ち消さないにしても)拮抗することを示唆するのかもしれない
加えて、魚やナッツに多く含まれる多価不飽和脂肪酸の多さは前立腺癌の悪性度の低さと関連することも研究者は明らかにした

Allottによるとこれからの研究目標はこの関連の背後にあるメカニズムを調べていくことだという



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d4243c7692de86f1764779457605d15b
スタチンが癌の転移と薬剤抵抗性に有効な理由



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3b5969ccb3b69e27b3f8ff4f1891a4f6
コレステロール合成の阻害剤が前立腺癌に有効



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6089be975c0cf32996447e33323a6ece
癌はLDLのコレステロールをエサにして増殖する



関連サイト
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2014/022236.php
赤身肉に含まれる偶数鎖の飽和脂肪酸は糖尿病リスク上昇と関連
 

乳癌は増殖するために脂質を取り込む

2016-04-19 06:06:42 | 
Breast cancer tumor growth is dependent on lipid availability, researchers discover

April 5, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160405093922.htm


(LIPGタンパク質の三次元構造

Credit: F Slebe, IRB Barcelona)

バルセロナ生物医学研究所/Institute for Research in Biomedicine (IRB) Barcelonaはスペインの病院やロビラ・イ・ビルジリ大学/Universitat Rovira i Virgili (URV) と協力した研究で、乳癌の脂質への依存性を明らかにした
Nature Communicationsで発表された今回の発見は癌と戦うための新たな治療戦略への道を開くものになりうるだろう


研究者たちは乳癌が増殖を続けるために細胞外の環境から脂質を取り込む必要があることを報告する
このプロセスに関与する主なタンパク質は細胞膜上に存在するLIPGで、LIPGがないと腫瘍細胞の増殖は抑制される
様々な乳癌腫瘍の患者から提供された500以上の臨床サンプルの分析から、腫瘍の85パーセントでLIPGの発現が高いことが明らかにされた

スペインで乳癌は女性で最も多い腫瘍であり、男性女性合わせると4番目に多いタイプの腫瘍である (SEOM, 2012のデータ)
WHOの計算figuresによると世界で毎年138万人が新たに乳癌と診断され、45万8000人が乳癌のために死亡する (IARC Globocan, 2008).


アキレスのかかと
Achilles Heel

癌細胞は増殖するために細胞外のグルコースを必要とし、大量の脂質を作り出せるように細胞内部の機構を再プログラムすることが既に知られていた
それとの関連で、今回の研究で腫瘍細胞が増殖するためには細胞外の脂質も運び入れなければならないmust importことが初めて明らかにされる

「この代謝に関する新たな知識は乳癌のアキレスのかかとになりうる」
ICREA(スペイン)の研究者であり、IRBバルセロナのグループリーダーでもあるRoger Gomisは言う

彼らは動物モデルと培養癌細胞を使い、LIPGの活性を阻害することが腫瘍の増殖を抑えることを実証した

「この新たな治療標的について有望なのは、LIPGの機能が生命の維持にとって必須ではないように思われることである
そのため、LIPGの阻害による副作用は他の治療よりも少ない可能性がある」
筆頭著者first authorのFelipe Slebeが説明する

研究の共リーダーであり、IRBバルセロナのディレクターでバルセロナ大学の教授でもあるJoan J. Guinovartは次のようにコメントする
「LIPGは膜タンパク質であるため、活性を阻害するための薬理学的な薬剤デザインが容易かもしれないpotentially easier」


LIPGは標的として多くの長所virtuesがある
「もし、その活性を阻害する薬剤が見つかれば、現在利用可能なものよりも毒性が低く、より効果的な化学療法の開発に使われうるだろう」

彼らは現在LIPG阻害剤の開発パートナーを国際的に探しているところである


http://dx.doi.org/10.1038/NCOMMS11199
FoxA and LIPG endothelial lipase control the uptake of extracellular lipids for breast cancer growth.
FoxAならびに内皮リパーゼLIPGは乳癌が増殖するための細胞外脂質の取り込みを制御する

Abstract
乳癌の細胞が急速な増殖を代謝的に維持できるようにするためのメカニズムはほとんど理解されていない

今回我々は、乳癌が細胞外の源を由来とする細胞内の脂質を作り出すために必要な前駆体を供給するためのメカニズムに依存し、この機能を満たすのが内皮リパーゼ/endothelial lipase(LIPG)であることを報告する

LIPGの発現により脂質の前駆体を運び入れることが可能になり、それが乳癌の増殖の一因となる

乳癌細胞が高い増殖速度を支えるために経験する脂質代謝的な適応にとっての必須要素としてLIPGは突出しているstand outが、正常な組織ではそうではない

LIPGはすべての乳癌サブタイプにおいて、FoxA1またはFoxA2の制御下で、広くubiquitouslyそして高くhighly発現する

形質転換transformedした細胞においてLIPGまたはFoxAのどちらかを下方調節すると、増殖は抑制され、細胞内の脂質合成が損なわれる結果になる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/991a30f257378e25e2ce5b7d9b0a0bf7
癌細胞は本当にグルコースで増殖するのか?



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6089be975c0cf32996447e33323a6ece
癌はLDLをエサにする