旅限無(りょげむ)

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『チベ坊』の続編のような…… 其の弐

2010-10-20 14:25:01 | チベットもの
■チベット関連の報道が悲しいほど少ない日本のマスコミには困ったもので、尖閣衝突事件に関連して以下のような動きがあったことは余り知られていないのではないでしょうか?AP通信が9月23日に伝えたニュースです。

11月予定のチベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世の来日に対して、中国政府が日本側の招聘自体を取りやめるよう要求していることが22日、分かった。中国政府は従来、ダライ・ラマ来日では日本側に圧力をかけてきたが、会合への出席を止めようとするのは異例。沖縄・尖閣諸島周辺での漁船衝突事件を受け、中国側が強硬姿勢を取っている可能性がある。 

■どさくさに紛れて「柳腰」の日本に対して、言いたい放題にも程がある!と憤慨したくなる八つ当たりみたいな話であります。


ダライ・ラマが出席を予定しているのは、広島市で開催される「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」(ローマの同サミット事務局主催)。ダライ・ラマのほかゴルバチョフ元ソ連大統領や、エルバラダイ元国際原子力機関(IAEA)事務局長ら歴代のノーベル平和賞受賞者9人が、「ヒロシマの遺産・核兵器のない世界」をテーマに議論する。……中国側は外交ルートを通じ「彼(ダライ・ラマ)はノーベル平和賞を受賞するような人物ではなく、招聘はしないほうがいい」などと指摘。ダライ・ラマを「分裂主義者」と見なす従来の主張を繰り返し、招聘を自粛するよう要請した。 

■劉暁波氏も「ノーベル平和賞を受賞するような人物ではない」ようなのですが、それなら誰が受賞に値する人物なのか、是非とも実名を挙げて教えて頂きたいものですなあ。この抗議を送り付けた時点では、まだ劉氏の平和賞受賞は決まっていなかったのですから、ノーベル平和賞に対しては一応の敬意を持っているようにも聞こえますが、今となっては平和賞自体を否定する可能性さえありそうです。でも、本当は「核兵器のない世界」という北京政府にとっては嬉しくないテーマの会議自体に反対なのではないでしょうかな?これから航空母艦と原子力潜水艦で太平洋の西半分を支配して軍事超大国の米国と対峙しようと本気で考えている誰かさん達は、いざとなったら躊躇せずに核兵器をバンバン使う心算でしょうからなあ。


これに対し、開催地の広島市は「中国側から現時点で抗議は受けていない」(市平和推進課)として、予定通りダライ・ラマを招聘するという。中国側はこれまでも、チベット問題に神経をとがらせてきた。平成17年4月に宗教団体の招きでダライ・ラマが訪日した際、日本政府が「宗教活動」として入国を認めたことに対して、駐中国大使館の日本公使を呼びつけて抗議。19年11月には、野党時代の鳩山由紀夫民主党幹事長がダライ・ラマと会談すると、駐日中国大使館が民主党を非難する声明を出した。政府関係者は「尖閣での事件にチベット人権問題が加わることで、中国国内が混乱することを中国指導部がおそれているのではないか」と分析している。
2010年9月23日 産経ニュース

■この「政府関係者」の悪い予感?が当たって、尖閣衝突事件にこじ付けて四川省の学生達が起こした本音を隠した「愛国無罪」暴動が、西のチベット地域に飛び火してしまったとしたら、今回の青海省同仁県での教育政策に対する抗議デモが小さな火種になって、広大なチベット地域の何処かに燃え広がるか、或いはウイグル地域でも共鳴作用が見られるかも?

■小平時代、チベットのラサ市で戒厳令を布いてデモを武力で鎮圧したことで権力の階段を駆け上がるチャンスを掴んでのし上がったのが胡錦濤国家主席ですが、後継者がほぼ決まり穏やかに権力を委譲して引退後の名誉と身の安全を計りたい時期に、再びチベット問題で火の粉を浴びることになるのでしょうか?

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