ビビの声は聞こえたが、反乱軍の心には響かなかった。
今までの3年間、里がつぶれ、仲間が死んでいく地獄を味わってきたが、王は何一つ助けてはくれなかったのだ。それに加えて「ナノハナ」での王による街の襲撃、先ほどの広場での国王軍の乱行を、「悪夢」の一言で片付けられるはずがない!!!と反乱軍達は武器を掲げて憤った。
殺気立つ反乱軍に対して、再び戦闘態勢に入った国王軍を止めたのは、死んだと思われていたチャカの声だった。
そして反乱軍をとめたのは、死んだはずのイガラムだった。
イガラムの手にはナノハナで国王軍に殺されかけた少年、カッパが抱きかかえられていた。カッパ少年は重傷の怪我を押して、皆に伝えた。ナノハナを襲った国王はニセモノで、罠であったことを。
その言葉を裏付けるように、コーザも言葉を繋いだ。 「・・・そうだ、この戦いは、始めから仕組まれていたんだ」
言葉が繋げられていく。イガラムがこの国に起きた全てを話し出した。国王軍も反乱軍も「真実」を知るために、武器を捨て、言葉に耳を傾けた。
反乱が止まった事を見届けた”麦わらの一味”は、ルフィを探すべくクロコダイルが飛んできた方へ向かって歩き出した。
一味は途中で、意識のないルフィを背負った見知らぬ男性に出会い、そこへ時計台から降りてきたビビが駆けつけた。
ビビの父親・・・国王からルフィとクロコダイルの死闘、その後瀕死のルフィが人”2人”を抱えて地上へ飛び出した経緯を一通り聞いた”麦わらの一味”は、王とビビに早く広場へ行くようにとせかした。
ビビが、父王と共に広場へ向かったことを見届けると、皆一斉に力尽きて地面に倒れこんだ。
広場では、イガラムの口からクロコダイルの陰謀が語られたが、国の英雄が悪の枢軸だったとはにわかには信じられない話だった。
だが、海軍のたしぎ曹長が言葉を繋げ、皆の前でクロコダイルを逮捕してみせ、イガラムの言葉が真実であることを証明した。
「バロックワークス社の所有していた"ダンスパウダー"を積んだ人工降雨船を発見。秘密犯罪会社バロック・ワークス社「社長」、王下七武海 海賊「サー・クロコダイル」、世界政府直下"海軍本部"の名のもとに、あなたから「敵船拿捕許可状」及びあなたの持つ全ての称号と権利を、剥奪します!!」
真実はあまりにも残酷で、誰かを恨んでいれた方がマシだったのかもしれない。コーザ達反乱軍は、皆一様に下を向いたまま黙り込んだ。
「おれ達は・・・取り返しのつかないことをしたんだ・・・・」
そのひしうちがれた民衆の姿に、ビビはかける言葉が見つからなかったが、そのビビの肩をポンと叩いて前に出たのは、王であった。
「悔やむことも当然・・・やりきれぬ思いも当然。失ったものは大きく、得たものはない。が、これは前進である!!戦った相手が誰であろうとも、戦いは起こり、今終わったのだ!!過去を無きものになど、誰にもできはしない!!!・・・この戦争の上に立ち!!!! 生きてみせよ!!!!アラバスタ王国よ!!!!」
アラバスタの全ての人は、泣いた。
敵であった者も、味方であった者も関係なく、アラバスタ王国を愛する者達は皆、思いを一つにして泣いた。
切望した雨を前身に浴びながら、王の言葉に一人一人がアラバスタの国そのものである自覚と、この国で生きる決意をその胸に抱き、過去を泣き、未来を誓った。
後に、歴史に刻まれる戦いと、決して語られることのない戦いが、ここに終結した。
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