この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

#5 シュトルム「少女ローレ」 (原題 「大学にて」)Ⅰ

2005年01月18日 | ドイツ文学

この本は私の最も懐かしい本の一つだ。私の本棚の最古参の本だ。創元文庫 昭和27年3月30日発行初版 定価100円テオドル・シュトルム著 塩谷太郎訳原名は「Auf der Universitat」(大学にて)

元々は私の姉が買って来たのを読んだのだが、高校二年の初夏に読んだこの本に私はすっかり参ってしまった。私の青春時代はこの本と一緒に来たようなものだ。それ以来50年以上、この小さな文庫本は大げさに言うと私と行動を共にしている。
高校時代の私の勉強部屋、大学での学生寮、下宿、就職してからの会社の独身寮、結婚して何回か転居したが、私はこの本を大事に持ち続けた。表紙がはずれセロテープを貼っておさえているが今度本棚から引っ張り出したら、また表紙がはずれてしまった。

私はこの本を幾度となく読んでいる。何十回読んでいるだろう。今度も読み返してみたが70歳になろうとする自分が青春時代にもどったような何とも夢見るような気持ちになってしまった。

シュトルム(1817-1888)はドイツの作家。1880年に裁判官を退官したあとで地方の町に隠棲して創作に専念して50あまりの作品があるのだそうだ。(この本での作家紹介による)(訳者の塩谷太郎氏は1903年生まれの翻訳家。)シュトルムは64歳ぐらいから創作をはじめたというのがその通りなら素晴らしいことだと思う。あとがきで訳者は「――――シュトルムは「71歳の高齢」をもって―――で没した。」と紹介している。

「少女ローレ」は90ページほどの作品だ。
次のような章にわかれている。
「ローレ」
「踊りの稽古」
「水車用池にて」
「城の庭にて」
「大学にて」
「散策」
「森の中にて」
「汀にて」

第1章「ローレ」の章ではローレは仕立て屋を父に持つ13歳の黒い髪の美しい少女。
この時ラテン学校の2年生(日本での中学2年生くらいの年齢?)の「わたし」の
この少女に対する淡い恋心が描かれている。
最終章の「汀にて」では「わたし」は大学生、
ローレは水死体として発見される。

この作品についてはつづけて書くことにして、この作品の最後の文章だけ書き写しておこう。
「 -その朝から幾星霜が流れ去った。
  大学町の墓地の片隅に、丈なす雑草に埋もれて、白い大理石の碑が立っている。
 「レノーレ・ボーレガール」墓石にはそう刻まれている。
 -今はドイツ国内のそれぞれの土地に別れ住んでいる三人の同郷の朋友が、
  それに醵金したのだった。」      (つづく)

                                         


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