院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

放射性物質の「除染」への疑問

2011-10-13 00:48:06 | Weblog
 少し前、鳥インフルエンザが流行ったとき、鶏舎を丸ごと「消毒」するということが行われ、繰り返し報道された。この時、私は「おかしいな」と思った。医療関係者には「おかしい」と思った人が多かったのではあるまいか?

 どこが、おかしいかというと、ウイルスは消毒液では殺せないからである。消毒液はバクテリアを殺す物質である。しかし、テレビでは鶏舎に液体を噴霧する映像をしきりと流して、「消毒」と言っていた。

 この点をウイルスに詳しい先輩医師に聞いてみた。そうしたら先輩医師は「あれは消毒をしているのではなくて、希釈をしているのではないの?」と答えた。でも、報道では「希釈」という用語は一度も出てこなかった。

 確かに「希釈」は病原体の効力を弱める。それはバクテリアもウイルスも同じである。だとすると、あの「液体」は水だということになる。

 逆性せっけんだという医師もあった。だが彼も、逆性せっけんがウイルスを殺すかどうかについては知らなかった。私も知らない。もしかすると、あのときの「液体」は本当に消毒液だったのではないか?だとしたら、ものすごい無駄遣いだ。

 やがて鶏舎の「消毒」は、石灰の粉に変わった。これもウイルスに効力があるのかどうか、未だに私は知らないが、消毒液よりは経済的である。

 そこで、このたびの放射性物質の「除染」だが、高圧水流で屋根や壁を洗う映像が流されている。

 再び私が不思議に思うのは、「屋根や壁を洗浄して、その排水はどこへいくのか?」ということだ。屋根や壁からは放射性物質は減るかもしれない。でも排水が側溝へ流れるだろう。今度は側溝が汚染されることになりはしないか?

 ばい菌と違って、放射性物質を「殺す」ことはできない。だから、洗浄してできることは、汚染の場所を「移動」させるということだけである。

 ここでもまた「希釈」という概念が出てくるのだろうか?地域全体の「希釈」なんて洪水でも起こさない限りできるのだろうか?「希釈」するのに高圧洗浄機が必要なのだろうか?ホースで大量の水を撒くだけではダメなのだろうか?

 科学的に考えると、「除染」という用語または行為には胡散臭さが付きまとっている。

 私が昔、行政にいたころ、「科学的な真実が重要なのではない。住民が安心したような気になることが重要なのだ」と教わったけれども、今回の「除染」も同じ思想によるものなのだろうか?

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2 コメント

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なるほど (かわひらこ)
2011-10-13 01:12:39
先生の面目躍如。こういう話をどんどんお願いします。もちろん、ポルトガル旅行記も楽しく拝読。どちらも、先生ならではのユニークな切り口が読ませます。
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励まされます (管理人)
2011-10-13 06:58:53
お褒めの言葉、ありがとうございます。とても励みになります。毎日書くのって、けっこう大変なんです。でも、頑張ります。
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