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祝・モーリタニア・イスラム共和国建国記念日2016〜砂漠と政変とイスラムと

2016-11-30 07:30:13 | アフリカ情勢
色々連載記事があり、すっかり遅れてしまったが、先日11月28日はモーリタニア・イスラム共和国の独立記念日であった。まずはモーリタニア友人諸氏にお祝いを申し上げたい。

モーリタニアについてはこのブログでも繰り返し話題にしてきた。砂漠の国、イスラムの国、アラブとサブサハラの行き混ざる国。



祝・モーリタニア建国記念日2015
その1 砂漠とイスラームの国
その2 永遠の友人

祝・モーリタニア・イスラム共和国建国記念日2013

モーリタニアの砂漠は広大で、何百キロ進んでも風景がわからなかったりする。しかし白い砂漠、黄色い砂漠、茶色い土漠、ゴツゴツした岩石砂漠、オアシス、そして海岸と、グッとズームを引いて見れば、実に多彩な自然の造形が見られる。そんな広大な自然の大スペクタクルの中で、人々の営みが繰り広げられている。



モーリタニアでは歴史の中で、1978年、1984年、2005年とクーデターが繰り返された。現大統領のアブデル・アジズ氏も軍人出身。2008年、クーデターによりシディ・ウルドゥ・シェイク・アブダライ前大統領からクーデターで政権奪取。2009年、「民政移管」の大統領選挙に立候補し、選出された。


サヘル情勢が不透明な中、目下の国家的課題は、テロの抑止と治安の確保だ。モーリタニアはマリと長い国境を接している。中でも南東部国境に近いネマの軍事基地、マリ側から見ればワガドゥの森からのテロ勢力の侵入は最警戒されている。

そんな中、軍人出身のアブデル・アジズ大統領は、治安問題で集権的な政策路線をとり、サヘル周辺国で構成する5カ国グループ(G5)でも一定の役割を担っている。

他方、マリ北部の暴力的過激派グループは、しばしばモーリタニアの通信社を通じて声明やメッセージを発している。このことから、モーリタニアはしばしばテロ勢力との何ら特別の距離感をもっているのではないか、とも憶測される。実際、テロ勢力の侵入はここ数年見られていない。真実のほどはわからないが、サヘルのコンテクストにおいて、キーとなる国であることは間違えない。


国内的には身分的「階層」と奴隷制度がホットイシューだ。伝統的にアラブ系の白いモール人(白モール)が、サブサハラ系の黒いモール人(黒モール)の上位階層に位置し、奴隷として使用する伝統が継続する。

モーリタニア政府は、以前からセンサス、いわゆる国勢調査を行う計画を持っていた。しかしセンサスが、人々の身分の固定化につながるのではないかとの猜疑心を生み、国内的議論を呼んだ。

他方、奴隷制の締め付けで、むしろ生活の糧を失う旧「奴隷」層も出ている、などとの議論も聞く。外部者が無責任に論じるべき問題ではないのであろうが、伝統的社会とグローバリゼーションのはざまで、どんなモーリタニアはどんな方向 を目指すのか?注目される。


この国の大きな産業は、鉄鉱石と、期待されたほど出なかった石油。またスーパーでおなじみの「モーリタニア産タコ」をはじめ、入漁権収入など水産分野の寄与度も大きい。政府は、事業者に作物の加工をモーリタニア本土で行わせ、付加価値を得たいというのが本音だ。

その他、国民の多くが従事するのは放牧畜であり、またナツメヤシなどの限られた乾燥性作物である。


流動性の高い国民の定住化は、選挙制度、保健、教育などの開発指標向上や、国家近代化における大きな課題と認識されている。ンボテがかつて村落調査でお邪魔した村で、人口を尋ねると「500人から10,000人の間だ」と言われたことがある。「え?それっていい加減すぎない?!」と思ったら、ナツメヤシの収穫の時期にたくさんの人がやってきて、それが終わるとまた町を出て行くのだそうだ。

また別の機会に、人口と地下水ポテンシャルの関係を調査して回っていると、「今の人口など意味がない。井戸があればそこは町になり、都市になる」。そして「井戸がかれれば、人はどこかへ行ってしまう」とも言われた。価値観が全く壊される。「インシャッラー」という言葉の深い意味が、なんとなく響いてくる。


多面的な性格を持つ神秘の国、モーリタニア。今日も砂漠にコーランが響き、熱い空気が吹き抜けていることだろう。国の行く末も神ののみぞ知るのか?インシャラー、である。

(来年につづく)

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