トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

ルイ16世について想うこと その①

2018-01-21 22:10:14 | 歴史諸随想

 今日1月21日は、フランス国王ルイ16世フランス革命により処刑された日である(1793年)。ルイ16世というと、私は未だに小学生時代に夢中になっていたベルばらの影響があり、心優しいが気が弱く優柔不断、革命への後手後手の対応により命を落とした王、というイメージがある。ベルばらを見たことがなくとも、同じイメージを持つ人が多いだろう。
 いざとなると度胸の無い暗君のようなイメージが知れ渡っているのは、彼の妃マリー・アントワネット伝を描いたシュテファン・ツヴァイクの影響が大なのだ。ベルばら自体がツヴァイクの伝記をベースに描かれており、ツヴァイクの人物評がそのまま流布したようだ。しかし、近年の研究ではツヴァイクの描いたルイ16世像は見直されてきているらしい。昨年、こんなコメントを頂いた。

雑感 (スポンジ頭)
2017-10-22 01:45:14
 記憶モードなんですが、寺田寅彦が言うには、海外の指導者は理系の教養を身につけるのに日本は関心が薄いとか。シュテファン・ツヴァイクが軽んじた描写をしていたルイ十六世も物理の勉強をしていて、技術将校レベルの理系頭脳を持った人間だったといいますし。(後半略)

 再びスポンジ頭さんから、以下のコメントがあった。

ルイ十六世の再評価 (スポンジ頭)
2017-10-28 21:49:25
 こんばんは。
 以前、ダフ・クーパーという著者(イギリスの外交官だそうです)が書いた「タレイラン評伝」と言う本を読んだことがあるのです。その中で著者は、即位したてのルイ十六世に関しては信心深くて真面目すぎるので当時の貴族たちに軽んじられた、と言う意味合いの事を記しているのですが、テュイルリー宮殿襲撃の際は国王一家が虐殺を免れたのは王の示した沈着な勇気があったから、と評価しているのです。同じテュイルリー襲撃でもツヴァイクはルイ十六世が鈍感だったから(庶民を刺激せず助かった)と評しているのとは大違い。
 また、フランス革命勃発後の王に関しては「(助言を聞いていれば・記憶モードなので曖昧)物分りもよく、進歩性と言う面ではたち勝った君主になっていたと思われる」と評しています。ツヴァイクの描く国王像とはかけ離れています。外交官と小説家の立脚点の差かも知れません。

 因みにツヴァイクはタレイランの人間性を批判していますが、クーパーはタレイランの放蕩を認めながらも(ドラクロワの実の父親だとか)、フランスとイギリス間の長い平和を作り出しヨーロッパの安定に寄与した、また、平和的な手段を模索した人物と高評価していました。非常に面白い本です。

 そして、こちらがルイ十六世の教養や政策について記したブログなんですが、知的好奇心が旺盛で、聡明な頭脳の持ち主であることを伺わせる内容です。ツヴァイクはルイ十六世を貶めすぎですね。マリーアントワネットとフェルセンを評価するなら、ルイ十六世を下げざるを得ないのでしょうけれど。
ttp://yaplog.jp/hanazono/archive/290
ttp://fwest.exblog.jp/21690547/

 番外、近頃の漫画で描かれるルイ十六世。時代が変われば描き方も変化する、と言う事でしょうか。絵柄はともかく、両方共善人として性格が位置づけられているそうです。
ttps://vignette.wikia.nocookie.net/innocent/images/2/26/Louis_XVI.png/revision/latest?cb=20161115055116
ttp://blog-imgs-100.fc2.com/m/a/n/mangakikou/4328aafbb29ef16b41ec120d50121dfa.jpg



 上の画像ははじめのリンクからのもので、これがルイ16世?と目を疑うほど。少女漫画特有のお耽美キャラで美化され過ぎと思いきや、青年誌に掲載された『イノサン』という漫画の登場キャラで作者も男性という。「雑感」というタイトルで、この件についてスポンジ頭さんからコメントがあった。

「イノサン」を書いたのは坂本眞一と言う漫画家で大阪出身です。関西人とは知りませんでした(笑)。とりあえず、王太子時代のルイ・オーギュストは痩せ型だったとかで()、体型に関しては史実です。そして、成人後は192cm()になったのだそうで、史実の国王はベルばらのイメージと異なるのですね」(2017-12-23)

 ベルばらでは王大使時代から太っていて、常にマリー・アントワネットより背が低く描かれていた。一方、マリー・アントワネットはヒロインにせよ、スーパーモデルばりの長身になっていたが、実際の身長は154cm、ウエストは58〜59cm、バストが109cm(wiki)とか。今の日本女性の平均以下の背丈だが、当時の欧州の基準では中背という。
その②に続く

◆関連記事:「ベルばら再読雑感
 「池田理代子の世界

よろしかったら、クリックお願いします
人気ブログランキングへ   にほんブログ村 歴史ブログへ



最新の画像もっと見る