旅限無(りょげむ)

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北京五輪の内と外 その壱百七拾六

2008-04-19 01:42:18 | チベットもの
中国外務省の姜瑜副報道局長は17日の定例記者会見で、長野市での北京五輪の聖火リレーについて「(聖火防衛隊の)手配は五輪の慣例であり、国際オリンピック委員会からも全面的な許可を得ている」と述べ、日本に「聖火防衛隊」の受け入れを求めた。中国はリレー走者に伴走する防衛隊のメンバーについて「警察学院の学生から選抜したボランティア」としており、姜副局長は「彼らは体を張って全世界の人々の聖火を守っている」と強調。日本など聖火リレーが行われる国に対し、防衛隊受け入れに向けた「積極的な協力と援助」を求めた。
2008年4月17日 産経ニュース

■そんなに「体を張って守る」ような物騒な聖火なら、日本政府は国民の安全を理由に「持ち込み禁止!」にするのが筋というものではないでしょうか?日本も原発の再処理燃料などをフランスまで運ぶ時に、自前で「防衛」はしますが、それは自国の領海内と公海上に限った行動です。ましてや、守るべきものは地球の環境と安全であって、決っして日本の威信などというものではありません。日本の公安警察と奇怪なターミネータ軍団が足並み揃えて傍迷惑な聖火を「防衛」するような光景を見て、どれほどの日本人が日中友好やら北京五輪大会の成功を考えるでしょう?


長野市で26日に開催される北京五輪の聖火リレーで、出発式が行われる予定の善光寺の幹部会議は18日までに、リレーの出発地を辞退する方針を固めた。チベット問題への抗議から、聖火リレーは世界各地で計画変更や混乱が続いており、長野でも開催日を目前に控え、大幅なコース見直しを迫られる可能性が出てきた。

■本番の1週間前になって「出発地の辞退」というのはただ事ではありません。「始めよければ全てよし」とも申しますから、出発地点を日本政府ではなく、善光寺さんの意向で辞退するとは!もしも、コース変更可能な日程上の限界を見切った上で、もっとも衝撃度の大きくなるタイミングまで引っ張っていたのなら、善光寺さんの戦略も睥睨(へいげい)すべからざるものがありますが……。ただ単に情報収集の努力を怠り、仏教寺院としての自覚が足りず、優柔不断な態度が禍しただけならちょっと恥ずかしいかも?


会議に出席した住職は18日朝、「われわれはチベット人と同じ仏教徒との気持ちが強かった」と話している。……善光寺側は市側に対し、この方針を非公式に打診。全住職が集まり18日午後に開く「全山会議」で、再度討議され、対応を決めるとみられる。市はこれまで善光寺に対し、警備強化のため、26日朝の出発式の時間帯に一般参拝客の立ち入りを規制し、迂回路を設けるよう要請。善光寺は17日午後、非公開で幹部会議を開き、敷地内からのリレー出発に反対する方針を固めた。 
4月18日 時事通信

■もしも、長期連休初日に客足が鈍ることをお坊さん達が心配したのならば論外ですが、本当に「同じ仏教徒」という立派な見識による「辞退」ならば問題はないでしょう。でも、それならそうと、もっと早く言って欲しい!聖火リレーを拒否して「同じ仏教徒」としての同情と悲しみと怒りを感じるのなら、一歩進めて次はダライ・ラマ法王を御招待しての合同法要を企画したら如何でしょう?最適な日時は北京五輪の開会式ではないでしょうか?まあ、閉会式当日でもよいのですが……。


長野市で26日に行われる北京五輪の聖火リレーで、スポンサー企業の日本コカ・コーラが、広告用のイベント車両をリレーの車列と一緒に走らせることを中止したことが17日、分かった。聖火リレーは海外でチベット問題をめぐる抗議や妨害行為も続いているが、日本コカ・コーラは「警備強化で車両が増え、車列が長くなってPR効果が薄れたため」と説明。「最近の政治的な状況とは直接関係ない」としている。中国系パソコンメーカーの日本法人であるレノボ・ジャパンも「資金面の問題」で辞退……。

■やっぱり、五輪と言えば巨大な資金と資本が動きますから、こうした問題が出て来ますなあ。猫も杓子も報道してくれる聖火リレーを利用できる特権を買取るスポンサー契約はどうなるのでしょう?コカ・コーラは自社の都合で「辞退」したのだから、違約金や損害賠償などの問題は発生しないのでしょうか?おそらくは物々しいリレーの後ろに能天気な清涼飲料水の広告を掲げた車両が走っていれば、消費者は「清涼感」よりも不快感を催すのでしょうし、ブランド名としてはもう一つのレノボも、「中国企業」としての知名度が上がるのは困るとノーマルな判断をしたのでしょうなあ。


日本コカ・コーラは当初、車体に同社のロゴなどを描いた車両を1台走らせる予定だった。同社からの指名で聖火ランナーに選出された競泳男子平泳ぎの北島康介選手らについては、「予定通り走ることになる」としている。
2008年4月18日 産経ニュース

■北島選手はコカ・コーラのお雇い選手だったのか!高記録を出したら高額の出演料でCM契約も整っているいたのでしょうが、少なくとも聖火リレーの場面は使えなくなったというわけですな?こうした話はコカ・コーラだけの問題ではなく、高額な契約金を支払ってやっと手に入れた「北京五輪公式スポンサー」というブランドが、もしかしたら企業イメージを致命的に悪化させる恐れが出ているのですから、大会中も閉会式後も、危なくて使えない代物になってしまい兼ねませんなあ。

■聖火ランナーの中から「辞退者」が出るのと、スポンサー契約を解除する日本の企業が出て来るのと、さて、どちらが先か?
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