『コンサルタントの秘密』(ワインバーグ著)読了。外国人にありがちな遠回しの表現で、翻訳独特の読みづらさがありましたが、段々とそれが気持ちよくなりました。以下、備忘的に。
(以下引用)「X線がガンを引き起こしも治しもするように、たいていの新技術というものは引き起こしたり治したり、というふうに二通りの働きをするのだ。計算機は、その推進者によれば、退屈で単調なオフィス労働に終止符を打つはずだった。だが、だとしたら、その後計算機が退屈で単調なつまらない労働の同義語になり終わったのはなぜだろう。もちろんそれは、計算機を使って労働を、もっと面白く、刺激的で、意味深いものとすることが不可能だからではない」
引用者注。計算機とは、コンピュータのこと。同書は1985年刊、日本語版は1990年に出ていますから、まだパソコン(パーソナルコンピュータ!)がない時代。会社に大型のものがデンと構えていた時代です。なお「バグ」は「虫」と訳されていますが、当時はそう言ったのでしょうか。
もったいぶった表現ですね。要は、薬は病気を治しもすれば、害を及ぼすこともある。それと同じで、人間はコンピュータに単調な仕事をやらせて創造的な仕事に専念することともできれば、コンピュータのお守りに忙殺されることもある。後者にならず、前者になるよう意識しよう。ということでしょう。
「もし、しっぽを足と呼ぶとすれば、犬には何本の足があるでしょう?」。これ、アメリカ大統領、エイブラハム・リンカーンお得意のジョークだとか。
あなたの答えは? 5本?
答えは4本。いくらしっぽを足と呼んでも、足になりません。名は体を表すと言いますが、実体を伴わない体は、名でしかない、ということ。いくら空手五段だと「自称」しても、弱い奴はいます。自称するのは自由ですからね。
よく赤提灯で一人飲んでると、隣の席から「俺は偉いんだ」と威張り調の声が聞こえてきますね。いくらエバっても、偉くない人は偉くない。その人を評価をするのは自分でなく、他人ですから。
ある女子学生と教授の会話。
「A大学に転校しますわ。理由は、先生の授業が退屈ってわけじゃないんですのよ。仲良しの姉がA大学に転校するものですから」
「お姉さんはいくつ年上?」
「いえ、年上じゃないんです」
「どういうこと」
「私たち、同じ日に生まれたんです」
「ああ、そう、双子だね」
「いいえ、双子じゃありません」
「同じ日に生まれたのに双子じゃない? じゃあ腹違い?」
「いえ、両親とも同じです」
「じゃあ、あなた方のうち、どちらかが養子?」
「いいえ、私たちの生物学的な両親は同一人物です」
「うーむ、分からないな。何か見落としてないか、良く考えてみよう」
大学の教授というのは、ワインバーグ本人なんですね。で、授業でMECE(モレなくダブリなく)なんて教えている。
「先生が私たちに教えてくれた原則をどう適用するか、見せてほしいわ、オホホホ」
「あるくみるきく」読者の皆さん、分かりますか? 答えはオアズケ。
第5章「そこにないものを見るの法」は、音楽にたとえて書かれていますが、これは直感ですね。論理は大切で、論理的に詰める。が、それで解決しない場合には、音楽に耳を傾け判断する。つまり自分の心の中の勘定に従う。直感で判断する、と。
欠陥を機能に変える、ことも書かれていました。短足だから、低重心が求められるスポーツをする。背が高いから、バスケットボールやバレーボールをする。無愛想だから、それでも客がつく腕ききの職人になる。要は、180度、考え方や見方を変える、と。
(以下引用)「もしみんなが、しなくちゃならないと知っていることをしていれば、車にバンパーはいらない」
なるほど、そうですね。でも、みんなは自由に振る舞う。中には交通ルールを守らない奴もいる。守っていても、守っていなくても、事故は起こりえる。軌道を行くようにピタッと人々は動かない。だから、万が一に備え、バンパーがいる。理想でなく、現実への対処。
人間は、コンピュータと違い、良くできています。周りが騒がしい繁華街でも、その音を無視し、読書や友人との会話に集中できます。人間の脳は素晴らしく、関係ない音は無視することができるから。
では、何かに集中している人に、あえて注意を向けてもらわなければならないときは、どうすればいいか。電話発明の時代です。(以下引用、一部改)「ベル電話会社は頑張って、他の何をやっているときでも無視できないようにベル音を設計したんだ。ベル音にそういう機能がなければ、電話システムは成功しなかっただろう」
CRM(クルー・リソース・マネジメント)についても書かれていました。同書では「相互引き金条約」と呼んでいます。
ジークとルークが熊から逃れる話。これ、別の本で読んだことがあります。その本では、サバンナでライオンから逃れる話でした。
P126、会議での振る舞い。これ、面白い。実際に試してみたい。
ある会議を開くとします。メンバーの半分に、事前に「会議を早く切り上げるようにして」と頼んで了解を取り付けておきます。ほかの半分には「なるべく会議を長引かせて」とネゴしておく。で、実際の会議。早く切り上げようと策動する人たちのほうが、冷静に観察すると、じつは長引く原因を作っている。
教訓。会議を速く進める最良の方法は、おとなしく、静かにしていることだ。
P191、ダンカン・ハインズの卵。完成品を提供するのでなく、一部に手作業を加えないければならない状態にして提供する。「自分が作り上げた」感を顧客に持たせる工夫。
正直者は馬鹿を見る、というが、そうではない。正直は最強の戦略。自分の馬鹿正直さが情けなく思え、つらつら考え、そんな結論に至ったことがあります。同書にも書かれていました。
P216、信頼の第四法則。信頼を勝ち得るための策略とは、すべての策略を避けることだ。
P166、抵抗。コンサルタントが顧客の会社に乗り込むと、一部に抵抗を受けるもの。それをどう感じるか。(以下引用)「(自分を含め)完全な人間などいはしないのだから、われわれは自分たちのアイディアをテストするために抵抗を必要とするのだ」。抵抗よ、ありがとう、というスタンス。
抵抗に遭うと、どう対処するか。(1)明るみに出す、抵抗はカビに似ている。それは白日の下でははびこらない。(2)抵抗に中立的な名前を付ける、誰かのせいというのでなく、中立的な名。(3)抵抗の本質を突き止める。バッファローのブレーキ。事実のみ伝えるのでなく、相手の利害に関連する事実を伝える。
第11章、サービスの売り出し方、第12章、自分に値段を付けるの法あたりは、コンサルタントでなくとも、フリーで仕事をしている人にはとても役立つ内容ではないでしょうか。ワインバーグ氏自身、個人で、大企業のコンサルをしている人ですから。
以上、自分の備忘のメモなので、一読して理解いただけない部分もありますが、ご参考まで。もっと詳しく学びたい人は、同書を直接手に取ってくださいませ。
おっと、忘れていました。女子学生と教授の会話がありましたね。じつは女子学生は三つ子(四つ子、五つ子、六つ子の可能性も有り)だったのです。
それでは、さようなら。
はじめまして。読んでいただき、ありがとうございます。
ほんと、機知は、大切ですよね。
うまい機知に合うと、スゴいなと思います。
そうですか、困難な人生を歩んだ方ですか。いわゆる苦労人ですね。一般論ですが、そういう人ほど温かいですよね。
今後も、よろしくお願いします。