むじな@金沢よろず批評ブログ

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ドキュメンタリー映画「靖国Yasukuni」、どこが反日なの?

2008-07-09 15:43:13 | 芸術・文化全般
台北電影節(台北映画祭)で、日本で大騒ぎになったドキュメンタリー映画「靖国Yasukuni」(台湾中文題名:靖國神社)が上映された。7月1日夜と6日午後の二回あったが、1日のほうを見てきた。日本では4月の試写会をきっかけに右派や右翼が「反日映画」だと大騒ぎして、上映に圧力がかかって各地で上映中止となった。しかし実際見たら、別に何のことはない映画だった。
刀匠についてはある程度敬意をもって描いているように見えるし、8月15日の式典で極左セクトの活動家と見られる若者が反対のスローガンを叫んでなだれこんでつまみ出されているシーンなんか、むしろセクトの若者が滑稽に見える(しかしあの口調は、どこのセクトだろう?□○?)。というように、決して靖国側=悪、反対側=善と一方的に描いているわけでもない。

監督をはじめ制作陣のほとんどが中国人だし、台湾の外省人反日活動家高金素梅が制作に関わっているだろうことから、悪意に色眼鏡見れば「反日」ということになるんだろうが、これが日本人だけで撮ったとしたら、それで素通りしていたはずだ。
「日本人ならこんな無理解なとりかたはしない」という右翼はいるだろうが、いまどき若者で神道や戦前の歴史に理解がある人間など少数だし、日本語が出来る中国人よりも日本人のほうが日本の文化歴史を知っていると思い込むのは、単なる自惚れというものだろう。
しかも右翼ときたら、靖国に行ってやたら大騒ぎしているのは神社を参拝するものとしていかがなものか?私は靖国に行ったことがないので、靖国があんなに騒々しいところだとは知らなかったが、これは呆れた。日本古来の神道や神社が、祭りの日は別として、粛々と、静かに、厳かに参拝するのがしきたりのはず。それをあんなに大騒ぎしているのは、むしろ日本的ではなく、シナ的である。靖国擁護の右翼こそ、非国民・シナの精神的ドレイだ。私が靖国というか明治以降の国家神道が嫌いな理由の一つは、それこそシナ専制体制の模倣だからだ。
#ほかの理由は、1、キリスト者など、違う信仰の人間を本人の意思を無視して祀っているところ(だから私は無宗教の国立戦没者施設を作るべきだと思う)。2、「国のために戦死した人を祀る」といっているくせに、この人なしには明治国家はできなかったはずの、西郷隆盛を「逆賊」として祀らず、戦死ではない東条英機らを祀っている矛盾とペテン(これはさかしらな唐心だ!)。3、「戦前はみんな靖国で会おうといって死んだのだから」という擁護論があるが、戦後のレジーム転換では通用しないし、戦前と違って一宗教法人施設になっている以上、「国家意思」を代弁できない。4、昔からある伝統のような顔をしているが、実際には明治にでっちあげられた「創造された伝統」であり、伝統のように装うところがペテン。
ーーーといったところか。要するに、靖国は本居宣長などが理念化した「古来からのヤマトの伝統」ではなく、それこそ唐心、シナ的専制体制の模倣でしかない。そういえば、靖国をやたら持ち上げる日本の右翼って、団体名からしてやたらと漢字が好きで、ひらかなを排撃しているよな。実際には民族主義のミの字もなく、シナのドレイ。だから靖国みたいなものが好きなんだろう。

しかも、中国人なら反日なのか?それこそ中国を買いかぶっているというべきだろう。
現在の中国政府指導部の対日慎重戦略(むしろ反政府運動の隠れ蓑に利用されかねない「反日運動」を抑圧)、そして中国人の表現の自由度を考えれば、中国政府のお墨付で作られた映画で「反日」になれるわけがない。もしこれが反日だというなら、中国には体制が設定した以外の表現の自由があるといっているようなものであり、それこそ中国を美化する媚中発言というべきだろう>右翼と週刊新潮。

そもそもこの手の政治的な題材を扱った映画というのは、とかく「反日」だの「軍国主義賛美」だのというレッテルを貼られがちだが、実際見るとそうでもないケースはこれが初めてではない。東条英機を描きこれは左翼から「軍国主義賛美」といわれた映画「プライド」は、むしろ淡々と描かれていたくらいだから。
「靖国」についても、はっきりいって過剰反応だ。というか、中国人が作ったから反日に違いないという思い込みで勝手に妄想したとしか思えない。

そもそも靖国については、これを爆破してしまったほうがいいと考える日本国民だって存在するし、首相の参拝については反対も国民の半数はいる。つまり日本の中でもコンセンサスがある問題ではない。右翼は、映画の中で出てくる批判派の浄土真宗の僧侶や批判派の抗議行動は許せないんだろうが、私から見たら、「神道を信仰していなかったものを祀るのはおかしい」という僧侶や批判派の主張は当然だと思うし、日本国民の半数はそれに賛同するだろう。右翼のいう「日本人なら靖国を奉るべきだ」という主張こそが独りよがりなのである。

この映画は、カメラアングルといい、映画としての質はそれほど高くはない。それがここまで大騒ぎになって、むしろ監督のために宣伝したのは、日本の右翼の功績というべきだろう。日本のアホな右翼たちが騒いでくれたおかげで、有名になってしまったことに、中国人の監督たちはむしろニンマリしているに違いないw。

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