トーキング・マイノリティ

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NHKアーカイブス ベルサイユのばら その一

2015-05-07 21:08:24 | 漫画

 5月4日、NHK BSで『NHKアーカイブス~ベルサイユのばら 40年ぶりの新刊』が再放送された。この特集は昨年11月に放送されており、番組サイトにも載っている。私は昨年この特集が放送されていたことも、“ベルばら”の40年ぶりの新刊が出ていたことも、今回初めて知った。再放送でようやく見れたが、週刊誌連載中から“ベルばら”に夢中になっていた私も当時は小学生。あれから40年過ぎたと思うと、少女もまた老い易いことを突きつけられた。

 番組には原作者・池田理代子氏が登場、聞き手は桜井洋子アナ。この物語が描かれた頃の作者の個人事情や時代背景、制作裏話は熱心なファンなら知っていただろうが、私は番組で初めて知った話が殆どだった。小学生時代に夢中になっていた“ベルばら”も、中学時代になると、従姉や友人に勧められた他の少女漫画が好きになり関心を失ったのだ。元から私は飽きっぽい性格だし、高校時代ではさらに別な少女漫画のファンになる。
 それでも“ベルばら”特集となると、つい見てしまう。この種の特集では必ずと言ってよいほど漫画キャラクターへの解説が見られるが、TVではまず取り上げられないキャラクターについて書いてみたい。すっかり中高年世代となった元ファンの私には、男性キャラではジャルジェ将軍(オスカルのお父さん)、女性キャラならロザリーが気になる。

 ロザリーだが、実は熱心に見ていたはずの小学生の頃、全く印象が薄かった。別に嫌いではなかったが好きでもないし、些細なことで泣き出すのはイラついた。ロザリーを見直すきっかけになったのは、ブログ『ネタバレ映画館』管理人kossyさんの意見だった。kossyさんは男性ながらベルばら原作も読破しており、ベルばらを称賛している。尤も彼はロザリーファンを公言、こんなコメントをしていた
男はオスカルファンよりロザリーファンが多いはず…泣き虫なのに生活力があるし、恩も忘れない素晴らしい女性ですもん。非が見当たりません…

 マリー・アントワネットが好き、という男性は少数派だろうが、オスカルファンの男性となればもっと理解しにくい。しかし、ベルばらを見たことのない一般男性もkossyさんと同じ見方をするはずだ。言われてみれば、ロザリーは泣き虫ながら働き者でしっかりしており、周囲への気配りを忘れない。
 幼少の頃から食事にも事欠く貧困生活を送りながらも、隣の坊やにパンを分け与えたり、病気の母を懸命に看病する心優しき娘。大抵は極貧生活を送れば性格も荒み、姉のように平気で嘘をつき物を盗むようになるので、少女漫画的潤色も多分にあろう。それでも「名もなく貧しく美しく」は、庶民派の女性ならば好感が持てると思う。

 ロザリーはベルばらであくまでわき役であり、彼女の結婚後の暮しは特に描かれなかったが、良き妻、良き母になったことは想像がつく。そしてオスカルとマリー・アントワネットという2人の主人公の最後を看取ったのもロザリー。この辺りは池田氏のストーリーテラーを感じた。
 このロザリーの「平凡さ」が、NHKのようなメディアに敬遠される理由ではないか?オスカルやマリー・アントワネットのような劇的な人生を送ったキャラに比べ、あまりにもインパクトがないし、身近過ぎて取り上げられないのかもしれない。今時のメディアで良妻賢母では封建的遺物として一蹴されがちだ。

 良妻賢母型キャラならば、オスカルの母ジャルジェ夫人も同類だろう。ベルばらファンの大半は女性だろうが、女性らしい女性というものには同性の評判は意外によくないのだ。いい子ぶってる、と見る者もいるし、非が見当たらないのが欠点と思う人もいる。
 発言小町にもベルばらのロザリーのトピックがあり、中々読ませられた。少女時代にはオスカルに夢中だった私がロザリーに注目するようになったのも、年を取って見方が変ったということ。
その二に続く

◆関連記事:「マリー・アントワネット

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (rika)
2015-07-22 11:58:20
mugiさん、こんにちは。

