院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

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STAP細胞は再生医療には当分使えないだろう

2014-02-01 06:41:46 | 医療
 STAP細胞が本当に小保方晴子さんらの方法で作れると追試により証明されたら、ノーベル賞は堅い。追試による再現性の報告が待たれるが、ここではSTAP細胞が実在するという前提で考えてみたい。

 素人の知識を総動員して類推するに、STAP細胞は再生医療にはすぐには使えないだろう。(小保方さん自身が100年後に貢献したいと言っている。)その代わりに生体が維持される機構の解明が一層進むだろう。すでに分かっているアポトーシス(プログラムされた細胞の死)と同じく、このたびの初期化のメカニズムは生体内に元来存在している機能ではないだろうか?ES細胞やiPS細胞が自然界では起こりえない技法で作られたのに対し、STAP細胞は自然界で容易に起こりうる操作で作成されたからである。

 上に再生医療にはまだ使えないと言ったのは、「ヘイフリック限界」(高等動物の細胞が分裂できる回数の上限)をSTAP細胞は超えられないと思うからだ。STAP細胞は幼いマウスのリンパ球から作られたという。マウスのリンパ球は、リンパ球になるまでにすでに何回も分裂しているはずである。だから、STAP細胞は残された回数しか分裂できないのではないか?という問いが生じる。

 分裂回数に限界があるのは、DNA上に同じ塩基配列が繰り返されるテロメアという構造の長さが、細胞分裂が行われるたびに減っていくからだとされている。STAP細胞はテロメアの長さも元通りにリセットされているのだろうか?それらは、これからの研究に待たねばならない。

 少なくともクローン羊ドリーのテロメアは短かったそうである。だから、ドリーの寿命も普通の羊より短かったのだろうと推察されたこともあった。(クローン動物の寿命は概して短い。)後にクローン作成を繰り返すと実際にはテロメアが長くなることが観察された。そのため、高等動物の寿命とテロメアの長さの関係は分かっていない。

 このようにSPAT細胞については、これから研究されなくてはならないことが山ほどある。そのため、細胞生物学は急速に進歩するだろう。だからと言って再生医療がすぐにでも行われると思うのは早計である。これは、実はiPS細胞にも言えることだ。ただし、STAP細胞が作られるのは高等動物の体内で(in vivo)行われている自然現象である可能性がある分だけ、iPS細胞より優れている。

註:アポトーシスの発見者は2002年、ノーベル賞を受賞した。

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