院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

うつ病の発見(1)

2017-10-17 05:19:18 | 医療

(悲しいむ老人(ゴッホ)。ウィキペディアより引用。)

 まずもって躁うつ病が発見された。昨日まで躁状態で大騒ぎしていた人が今日はしょんぼりしている。これは誰の目にも不思議に映った。

 のちに躁状態にいたらない、うつ状態のみの病態が注目された。私の若いころは、双極性のうつ状態と単極性のうつ状態の異動が論議された。(今では別の疾患ということになっている。特効薬が別だから。)

 身内が亡くなるような強烈な悲哀体験にさらされると、誰でも「うつ状態」になる。これは「正常反応」だから薬が効かない。たとえば子供を亡くした親が、薬を飲んで急ににこにこするようになったら、かえっておかしいだろう。

 だから病としての「うつ病」と悲哀体験の正常反応としての「うつ状態」は、まったく別物なのだ。なのに最近では両者は混同されている。つまり「過酷体験→うつ病」という図式が一般に流布している。これは「正常反応」を敷衍しただけで、誤りである。

 ところが一般人はおろか、労働基準監督署や裁判所さえそう考えるようになった。だがこれは、とんでもない間違いなのだ。(長くなりそうなので続きはまた次回。)

 ※今日の俳句(秋)
    天井の節目に和する秋の蝿


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
同感です (西川嘉伸)
2017-10-17 09:17:14
昔から精神医学の用語はしばしば一般用語に援用されていましたが、「うつ」の濫用は本当に困ったものです。
専門家さえ「うつ」という (院長)
2017-10-17 09:29:51
うつ病のことを専門家さえ、たんに「うつ」というようになっています。
本当に困ったものですね。
うつのこと (しかくさんかく)
2017-10-19 23:31:41
「うつ病」と「うつ状態」ですか。

うつ病の軽いものが、うつ状態という
ものではないのですね。

三カ月ちょっと前に母が亡くなり、
それ以来、うつ病になったのかなと
思ったりしていました。

一般的には院長先生のおっしゃるように、親の死や大きな喪失感で「うつ病になることが多い」と言われていますから。

どうもありがとうございました。
ありがちな混同 (院長)
2017-10-20 00:10:56
しかくさんかくさん、こんばんは。
病としての「うつ病」と、正常反応としての「うつ気分」が混同されて困っています。
この混同は俗耳に入りやいからですね。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。