>少女時代にはオスカルに夢中だった私がロザリーに注目するようになったのも、年を取って見方が変ったということ

おっしゃることよくわかります。自分が結婚して子供を生んで母親になってから、オスカルはちょっと遠い存在になりました。オスカルの持つ強さって男性的な強さであって、女性の持つ強さとは違う気がします。
ロザリーは女性としての強さを持ってる人ですね。ロザリーの結婚生活はベルばらの続編的作品「栄光のナポレオン エロイカ」で描かれていますよ。おっしゃるとおり良妻賢母でしょうね。新聞記者の夫ベルナールが一家の大黒柱で、ロザリーは家計の足しにとアルバイトをしています。フランソワというかわいい子供にも恵まれ幸せに暮らしています。ロザリーの生き方は女性の王道だと思いますね。
自分にも娘がいますが、オスカルではなくロザリーの生き方をお手本にして欲しいと思います。
そうそう、「栄光のナポレオン エロイカ」はアランも出てきますのでお薦めです。相変わらずジャコバン思想に入れ込んでるのは鼻につきますが、それはそれとして。
rikaさんへ (mugi)
2015-07-22 21:24:31
こんばんは、再びコメントを有難うございました。

 オスカルは軍人なので男性的な強さを必要とするのは無理もありませんが、本来は彼女も良妻賢母型になれる素質があったと思います。全ては親父の狂育のせいですが、本当は平凡な女性の幸せを願う心理を見抜いていたのがジェローデルでしたね。
 某掲示板に、「嫁にするならロザリー、恋人にするならオスカル」という書込みがありました。ロザリーの生き方は女性の王道という意見に私も同意します。

「栄光のナポレオン エロイカ」、実は途中までしか見ておりません。しかも立ち読みです(笑)。池田作品ですが、「オルフェウスの窓」で見限りました。また男装の麗人モノ?ロシア革命?という感じで、こちらも完読していない。
 少女漫画自体、社会人となってからはご無沙汰していますし、学生時代に好んでいたのは青池保子、吉田秋生両氏の作品でした。両氏の漫画は池田氏のような左翼思想が感じられないし、クールでハードなキャラやストーリーが好きでした。
オスカルの苦しみ (rika)
2015-07-25 23:19:03
mugiさん、こんばんは。

>オスカルは軍人なので男性的な強さを必要とするのは無理もありませんが、本来は彼女も良妻賢母型になれる素質があったと思います。全ては親父の狂育のせいですが、本当は平凡な女性の幸せを願う心理を見抜いていたのがジェローデルでしたね。

同感です。オスカルは女性としてはまだまだこれからって時に死んじゃったんですよね・・・。子供の時は女が男として生きる苦しみというものをよく理解していなかったんですが、今はすごくよくわかります。女の子を男として育てるのはやっぱり罪深いことですね。今はオスカルの苦しみというものをすごく考えてしまいますね。あれれー?オスカルは遠い存在になったと思ってたけど全然遠くなってませんね(笑)
ああやっぱり私はオスカルが好きなんだなーってmugiさんのブログを読んで再確認してしまったようです。
Re:オスカルの苦しみ (mugi)
2015-07-26 21:26:09
>rikaさん、こんばんは。

>>子供の時は女が男として生きる苦しみというものをよく理解していなかったんですが、今はすごくよくわかります。

 私も同感です。衛兵隊よりはマシでもおそらく近衛隊時代でも、同僚から多少はセクハラはあったと思います。ジェローデルのような理解ある紳士ばかりではないし、ド・ゲメネ公爵やブイエ将軍など、モロに女如きが…と言っていましたね。子供時代はこのクソ親父(品のない言葉で失礼)と怒っていましたが、これが普通なのです。

 新エピソードは未だに未見ですが、ジェルジェ夫人がオスカルの死から1年後、後を追う様に亡くなったことをファンのブログで知りました。夫が娘を男として育てたことに黙って従った夫人ですが、これも痛ましい。結局父親は己の罪を晩年で全て被ることになりました。
 もしオスカルが普通の貴族令嬢として育っていたとしたら、ベルばらのストーリーは成立しませんが、あれほどの苦しみはなかったはず。父を恨んだことはあったでしょうけど、「父上、感謝します」の一言は救われると同時に哀しすぎる。